Baby Princess~innocent feeling~ 作:ローリング・ビートル
それでは今回もよろしくお願いします。
「お兄ちゃん、お待たせしました~!」
雑多な人混みの中を不器用にちょこまか移動しながら、蛍が息を切らせて駆け寄ってきた。額にはうっすらと汗を浮かべている。しかし、それでもそれが爽やかさを演出しているように見えてしまうのは、さすがは天使家の姉妹といったところだろう。周りの目も自然と惹きつけている。
「わぁ~、あの子凄く可愛い♪」
「お前、声かけてみろよ」
「バッカ、無理に決まってんだろ」
「アイドルか何かかな?」
そんな周りの声に頬を赤く染めながら、蛍は俺の隣に並び……
「えへへっ♪」
「!」
とろけるような甘い笑顔を見せ、ギュッと音がするくらい強く手を握ってきた。
「さ、はやく行きましょう!」
「う、うん……」
しどろもどろになる俺の手を引き、そのまま建物の中へと入っていった。
蛍に見とれていた人達のポカンとした表情がかなり印象的だった。
*******
日曜日。今日は蛍とデートをする事になった。
土曜日の夜、夕食後にこそこそと近づいてきた蛍からこっそりと耳打ちされたのだ。
『明日、ホタとデートしてください♪』
言われた直後から顔が真っ赤になり、ヒカルや氷柱から疑わしげな視線を向けられたが、バレてはないだろう、多分……。
そして蛍の指示通りに時間をずらして家を出て、大型のショッピングモールまで来ていた。
洋服屋や飲食店はもちろん。映画館やゲームセンター等、幅広く完備されていて、一日中過ごしても楽しめるくらいの巨大施設だ。
もちろん日曜日なので沢山の人で溢れかえっている。
「どこか行きたい所があったの?」
「いえ……その……」
入った時の勢いはどこへやら蛍はもじもじし出した。
数秒そうしてからぽつりと呟く。
「実はお兄ちゃんとデートができればどこでもよかったんです」
「蛍……」
こちらの顔を上目遣いで覗き込みながら、声を震わせる蛍に落ち着かない気持ちになる。周りの騒がしさが少し遠ざかった。
「お兄ちゃん……」
「?」
蛍は顔を赤らめ、少しだけ俯く。繋がれたままの手がまた少し強く握られた。
「ホタ、デートは初めてで……何をすればいいんでしょうか?」
「…………」
ここで意外なお言葉。
可愛い妹はどうやらノープランのようだ。
「そうだなぁ……」
俺もデートは初めてだしなぁ。でも、こ、こういう時はやっぱり兄としてしっかりリードしなくちゃ……せっかく誘ってくれた蛍に申し訳が立たない。
「よし、まずは……」
施設案内を見て、俺はある場所の位置を確認する。
こうして行き当たりばったりの兄妹デートが始まった。
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