Baby Princess~innocent feeling~ 作:ローリング・ビートル
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それでは今回もよろしくお願いします。
「「…………」」
二人で目の前の大画面に釘付けになる。
……はい。無難に映画鑑賞になりました。
そりゃあ、仕方ないよね。デートなんて初めてだし。
とりあえず蛍が観たいと言った恋愛映画を観る事にした。
コメディの要素も程よく取り入れられたその映画は、けっこう面白くて、周囲からも時折クスクスと小さな笑いが溢れていた。
よかった。この内容なら眠る事はなさそう。隣にいる蛍に目をやると、場面によってコロコロ表情が変わり、見ているだけで心が癒されそうだ。
しばらく見ていると、こっちを見た蛍と目が合う。
「「!」」
慌ててスクリーンへと視線を戻す。いかん、何を妹相手に見とれているんだ、俺は。
自分を心の中で戒めていると、手にひんやりとしたものが乗っかった。
ぎょっとして隣を見ると、俺の手の上に蛍の手が重ねられていた。その白くしなやかな指先がきゅっと包み込むように、突然の出来事に緊張している手を握ってきた。
意識を右手に半分くらい持っていかれながら、平静を装って映画に集中していると、それまでのコミカルな空気が消え去り、濃厚なキスシーンへと突入した。
浅いキスを何度も繰り返しながら、やがて生々しい音が響く。
……なんか気まずい。
蛍の手を握る力が少し強くなった。
まだ純粋な中学生の蛍には刺激が強すぎたのかもしれない。
そうこうしている内にスクリーンの中の男女は衣服を乱暴に脱ぎ捨て、身を投げ出すようにベッドへと体を預けた。BGMのロマンチックなオールディーズが場の雰囲気を静かに盛り上げ、それと比例するように蛍から伝わってくる緊張感が上昇している気がする。
……やばい。早く終わってほしい。
「「…………」」
無事に映画鑑賞を終えたが、当初予想していたものとは違う空気が俺と蛍の間に流れていた。何を言えばいいのやら……気まずい。
「あの……」
意外な事に蛍が先に口を開いた。
「映画……楽しかったですね」
「あ、うん。そうだね……」
「それに……お兄ちゃんの手、温かかったです」
「そうかな?自分ではよくわからないから……」
「本当に温かくて優しい気持ちになりますよ。だから、そろそろ寒くなってきたから、こうやって……」
蛍はさっきより強く俺の手を握り、そっと自分の胸元に引き寄せた。
「ホタの事、温めてくださいね」
その名前に相応しい天使のような笑顔が、あまりにも魅力的すぎて、一瞬だけ考えてしまった。
もし、天使家に拾われる前に蛍と出会っていたら……
「あ、でも……」
こちらの考えなど知る由もなく、蛍はこちらの耳元に顔を寄せてくる。
「まだ、さっきのようなエッチなのはダメですよ?」
……本当にこの可愛さはずるい。
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