覇王はどう転んでも覇王なのだ!   作:つくねサンタ

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お酒の一気飲みは大変危険なので真似しないようにしましょう。
覇王が降臨する可能性があります。


蒼の薔薇

 雲ひとつない青空の下、さわやかな風が草原を撫でる。そんな中を走る馬車が一台。王国のアダマンタイト級冒険者、「蒼の薔薇」が乗っているその馬車はカルネ村に向かっていた。

 

「それじゃあみんな、おさらいしておくけど今回は血塗れに挨拶をして、カルネ村を探るのが目的。何があっても絶対に敵対しないこと」

 

「分かった鬼ボス」

 

「まかせて鬼リーダー」

 

 馬車の中には四人の人間がいた。リーダーのラキュース、忍者であるティアとティナ、そしてイビルアイだ。ガガーランはそとで御者をしている。

 

「それにしてもただの調査にアダマンタイト級冒険者である私たちが駆り出されるとはな」

 

「仕方ないでしょ。絶対に帰ってこれる私達じゃないとだめなのよ。相手は同格の冒険者よ?」

 

「私も鬼ボスに同意」

 

「敵対した時逃げ切れる実力者じゃないと殺される可能性があると言うわけだな」

 

 そう、血塗れについて分かっていることは少ない。成し遂げた偉業や街での態度については分かるが、拠点としている村でいったい何をしているのかが全く分からないのだ。エ・ランテル側としても血塗れを怒らせるようなことはしないようにしていて、それが血塗れの情報の少なさの原因の一つになっていた。

 

「おい!何か来るぞ!」

 

「「「「!!」」」」

 

 ガガーランの声に反応し、蒼の薔薇全員が馬車から出る。ガガーランの言う通り、カルネ村の方向からこちらに向かって何かが来ている。

 蒼の薔薇の面々はその場で馬車を止め、その近づいて来る影を凝視していた。そしてそれが何か分かった時、驚愕に目を見開く。

 

「え、何あれ」

 

「バーゲストリーダーに騎乗した幼女……かな」

 

「幼女かわいい」

 

「男の子だったらよかったのに」

 

「おい、こっちに手振ってるぞ」

 

 ガガーランの言う通り幼女は満面の笑みでこちらに手を振っている。少なくとも幼女がモンスターにいじめられてるわけではないらしい。幼女はそのままこちらに近づこうとして、バーゲストリーダーに止められていた。

 

「周りにもバーゲストがいるな。こちらを警戒している」

 

「見ただけで実力差に気づいた」

 

「戦士としての目を持ってる」

 

「何か色々信じられないけど。声をかけて見ましょうか」

 

 ラキュースは一歩前に歩み出る。他の仲間はそれを止めない。確かに周りのバーゲストたちは普通ではないが、それでも自分たちには遠く及ばないと確信しているのだ。

 

「私はアダマンタイト級冒険者蒼の薔薇リーダーのラキュース!この村にはエンリ・エモット殿を訪ねてきた!どうか会わせてほしい!」

 

「すごーい!冒険者だ!ドロシ、もっと近づいてよ」

 

「がう」

 

 幼女はこちらをキラキラとした目で見た後、下にいるバーゲストリーダーに前進を命じたが、バーゲストリーダーは首横に振る。ふてくされる彼女の元に新たなモンスターが近づいてきた。

 

「だめっすよネムさん」

 

「そっすよ。敵だったらどうするッすか」

 

 寄ってきたのは魔狼に騎乗したゴブリン達だった。ラキュースが知っているどのゴブリンよりも流暢に言葉を話している。

 

「そちらの冒険者様方、目的はなんすか?カルネ村の偵察っすか」

 

「別に偵察してもいいっすけど、誰かを殺したり怪我させたりしたら殺されますぜ」

 

「こちらに敵対の意思はありません。エンリさんが再興したカルネ村に興味もありますし、見せてくれると言うのならお願いしたいです」

 

 ラキュースのその答えを聞いて、ネムが嬉しそうに手を上げる。

 

「じゃあネムが案内する!」

 

「ネムさんがっすか?危険なんじゃ」

 

「大丈夫!キバクロも呼ぶ!」

 

「あー、それでも本気でやり合うときつい気はしますが、まあいいっす。向こうからは敵意を感じやせんし」

 

 ゴブリンライダー達はしばらく考えていたが、わりとあっさり許可を出した。

 

「それじゃあ俺らはキバクロさん呼んで来やす」

 

「うん!他のみんなはおしごとにもどってー」

 

 ネムがそう言うとバーゲストたちが散る。ゴブリンライダーもカルネ村に走って行き、その場にはネムだけが残る。

 

「はじめまして。ネム。エモットです!」

 

「ふふ、挨拶できて偉いね。私はラキュース。アダマンタイト級冒険者よ」

 

「ネム知ってる!アダマンタイトはすごい冒険者なんでしょ?」

 

「よく知ってるね。えらい」

 

「えへへー」

 

 他の蒼の薔薇の面々が自己紹介をしていく。彼女達は今の短い会話の中でネムから色々な情報を手に入れていた。まず彼女は名前からしてエンリ・エモットの妹だろう。服は農民としては普通の汚れていい服である。しかし腰には何本かポーションを差している。普通の村娘ではない。

 

「あ、キバクロ来た!」

 

「な!?」

 

「おいおい嘘だろ」

 

「これはまずい」

 

「予想外すぎ」

 

 ネムが指さした先にいた魔獣を見て今度こそ蒼の薔薇は呼吸が止まりそうになるほど驚いた。そこにいたのは間違いなくギガントバジリスクだ。彼女達でもイビルアイがいない状況ならかなりきつい相手である。

 

「この子は、エンリさんが使役してるの?」

 

「ううん。ネムの友達だよ?」

 

 蒼の薔薇は戦慄する。こんな何の力も持っていないと思われた幼女ですら、ここまで規格外の存在だったことに。ギガントバジリスクを友達だと言いきるその幼女の異常さに。

 

「血筋…かね」

 

「怖すぎる血筋だな」

 

 ガガーランとイビルアイがそうこぼしたのも無理はない。ギガントバジリスクとは一匹で町ひとつ滅ぼせる強力な魔獣だ。こんな幼女の友達でいるような存在ではない。

 

「じゃあいこー。みんなも乗っていいよ?」

 

 ネムの言葉に苦笑いしながら蒼の薔薇の面々はギガントバジリスクの背中に乗る。そしてギガントバジリスクは歩きだした。

 

 

 

 まず向かったのは訓練場。そこでは二匹のトロールが模擬戦をしていた。その試合のレベルの高さを感じて蒼の薔薇の面々は息をのむ。どちらからもアダマンタイト級と言ってもおかしくないほどの強さを感じる。

 

「あの二人はねー、盾を持ってる方がガディで、剣を二本持ってる方がヴァイだよ」

 

「ありゃ二人ともオリハルコン以上だぞ」

 

「ん?そいつらは?もしかして蒼の薔薇か?」

 

「そうだよ」

 

 蒼の薔薇の方に近づいてきたのは刀を腰にさした男、ブレイン・アングラウス。その風格はアダマンタイト級の戦士であるガガーランよりも格上に感じられた。

 

「ブレイン・アングラウスか。なるほど、強いな」

 

「そう言うお前はガガーランか」

 

 二人の戦士は好戦的な笑みを浮かべて睨みあう。それを遮ったのはネムだった。

 

「ブレイン、お姉ちゃんは?」

 

「団長なら森だ。北の方にあるリザードマン達と交渉しに行った。帰ってくるのは夕方だろうな」

 

「そっかー」

 

「グとハムスケもそれに付いて行ってるからカルネ村の戦力を図りたいなら団長が帰ってくるまで待つんだな」

 

 それだけ言うとブレインは亜人達の指導に戻って行った。

 

「見てく?」

 

「ええ、お願いしようかしら」

 

 蒼の薔薇は試合の邪魔にならない位置まで移動する。そこには他の亜人達や、エルフの姿もあった。

 

「ネムさんちーっす」

 

「ネムさんいい天気ですね」

 

「林檎食べるっすか?」

 

「剥きましょう」

 

「わんわん!」

 

「くぅーん」

 

 ゴブリン、オーガ、トロール、エルフ、魔狼。蒼の薔薇達には異なる種族が一緒に生きるその空間は非常に眩しく映った。彼らも吸血鬼の仲間がいるのだ。この光景を好意的にとらえるのも無理はないだろう。

 

「ありがとー!はい、お姉さんたちにもあげる!」

 

「ありがとう。…これ甘いわね」

 

「おお、ジューシーだな」

 

「甘い」

 

「お高い」

 

「ドライアード製の林檎ですので普通より甘いんですよ」

 

 林檎の皮を剥いたエルフがそう言うと、手に持っていた林檎の皮をそのまま地面に捨てる。

 

「おいおいいいのかよその場に捨てて」

 

「ええ、この村には掃除担当がいますので。彼らのご飯にもなるのでちゃんと地面に捨てます」

 

 エルフが言う通り、この村には掃除担当のモンスターがいる。それはスライムだ。現に今一匹のスライムがこちらに這い寄ってきている。訓練場は汗や血、肉などが飛び交うから餌に困らないのだ。

 

「おい、お前ら!遊んでんじゃねえ!」

 

 ブレインのその大きな声にビビった亜人達が一斉に散らばって行く。

 

「ったく」

 

「ブレイン様。タオルです」

 

「おう、ありがと」

 

 エルフがかいがいしくブレインの世話を焼く。お礼を言われて頭を撫でられたエルフは非常にうれしそうだ。頬が赤く染まっている。

 

「指導はいいのか?」

 

「一通り終わった。見りゃわかると思うがうちにはぶっちぎりで優秀なのが三人いる」

 

「大きな盾とハンマーを持ってるトロールと、剣を二本持ってるトロール、それにモンクのオーガか」

 

「ああ。まあ今団長の供周りに行ってる奴らはもっと強いんだがな。今村にいる連中だとここにいるのが最高戦力だな」

 

「六強のうち五人もいますしね」

 

「六強?」

 

 ブレインとガガーランが戦士の目線で話しあっている中にエルフが割り込んで行く。ブレインとガガーランは気付いていないが、それはエルフが二人の中を危惧したゆえの行動だった。

 

「森の賢王ハムスケとあの三人、俺と後ろにいるキバクロを合わせて六強って呼んでるやつらがいるのさ。最強は外に行ってるけどな」

 

「そんなに強いのか?」

 

「俺とあそこにいる三人が束になってかかっても全滅するな」

 

「おいおいまじかよ」

 

 ブレインもあそこにいる奴らも全員油断できないほどの相手。なのにそれが全員掛かりでも勝てないというのはいくらなんでもやばすぎる。

 

「ま、夜には分かるさ。そうだ、今日は初めて客が来た記念に宴にするのもいいな。おいてめえら!全員集合しろ!」

 

 ブレインが大声で集合をかけ、訓練してた亜人達が一斉に集まってくる。

 

「久し振りに宴すんぞ」

 

「まじっすか!?」

 

「うおー!俺肉取ってくる!」

 

「今すぐ狩りに行かなきゃ!」

 

「でも団長の許可ないっすよ?」

 

「大丈夫だろ、一応俺が副団長だし。それよりもあいつに酒を飲ませないよう気を付けろよ」

 

 ブレインの言葉にその場にいた蒼の薔薇とネム以外の面々が深く頷いてから散って行く。まさに阿吽の呼吸。宴はしたいが、団長の覇王モードに絡まれるのは勘弁してほしい。前の宴の後にも一回エンリが酒を飲んでしまったことがあったのだが、その時にはトロールが投げ飛ばされた。

 

「うたげ久し振りだねー」

 

「ああ、四か月ぶりだな」

 

「今までにも宴なんかやってたんですか?」

 

「この前、いきなり肉がここに降ってきてな」

 

「肉が?」

 

 蒼の薔薇が首をかしげる。肉が降ってくるなんて現象を彼女達は聞いたことがなかったので当然の反応と言える。

 

「フレアドラゴンのことだよ。あいつ何を勘違いしたのか戦力が全部ここにそろってる時に襲撃かけてきたからな。宴の肴になってもらった」

 

「ドラゴンを宴の肴ですか」

 

「お前らが来てくれたおかげで宴をする理由ができた。ありがたいぜ」

 

「私りんごジュース飲む!」

 

 ブレインとネムが楽しそうに笑いあってるのを見て、蒼の薔薇は本当にここが平和な場所であることを痛感する。

 

「じゃあ宴が始まるまでに村を案内してやれ。俺は村の連中にも話を通してくる」

 

 ブレインは人間種が暮らしているエリアに向かって歩いて行った。それを見送ってからネムと蒼の薔薇達も別の方向に向かって進み始めた。

 

 

「それでは新カルネ村に初めてのお客さんが来たことを祝しまして、乾杯!」

 

『乾杯!』

 

 時間が巡って夕方。この前と同じ場所で宴で行われていた。エンリは音頭を取ってから蒼の薔薇のところに寄って行った。

 

「ようこそおこしくださいました。今日は楽しんで行ってください」

 

「いえいえ、そんなにかしこまらなくても結構ですよ」

 

「そ、そうですか?本当のアダマンタイト級冒険者様に無礼じゃないですか?」

 

「全然大丈夫ですよ。というか」

 

「というか?」

 

「いえ、なんでもないです」

 

 エンリはラキュースの言葉に不思議そうに首をかしげるが、ラキュースはすぐに取り繕った。本当は「こっちの方が無礼かどうか心配なくらいです」と言うつもりだったのだが、さすがにラキュースにもアダマンタイトとしてのプライドがある。

 

「エンリさんは本当に優れた団長ですね。みんながあなたを心の底から慕っているのが分かります。あのグさんやハムスケさんにも忠誠を誓われてるんですからすごいですよね」

 

「そんなことないです。私は至って普通の村娘でしたから、みんなが忠誠を誓うエンリを演じるのに一苦労です」

 

「そうなんですか?かなり自然だったと思いますが」

 

 苦笑いをするエンリはどこからどう見ても村娘にしか見えない。しかしラキュースはそれを見て先ほど村に戻ってきた時のエンリを思い出す。イビルアイが勝てないと断言したトロールの上位種と森の賢王を従えて森から帰ってきたエンリはまるで凱旋している覇者のような圧を放っていた。

 

「ラキュースさんもどうぞ。これうちの村のドライアードが育てた林檎で作ったジュースです」

 

「これはどうもありがとうございます。これおいしいですね」

 

「甘いですよね。幸せです」

 

 エンリは本当に幸せそうに林檎ジュースを飲む。その様子はやっぱり村娘にしか見えず、ラキュースは混乱する。この同業者の本当の顔が見えない。

 ラキュースがエンリを見ながら林檎ジュースを飲んでいると、ガガーランとティアが近づいて来る。手にはお酒を持っている。

 

「おい団長ちゃん。ジュースじゃなくて酒飲めよ酒!」

 

「あ、こら!ガガーラン!」

 

 ガガーランが少々強引にエンリにお酒を進める。ラキュースはそれを止めようとしたが、エンリが手を上げたので言葉を止める。

 

「良いんです。いただきますね」

 

「おう!ぐびっと行け!」

 

「ん、一気」

 

 エンリはガガーランから受け取った杯を傾けて一気に飲む。そしてぷはぁと酒臭い息を吐く。

 

「おい筋肉、注げ」

 

「は?」

 

 覇王が再び降臨した。それを理解したカルネ村の住人が顔色を変えてエンリのそばから離れる。その様子に嫌な予感を感じながらもガガーランは豹変した目の前のエンリに話しかける。

 

「あ、あの団長ちゃん?」

 

「さっさと注げって言ってるのが聞こえねーのか?メスオーガ」

 

「いや、俺は人間だって」

 

「どこがだ!」

 

「ごばっ!」

 

 エンリのあまりの変化に戸惑っていたガガーランにエンリの鋭い突っ込みが入った。首に全力の手刀をぶち込まれたガガーランは一撃で意識が飛ぶ。

 ラキュース達は驚きすぎて言葉も出なくなっていた。

 

「酒乱?」

 

「ちょっとエロい」

 

 ティアとティナが言う通り、酔ったエンリはとんでもない酒乱である。頬が染まっている上、服の乱れとかも気にしないのでかなりの色気があった。

 

「おい貧乳仮面。注げ」

 

「貧乳仮面!?」

 

「そうだお前だよ。とっとと注げ。ったくなんだその仮面?かっこいいとでも思ってんのか?イビルアイって名前もそーだけどお前存在自体が痛いんだよな」

 

「ごはっ」

 

「イビルアイ!」

 

「イビルアイ死んだ」

 

「今のはひどい」

 

 酔ったエンリの容赦ない言葉にイビルアイは崩れ落ちる。精神攻撃を無効化できるはずのイビルアイがやられたのを見て残りの三人に冷や汗が流れる。

 

「おい、そこの二人」

 

「「なに?」」

 

「なんでいんの?」

 

「全否定!?」

 

「気付かれてすらいなかった!?」

 

 忍者は気配を消すスキルなんかも多く持っているが、今はもちろん使用していなかった。

 

「何かキャラも被ってるし、出来ることも同じだし、お前ら二人いる意味無いんじゃない?お、そうだ片方の首斬り落としてみよーぜ。すぐ区別付くだろ」

 

 エンリはケタケタと笑う。その様子にティアとティナ、そしてグの三人が肝を冷やす。

 

「どうした?グ」

 

「トラウマが…」

 

「あー、確かにあれは怖かったでござるな。懐かしいでござる」

 

 遠くで何か聞こえるがエンリは聞こえていないのか話を続ける。

 

「そっちの姉ちゃんは」

 

「わ、私!?」

 

 エンリはラキュースを上から下まで眺めてから手に持ってたお酒に自ら酒を注ぎ、一気に飲み干す。

 

「まあ、がんばれ」

 

「何で私だけ慰め!?」

 

「その鎧が早く着れなくなるといいな。うん」

 

「それは言わないで…」

 

 ラキュースが崩れ落ちる。その様子を不思議そうに眺めていたエンリはまだぎりぎりのところで踏みとどまっていたティアとティナの方を向く。

 

「そういやお前らどっちかがレズだって聞いたぞ。どっちだ?私がかわいがってやるよ」

 

「……今までありがとう」

 

「死なないでね」

 

 エンリはティアを引きずって家の方角に消えて行った。

 

「さすが団長だな」

 

「覇王降臨っすね」

 

「というか団長レズだったのか」

 

「だからあんなに鈍感なのか?男なんて眼中にねーってことか?」

 

「姫は男性だけで構成されてる組織に何度も襲われてるでござるからなー。そっちの道に行ってしまうのもおかしくないでござるよ。はっ、まさかそれがしも狙われて」

 

「……うん?」

 

「(ハムスケさんメスだったんだ)」

 

 一人残されたティナはカルネ村って本当に変な村であると実感していた。

 

 次の日、妙につやつやしてるエンリと気力を完全に消費しきったティアがエモット家から出て来た。

 ティアは何があったのかは決して言わなかったが、数週間後、血塗れの噂が一つ増えることとなった。

 

 曰く、血塗れは指先一つでアダマンタイト級冒険者に勝てる神の指を持っている。

 曰く、蒼の薔薇は血塗れ一人に敗北した。

 

 

 

 

 

 




ちなみにゴブリン達が蒼の薔薇をすぐに信頼したのはガガーラン――オーガに見えた――がいたから。亜人が仲間にいるならカルネ村にひどいことはしないだろうと考えたため。

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