真っ黒な問題児も異世界から来るそうですよ?   作:ローダ

2 / 7
えー正直に言いますと今回の回は原作とほとんどそのままです。
退屈かもしれませんが、ご了承ください。


箱庭の世界

「で、呼び出されたはいいけどなんで誰もいねえんだよ。この状況だと、招待状に書かれていた箱庭とかいうものの説明をする人間が現れるもんじゃねえのか?」

 

「そうね。なんの説明もないままでは動きようがないもの」

 

「……。この状況に対して落ち着きすぎているのもどうかと思うけど」

 

「春日部もな」

 

(全くです)

 

黒ウサギはこっそりツッコミを入れた。

もっとパニックになってくれれば飛び出しやすいのだが、場が落ち着きすぎているので出るタイミングを計れないでいた。

そのとき、ふと十六夜がため息交じりに呟いた。

 

「仕方がねえな。こうなったら、そこに隠れている奴にでも話を聞くか?」

 

物陰に隠れていた黒ウサギは心臓を捕まれたように飛び跳ねた。

 

「なんだ、あなたも気づいていたの?」

 

「当然。かくれんぼじゃ負けなしだぜ?そっちの二人も気づいてたんだろ?」

 

「風上に立たれたら嫌でもわかる」

 

「野生の勘的な?」

 

「……へえ?面白いなお前ら」

 

軽薄そうに笑う十六夜の目は笑っていない。理不尽な召集を受けた四人は腹いせに殺気の籠もった冷ややかな視線を出てきた黒ウサギに向ける。

 

「や、やだなあ皆様。そんな狼みたいに怖い顔で見られると黒ウサギは死んじゃいますよ?ええ、ええ、古来より孤独と狼はウサギの天敵でございます。そんな黒ウサギの脆弱な心臓に免じてここは一つ穏便に御話を聞いていただけたらうれしいでございますヨ?」

 

「断る」

 

「却下」

 

「お断りします」

 

「やだ」

 

「あっは、取りつくシマもないですね♪」

 

バンザーイ、と降参のポーズをとる黒ウサギ。

と、耀が不思議そうに黒ウサギの隣に立ち、黒いウサ耳を根っこから鷲掴み、

 

「えい」

 

「フギャ!」

 

力いっぱい引っ張った。

 

「ちょ、ちょっとお待ちを!触るまでなら黙って受け入れますが、まさか初対面で遠慮無用に黒ウサギの素敵耳を引き抜きに掛かるとは、どういう了見ですか!?」

 

「好奇心の為せる業」

 

「自由にも程があります!」

 

「へえ?このウサ耳って本物なのか?」

 

今度は十六夜が右から掴む。それに続いて飛鳥も左から。

 

「ちょ、ちょっと待―――」

 

最後の希望とばかりに清人に目を向ける黒ウサギ。

それに対して清人は、

 

「グッドラック!」

 

彼は平等だった。

 

 

 

 

 

「あ、あり得ない。あり得ないのですよ。まさか話を聞いてもらうために小一時間も消費してしまうとは。学級崩壊とはきっとこのような状況を言うに違いないのデス」

 

「いいからさっさと進めろ」

 

半ば本気の涙を瞳に浮かばせながらも、黒ウサギは話を聞いてもらえる状況を作ることに成功した。

四人は黒ウサギの前の岸辺に思い思いに座り込み、彼女の話を聞くだけ聞こうという程度には耳を傾けている。

黒ウサギは気を取り直して咳払いをし、両手を広げて、

 

「それではいいですか、皆様。定例文で言いますよ?さあ、言います!ようこそ箱庭の世界へ!我々は皆様にギフトを与えられたものたちだが参加できる『ギフトゲーム』への参加資格をプレゼントさせていただこうかと召還いたしました!」

 

「ギフトゲーム?」

 

「そうです!既に気づいていらっしゃるでしょうが、皆様は皆普通の人間ではございません!その特異な力は様々な修羅神仏から、悪魔から、精霊から、星から与えられた恩恵でございます。『ギフトゲーム』はその恩恵を用いて競い合う為のゲーム。そしてこの箱庭の世界は強大な力を持つギフト保持者がオモシロオカシク生活できる為に造られたステージなのでございますよ!」

 

「……俺は普通の人間どころか人間ですらないがな」

 

清人の呟きには気付かず両手を広げて箱庭をアピールする黒ウサギ。

飛鳥は質問するために挙手した。

 

「まず初歩的な質問からしていい?貴女の言う我々とは貴女を含めた誰かなの?」

 

「YES!異世界から呼び出されたギフト保持者は箱庭で生活するにあたって、数多とあるコミュニティに必ず属していただきます♪」

 

「嫌だね」

 

「属していただきます!そして『ギフトゲーム』の勝者はゲームの主催者が提示した商品をゲットできると言うとってもシンプルな構造となっております」

 

今度は、耀が控えめに挙手した。

 

「……主催者って誰?」

 

「様々ですね。暇を持て余した修羅神仏が人を試すための試練と称して開催されるゲームもあれば、コミュニティの力を誇示するために独自開催するグループもございます。特徴として前者は自由参加が多いですが主催者が修羅神仏なだけあって凶悪かつ難解なものが多く、命の危険もあるでしょう。しかし、見返りは大きいです。後者は参加のためにチップを用意する必要があります。参加者が敗退すればそれらは全て主催者のコミュニティに寄贈されるシステムです」

 

「後者はかなり俗物ね」

 

清人も声を上げる。

 

「ゲーム自体はどうやって始めるんだ?」

 

「コミュニティ同士のゲームを除けば、それぞれの期日内に登録していただければOK!商店街でも商店が小規模のゲームを開催しているのでよかったら参加していってくださいな」

 

飛鳥は黒ウサギの発言に片眉をピクリと上げる。

 

「……つまりギフトゲームとはこの世界の法そのもの、と考えてもいいのかしら?」

 

お?と驚く黒ウサギ。

 

「ふふん?中々鋭いですね。しかしそれは八割正解二割間違いです。我々の世界でも強盗や窃盗は禁止ですし、ギフトを用いた犯罪などもってのほか!そんな不逞の輩は悉く処罰します……が、しかし!先ほどそちらの方がおっしゃった様に、ギフトゲームの本質は勝者が得をするもの!例えば店頭に置かれている商品も、店側が提示したゲームをクリアすればただで入手することも可能だと言うことですね」

 

「そう。中々野蛮ね」

 

「しかし主催者全て自己責任でゲームを開催しております。つまり奪われるのが嫌な腰抜けは初めからゲームに参加しなければいいだけの話でございます」

 

黒ウサギは一通りの説明を終えたと思ったのか、一枚の封書を取り出した。

 

「さて皆さんの召喚を依頼した黒ウサギには、箱庭の世界における全ての質問に答える義務がございます。が、それら全てを語るには少々お時間がかかるでしょう。ここから先は我らのコミュニティでお話させていただきたいのですが……よろしいです?」

 

「待てよ、俺がまだ質問してないだろ」

 

それまで黙っていた十六夜が威圧的な声を上げる。

ずっと刻まれていた軽薄な笑顔が無くなっていること、視線が鋭さを増したことに気がついた黒ウサギは、構えるように聞き返した。

 

「…どんな質問でしょうか?ルールですか?ゲームそのものですか?」

 

「そんなのはどうでもいい。俺が聞きたいのはたった一つ、手紙に書いてあったことだけだ」

 

十六夜は視線を黒ウサギから外し、他の三人を見回し、巨大な天幕によって覆われた都市に向けた。

彼は何もかもを見下すような視線で一言、

 

「この世界は……面白いか?」

 

他の三人も無言で返事を待つ。

彼らを呼んだ手紙にはこう書かれていた。

 

『家族を、友人を、財産を、世界の全てを捨てて箱庭に来い』と。

 

それに見合うだけの催し物があるのかどうかが四人にとって重要なことであった。

 

黒ウサギは一瞬目を瞬かせると、笑顔で言った。

 

「……YES。『ギフトゲーム』は人を超えたものたちだけが参加できる神魔の遊戯。箱庭の世界は外界より格段に面白いと、黒ウサギは保証いたします♪」

 




読んで頂いた方はありがとうございました。
次の話は頑張ってギフト鑑定まで進めます。
感想や評価を付けていただければ幸いです。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。