真っ黒な問題児も異世界から来るそうですよ?   作:ローダ

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いやーやっとギフト明かせますね。
万を辞して発表しますけど、期待はずれだったならすみません…。


清人のギフト

耀がグリフォンに駆け寄るが、グリフォンは大きく翼を広げてその場を離れた。

耀を威嚇するように翼を広げ、巨大な瞳をぎらつかせるグリフォンを、追いかけるように耀は走り寄った。

数メートルほどの距離で足を止め、まじまじとグリフォンを観察する。

まずは慎重に話しかけた。

 

「え、えーと。初めまして、春日部耀です」

 

「!?」

 

ビクンッ!!とグリフォンの肢体が跳ねた。瞳から警戒心が薄れ、僅かに戸惑いの色が浮かぶ。

耀のギフトが幻獣にも有効である証だった。

 

「ほう……あの娘、グリフォンと言葉を交わすか」

 

白夜叉は感心したように扇を広げた。

耀は大きく息を吸い、一息に述べる。

 

「私を貴方の背に乗せ…誇りをかけて勝負しませんか?」

 

「……何!?」

 

グリフォンの瞳と声に闘志が宿った。

気高い彼らにとって、『誇りを賭けろ』とは、最も効果的な挑発だ。

耀は返事を待たず、続ける。

 

「貴方が飛んできたあの山脈。あそこを白夜の地平から時計回りに大きく迂回し、この湖畔を終着点と定めます。貴方は強靭な翼と四肢で空を駆け、湖畔までに私を振るい落とせば勝ち。私が背に乗っていられたら私の勝ち。……どうかな?」

 

耀は小首を傾げる。

確かに、その条件ならば力と勇気の双方を試すことができる。

 

「娘よ。お前は私に誇りを賭けろと持ちかけた。お前の述べるとおり、娘一人振るい落とせないならば、私の名誉は失墜するだろう。……だがな娘。誇りの対価に、お前は何を賭す?」

 

「命を賭けます」

 

即答だった。あまりに突飛な返答に黒ウサギと飛鳥から驚きが上がった。

 

「だ、駄目です!」

 

「か、春日部さん!?本気なの!?」

 

「貴方は誇りを賭ける。私は命を賭ける。もし転落して生きていても、私は貴方の晩御飯になります。……それじゃ駄目かな?」

 

「ふむ……」

 

耀の提案にますます慌てる飛鳥と黒ウサギ。

それを十六夜と白夜叉が制する。

 

「双方、下がらんか。これはあの娘から切り出した試練だぞ」

 

「ああ、無粋な事はやめておけ」

 

「そんな問題ではございません!!同士にこんな分の悪いゲームをさせるわけには……」

 

「大丈夫だよ」

 

耀が振り向きながら飛鳥と黒ウサギに頷く。その瞳には何の気負いもなく、むしろ勝算ありと思わせるようなものだった。

 

「ファイトだよ!」

 

清人は耀を激励する。

 

「では乗るがいい、若き勇者よ。鷲獅子の疾走に耐えられるか、その身で試してみよ」

 

耀は頷き、手綱を握って背に乗りこむ。

鞍が無いためやや不安定だが、耀はしっかりと手綱を握り締めて獅子の胴体に跨る。

ふと、耀は手袋を片手だけ脱ぎ、鷲獅子の強靭で滑らかな肢体を擦りつつ、満足そうに囁く。

 

「始める前に一言だけ。……私、貴方の背中に跨るのが夢の一つだったんだ」

 

「…そうか」

 

グリフォンは苦笑してこそばゆいとばかりに翼を三度羽ばたかせる。

前傾姿勢を取るや否や、大地を踏み抜くようにして薄命の空に飛び出した。

 

「うわ!?」

 

「きゃあ!?」

 

衝撃で吹き付けられた雪を、両腕で顔を庇うことで防ぐ。

 

「いた!……けど、あれは?」

 

山脈へ遠ざかっていく姿を発見できたが、グリフォンの翼が大きく広がり固定されていることに驚いた。

 

「鷲獅子って、飛ぶのに翼は必要ないのか?」

 

同じことに耀は逸早く気が付き、強烈な圧力に苦しみながらも、感嘆の声を抑えられずに漏らした。

 

「凄い……!貴方は、空を踏みしめて走っている!!!」

 

鷲獅子の巨体を支えるのは翼ではなく、旋風を操るギフト。

彼らの翼は彼らの生態系が、通常の進化系統樹から逸脱した種であることの証だった。

 

「娘よ。もうすぐ山脈に差し掛かるが……本当に良いのか?この速度で山脈に向かえば」

 

「うん。氷点下の風が更に冷たくなって、体感温度はマイナス数十度ってところかな」

 

森林を越え、山脈を跨ぐ前に、グリフォンは少し速度を緩める。

低い気温の中を疾風の如く駆けるグリフォンの背に跨れば、衝撃と温度差の二つの壁が牙を剥き、人間に耐えられるものではない。

これはグリフォンの良心から出た最後通牒。

耀の真っ直ぐな姿勢に思うところあっての言葉だろう。

だが、その心配を耀は微かな笑顔と挑発で返した。

 

「だけど、大丈夫って言ったから。それよりいいの?貴方こそ本気で来ないと。本当に私が勝つよ?」

 

手袋越しに強く手綱を握り締める耀。

 

「よかろう。後悔するなよ娘!」

 

グリフォンも挑発に応じる。

今度は翼も用いて旋風を操る。

遥か彼方にあったはずの山頂が瞬く間に近づき、眼下では羽ばたく衝撃で割れる氷河が見える。

衝撃は人間の身体など一瞬で拉げさせてしまうほどだが、耀は歯を食いしばって耐えていた。

これだけの圧力、冷気。これらに耐えている耀の耐久力は少女を逸脱している。

 

(なるほど……相応の奇跡を身に宿しているという事か……!)

 

グリフォンは背中から聞こえる僅かな吐息に、驚嘆とも困惑ともいえる感情が湧き始め、苦笑を洩らす。

手心不要と悟るや否や、グリフォンは頭から急降下、さらに旋回を交えて耀を振るいかける。

鞍が無い獅子の背中は縋れるような無駄は無く、掴まるものは手綱だけになり、耀の下半身は空中に投げ出されるように泳ぐ。

 

「っ……!!」

 

流石にもう軽口は叩けない。

耀は必死に手綱を握り、グリフォンは必死に振り落とそうと旋回を繰り返す。

 

「「春日部さん!!」」

 

飛鳥と黒ウサギが耀を応援するため叫ぶ。

グリフォンは地平ギリギリまで急降下して大地と水平になるように振り回す。

それが最後の山場だったのだろう、山脈からの冷風も途絶え、残るは純粋な距離のみ。

勢いもそのままに、湖畔の中心まで疾走したグリフォン。

耀の勝利が決定し、飛鳥と黒ウサギが喜んだ瞬間……春日部耀の手から手綱が外れ、耀の小さな体は慣性のまま打ち上げられた。

 

「何!?」

 

「春日部さん!?」

 

安堵を漏らす暇も称賛をかける暇もなく、耀の身体が打ち上げられ、グリフォンと飛鳥は息を呑んだ。

助けに行こうとした黒ウサギの手を十六夜が掴む。

 

「春日部さ……」

 

「待て!まだ終わって……」

 

焦る黒ウサギと止めようとする十六夜。

すると耀の身体が突然動きを変えた。

決着がつき、慣性のまま打ち上げられたとき、耀の脳裏からは、完全に周囲の存在が消えていた。

脳裏にあるのは只一つ、先ほどまで空を疾走していた感動だけが残っている。

 

(四肢で……風を絡め、大気を踏みしめるように……!)

 

ふわっと、耀の身体が翻った。

慣性を殺すような緩慢な動きはやがて彼女の落下速度を衰えさせ、遂には湖畔に触れることなく飛翔したのだ。

 

「……なっ」

 

その場にいた全員が絶句した。

先ほどまでそんな素振りを見せなかった耀が、湖畔の上で風を纏って浮いているのだ。

ふわふわと泳ぐように不慣れな飛翔を見せる耀に、呆れたように笑う十六夜が近づいた。

 

「やっぱりな。お前のギフトって、他の生き物の特性を手に入れる類だったんだな」

 

軽薄な笑みに、むっとしたような声音で耀が返す。

 

「……違う。これは友達になった証。けど、いつから知ってたの?」

 

「ただの推測。お前黒ウサギと出会った時に『風上に立たれたら分かる』とか言ってたろ。そんな芸当は人間にはできない。だから春日部のギフトは他種とコミュニケーションをとるわけじゃなく、他種のギフトを何らかの形で手に入れたんじゃないか……と推察したんだが、それだけじゃなさそうだな。あの速度で耐えられる生物は地球上にいないだろうし?」

 

耀は興味津々な十六夜の視線をフイっと避ける。

そこにグリフォンが近寄った。

 

「見事。お前が得たギフトは、私に勝利した証として使って欲しい」

 

「うん。大事にする」

 

「いやはや大したものだ。このゲームはおんしの勝利だの。……ところで、おんしの持つギフトだが。それは先天性か?」

 

「違う。父さんに貰った木彫りのおかげで話せるようになった」

 

「木彫り?」

 

首を傾げる白夜叉に耀が説明する。

 

「ほほう……彫刻家の父か。よかったらその木彫りというのを見せてくれんか?」

 

頷いた耀は、ペンダントにしていた丸い木彫り細工を取り出し、白夜叉に差し出す。

白夜叉は渡された手の平大の木彫りを見つめて、急に顔を顰めた。十六夜、飛鳥、紫炎もその隣から木彫りを覗き込む。

 

「複雑な模様ね。何か意味があるの?」

 

「意味はあるけど知らない。昔教えてもらったけど忘れた」

 

「……これは」

 

木彫りは中心の空白を目指して幾何学線が延びるというもの。

白夜叉だけでなく、十六夜、黒ウサギも鑑定に参加する。

表と裏を何度も見直し、表面にある幾何学線を指でなぞる。

黒ウサギは首を傾げて耀に問う。

 

「材質は楠の神木……?神格は残っていないようですが……この中心を目指す幾何学線……そして中心に円状の空白……もしかしてお父様の知り合いには生物学者がおられるのでは?」

 

「うん。私の母さんがそうだった」

 

「ならこの図形はこうで……この円形が収束するのは……いや、これは……これは、凄い!本当に凄いぞ娘!!本当に人造ならばおんしの父は神代の大天才だ!まさか人の手で独自の系統樹を完成させ、しかもギフトとして確立させてしまうとは!これは正真正銘生命の目録と称して過言ない名品だ!」

 

「系統樹って、生物の発祥と進化の系譜とかを示すアレ?でも母さんが作った系統樹の図は、もっと樹の形をしていたと思うけど」

 

「うむ、それはおんしの父が表現したいモノのセンスが成す業よ。この木彫りをわざわざ円形にしたのは生命の流転、輪廻を表現したもの。再生と滅び、輪廻を繰り返す生命の系譜が進化を遂げて進む円の中心、すなわち世界の中心を目指して進む様を表現している。中心が空白なのは、流転する世界の中心だからか、世界の完成が未だに視えぬからか、それともこの作品そのものが未完成の作品だからか。……うぬぬ、凄い。凄いぞ。久しく想像力が刺激されとるぞ!実にアーティスティックだ!おんしさえよければ私が買い取りたいぐらいだの!」

 

「ダメ」

 

熱弁した白夜叉だったが、耀はあっさり断って木彫り細工を取り上げた。

白夜叉は、お気に入りの玩具を取り上げられた子供のようにしょんぼりした。

 

「で、これはどんな力を持ったギフトなんだ?」

 

十六夜に問われ、白夜叉は気を取り戻すが、首を捻った。

 

「それは分からん。今分かっとるのは異種族と会話できるのと、友になった種から特有のギフトを貰えるということぐらいだ。これ以上詳しく知りたいのなら店の鑑定士に頼むしかない。それも上層に住む者でなければ鑑定は不可能だろう」

 

「え?白夜叉様でも鑑定できないのですか今日は鑑定をお願いしたかったのですけど」

 

黒ウサギの要求にゲッ、と気まずそうな顔になる白夜叉。

 

「よ、よりにもよってギフト鑑定か。専門外どころか無関係もいいところなのだがの」

 

ゲームの報酬として依頼を無償で引き受けるつもりだったのだろう。

白夜叉は困ったように白髪を掻きあげ、着物の裾を引きずりながら四人の顔を両手で包んで見つめる。

 

「どれどれ……ふむふむ……うむ、四人ともに素養が高いのは分かる。しかしこれではなんとも言えんな。おんしらは自分のギフトをどの程度に把握している?」

 

「企業秘密」

 

「右に同じ」

 

「以下同文」

 

「内緒です」

 

「うおおおおい?いやまあ、仮にも対戦相手だったものにギフトを教えるのが怖いのは分かるが、それじゃ話が進まんだろうに」

 

「別に鑑定なんていらねえよ。人に値札張られるのは趣味じゃない」

 

ハッキリと拒絶するような声音の十六夜と、同意するように頷く飛鳥と耀、清人。

困ったように頭を掻く白夜叉は、突如妙案が浮かんだとばかりにニヤリと笑った。

 

「ふむ。何にせよ主催者として、星霊のはしくれとして、試練をクリアしたおんしらには恩恵を与えねばならん。ちょいと贅沢な代物だが、コミュニティ復興の前祝いとしては丁度良かろう」

 

白夜叉がパンパンと拍手を打つ。

すると十六夜・飛鳥・耀・清人の四人の眼前に光り輝くカードが現れた。

 

コバルトブルーのカードに逆廻十六夜・ギフトネーム“正体不明(コード・アンノウン)

 

ワインレッドのカードに久遠飛鳥・ギフトネーム“威光”

 

パールエメラルドのカードに春日部耀・ギフトネーム“生命の目録(ゲノムツリー)”“ノーフォーマー”

 

ランプブラックのカードに多々良清人・ギフトネーム“罪深き悪魔(シンフルデーモン)”“絶対不可侵(セイクリッドネス)”“聖なる癒し”

 

それぞれの名とギフトが記されたカードを受け取る。

黒ウサギは驚いたような、興奮したような顔で四人のカードを覗き込んだ。

 

「ギフトカード!」

 

「お中元?」

 

「お歳暮?」

 

「お年玉?」

 

「金か?金なのか!?」

 

「ち、違います!というかなんで皆さんそんなに息が会っているのです!?ていうか清人さんは……。…コホン。このギフトカードは顕現しているギフトを収納できる超高価なカードですよ。耀さんの生命の目録だって収納可能で、それも好きな時に顕現できるのですよ!」

 

「つまり素敵アイテムってことでオッケーか?」

 

「だからなんで適当に聞き流すんですか!あーもうそうです、超素敵アイテムなんです!」

 

「我らの双女神の紋のように、本来はコミュニティの名と旗印も記されるのだが、おんしらは”ノーネーム”だからの。少々味気ない絵になっているが、文句は黒ウサギに言ってくれ」

 

白夜叉は自分のカードを取り出し説明を進める。

 

「ふぅん……もしかして水樹って奴も収納できるのか?」

 

十六夜は何気なく黒ウサギの持つ水樹にカードを向ける。

すると水樹は光の粒子となってカードの中に呑み込まれた。

見ると十六夜のカードは溢れるほどの水を生み出す樹の絵が差し込まれ、ギフト欄の“正体不明”の下に“水樹”の名前が並んでいる。

 

「おお?これ面白いな。もしかしてこのまま水を出せるのか?」

 

「出せるとも。試すか?」

 

「だ、駄目です!水の無駄遣い反対!その水はコミュニティのために使ってください!」

 

チッ、とつまらなそうに舌打ちする十六夜。黒ウサギはまだ安心できないような顔でハラハラと十六夜を監視している。

白夜叉は両者の様子を高らかに笑いながら見つめていた。

 

「そのギフトカードは、正式名称をラプラスの紙片、即ち全知の一端だ。そこに刻まれるギフトネームとはおんしらの魂と繋がった恩恵の名称。鑑定はできずともそれを見れば大体のギフトの正体が分かるというもの」

 

「へえ?じゃあ俺のはレアケースなわけだ?」

 

十六夜の声に、ん?と白夜叉が彼のカードを覗き込む。

そこには確かに正体不明の文字が刻まれている。

ヤハハと笑う十六夜とは対照的に、白夜叉の表情の変化は劇的だった。

 

「……いや、そんな馬鹿な」

 

パシッと、表情を変えた白夜叉がカードを取り上げる。

真剣な眼差しでカードを見る白夜叉は、不可解とばかりに呟く。

 

「正体不明だと……?いいやありえん、全知たるラプラスの紙片がエラーを起こすはずなど」

 

「何にせよ、鑑定は出来なかったってことだろ。俺的にはこの方がありがたいさ」

 

パシッと十六夜がカードを取り上げる。

だが、白夜叉は納得できないように怪訝な瞳で十六夜を睨む。

それほどギフトネームが正体不明とはありえないことだった。

 

(そういえばこの童……蛇神を倒したと言っていたな。種の最高位である神格保持者を人間が打倒する事はありえぬ。強大な力を持っていることは間違いないわけか。……しかしラプラスの紙片ほどのギフトが正常に機能しないとはどういう……)

 

『ギフトが正常に動作しない』そこで白夜叉の脳裏に一つの可能性が浮上した。

 

(ギフトを無効化した……?いや、まさかな)

 

浮上した可能性を、白夜叉は苦笑と共に切り捨てた。

修羅神仏の集う箱庭で、無効化のギフトは珍しくない。

だが十六夜のように強大な奇跡を身に宿す者が、奇跡を打ち消す御技を宿しては大きく矛盾する。

それに比べれば、ラプラスの紙片に問題があるという結論の方がまだ納得できる。

そう考えていると清人が白夜叉に話しかけた。

 

「なあ。俺の種族が載ってるんだが、ギフトなのか?これ」

 

「なんじゃと」

 

今度は清人のカードを覗き込む白夜叉。

すると驚いた様に清人に言った。

 

「おんし。…人間ではないのか?」

 

「どもー。悪魔っ子です」

 

これには他の四人も目を見開いた。

 

「やっぱりあなた人間じゃなかった」

 

「いやーなんかやっぱさ。話しづらいじゃん?」

 

「…確かにそうね。別に責めたりはしないから安心して、清人君」

 

「そいつはありがたいな」

 

「へー…。悪魔ってことは魔界かどっかにいたのか?」

 

「いや、普通に暮らしてたよ。人間として。親父が戸籍とか適当に作ってくれたし。……もういないけど」

 

「それにおんし…。このギフト、絶対不可侵と聖なる癒し、か。どういう力なのだ?」

 

「フッフッフ。説明しよう!絶対不可侵とはその名の通り、自分以外の存在によって絶対に害されない(・・・・・・・・)という超強力な防御能力なのだ!そして聖なる癒し。これは1日に1回しか使えない代わり、どんな傷でも病気でも治してしまう。超強力な治癒能力なのだ。どうだ!すごいだろう!」

 

「うん、分かったから。凄いのは分かったからちょっと静かにして」

 

「…すいません」

 

「…いや、これは…これは凄いな。凄いとしか言いようがない。こんな強力なギフトを持った者など久しく見なかったぞ!」

 

「ほ、本当ですか白夜叉様!や、やったのですよ!そんなに強力な人がうちのコミュニティに入ってくれるなんて!」

 

「確かに。このギフトは凄いな。…だから絶対に負けない自信があったのか」

 

「いやー照れるなー」

 

みんなに凄いと褒められて顔が緩みまくる清人。

そうして六人と一匹は暖簾の下げられた店前に移動し、耀は一礼した。

 

「今日はありがとう。また遊ぼう」

 

「あら、駄目よ春日部さん。次に挑戦するときは対等の条件で挑むものだもの」

 

「ああ。吐いた唾を飲み込むなんて、格好付かねえからな。次は渾身の大舞台で挑むぜ」

 

「その時は本気でやり合うとしようか」

 

「ふふ、よかろう。楽しみにしておけ。………ところで」

 

白夜叉は微笑を浮かべるがスっと真剣な表情で俺達を見てくる。

 

「今さらだが、一つだけ聞かせてくれ。おんしらは自分達のコミュニティがどういう状況にあるか、よく理解しているか?」

 

「ああ、名前と旗の話か?それなら聞いたぜ」

 

「なら、魔王と戦わねばならんことも?」

 

「聞いてるわよ」

 

「………では、おんしらは全てを承知の上で黒ウサギのコミュニティに加入するのだな?」

 

横目で黒ウサギがを見てみると黒ウサギの目は俺達から視線をそらしていた。

 

「そうよ。打倒魔王なんてカッコいいじゃない」

 

「カッコいいで済む話ではないのだがの………全く、若さゆえなのか。無謀というか、勇敢というか。まあ、魔王がどういうものかはコミュニティに帰ればわかるだろ。それでも魔王と戦う事を望むというなら止めんが………そこの娘二人。おんしらは確実に死ぬぞ」

 

予言するように断言された耀と飛鳥は言い返そうとするが言葉が見つからないのか、それとも同じ元魔王の白夜叉の威圧感に黙ってしまう。

 

「これでも伊達に長生きしておらぬ。嵐に巻き込まれた虫が無様に弄ばれて死ぬ様は、いつ見ても悲しいものだ」

 

「ご忠告感謝するわ。でも、それを断言するのはまた今度本気のゲームをしに行った時にしてくれないかしら?」

 

「ふふ、望むところだ。私は三三四五外門に本拠を構えておる。いつでも遊びに来い。………ただし、黒ウサギをチップに賭けてもらうがの」

 

「嫌です!」

 

「望むところだ!」

 

「望まないでください!」

 

黒ウサギが即答で返してくる。白夜叉は拗ねたように唇を尖らせた。

 

「つれない事を言うなよぅ。私のコミュニティに所属すれば生涯を遊んで暮らせると保証するぞ?三食首輪付きの個室も用意するし」

 

「三食首輪付きってソレもう明らかにペット扱いですから!って、十六夜さんも清人さんも『その手があったか!?』という顔しないでください!?」

 

そうして三人は無愛想な女性店員に見送られながらサウザンドアイズ二一〇五三八〇外門支店を後にした。




どうでしたか?
基本的に清人君は無敵です。ただ、十六夜には負けるかも。ギフト消されちゃうから仕方ないですね。
ガルド戦はほんとにサクッと終わらせます。慈悲はない。
感想や評価を付けていただければ幸いです。

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