〜前回のあらすじ〜
口うるさい閻魔様の事、四季映姫は今日も説教せんと幻想郷を回り、そのついでにと勇人の功績を労うを彼の元へ向かう。しかし、そこにいたのは…………小さくなっていた勇人だった。
どうしてこうなったって?…………幻想郷ではよくある事だ。
というわけで、諸行有常記ー第79話ーのはじまりはじまり〜
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「…………一応、聞き直しますが、貴方が碓氷勇人ですね?」
「ええ、正真正銘碓氷勇人ですが」
「息子さんでは…………」
「無いです。そもそも、歳を考えたらおかしいと思いますが…………それに俺は幻想郷に来てまだ日が浅いんですからね?」
「ですよね…………少し思考が安直過ぎましたね」
「で、用件は?」
「ああ、そうでした」
とポンと手を打つ。まぁ、こんな姿なら間違われてもしょうがないと言えばそうなるな。
それにしても…………閻魔様が俺に何の用なのか。いきなり、「貴方は地獄行きです」とか言われたらビビるぞ。
「碓氷勇人、貴方は日々仕事に熱心に勤め、身を削ってまで人里はたまた幻想郷の平和への貢献しています。まさに貴方は善行を積めていると言えるでしょう」
「は、はぁ…………」
「この幻想郷では貴方のような人程熱心に善行を積み重ねている人はいません…………これからも善行を積み重ねてください」
「あ、ありがとうございます」
げ、幻想郷の人達はみんな自由だからな…………閻魔様の説教なんて聞いてまい。
「しかし、貴方は少々1人で物事を背負いがちです。もっと、人を頼りなさい。そうすれば貴方はより善行を行えます」
「肝に銘じておきます…………」
うーん…………これでも人を頼っているつもりなのだがな…………それでも背負いこんでいるように見えるのか。
「説教はこれで。さて、次は貴方の番です」
「え、俺の番?」
え、閻魔様に説教をしろと?いやいや、相手の素性すら分かってないのにどうしろと?
「その体についてですよ。どうして小さくなったのか、それが聞きたいのです」
「あ、ああ…………この体の事ですか…………」
まぁ、別に言っても減るもんじゃないし言ってもいいか。
「そうですね、これは2日前の話なのですが…………」
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〜2日前ー永遠亭ー〜
「うー…………気持ち悪りぃ…………」
俺は今、人生初の二日酔いになっている。
『ヘブン・クラウド』の件はその後、『浮遊城』の出現による怪奇事件としてまとめられ終わりを告げた。
そして、京谷たちの世界にお呼ばれされ宴会が開かれどんちゃん騒ぎをしてきたのだが…………戻ってきたら戻ってきたでこちらでも宴会が開かれた。
異変解決の功労者としてもてなされたわけなのだが…………二夜連続の宴会である。向こうでも嫌という程酒を飲み、こちらでもみんなから酒を勧められ断れなかった。
多分、俺は酒が強い方なのだと思うのだが…………それでも限度と言うのはある。結果、今のような状態に陥ったわけだ。せめての救いは飲んだ記憶がある事か。
「あ゛ー…………」
頭がスプーンでグチャグチャに混ぜられているようだ…………そういえば、脳には痛覚がないらしい。まぁ、実際にやって「痛いですかー?」と聞いて返事でもしたのならそいつは人間じゃない。
兎に角、頭が痛い。吐き気がする。何も胃に入れる気がしない。されど、喉は渇く。…………これはヒドイ。
流石に今の状態ではいけないと、永遠亭に何か薬を貰いに覚束ない足で来たわけである。
「ウプッ…………って、もう出るもん無いかアァァァ!?」
足元が陥没した!?と思った頃には尻餅をついていた。
「……ッ、もうなんだよ」
「あ!ようやく、落とし穴に引っかかったマヌケが来たようね」
二日酔いのせいかこんな原始的な罠にまで引っかかってしまうとは…………よくここまで生きて来れたな。
さっさと出r…………案外深いじゃねぇか…………霊力は今使いたくないのだが…………ここでくたばる方がよっぽど嫌なので浮いて脱出する。
「あー…………頭が割れそう…………」
「おマヌケさんは誰かなー…………って、勇人!?」
「んぁ?やっぱり、あんたか…………てゐ」
幸運の畜生兎こと、因幡てゐ。見ての通り人を欺く事を好む兎だ。永遠亭に行く度に罠を仕掛けられたのだが…………いかんせん、原始的な方法ばかりなので看破するのは簡単だった。しかし、今は二日酔いの状態である。そんなの意識している暇などない。
「まさか…………あなたが引っかかるなんて…………」
「今は二日酔いなんだ。ほっといてくれ…………」
「へぇ〜…………二日酔い、ね」
「ああ、そうだ。今も頭ん中が蜘蛛の巣だからのような感じだから」
「あ、そう。それじゃあ」
脱兎のごとく竹林に消えていった。追いかける気力も体力もないので構わず永遠亭に向かう。
「二日酔い、ね。なら、あの薬ね」
「ありがとうございます…………」
「これは相当飲まされたようね。ウドンゲも潰れて帰って来たし、酔いの勢いで大人の階段の一つや二つ上ったのかしら?むしろ、すっ飛ばしたかしら?」
このお方は何を言っている?まだ、そんな階段上ってません。
「安心してください。悪酔いはしてないので。記憶もしっかりありますし」
「あら、面白くないわね。ま、薬を取ってくるから少し待ちなさいな」
「はい」
と言い、永琳さんは席を外した。彼女入れ替わる形で輝夜が診察室に入って来た。
「気分は?」
「最悪だ…………吐き気がするし、頭が痛いし、てゐの罠にも引っかかるし」
「あら、災難ね」
「そもそもあんたは…………って、輝夜か」
「これは重症ね。いつも、騙す前に見破ってしまうくせに今回は落とし穴にすら引っかかるなんて」
「だから、最悪なのだよ…………あー、吐きそう」
「女の子の前で吐かないでよね」
「分かっている…………」
「(本当に今日の勇人は隙だらけね。私の後ろにいるてゐにも気づかないだなんて)」
「(そう言ったでしょ?姫様)」
「(で、この試験管を投げればいいの?)」
「(そうです。その薬は鈴仙の部屋から出て来た媚薬です)」
「(鈴仙は何やってんのやら…………ま、いつも騙されない勇人には悪戯を、ね?)」
「(姫様も悪ですね〜).」
「(あんたもね)」
「勇人〜」
「んぁ?なんd「おーっと手が!」
パシッ!
「な!?キャッチした!?」
「なんだ?これは…………」
「おーっと、足が滑った!」
ドスッ!
「ゴフゥ!と、飛び蹴り!?」
い、いや、なんで輝夜は試験管を投げ、てゐは飛び蹴りを!?
ただでさえフラフラなのに飛び蹴りを腹に食らった俺は試験管なんかに注意を払うわけもなく…………
スルッ
手から滑り落ち、位置エネルギーによって地面へと叩きつけられる。
パリーン!!
「ゴホッゴホッ!?け、煙!?」
「あ、あれ?媚薬じゃないの?」
「わ、分からない…………」
「ゴホッゴホッ…………何をした?」
「い、いやぁ…………うっかり手が滑って、ね?」
「わ、わたしも足が、ね?」
「言ってる事とやってる事が一致してねぇぞ」
全く…………煙はいつまで出るんだ?
あ、ようやく引き始めた…………
「勇人、二日酔いの薬…………よ?」
「あ、ありがとうござ…………あれぇ?」
永琳さんってこんなに背が高かったか?こんな見上げるぐらいに…………あれ?俺よりも小さいはずの輝夜よりも小さいぞ?いや、てゐと同じ目線にあるのか?
「な、なんじゃこりゃああ!!」
ダボダボのカッターシャツに、ずり落ちたズボン。そして、目線が低くなっている。すなわち
「小さくなってんじゃねええかあああ!」
「あらまぁ…………」
「テヘッ♫」
「テヘッ♫じゃねぇよ、輝夜」
「悪りぃ、悪りぃ」
「お前ら…………」
久々にここまで腹がたったぞ。
「次から次へと…………俺には平穏な日が来ないのか!?」
「それで、永琳、いつになったら戻るの?」
「分かりませんよ。これは私が作ったものではですから。成分の分析をしてから解毒剤を作るから…………しばらくはかかるわね」
「っというわけでしばらくはその体ね」
「Oh,Jesus!!」
「ま、その体だから見えるものがあるかもしれないわよ」
「それは永琳さんのいう通りかもしれませんね…………」
「そうよ!私達のお陰よ?」
「感謝してくれてもいいのよ?」
「おう、2人ともくたばれや」
何が感謝してくれてもいいのよ、だ。少しは反省しやがれ。
「あー、服はどうするか…………」
「それなら、鈴仙の部屋から子供用の服があったわよ、ほら」
「え?」
「そういえば、この薬は?」
「鈴仙の部屋からよ」
「「「「……………………」」」」
「さ、さっさと着替えて家に戻りなさい」
「お、おう。そうするぜ…………」
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「…………というわけです」
「これまた…………災難でしたね。ところで鈴仙はなn「それ以上は言わないでください」そ、そうですね」
はぁ…………思い出しただけで腹がたってきた。だいたい何をもってしてあの薬を投げたのやら…………
と玄関から戸を叩く音がする。
「はいはい、ちょっと待ってくれ…………」
ちょっとした距離も少々長く感じてしまう。この体のせいで眠くなる時間も早いし、運動能力も低いし…………
「どちら様で…………す……………………か」
「…………え?」
扉を開けた先には早苗がいた。