諸行有常記   作:sakeu

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第55話 誤解の日の青年

「えっと……ここが『迷いの竹林』か?」

 

はい、ただいま迷いの竹林に来ております。永遠亭に行って何か証言が無いかなぁーって思って来たのだが……

 

「どこから……入ればいいんだ?」

 

見渡す限りの竹、竹、竹竹竹竹竹……ずーっと見てるとなんか気持ち悪くなってきた……

 

「と、とりあえず進むか」

 

そういえば、早苗とかはどうやって永遠亭に行ったんだ?ああ、こうなるんだったら道のりを聞いておくんだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの人は誰?」

 

こんなところで生身の人間が来るなんて、妖怪にでも食べられるわ。それにしても珍しい。どんな馬鹿野郎なのかしら?

 

 

「…………むか」

 

 

ん?なんて言ったのかしら?

 

 

「さっさと……って、永琳さんに…………妖怪を殺した……」

 

 

!?あ、あいつ今なんて?

 

 

「……く見つけて……を捕まえないと……」

 

 

つ、捕まえる!?ま、まさか!あいつは師匠達を……!?

そ、そんなことはさせないわ。私はあの八意永琳の弟子、鈴仙・優曇華・イナバよ!師匠の手を借りずともあの程度の奴を追い払ってみせる!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さっさと永遠亭に行って、永琳さんに聞かないとな、妖怪を殺した犯人について何か知ってるかを」

 

何か1つぐらい知ってるだろう。

それにしても、今どこだ?モタモタしてられないのに。

 

「早く見つけて、犯人を捕まえないと」

 

 

 

「待ちなさい」

「んぁ?」

 

なんだなんだ?こんなところに人……が……いるなんて?ありゃ?人じゃない?

白いブラウスに赤いネクタイをつけ、その上に茶色のブレザー。それに膝下ぐらいまでのミニスカート。所謂バリバリの女子高生って感じだ。スカート短過ぎないか?寒くないのかな?いや、そんなことよりも頭についているあれ。なんだよ、あれは。うさ耳なんぞつけよってコスプレか?

 

「かなり怪しいわ、ここに何しに来たのかしら?」

「一応、永遠亭に用があってだな……(怪しいって、あんたも十分怪しい格好してるだろ)」

「何故?怪我をしてなければ病気でも無いようだけど?」

「まぁ、いたって元気ですけど」

「尚更怪しいわ。そもそも、ただの人間のがここに来るなんて」

「え、あ……いや、その……」

「何よ、何か言うことでもあるのかしら?」

「え、永琳さんとは少し顔見知りだからさ……」

「はぁ?そんなこと言われても信じるわけがないじゃない」

「じゃあ、どうしろと?」

「今すぐここから立ち去ることね」

「そういうわけにもいかないんだよ……」

「やっぱりね……姫達を捕まえようとしても無理なことよ」

「……?は?」

「とぼけようとしても無駄よ」

「いや、ちょっと待て、話を聞け」

「話って、ここ最近で多発してる妖怪の怪奇死のこと?」

「おお!分かるのなら話が早い!」

「そうね、だって犯人はあなたでしょ?」

「…………は?」

「もう立ち去る必要も無いかしら」

「えっ、ちょ……」

「最近、戦える相手が居なかったのよね。ちょうどいいわ、見せてあげるわ、『月の狂気』を!」

 

 

「……え?ドユコト?」

 

な、なんなんだこのうさ耳の娘は?犯人が俺とか言って、月の狂気とやらなんやらと……

 

「ちょっと待て、君はとんでもない誤解をしてるよう……だ……が……?」

 

な、なんだ……視界が急にグニャッと歪んで見える……平衡感覚が……

 

「もう、月の兎の罠に嵌っているのに気づかないの?右、左も上、下も……あなたはもう全て狂って見えるわ。私の目を見てもっと狂うがいいわ!」

 

おえ……なんか酔ってきた……さっさと解除してもらわないと……本気で吐きそう……

 

「ウプッ……と、とりあえず、実力行使でいくぞ……」

 

銃を取り出す。今回は回転式拳銃で。

 

「やっと本性を現したわねーーでも、無駄よ。あなたは私に当たることが出来ない」

 

よーく、定めて……ありゃ?歪んで見えるせいでしっかりと狙いがつけられない。か、勘で……

 

パァン!

 

「どこを狙ってるのかしら?それじゃあ私には当たらないわよ?」

 

見当違いなところに当たったようだ。どうしたらいいんだろ……うっ、またこみ上げてきた……

 

「……あれ?」

 

あのうさ耳はどこいった?まだ景色が歪んでるあたりいるんだろうけど……

 

すると、足が宙に浮く感じがした。

 

「え?」

「ガラ空きよ」

 

足払いかよ!体勢が崩れ……る。前のめりに倒れかけたとき、視界に膝がすぐそばまで……

 

バギィ!

 

「グ……ッ!」

「流石に簡単にはやられないわね」

 

咄嗟にガードできたものの腕がビリビリする……なんだ?あの重さは?しかも、体勢はまだ崩れたまま、相手は回し蹴りをする。

咄嗟に頭を守るようにガードするが……

 

ドゴッ

 

「カハッ……!」

 

頭を守ろうとしたせいで腹がガラ空きだった……息が……

 

「ゴホッ、ゴホッ……」

 

おかしい、少女なのになんでこんなにも一撃が重いんだ?それにあの蹴りだと近接格闘の概念を持っている。

 

ん?そういえば、月の兎とか言ってたな……

 

「……お前……人間じゃないのか……」

「何をいまさら」

「そうか……」

 

久々だけどあれをやろうか……じいちゃんに教えてもらったんだが……

 

「腕は顔にぴったりつけてガードして……」

「何言ってるの?」

「足は肩幅に開き、腕は垂直に、重心はケツに……」

「……?ま、いいわ。とどめ刺してあげる」

 

相手の拳がくる!それを避けて……

 

「な!?」

「前足をワンステップ前に拳に体重が乗るように肩から押し出す感じで……」

 

ついでに霊力で強化して……

 

シュッ!

 

「きゃっ!」

 

スカッ

 

「あるぇ?」

 

空振り……おう……渾身のストレートが盛大に外しちまった。

 

「あ、あ……」

 

うーん……やっぱり歪んでるせいか……

 

「ふ、ふん、大したことないのね(な、なんなの?あれ、当たったら絶対無事じゃなかったわ!)」

 

「こっちもいくわよ(近接は危ないから、弾幕で片付けてしまおう……)」

「ウプッ……ああ……いいよ、こいよ……」

 

とにかく、この状態をどうにかしないと。もうそろそろ朝ごはんが出てくる。上から。さぁ、どこからくる?

と、思ったが急にあのうさ耳は指を銃の形にした。そして、人差し指から銃弾形の弾が打ち出された。

 

「!?」

 

なんとか避けれたが頰を掠ったようだ。少し血が滲んでる。

それにしても……銃弾形とは……相手は銃を使っていないがなんか負けたくないな……少し俺と似てるからか?

 

「幻朧月睨(ルナティックレッドアイズ)」

 

ここにきてスペカ宣言!?わざわざそんなことする必要性とは……別に弾幕ごっこじゃないのに。

 

「よし、かかってこ……い……」

 

うっはー……ものすごい量の弾幕が放射状に配置されてる。

 

「さぁ……もっと狂うがいいわ」

 

あのうさ耳……中々強いぞ……そして、うさ耳の眼は真紅に輝いている。その眼を見た瞬間、さらに景色が歪んで見え始めた。

 

「どうなってんだ……?」

 

あの大量の弾幕もどこかに消え失せていた。それにうさ耳の姿も見えない。

 

「ど、どこに行きやがった?」

 

うさ耳を探してると、周りにいつの間にか弾幕が高速で迫っていた。

 

「えっ」

 

よ、避けれない……!視界が弾幕で埋め尽くされ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふー……これでもう安心ね」

 

よくこの程度の実力で師匠達を捕らえようとしたわね。確かにあのパンチは中々の勢いだったけど結局終始狂わせられた状態で何にもできなかったようね。

 

「とりあえず、師匠に連絡しておこう」

「そうか、それなら俺も連れてってくれよ」

「え!?」

 

な、なんでまだ立ってるの?よく見たら傷1つない……

 

「おっと動くな」

「ぐ……ッ」

 

背中に銃を突き付けられる。

 

「さっきから気になったんだが……お前の能力はなんだ?できるなら解除して欲しいのだが。気分が悪くなってしょうがない」

「……分かったわ」

「そうか、ありがたい。あと、俺は別にお前達に危害を加えにきたんじゃない」

「……そう」

「ついでで申し訳ないんだが永遠亭の場所を教えてくれないか?」

「……いいわよ」

「おお!ありがとう!」

 

背中から銃が離れる。その隙に!

 

「もう一度狂いなさい!」

「ウェ!?」

 

ふっ、見たわね。完全に私の眼を見たわね。そのまま狂いなさい!

 

「何してんだ?」

「あ、あれ?あれあれ?」

 

波長が変わらない?いや、あいつの周りの波長も変わってない?

 

「やっぱりその眼なんだな?」

「は、は?」

「なんなのかはよく分からないがその眼を見たことで景色がおかしくなったのか」

「な、なぜ狂わないの?」

「そっちは何にも教えてくれないからこっちも教えない」

 

「その眼を見なければいいんだな……」

 

そう言うとあいつは眼を閉じた。眼を閉じるなんて……それじゃあまともに戦えないでしょうに。

 

「さぁ、こいよ。撃ち抜いてやるから」

 

眼を閉じてしまったから狂わせることは出来ない。が、だからと言って眼を閉じてる相手に負けるわけがない。

こっちが撃ち抜いてやる!人差し指をあいつの眉間に定めて……

 

パァン!

 

「きゃっ!」

 

手に銃弾が掠った!?な、なんなのよ!?眼を閉じても正確に狙ってきてる!

 

「外したか……まぁいい」

「な、舐めたことを!」

 

パァン!パァン!パァン!

 

「く……ッ!」

 

私の行動をある程度予測して撃っている!

 

「分かる……分かるぜ……どこにいるか……」

 

なんなのよ?眼で見ない方が見えてんじゃないの?

 

パァン!パァン!

 

カチャ……

 

相手はリロードが必要……これは付け入る隙があるわね……6発ずつと……次6発撃ったら畳み掛けてやるわ!

 

パァン!パァン!

 

「1……2……」

 

少しずつ避けるのが難しくなってるが……あと4発よ。

 

パパァン!

 

シュッ

 

「…………ッ!」

 

連射……少し掠ったわ……でも、あと2発!

 

パァン!

 

あと1発!次避けたら撃ち込む!

 

パァン!

 

ドシュッ

 

「ぐ……ッ」

 

1発もらったけど……どうでもいいわ!擊ちまくる!

 

「ぬぁ!」

 

反応が一歩遅い!よし!このまま……擊ちこむのみ!

 

カチャ

 

は?あの体勢でリロード!?か、構うものか!

 

パァン!

 

この角度なら当たらない!

 

ピカッ

 

「!?」

 

視界が光で埋め尽くされる。眼が……眼がァ!

ぼやける視界の中、あいつが近づいてくる!

 

弾幕を放つ。それはいくつかはあいつに当たるが構わず近づいてくる。血が出てもなお近づいてくる。

 

「…………ッ!」

「悪いがしばらく寝ててくれ」

 

腹に貫かれるような衝撃が来たと同時に意識が刈り取られた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ……」

 

姫を捕まえに来たのだろとか、色々訳わかめなことを言ってたが……とりあえず、永遠亭の者で間違いないだろう。それにしてもあの眼は脅威的だな……あのままだったら絶対吐いてた。未だに少し気持ち悪い。さっきから生あくびを連発してる。

 

「ん?おいそこで何してる!」

「うぉ!?」

「あれ?勇人じゃないか。ここで何してんだ?」

「ああ、妹紅か……そのだな、永琳さんに用があって永遠亭に行こうとしたのだが……このうさ耳に永遠亭の道のりを聞こうとしたのだが襲いかかって来てね……ご覧の通りさ」

「そいつ、鈴仙じゃん」

「知り合いか?」

「ああ、そいつは永琳の弟子だ」

「やっぱり、永遠亭に関係してたか」

「鈴仙は真面目で誠実なんだが……いかんせんそれによって勘違いしやすいし行き過ぎた行動もするからな。それはそうと、お前の方がひどい状態に見えるが?」

「そ、そうですよね〜」

 

何発か喰らって貫通してしまったものまである。所々血が流れ出てる。

 

「よし、私が永遠亭の道案内してやる」

「本当か!ありがと!」

「いいってことだ。それにこれも私の仕事だからな。ほら、ついて来い」

「ちょっと待って、この鈴仙とか言う娘も連れてかないと」

「はぁ……ま、いいや。どうやって運ぶ気だ?」

「抱っこしかないだろ?」

「………………私は知らないぞ」

「??」

 

何が言いたいのかは分からないがようやく永遠亭に行けそうだ。


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