今日は、サークルの活動を話し合うためにカフェに集合することになった。まぁ、2人しかいないけど。
「……いらっしゃいませ」
相変わらず、無愛想だわ……ここのコーヒー好きだからいいけど。
とりあえず、いつもの席っと……
「あ、そこ私のお気に入りの席……」
いつもはあそこに座る人なんて見たことが無い。1人を除いて。まぁ、もうその人はいないから、かなり物好きな人なのかしら。
「すいません、席変わりますか?」
気を遣わせてしまったようだ。申し訳ない……
「あ、どうも……すいません……!?」
え!?その顔……その声……
「勇人……?」
「……へ?」
「貴方、勇人よね?碓氷勇人?」
間違いないわ、この人絶対勇人だ。勇人は死んだとか言ってるけど、あの事故は不可解過ぎる。
「い、いや、人違いですよ」
「でも、そっくりじゃない、むしろ瓜二つ」
「そ、そうなんですか、ほ、ほら、言うじゃないですか。世界には似ている人が3人はいると」
「ふーん……」
確かにそうかも……
「そ、それじゃあ、これで……」
「ちょ、ちょっと待ちなさい!」
「い、いや、なんで?」
「絶対、勇人だわ。その振る舞い、顔、声、勇人じゃない」
いや、こんなにそっくりな訳が無い。
「似てるだけですって、それじゃあ……」
こうなったら……
「待ちなさい!チビ!」
「…………あ?」
確信したわ。この反応は……
「やっぱり、勇人じゃない」
「……!?な、何を?」
やっと、動揺を見せたわ。
「はい」
「あ、どうも……」
このタイミングでコーヒーを出さないでよ……
ん?一緒にクロワッサンも……クロワッサンはメニューには書いてないし、その頼み方を知ってるのわ私と……
「ねぇ、なんで、クロワッサンが裏メニューにあること、知ってるのかしら?」
「!?い、い、いや……それは……」
「そのこと知ってるのは私と勇人のだけなんだけど……」
「ご馳走様でした!」
「もう、行かせないわ!」
「くっ……」
さあ、観念なさい……
「はぁ…そうだ…俺は碓氷勇人だ…これで満足か?それじゃあ、帰るぜ」
「待ちなさい!」
「なんだ?」
「なんだ?じゃないでしょ!何よ!3年間も行方不明になって!もう、みんなは死んだっていうじゃない!」
「……」
「なんで……勝手に……消えるのよ……」
涙が止まらない。だって、本当に死んじゃったかもと思ったんだもん……
「すまん……」
勇人が抱き締めてくれる……確かな暖かさ、存在している証拠……
「馬鹿、この大馬鹿」
「わ、悪かったって、それに理由は山よりも高く谷よりも深いわけが……」
「そう……なら、そこで話してよ……」
久々にそこで話してよ……
「了解」
「で、泣くのは済んだか?」
「ええ、それじゃあ理由は?」
「……」
「言うのじゃないの?」
「今から言うことは信じれるか?」
「え?」
「今から話すこと全てお前は信じれるか?って聞いてる」
「……ええ、信じるわ」
「分かった、それじゃあ……」
ー青年説明中…ー
なんてことなの?異世界に行ったの?今はそこで暮らしてる?もう、勇人がここで認識されることは無い?それなのに私は認識できる?
「どうだ?って、信じれるかと聞いたが、信じるわけ無いよな…」
「いいえ……信じるわ」
「そうだよな……こんな阿呆なことって、信じるのか?」
「ええ」
そんな不思議なこと、すでに体験済みよ!何より、ちょうどいいわ……
「信じるに決まってるわ、なんせ、私は秘封倶楽部なのよ!」
「はぁ?秘封倶楽部だぁ?なんだ、オカルトサークルか?」
さすがね、名前だけでそこまで察するとは……
「ただのオカルトサークルじゃないわ。結界を暴こうとしているの」
「これまた、大層な……メンバーは?」
「そうね……一応2人だけだわ」
「ふーん……まぁ、頑張ってくれ」
「貴方も手伝うのよ?」
「はぁ?勘弁してくれ」
「蓮子はいるかしら?」
「ん?誰だ?」
「あ、メリーね、こっちよ!」
「あら、そこにいたのね……って、そこの彼は……」
「ああ、それはね、少しこっちで話すわ」
「ふぅ……相変わらず、美味いな……」
ー少女説明中……ー
「へー……彼が貴方の話す人ね……」
「ええ、そうよ。多分、勇人は私達が探してる結界について何か役立つかも」
「でも、何の能力もないんでしょ?」
「うっ、そうだけど……頭はすごく切れるわよ?」
「貴方が人を褒めるとはね……よっぽど、お気に入りなのね?」
「え?ちょ……それは」
「もう、バレバレだから」
「うっ……でも、手がかりにはなるでしょ?」
「それもそうね」
「ん?終わったか?」
「ええ」
「こんにちわ、勇人さん。私はマエリベリー・ハーンよ。メリーでいいわ」
「そうか、まぁ、一応自己紹介を。ご存知、碓氷勇人だ、よろしく」
「何か、分かった?」
「そうね、確かに微かな結界のようなものが見えるわーまるで、無理矢理こっちに来たみたい、」
「何を話してるんだ?」
「いいえ、何も」
「そうか、あんたもなんか特殊な能力を?」
「あら、よく分かったわね」
「そりゃあ、蓮子と一緒にいるなんて、普通のやつじゃないよ」
「なによ、失礼ね」
「ええ、そうよ。私は結界の境目が見えるの。貴方にも見えるわ」
「そりゃあな、もうここの住民じゃない」
「そう……それじゃあ、向こうでの話聞かせて頂戴?」
「ああ、構わんよーそうだな、向こうでは……」
ー青年&少女達会話中…ー
「どうだ?面白かったか?」
「ええ、妖怪や神様が普通にいるのね……」
「って、あんたも普通じゃないの!?」
「ああ、俺も少々変のようだ」
「あら、なら、ちょうどいいわ、秘封倶楽部にでも入らない?」
「ああ……それなんだが、ここには1週間までしかいられない」
「え?……あ、ああ、そう」
「ま、協力できるなら、させて貰うよ」
「ええ、よろしく」
「ああ」
「もう、勉強とかしてないの?」
「ああ、それか、あっちで教師をしてる」
「あんたが?アハハハハハ!あんたが教師って!」
「悪かったな!俺が教師でそんなに意外か!」
「だって、人付き合いの苦手な、コミュ障君が教師だなんて……」
「はぁ…もう、今日はこれまでだ、それじゃあ、宿探すからこれで」
「あら、もう?」
「だから、宿が無いから…」
「なら、私の家に来たらいいじゃない」
「「え?」」
「蓮子ったら……」
「冗談はよしてくれ、親がいるだろ?」
「今は両親ともに海外に出張よ?」
「大学の勉強だってあるだろう?」
「私は頭いいから大丈夫よ」
「そもそも、年頃の男女が、1つ屋根の下に一緒にいるなんて良く無いだろ?」
「あんた、襲うとかできないでしょ?変なところでビビリだし」
「はー……、メリーさんも何か言ってください」
「いいんじゃないかしら?」
「ほら、メリーさんも……って、はぁ?」
「いいじゃない、久々の再会でしょ?しっかり語ればいいじゃない」
「だってよ?」
「む……分かった、言葉に甘えさせてもらうよ」
「それじゃあ決まりね!」
「本当に変わらないな…」
「あんたも変わってないわよ」
「そうかい…」
「そうよ」
本当に変わってないわ、あの頃と全く同じよ……相変わらず、変なところで鋭くって、肝心な時に鈍いのだから……