覇王はどう転んでも覇王なのだ!   作:つくねサンタ

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今回のは読まなくてもいいかも。つなぎなのでとても短い。
後ろに次話時点でのカルネ村の戦力を表記しておきました。グがエンリの配下になってから一年が過ぎている設定です。
武王を追加しました。


間話1

 リ・エスティーゼ王国には現在三つのアダマンタイト級冒険者チームがある。一つはもっとも歴の長い「朱の雫」。二つ目は我らがエンリ率いるチーム「血塗れ」。そして三つ目は女性だけで構成された「蒼の薔薇」である。そのうち蒼の薔薇と朱の雫は王都に拠点を構えている。

 

「そういや、あの噂聞いたか?」

 

「何だ唐突に。頭まで筋肉で埋まってしまったのか?」

 

「張っ倒すぞ。そうじゃなくてあれだよ、王国三番目のアダマンタイト級冒険者の血塗れのことだよ」

 

「ああ…」

 

 蒼の薔薇の拠点である宿屋で一匹のオーガと仮面を付けた魔法詠唱者が話をしている。他のメンバーは所用で外しており、今は二人だけだ。

 

「リーダーは弱冠17歳の少女。出身は一応トブの大森林に最も近い開拓村であるカルネ村だとされている」

 

 イビルアイが何も見ずにスラスラと血塗れの偉業を上げて行く。

 曰く、森の賢王を従えている。

 曰く、戦士長と協力して陽光聖典の囲いを突破した。

 曰く、いつの間にかブレイン・アングラウスを配下に加えていた。

 曰く、アンデッド事変を二人と一匹で解決した。

 曰く、トブの大森林を事実上支配下に置くことに成功した。

 曰く、フレアドラゴンを討伐した。

 

「事実だと思うか?」

 

「アダマンタイトに昇格してることからエ・ランテルの冒険者組合がそれらを事実として認めていることは確かだな。眉唾ものだが」

 

 他にも妙な噂はいくらでもある。曰く、人間の頭を叩き潰すのが好きだとか、森の賢王に匹敵するトロールの首を斬り飛ばしたとか、とんでもなく鈍感だとか、村長であるとか。

 

「でも少なくとも戦士長級の魔獣を使役してるのは間違いないんだろ?」

 

「戦士長の言ってることが嘘でなければな」

 

 そうは言うものの、さすがにイビルアイもガゼフが嘘をついているとは考えていない。少なくともテイマーとしてはアダマンタイト級なのは間違いない。

 

「あの計画に手を貸してもらうのもありかもしれないってラキュースが言ってたぜ」

 

「ふざけるな。とんでもなく妖しい奴だ。そんな胡散臭い奴に協力を要請するくらいなら朱の雫に頼んだ方がまだましだ」

 

「ま、得体が知れないってのには同意だがな」

 

 ガガーランは宿屋の天井を見上げて、まだあったこともない新しいアダマンタイトに思いを巡らせる。

 

「そんなに気にしなくてもいいだろう。同じアダマンタイトなんだ。いつか会う機会くらいあるだろう」

 

「それもそうだ」

 

 

 場所は変わって王城、第三王女ラナーの自室。そこには非常に美しい少女がいた。「黄金」と呼ばれるその少女は非常に美しく、やさしい。……ふりをしている。なので彼女はいつも人を安心させるような微笑みを浮かべている。

 しかし、今日は違った。どこまでも無機質な人形の様な表情の抜け落ちた顔。指は机をトントンと一定のリズムで叩いている。ラナーは現在自身を取り繕うことすらしないほど真剣に考え込んでいる。考えているのはつい最近アダマンタイトに昇格した血塗れについてだ。

 

「…情報が得にくい。拠点を街ではなく村にして、しかもそこを自分の配下だけで完全に固めている」

 

 ラナーが呟いた通り、エンリの情報は非常に入手し辛かった。神懸かり的ともいえるラナーの頭脳を持ってしてもその深淵をのぞきこむことは難しい。無論ラナーの頭脳でほとんどの部分は分かっている。しかし、肝心の部分が分からない。

 

「武力、村の状況、そして今現在何をしているのか……」

 

 武力は最低でもドラゴンを討伐できるレベル。しかし上限が全く分からない。

 村には今何があって、何が足りないのか。それが分からなければ交渉することも難しい。

 そして今村では何が行われているのか。目的はおそらく平和と発展。しかし、今何をしているのかが分からない。

 

「……蒼の薔薇を挨拶に行かせて、いや血塗れの性格が分からないうちは下手に刺激するのも」

 

 血塗れの性格はおそらくおとなしい村娘だ。しかし、支配者としての片鱗も色々な個所に見え隠れしている。村娘が演技なのか、覇王が演技なのか。それともなりかけなのか。

 

「ドラゴンの卵はドラゴンの巣にしかない、か」

 

 ラナーはぼそりと呟くとその顔に微笑みを浮かべる。外で警護している自分のかわいいクライムを中に入れるためだ。

 

「クライム、入ってきてください」

 

 とりあえず蒼の薔薇をカルネ村に送ってみよう。今はまだ様子見でもかまわないだろうと考えて。

 

 一ヶ月後、蒼の薔薇からカルネ村の戦力を聞かされて遊んでる場合ではないと考えを改めることになるとも知らずに。

 

 

 

 スレイン法国の最奥。そこには十二の人影があった。彼らこそスレイン法国の最高執行機関である。

 そんな彼らが議題にあげるのは王国の新しいアダマンタイト級冒険者、エンリ・エモットだ。

 

「この短期間によくもこれだけの偉業を成し遂げられるものだ」

 

「こ奴に邪魔をされ王国戦士長ガゼフ・ストロノーフの暗殺には失敗したんだぞ?褒めたたえることではない」

 

「自分の命が助かるための選択だ。悪く言うわけにはいかん。こちらはあちらの村人を虐殺しているのだぞ?」

 

「陽光聖典の人員が数人削られたが、トブの大森林のゴブリンを彼女が削ってくれているおかげで少し余裕があるくらいだ」

 

「しかり、今までトブの大森林へ送っていた戦力を全て他のところに使えると言うのは非常にありがたい」

 

「それで、“占星千里”が情報収集に努めていたはずだろう。報告は上がっていないのか?」

 

「こちらにあります。どうぞ」

 

 一人の男が全員に資料を配る。それを見た者たちが次々に感嘆の声を上げる。

 

「これはまたすごい。“一人師団”よりも優秀なテイマーじゃないか」

 

「ドラゴンを一太刀で仕留めたトロールの上位種に、森の賢王、オリハルコン以上の力を持つトロールが二匹、オーガ一匹。その他モンスター多数」

 

「あの王国戦士長と互角で渡り合ったとされるブレイン・アングラウスの実力もいまだなお健在」

 

「そのブレイン・アングラウス主導でモンスターたちが武技を習得している模様……か」

 

「ギガントバジリスクを従えた幼女がいた?どういうことだ?」

 

「ドラゴンの肉で大宴会。腕相撲大会でエンリ・エモット優勝。楽しそうだな」

 

「エンリ・エモット本人の戦闘力は不明。しかし監視に気が付いている節があり、そのために力を隠している可能性あり、か」

 

 無論エンリは監視になんて気が付いていないし、そんなに強いわけではないのだが、スレイン法国の最高執行機関の彼らは信じてしまった。――そのくらいは出来てもおかしくないと思ってしまったのだ。ある意味信頼されてると言ってもいい。

 

「どう対応する?」

 

「今のところ問題は起こしていないどころか人類にプラスなことしかしていない」

 

「トブの大森林を完全に支配下におさめてくれればこちらも心配事が一つ消える」

 

「しかり、そうなってくれればエルフ達との戦争や竜王国への援助をもっと増やせるであろう」

 

「では今のところは放置と言うことでいいな?」

 

「接触はしておきたいが、向こうはこちらに良い感情は持っていないだろう」

 

「陽光聖典の件は間違いなく我らの仕業と分かっていよう。ンフィーレア・バレアレの件はばれてはいないだろうが知られれば完全に敵対してしまう」

 

「そうなるのは絶対に避けなければな」

 

「うむ。エンリ・エモットは今のところ放置。しばらくしてから接触を図る」

 

『異議なし』

 

 スレイン法国の最高執行機関が会議をしている部屋の外に一人の女がいた。ルービックキューブで遊ぶ彼女はどこか近寄りがたい気配を発していた。そんな彼女に近づいてきたのは漆黒聖典の隊長だ。

 

「どうも」

 

「ん」

 

 隊長は彼女の隣に並んで立つ。この会議室の中に用がある人間がいるので待っているのだ。

 

「今中で話されてるであろう人物についてですが」

 

「テイマーなんでしょ?なら興味は無いかな」

 

「どうやら力とカリスマでモンスターたちを従えているようです。“占星千里”が見ていたことに気づかれ、実力は分かりませんでしたが、もしかしたらあなたと同格である可能性もあります」

 

「へえ。ぷれいやーなのかしら?」

 

「さあ、それは分かりません。ですが残念でしたね」

 

 隊長の言葉に女性は首をかしげる。自分の望んだ自分よりも強いかもしれない存在が現れたのだ。喜ぶことはあっても残念がる理由は無い。

 

「だって彼女女性ですよ?負けても子供は産めません」

 

「……確かに」

 

 クク、と隊長が笑う。その女性――番外席次も少し楽しそうにルービックキューブを回していた。

 

 

 

 

 

次話開始時点でのカルネ村戦力

 

団長

エンリ・エモット LV20

職業レベル

ファーマー LV1

テイマー LV4

ライダー LV3

コマンダー LV4

ジェネラル LV4

カリスマ(ジーニアス) LV4

 

最強

グ LV58

種族レベル

トロール LV15

ウォートール LV15

トロールキング LV3

職業レベル

ファイター LV10

インペリアルナイト LV10

ソードマスター LV5

 

六強

ハムスケ LV42

種族レベル

ジャンガリアンハムスター(仮) LV33

職業レベル

ファイター LV7

レンジャー LV2

 

ガディ LV31

種族レベル

トロール LV15

ウォートロール LV5

職業レベル

ファイター LV5

ガーディアン LV6

 

ボング LV28

種族レベル

オーガ LV10

オーガロード LV5

職業レベル

モンク LV7

シングルブロウ LV2

キ・マスター LV4

 

ヴァイ LV26

種族レベル

トロール LV13

職業レベル

ファイター LV7

ソードマスター LV6

 

キバクロ LV27

種族レベル

ギガントバジリスク LV27

 

ブレイン LV32

 

亜人種(全体的に5LVほど上昇)

トロール×3  平均LV18

オーガ×7   平均LV12

ゴブリン×14  平均LV8

ホブゴブリン  LV3

バーゲストリーダーLV12

バーゲスト×7 平均LV9

ヴォルフ×8  平均LV7

ドライアード×9 平均LV8

スライム×23  平均LV2

 

人間種

リイジー LV20?

エルフ×3 平均LV17

ネム LV2

農民×20 LV1

 

冒険者のレベル(作者の中でのイメージ)

銅級      平均LV3

鉄級      平均LV5

銀級      平均LV7

金級      平均LV11

白金級     平均LV15

ミスリル    平均LV18

オリハルコン  平均LV23

アダマンタイト 平均LV28

ガガーラン   LV30

ガゼフ     LV32

クレマンティーヌLV34

武王      LV35

瞬殺されちゃったフレアドラゴン LV39

イビルアイ LV55

 

 

 




イビルアイ「そんな怪しい奴頼れるか」
エンリ  「仮面付けてるやつにだけは言われたくない!」

スレイン法国「エンリ・エモットは放置でいいな、うん。なんか怖いし」
隊長「あなたよりも強いかもしれませんよ?」
番外「にっこり」
エンリ「んなわけあるか」

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