頭を使って戦うとは言ったものの、相手はあの『スタンド使い』。相手がどのような能力なのかは勿論、どこにいるのかすらも分からない。流石にunknownな相手に何か策が思いつくわけも無い。
何か相手の特徴を考えていると、いつの間にか相手の様子が大きく変わっていた。赤と紺のオッドアイだったのが金色に変わり額には星のマークが出現していた。ーー冗談が過ぎるぞ!!ただでさえ実態を掴めていないのにさらにややこしくしよって!
さらに、そのunknownな相手は翼に触れた。すると、どうだろうか。翼が消え失せた。あたかも『元から無かったように』。
その行為は俺たちを驚かすには十分なものだった。周りを見れば妖夢と早苗、鈴仙も目を見開いて驚いている。しかし、咲夜は驚かない。そもそも『知っている』ようだ。あの2人の関係はなんだ?
頭をフル回転させて事柄を整理しようとする。しかし、そこから導かれる答えはどれも『理解不能』である。
「『チェンジャー・オーバーヘブン』」
相手は呟くようにスタンドの名らしき言葉を言う。え?このスタンド知らない。オーバーヘブン?天国を超える?
頭ん中にはてなマークが大量発生している俺に対し、じいちゃんはある一点を見つめている。見えてるのか?じいちゃんは?
「お主…………その守護霊は何ぞ?」
見えてるようだ……ここは是非、どこにいるのか教えてもらいたいものだ。
「…………見えて、いるのか………………関係無いがな。貴様らは、我が【真実】を破る事は絶対に有り得ないのだからな」
「ふむ……【真実】とな?どういう訳か、教えてもらえると助かるのじゃが?」
「貴様らは俺に絶対勝てない。この俺の前ではなぁ」
そう言うと、こちらを見る。何かが来るようだ。しかし、俺らは見えない。ただ身構えるのみである。今更なのだが、学ランを着てこれば良かったと後悔する。あれがあれば絶対的なガードを作れるのだが……
しかし、無いものをねだってもしょうがないので、牽制がてらに銃弾を3発撃つ。
弾丸は標的には届かず、消滅した。効かないだろうと予想はしていたが、消えるとは……
「無駄ァ!」
「ガハッ!!!」
妖夢の体が突然吹き飛ぶ。その華奢な体は竹林に衝突し、そのまま倒れる。
「妖夢ッ!」
起き上がる様子が無い。意識を失ったようだ。妖夢も鍛錬を相当重ねた者である。一撃で気を失うのは相当な威力だろう。
「声をかけても無駄な事よ。その娘は既に戦闘不能になった、今したがな」
「ッ‼︎テメェ…!‼︎」
もう、頭にきた!絶対にこいつを仕留める!永琳さんに採血されてその時に一部を試験管に移し渡してもらったのがある。それを開け、銃口につける。不変とするのはこの弾丸が『進む』こと。
5発相手に撃つ。高速回転する弾丸が相手に迫る。しかし、相手は動こうとしない。よし、スタンドで弾くつもりだな?そのまま、貫けッ!
「「何ッ!!?」」
しかし、俺の思惑とは裏腹に弾丸が貫通することなく弾かれる。相手も多少はよろけたようだが……不変とされた物が……
だ、だが、あと3発あるッ!それに、相手は体勢を崩している!あのままガードはできないッ!喰らわせろッ!
ただ、俺は完全に失念していたことがあった。そもそも、今の戦況はどうだ?1対1だったか?2対2だったろ?そう、咲夜の存在を完全に忘れていた。予想だにしないことの連続で完全に忘れていた。
残りの弾丸3発が弾かれる。体勢を崩したあのスタンド使いがそれをできるわけが無い。だが、咲夜なら可能。
ただ、何も無いところで弾かれたのを見ると、咲夜もスタンド使いなのか?もしかして、隠してた?
その咲夜は、服が少々破けている。ダメージが入らないわけでは無いようだ。良かった、あれでもダメージが入らないのなら完全に『詰み』だった。
あの2人は何か話しているようだ。『能力』と言うワードが出てると言う事は咲夜もスタンド使いと見て正しいようだ。ただ、『相殺』というワードが出たことで相手は『不変』に対抗できる『何か』の能力を持っているらしい。
「では、始めようか……」
話し合いが済んだようだ。
接近戦に持ち込む気のようで2人はこちらに向かって来る。
ただでさえ銃は近距離に弱い。俺にだって体術はできるが2人も捌けるほどの技術は持ち合わせていない。
すなわち、近づかれる前に『撃ち抜く』だ。装填された弾丸を全て撃ち込む。頼むッ!これで終わってくれ!
「無駄無駄無駄無駄ァ!!!」
所謂、『ラッシュ』というにより弾丸は弾かれる。
それでさえ驚愕に値するのに咲夜が弾丸を『摘んだ』。素手でだ。
しかし、この光景はどこかで『見た』。咲夜以外に弾丸を受け止めた者はいた。そう、ありとあらゆるモノの影響を受けない『巫女』がいた。そいつだって『同じような事』をして見せた。
フフ……ようやく閃きがでたぜ……。一旦頭が冴えてしまえば他のことにもすぐに気づく。スタンドというのは所謂『精神エネルギー』だ。つまり、何らかの力を持っている。幽霊とかに近いのかな?まぁ、つまりだな……見えなくても『感じ取る』事はできる。妖忌さんの修行のおかげで力に関してはかなり敏感に感じ取れる。ーーだから、2人が『何かを纏っている』事ぐらいは感じ取る!つまり、あれが原因で影響を受けないのだ。
いつの間にか、眼の色が戻っている相手が迫って来る。
「我が流法!!【輝彩滑刀の流法】を特と味わうが良い!!」
あ、これは知っている。骨と皮膚を硬質化させた物に無数の細かいエッジがそれに沿って高速で移動している、だっけ?
みるみる2人はこちらに迫る。この戦況において、空へ逃げるのは『愚策』だ。俺は空中戦に慣れてないし、そもそも空では格好の的である。
だか、俺はあえてそうする。『あえて』だ。
空へ逃げると、相手も向かって来る……動きがおかしいが……そう、まるで無重力にいるかのようにーーまるで重力の影響を受けないかのように。
これで、確信した。あの纏った『何か』であらゆる影響を受けないようになってる。
後は何をするかーー霊夢と同じように『こちらから干渉できないのなら、向こうから干渉してもらえばいい』つまり、相手が血に触れればいい。そうすれば、『影響を受けない』という事は無理矢理消す事が可能。
ただ、どうやって血をつけるのだが……試験管投げつけて血を浴びせる余裕は無い。なら…………
「ガブハァ!!!」
斬られればいい。必然的に相手には血がつき、咲夜も手刀をしてきて血がつく。
「「勇人さんッ!!!」」
まぁ、代償が少々でかいが。普通に痛い。俺は人間だからな。
そのまま地面に叩きつけられる。俺は思いっきり体勢が崩れている。なら、相手がする事は?
1人は踵に刃物を生やし踵落としを、1人は拳をーーつまりは、追撃である。
相手は『影響を受けない』という事をまだ信じている。だから、確実に倒すために近接に持ち込む。こんな事は簡単に思い付く。後は自分の周りの位置を『不変化』する事で相手を巻き込み動きを封じる。その後にトドメをさす!
刃が、拳が近づく。まだだ……まだ………………
と、急にスキマが現れ、そこから紫さんがでてきた。
「ごっめ~ん、言い忘れてた~♪この世界の幻想郷で協力してくれる人たちの名前言うのすっかり忘れて………」
は?は?協力してくれる人?は?何で彼らを見ている?あれ?
………………これは……『早とちり』?……一方的に悪者扱いしてたという事か?
やっべ……めっちゃ恥ずかしい……俺は相手の顔を見れなかった。
とりあえず、後ろを向いて、
「…………ごめん」
謝罪をした。恥ずかし過ぎて穴があったら入りたい……
じいちゃんも早苗も鈴仙もぽかんとしている。と、とりあえず、永遠亭に行こう……なんせ、『無駄』な戦いにより『無駄』な傷を負ったから。
その後、永遠亭に行ったら永琳さんに「またか」という顔をされたのはまた後の話。
勇人はいつになったら永遠亭に無傷でいけるのか……
次回もお楽しみに。