諸行有常記   作:sakeu

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第65話 謎の日の青年

「計画は進んでいるのか?」

 

1人の男が玉座に座り、問う。凍りつく眼差し、黄金色の頭髪、透き通るような白い肌、男とは思えないような妖しい色気ーーまさに玉座に相応しい姿である。

 

「ええ、魔力も後もう少しです」

 

それに応える、痩せた初老の男。物腰が柔らかく優しいおじさん、の様な男性である。

 

「しかし、この城に侵入者がいるようだが?」

 

赤毛寄り茶髪ポニテの眼光が鋭い女ーー一眼見れば美しい女性として目を引きそうな姿である。

 

「フンッ、ただの人間だろ?それならあの実験台でどうにかなるだろ」

 

尊大な口調で話すフードを被った男が言う。

 

「貴様の失敗作ならただの人間くらいは倒せるか」

「あ!?なんだと!?」

「はいはい、落ち着きなさい。彼が魔物化させた人間をいきなりぶつけず、あの山賊どもに始末させればいいでしょ?」

「しかし、侵入者がいるフロアには誘拐した実験用の子供達がいるぞ?」

「そんなに心配なら貴様が行けばいいだろ?」

「チッ……」

 

「フッ……お前らには感謝しないとな…………お前達のお陰でこんな力が手に入ったのだからな…………"ソネ"、"シアン"、"ハキム"よ……」

「「「はっ……"DIO様"…………」」」

 

 

 

 

 

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勇人達の居なくなった人里では騒ぎが起きていた。

 

「慧音さんッ!うちの息子が……息子がいないんです!」

「俺の娘もッ!」

「私の息子もッ!」

「わ、分かっている!原因は分かっている!」

 

人里では子供達がたった一晩で"いなくなった"。それも10歳いくかいかないかの幼い子達ばかりが、だ。

 

「なら、何処なんです!」

「ああ……あそこに空が浮かんでいるだろ?そこに向かう子供達を目撃したとの情報がある……」

「それなら、早く助けに!」

「早まるんじゃない!貴方達が行っても無駄死にをするだけだ!今、勇人を探しているから待ってくれ!」

「勇人、勇人先生なら助けてくれるんですか!?」

「ああ!必ず彼は助けてくれる!だから、待っててくれ!」

 

 

 

 

 

 

 

「慧音さん……これはどういう事なのでしょうか……」

「里長……私にもさっぱり……何故"子供達"なのか……それとあの城はなんなのか……」

「やはり……勇人さんとは連絡つきませんか……?」

「はい……家を訪ねたのですが、いませんでした……」

「兎に角、今日は村の者に一晩中警護させます。何が起こるのか分からないので」

「ええ、私も手伝います」

 

 

 

 

 

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「それにしても……不気味な場所だな……」

 

明かりという明かりも無く、かと言って真っ暗でも無い……何かいそうなのだが……気配は感じない。

 

「ああ……俺らの時とは大分違うな……」

「ええ……それにしても……嫌な感じね……」

「…………兎に角、進もう。ここにいてもしょうがないからな」

「そうですね……」

 

薄暗い迷路の中進もうとすると、服の裾を握られる。振り返ると、

 

「……………………」

 

妖夢が涙目で掴んでいた。

 

「…………怖いのか?」

「い、いいえ……」

 

ここで意地悪を言うのも場違いなのでそのままにしておく。

 

「誰がこんな事をしたんだ?」

「俺にも分からない。初めはDIOが原因かと考えたが……俺らの時とは全く違うからそうじゃないと思ってる」

「しかし、この城は使い勝手が悪そうですよね。入り口は見る限りあそこしかありませんでしたし、こんな迷いそうな道だと」

 

確かに早苗の言う通りである。わざわざこんな複雑過ぎる造りするのだろうか?

 

「…………!待て!」

「あ?どうした、勇人?敵か?」

 

俺はその辺にある石ころを拾って"床"に投げた。

 

ガシャンッ!

 

「は!?これって…………」

「"トラバサミ"だな。ここだけ魔力を感じた。魔力で隠してたんだろうな」

「これまた原始的だな……」

「それに引っかかりかけたんだがな。死にはせんが……歩行不能にはなるだろうな」

 

それにしても、このトラバサミ古い気がする。そんなこと言ったらこの城自体、古い外観だ。中世ヨーロッパにありそうな城だ。

 

さらに歩を進めると

 

「おいおい……また、何かあるぞ?」

「またか?厳重だな」

「鈴仙、その辺の床の波長はどうだ?」

「そうね……少し周りと違うわね。少し波長を変えてみるわ」

 

すると、何でもない床から円板状の物があった。

 

「なぁ……これって……」

「"地雷"だな。爆発させてしまう手もあるが……音で敵が来るかもしれん。避けて通ろう」

 

うーん……古典的な罠から一転、現代的な罠に……

 

「ところでさ、帰り道、分かる?」

「…………」

 

あっ……

 

「さ、咲夜は?」

「え……あ……」

 

「大丈夫ですよ、印、つけてきましたから」

「ほ、本当か?早苗?」

「ええ!迷宮で帰り道の確保は常識です!」

 

常識…………なのか?まぁ、そこは置いといて、ナイスだ!

 

「ふぅ……最悪、城に穴を開けなきゃならんとこだった」

 

あ、別に出れないことは無かったのか。

 

「!?……静かにしてください!」

「ん?」

「向こうに4人程誰かいます」

 

む、確かにいるな……だが、普通の人間のようだ。

 

「どんな奴だ?」

「ただの人間だ。別に警戒しなくてもいいな。だが、他の奴らに喋られても困る……から」

 

と説明しようとしたら4人とも気絶していた。

 

「静かに気絶させろって?そんなの赤子の手を捻るより簡単だ」

「そうだったな……時を止めれるんだったな……」

 

「それにしても、やっと人が現れたわね。目標に近づいてるのかしら?」

「んー、そうだな。何かを守ろうとするときは必然的に近くに守らせたいからな」

 

まぁ、京谷たちの言う通りだな。道のりは間違っては無いようだ。

 

 

 

俺たちはドンドン道を進んでいった。正直、この城の空間がおかしい気しかしなかった。見た目の割に広いのだ、どう考えたって。まぁ、道中何人か警護なのか知らんがいたので目標には近づいてるのだろう。

 

 

 

 

 

 

そして、その目標らしき場所に着いたようである。近くから会話が聞こえる。

 

 

 

 

「なぁ、兄貴、子供達が攫うっていう命令に従って良かったのか?」

「あ?何言ってんだ?ハキムさんが言うんだ。絶対に決まってんだろ?」

「しかしヨォ、そのハキムさんから何人か貸してくれって言われてからさそいつら戻ってきてないぜ?」

「フンッ、きっとハキムさんのところで活躍してんだ!」

 

子供達を攫う……?こいつら何を?

 

「勇人、どうだ?」

「!!そ、そこを通るなッ!」

 

そ、そこにも何か隠されてる!しかし、言うのが遅く

 

カチッ

 

「え?」

「何か起こる……!」

 

リンリンリン!!

 

「ん?これは侵入者だ!」

「兄貴!すぐそこにいますぜ!」

 

バレたか……

 

「へー……あんたらここまで来れるとは……褒めてやるぜ」

 

ここのリーダー格だろうか?しっかし………………小物臭がプンプンするな。

 

「フッ……俺の名は源地震太郎。この辺の山賊の親分だ」

 

「なぁ、勇人、お前がいくか?」

「まぁ、京谷が出る幕も無いだろう」

「私がいきましょうか?」

「んー……鍛錬の足しにもならなさそうですね」

「いっそわしがいくか?」

 

この言いようである。実際、全員ただの人間では無いからな。

 

「こ、この野郎!舐めた口聞きやがって!野郎共!こいつらをぶちのめせ!」

 

と襲い掛かってくる……

 

 

 

 

 

が、悲しいかな、実力差は否めない。ほぼ瞬殺である。見せ場無し。残念だったな。

 

「こ、この俺が?負けた?ち、畜生!覚えとけ!」

「お、おいこら!待て!」

 

最後まで小物な男だな。

 

 

…………シクシク…………お父さん…………お母さん…………

 

「ん!?何か聞こえた!向こうの部屋からか?」

 

あの……しんのすけだったけ?まぁ、山賊達がいた部屋の隣から声が聞こえたので見に行ってみると

 

「おーい、誰かいる……か?」

「ヒィ……!」

 

子供達がいた。それも多勢。

 

「な……なんで?」

 

よくみると里でも見た子達がいる。生徒の子だっている。

 

「ヒクッ……だ、誰?」

「あ、安心しろ、助けに来た」

「ほ、本当に?」

「ああ」

 

「早苗、鈴仙」

「どうしまし……こ、子供?」

「多分里の子達だ、2人でこの城から連れ出してくれないか?」

「わ、分かりましたが、勇人さんは?」

「あの山賊共に話を聞く」

「……分かりました」

 

 

子供達を2人に託し、山賊共が逃げた先に行こうとする。

 

「おい待て」

「なんだ?京谷?」

「少し落ち着け。この先嫌な予感がする」

「安心しろ、簡単にやられるような柔じゃ無い」

「いいから落ち着け。怒りに身をまかせるな」

「………………すまない。しかし、先には行く」

「俺もついて行く」

「私もよ」

「私もご一緒します」

「わしも行くぞ」

「そうか……すまないが早苗と鈴仙は子供達を」

「ええ!任せてください!」

「き、気をつけてね?」

 

5人で先進む……

 

 

 

意外にもさっきの奴はすぐそこにいた。ただ、隣にフードを被った男も一緒だった。

 

「ふふ……ここまで来たのが運の尽きだったな。なんせ、このハキムさんがお前達をぶちのめしてくれるからな!」

「……源地君、少しは役に立て。俺を頼ろうとするんじゃない」

「え?ハキムさ ドスッ

 

「「「「「!?」」」」」

 

フードを被った男があの山賊を刺した?

 

「な、なんで……」

「お前!何をしてるんだ!?」

「あ?役立たずを少しは使えるようにしただけだ」

 

「ぐ、グギャアアアアア!」

 

山賊が徐々に異形の者へ変化していく。顔は醜く変わり、右手は大きなハサミに左手は触手のように、身体は先程とは程遠い体格へと変貌し、面影を全く残さない魔物へと変貌した。

 

「フンッ、俺は忙しいんだ。こいつと遊んどけ」

 

フードを被った男は影へと消える。

 

「ま、待て!」

「ギャァァァ!」

 

触手が行く手を塞ぐ。銃を取り出し、眉間を狙い、弾丸を放つ。

 

「ギギャアアア!?」

 

狙い通り眉間を貫通……したが何事もなかったように再生した。

 

「『チェンジャー・オーバーヘブン』」

 

京谷が前に出て、魔物を吹っ飛ばす。

 

「ギャァァァ……」

 

魔物はだんだん元の人間に戻る。

 

「真実を上書きして『普通の人間』にした」

 

真実を上書き?それも聞きたいが他にも疑問はある。あのハキムとか言う奴は?何故子供達が?

 

「分からない……」

「分からないなら進むしか無いな?」

 

そう言いながら京谷は上に続く階段を指差していた。そうだな、分からないなら進むしか無いな。

この城……ほっといてはいけない気がする。兎に角真相を!


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