第42話 始まりは終わり、終わりは始まりの日の青年
「はあ……戻ってきたと言うのかな?」
戻ってきたでいいか。……ここに骨を埋めるんだからな。寂しくないと言えば嘘になる。友達は少ない方だが、家族や蓮子のような人たちのおかげで、あそこで生きていたくないとは一度も思ったことはない。
でも、運命には逆らえないか……
ヘコタレてる場合じゃないよな!もう、ここで生きて行くことにしたんだから!
「「勇人さん!」」
「ん?おお、早苗と妖夢じゃないか、わざわざ迎えにとは」
「当たり前じゃないですか!」
「1週間、勇人さんに会えないのを我慢してたんですよ!?」
「ハハハ……」
戻ってきたのだから言うべきセリフがあるな。
「ただいま、そして これからよろしくな」
一瞬、不思議そうな顔をしたがすぐに満面の笑みで
「「おかえりなさい、勇人さん」」
ここにも俺の居場所はあるんだよな……なんやかんやで、俺は幸せ者だな。
「感動の再会は終わったかしら〜?」
「紫さん!?」
「驚かないでよ〜、慣れたもんでしょ?」
「いや、久々なもんで……」
「ふふ……それより、貴方の住む場所だけど……」
「ああ……また、早苗たちにお世話になるんですね?迷惑かな……」
「違うわ、一人暮らしをしてもらうわよ?」
「一人暮らしねぇ……は? 一人暮らし?」
「そうよ、萃香に頼んで家を作ってもらったわ」
「萃香って、あの飲兵衛の?」
「その通り あとでお礼言いなさい」
「は、はぁ……」
1週間で建てたのか?うーん……酷くこざっぱりしてなきゃいいんだが。柱とかが結構ゆるゆるなんてシャレになんねぇからな……
「場所はどこですか?」
「妖怪の山の麓よ」
「へぇ……よく、天狗たちが許可しましたね」
「まぁ、貴方なら襲うこともないだろうし、襲われても問題ないでしょうからね」
「素直に喜んでいいのか……?」
「荷物は既に運んであるからあとは貴方だけよ」
「そこまで……重ね重ねありがとうございます……」
お世話になりっぱなしだなぁ……あ、萃香さんにお礼をしないとな……お礼の品は酒かな?
「もう、話はいいですよね?」
「ええ、いいわよ」
うーん……酒っても何がいいのか、さっぱりだ……
「なら、これまで溜めてきた分をここで……」
「そうですね……」
ああ、寺子屋のこともあったな……慧音さんに任せっぱなしだからなぁ……何かするべきかな……
「勇人さん?」
授業はどのようにするかな?ああ……チルノの対策も講じないとな……
「完全に自分の世界に入っちゃってますね……」
一人暮らしを、するんだっけ?うーん……家事はある程度できるが、めんどくさがって掃除とかあんまりしないからなあ……
「久々の再会なのに……」
「こうなったら……勇人さん!」
ガバッ!
「ぬぁ!?どうした妖夢?」
「久しぶりに帰ってきたのですから、こっちのことも見てくださいよ!」
「ああ……そうだな」
急に抱きつくもんだから驚いたなあ。まぁ、確かに今考えてもしょうがないな。それにしても、妖夢の頭ってこんな低いところにあったけ?撫でるにはちょうどいい高さだな。
「あ……ん……」
あ、無意識に撫でてしまってた。まぁ、妖夢も気持ちよさそうだしいいかな?
「むぅ……妖夢さんだけずるいです……こうなったら私も……」
ギュ……
「ヘヤァ!?ど、どうした?早苗?」
「妖夢さんだけずるいです、わ、私も頭撫でてくださいよ!」
「分かったから」
これじゃあ、サンドイッチじゃないか……
「あらあら、モテモテね」
「わしの孫じゃからのう、そりゃあモテるわい」
「貴方ってモテるタイプだっけ?」
「そ、そ、そうじゃだぞ!昔なんて人気すぎて大変じゃったわい!」
「そう……貴方はこれでよかったと思うかしら?」
「さあ……これが良いっとはっきり分かるなら苦労せん。じゃが、これしか方法はないのじゃろ?よかったとか悪いとか言ってもしょうがない。とにかくその道を進むだけじゃ」
「そうね」
早苗と妖夢との再会のあと、とりあえず、守谷神社と白玉楼に行って、挨拶した。ただ、その度に
「お?少し男らしい顔になったんじゃない?」
「そうだな、少し成長したみたいだな」
「あら、すっかりイケメンになっちゃって」
「ふむ……一皮向けたようじゃな」
そんなに変わりましたかねぇ……3年分成長したとはいえ、急激に変わるもんじゃないでしょうに
そうそう、家のことだが不安でたまらなかったが杞憂だったようだ。ていうか、よくあの短期間でできたなぁと思う。平屋の家だが、一人暮らしには十分すぎる大きさだ。風呂や台所はしっかり完備されている。てか、かなり現代的じゃね?電球があり、古いけど洗濯機がある。電気通ってんの?と思ったが紫さんいわく、
「全部霊力で動くわよ〜、お礼は河童にね」
河童の科学ってスゲー。こりゃあ、きゅうり一箱ぐらい送らないとな。
とりあえず、その日は新しい家で過ごした。
翌日の朝は驚くほど普通だった。自分で起き、飯作って、着替えて寺子屋へ。あら?まるでずっと一人暮らしをしてたみたいだな。
そもそも、自分で起きれたのが驚きだ。
「お久しぶりです、慧音さん」
「おお!勇人か!久しぶりにだな!」
「はい、みんなは元気ですか?」
「ああ、元気過ぎて大変だったよ」
「俺のいない間は本当にありがとうございます」
「なぁに、これぐらい大丈夫さ。ということは、今日からもだな?」
「ええ、頑張りますよ!」
久々にみんなに会うか……
「そうだ、2人新しく、学びに来た子がいるからな」
「2人ですか」
どんな子だろうか?はっきり分かるのは人外ということだけだな。
「おーっす、みんな久しぶりだな 君たちは初めましてかな?」
「あ!勇人先生だ!」
「お久しぶりです!」
「久しぶりなのかー」
「へー、この人がフランちゃんたちが言う先生なの?」
「は、初めましてです!」
「自己紹介は出欠を取った後にな」
えっと……チルノ、大妖精、ルーミア、リグル、ミスティア、フランドールでここからが新入生だな、えとえと、古明地こいし、八雲橙、この子は……藍さんの子供?違うか……狐と猫だもんな……なんか、関係はあるだろうな。
「……!?」
1人余分にいるぞ!?誰だ?あの子は?って
「萃香さん!?」
「おー、勇人だな。あの時以来か?」
全然気づかなかった……違和感が……ねぇ?
「今失礼なこと考えてたでしょ?」
「いや、まさか……あ、家の件ありがとうございます」
「そう、そのことでここにいるんだ」
「あー、お酒でいいですか?」
「それも悪かないが、これに参加してもらおうとな!」
なんだ?幻想郷武道大会?
「どうだ、勇人?ってなんでお前が……」
「おお、慧音、ちょうどいいところに!」
「子供達がいるのだから酒はやめてくれ」
「悪りぃ悪りぃ、それよりもこれ参加してくれるか?」
「なんだ?幻想郷武道大会?私はそう言うタイプじゃないから遠慮するよ」
「俺も遠慮しときます……」
「んー?まさか、家の恩を忘れたと言うのかい?」
な!?ここでそれを出すとは……
ふむふむ……チーム制か……4人出場?
「いや、俺、出れないじゃないですか?」
「ん?だから、ここに来てんじゃないか」
「だからって、生徒たちを巻き込まないでくださいよ……」
「えー……お前だって暴れたいだろ?」
「うん!最近弾幕ごっこもしてないし!」
「こ、こら!何言ってる!」
「慧音も勇人が1人で参加する羽目になるよ〜」
「な……それじゃあ流石にボロボロに……」
こ、こいつ、脅すとは……
「わ、分かった……メンバーはあとで言う」
「そうこなくっちゃ!勇人、楽しみにしてるよ!」
消えた!?はぁ……ここはなんでもありだったな。
「慧音さん、本当、すいません……」
「しょうがないさ、流石に1人じゃきついだろ?体育の一環ということにしておこう」
「本当すいません……」
「そんなことより、新しい子の紹介だ」
「そうですね……」
「私は古明地こいしだよー、よろしくねー」
「ああ、えっと……地霊殿?に住んでるのか?」
「うん、そうだよ!お姉ちゃんと可愛いペットと住んでるんだよ!」
「そうか、よろしくな」
「わ、私はや、八雲橙です!」
「えっと……紫さんとか藍さんとかに、関係あるのかな?」
「はい!私は藍しゃまの式です!」
「そういうことな……よろしくな!」
「えー、俺は碓氷勇人だ。これからよろしく頼む」
「勇人先生って強い人間なんでしょ?」
「えっ、それは分からないな……」
「フランちゃんたちが強いって言ってたよ!」
「そうだよ、あたいの先生はサイキョーね!」
「確かにお強いですよ!」
お、おお……
「それに頭もいいって藍しゃまが言ってました!」
「あ、ありがたい話だな」
か、過大評価じゃないすかねー……
「そういえば、萃香さんと何を話してたんですか?」
「あ、ああ……」
「私が話すよ、今度だな、萃香が、主催で武道大会を開くらしい。それで寺子屋チームとして参加して欲しいそうだ」
そういえばルールは……なし!?ありとあらゆる手段でこい!?
「4人必要なのだが……2人は我々教師が、そこであと2人なのだが……」
「はい!私が出る!」
「フランか、他には?」
「あたいが……」
「だ、だめだよ!強すぎる人がわんさかいるんだよ?」
「あたいはサイキョーだから問題ない!」
「流石に危ないって……」
「なら、私がー」
「こいしか、この2人なら申し分ないな」
「あ!もう、大ちゃんのせいで参加できなかったじゃない!」
(だって、紅魔館の人や霊夢さんたちまで出るって聞いたんだもん……)
「決まったな、よしこの話は終了だ、あとは授業だ 久々の勇人の授業だからしっかり聞けよ!」
武道大会ねぇ……はぁ……ゆっくりはできなさそうだな……身体鍛えとくか……
ま、今は授業だな!
「よし、今から授業始まるぞ!」
「「「「「「「はい!」」」」」」」
「勇人の参加も決まったな……面白くなりそうだ……な?霊夢?」
「勝手に私も参加させないでよ……」
「でも、あいつとは戦ってみたいんだろ?」
「さぁ……」
「私は戦ってみたいね、あ、勇儀んところも、誘うかな」
「やめなさいよ……」
いいねぇ、こりゃあ本当に、楽しみだ!