〜『人里』〜
私達は今、リグルさんにお話を伺おうとリグルさんを探しています。
もうすでにあの"黒い津波"は無くなりましたがそれでも、何かあっている事だけは確かです。
「それにしてもあの城…………幻想郷とはかなり不釣り合いよね」
「ああ…………西欧風の城だからな」
「幻想郷に出現したのはもう忘れられた存在だから、と見ても問題ないでしょうか?」
「多分、そうだろう」
と話しているとリグルさんを見つけました。
「あ、先生じゃないですか」
「おお、リグル。いきなりで悪いのだが少し聞きたい事がある」
「そうですか。でも、その前に今問題があるんですよ」
「なんだ?」
「虫が全く私の言う事を聞かないんです。そもそも、皆んなどっかに行っちゃいました」
蟲を操る能力があるリグルさんが操らなくなっているだなんて…………
「それで聞きたい事は?」
「いや…………その虫の事を聞こうとしたのだが…………」
「す、すいません…………」
「いや、君は悪くない。何か異変があったらすぐに教えてくれ」
「分かりました」
「結局、有益な情報は得られなかったわね」
「うむ…………色んな所から聞き出すしか無いようだ」
「そうですね…………」
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〜ヘブン・クラウド 4F〜
迫り来る『黒い津波』から何とか逃れた俺らはさらに上へと向かおうとしていた。
そして、歩を進めようとした時
「勇人、妖夢……少しだけ待ってくれ」
京谷に呼び止められた。何かあったのか?
「?どうした?」
振り向くと、京谷は咲夜の助けを借りて壁にもたれ掛かり、座っていた。流石に疲労がきたのか?
「お前らに……話さなきゃいけねぇ事があってな」
真面目なトーンで言い、空気が変わる。
「……先ず、俺の正体からだな……俺の名は『五十嵐京谷』……だが、普通の人間じゃあない……『DIO』と『ジョナサン・ジョースター』の『生まれ変わり』だ」
「!!?」
『普通の人間』では無いと言う事には驚きはしない。この幻想郷においてそんな事で一々驚いては話にならない。しかし、『DIO』と『ジョナサン・ジョースター』の生まれ変わりという事には驚かざるえない。
「驚いたろ?でも、まだ本題じゃねぇ。俺が勇人の能力に対し使った能力の事についてだ。俺が話してぇ事は」
と言いながらも、京谷の息づかいは荒い。ここまで息が荒くなると、疲労では無さそうだ。
「勇人よ。京谷と対峙した時の不思議な現象、覚えておるじゃろ?」
「!?じいさん……」
そんな様子の京谷を察してか、じいちゃんが代弁する。
「あ、あぁ。覚えてる」
「京谷から聞いた。あの時の能力は【真実を上書きする能力】、その状態の自分か、あの守護霊の手や拳に触れれば、望む通りの真実に変える事ができるのじゃ」
「な、成る程……だからあの時、俺の能力が効かなかったのか……でも、それだと」
「うむ、勿論代償も大きい。何せ『本来使うには魂を使わなければならない』のじゃからな」
「!!!?」
『魂を使う』だと…………?確かに強力な能力ほど代償がでかいという事が多い。俺とて不変化の能力を使い過ぎると体が能力の使用の負担に耐え切れなくなり崩壊し始める。しかし、それは命を削っているわけでは無い。少々崩壊してもケガというレベルで済ます事が出来る。
「そして、魂の磨り減った状態がこれじゃ。本来であれば動く事なんぞ出来わせん。わしが神力を与え、何とか持たせておるだけで精一杯なのじゃ。証拠に途中で倒れて血反吐を吐きおったからの」
「説明ご苦労さん……血反吐はねぇと思ったがな」
「確かに……なッ!!っとと」
咲夜の助けを借りながら立つ京谷。最早限界のようだ。
「………京谷」
「……どうした?さっさと行「お前は下りてくれ」……」
「勇人さん…………」
「多分、俺との戦いで……使いすぎちまったんだろ?だったら、これは俺の責任だ。お前が行く必要は無い、これ以上魂を磨り減らすな」
そもそも、この問題はこの幻想郷に住む俺らの問題だ。全く以って関係のない者が命をすり減らしてまで解決しようとする必要は無い。
「勇人……お前……」
「頼む……下りてく「バカかお前」……へっ?」
唐突な罵倒に驚く。
「このヘブン・クラウドは俺たちが1度経験した物。だったら、その関係者が行かねぇのは色々と不味いだろぉが」
そんな理由、こじつけでしか無い。何故ゆえここまで協力しようとするのか?自分の命を優先すべきだ。
「だ、だけどよ!!俺はお前に「それ以上はよしてくれ」ッ……!!」
言葉を遮られ、唇を噛む。
「これは俺が選んだ道だ。んで、これは俺の末路でもある。だったら、待ち構えてる因縁放ってゆっくりなんぞ暮らせるか」
「因縁……とは?」
「……ここに来て漸く疼いたのさ、俺たちの因縁がな」
そう言い、京谷は襟の後ろを引っ張り、首元にある"星の痣"を見せた。
「俺は行くぜ。あの別世界の彼奴を殺しに行く」
京谷は咲夜の助けを借りながら階段を上って行った。
「…………分からない」
「勇人さん?」
「どうして…………あそこまで…………命を削ってまで向かおうとするんだ?そもそも、関係のない事のはず…………」
「勇人」
何故だ?どうして、其処まで強いんだ?自分より心も力も強い…………
「勇人!!」
「!?」
じいちゃんに一喝され我に戻る。
「…………お主、何で京谷があそこまでするのかはとっくに分かっているはずじゃ」
「…………全然」
「はぁ…………お主は京谷が"強い"からあそこまで出来ると思ってるのじゃろ?」
「…………」
「そんな理由じゃったら誰だってあんな事出来るわい」
「確かに"強さ"は重要じゃ。しかし、命を削るのに強さだけでは成しえない。確かな信念を持つ事が出来るから出来るのじゃ」
「信念…………俺には…………」
「ありますッ!勇人さんには確かに『信念』があります!」
「妖夢…………」
「勇人さんには皆んなを守るという信念を持ってるんじゃないんですか!?」
「……………『信念』だけでは成しえないこともある」
「はぁ…………お主は自分を過小評価しすぎじゃ。それともあれか?力が無いからという理由で守ろうともせずただ指を咥えて見てるだけか?」
「!?」
「もう、分かったじゃろ。ほれ、行くぞ」
「あ、ああ…………」
でも、信念があっても守れなかったらどうする?どうするんだ?
京谷達を追いかけ次の階に出ると、そこには二階と三階で見た、ゾンビや虫がゾロゾロいた。
しかし、それとは比べ物にならない存在感を放つ者が奥にいた。ーーあいつが京谷の因縁か…………
兎に角、俺はその道のりにいる魔物達を撃ち抜く。後ろからゾンビが飛び掛かってくるが見もせず撃ち抜く。妖夢も魔物達を斬っていく。
今は京谷の進む道を作るのみだ。
数え切れない量の魔物達を倒していくにつれて、霊力も底が見え始める。それに銃の調子も悪くなってきた。弾のブレが生じてきた。
やっとの思いで禍々しい存在感を放つ者のいる部屋の前までの通路を確保できた。そして、遅れて京谷が来る。
京谷達と共に通路を進み大きな部屋に出た。
「ほぉ……ここまで来るか」
今回の元凶であろう者がいた。漫画では見る事なんて何ともなかったのだが…………今こうしてリアルで見ると…………直視できない。直視したら引き込まれるーーそんな錯覚に陥る。
そんな禍々しい、かつ人を魅了するような存在感を放つ者ーーDIOがいた。
「……そこのメイドと、ジョースターの血縁の者には効かぬらしいなぁ」
「ご生憎様、俺は………!!!」
と京谷からもDIOと同じようなオーラに変わる。
「貴様……このDIOと同じ気質を持つとは……何者だ?」
「ただのスタンド使いだ」
「フッ……ただのスタンド使いが、このDIOと同じ気質を扱える時点で普通の意味を持たぬがな」
「言えてるねぇ、んなこたぁどうでも良いがよ」
俺らが介入出来そうもない。いや、してはいけないのだ。この因縁には俺達は介入してはいけないのだ。
「「無駄ァ!!」」
何も無いところから風圧が生まれる。スタンド同士の戦いが始まったか。そして、2人は何か話しているようだがこちらからは聞こえない。
話が終わると
「「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄!!!!」」
凄まじい衝撃波が生じ、地が震える。さらに、2人の体は少しずつ宙を浮いていった。
「ぐっ!!!」
「ぬぅ!!!」
互いの拳が互いの拳で防いだのか、2人は反動で仰け反る。しかし、京谷は相当きてるのか体勢を崩す。
「厄介な……消しておくべきか……」
体勢をさの崩れたままの京谷に近づくDIO。そんな相手に近づく事すらできない俺は…………
すると、ポケットから常備している血液の入った試験管が出てきた。そして、そのまま京谷の元へ行く。ーーなるほど、そういう事だな。
「残念だが、テメエの敗北だ」
そう言い、京谷は試験管を投げる。しかし、それはあまりにも遅すぎるものでDIOにあっさりと避けられる。
「はっ!!最後の悪あがきにしては、随分と幼稚なのだな」
「そうじゃねぇんだよ」
「何………ッ!!グオッ!?」
避けたはずの試験管がDIOに刺さっていた。
「なッ!?ば、バカな!!何故投げられた試験管がッ!!?」
「クレイジーダイヤモンドの能力で『直した』んだよ、試験管の本体は俺の持ってる蓋に引き寄せられる。俺の左手の直線上に居るテメエを撃ち抜いてよぉ!!」
そして、同時にDIOに血がつく事となる。すなわち、それは
「ば、バカなッ!!動けんッ!!」
DIOがその場所にいる事が不変化ーー逆を言えばそこにいる事以外の行動をする事ができない。
「その状態だと、もう時を止める事も出来ねぇな。何せ、『止まった時の中を動けねぇ』からなぁ!!」
「無駄ァ!!!」
そして、拳が当たる直前に不変化を解除する。そして、拳はそのままDIOの胸を突き破る。
さらに、京谷は懐から"矢"を取り出し、スタンドがあろう場所に突き刺す。すると、眩い光で包まれる。
その光から出てきた京谷は額に星のマークを、下瞼にはそれぞれ【DIODIO】【JOJO】と続いており、目と髪は金に染まっていた。
「チェンジャー・オーバーヘブン・レクイエム。俺はすべてを越えた」
「!!!!」
「失せろ!!」
胸を貫かれたDIOがさらに吹き飛ばされる。もう再起は不可能だろう。
…………これで、終わりか?一連の事柄から最後はこれか?
呆気なさすぎる。この事件はこれで本当に終わりなのか?