「ぐおお……頭が……」
ち、畜生……キスで気絶してしまうとは……はああ……勢いでしたら後悔すると思うのに……
「よっこらしょ…おろ?」
あるぇ?立てない。
「……ほら、早苗に妖夢、起きろ」
すごいパワーだ……男の俺が全く動かせん。でも、これでは両手が……ん?両手に花だなって?あんたはだーっとれい!
「起きてくれ……ほら」
どうするか……
「そうだなー、今日は授業も無いって慧音さんが言ってたなー…1人で人里に行こうかなー…」
かばっ!「「私と一緒にいきましょう!」」
しめた!
「ほっ」
「「あ」」
「冗談だ、今日は授業あるから」
「だ、騙しましたね!」
「狸寝入りしてた奴らには言われたくない」
「うっ……、で、でも、昨日の答えはまだ聞いてません!私と妖夢どちらがいいのですか!?」
「そ、そうです!」
「だ、だから…」
「今の彼じゃ決められないわよ〜」
「ゆ、紫さん!」
いつもは場をかき乱すが今回は助け舟を……
「彼には外の世界に好きな娘がいるからね」
残念だったな…助け舟じゃなくタイタニック号だった……
「「え!?」」
「だからね……」
「ほ、本当なのですか!?」
「あ、いや、その、えーっと……」
「本当なんですね…」
「それじゃあ、外の世界に帰る気が…」
「安心なさい、それは無いわ」
「え?」
「もう、彼は立派なここの住人よ?ただ、未練タラタラでここにいられてもね…」
「うっ……」
「というわけで彼、一旦里帰りするから〜」
「「ふぁ!?」」
「あ、それで思ったんですがいつですか?」
「明日よ」
「え?いや、明日は早すぎますって、また、授業に参加できない…」
「慧音には言ってるわ」
「いや、でも……」
「あら、貴方にしては珍しく怖気付いてるのね」
「くっ…勇人さんには思いの人がいるとは…」
「これで、分かったかしらね?彼は外の世界に行って未練断ち切ってくるから、帰ってきたら十分にアピールしなさい」
「「はい!」」
「そ、外の世界に……って」
いつからだ?自分がいた世界がまるで異世界みたいな感覚になっている…
そのこと、どこかで嫌がっている……自分がそこにいたことがもう無かったことになる様な気がして、なぜか不安に……
ここで生きてくと決めたはずなんだが……
「勇人?」
「あ、す、すいません…」
「いえ、大丈夫よ…」
「それじゃあ、授業が終わった後詳しく話すから」
「分かりました」
考えても仕方がない。とりあえず、寺子屋に行くか。
「それじゃあ、寺子屋に」
「「はい」」
「行ったわね……」
「負けませんからね!」
「わ、私も負けませんから!」
「ちょっと、お二人さん」
「な、なんでしょうか?」
「勇人のことについてなのだけど…」
「「?」」
「今から話す事は真面目な事だから聞きなさい」
「は、はい」
「彼は外の世界に行って、様々な事に区切りをつけてくるでしょう。それは外の世界で完全に忘れ去られる事。彼がいたこと、した事、全てが無かったことになるわ」
「ここは幻想郷ーーつまり、忘れ去られたものが集まるところ、彼がここに馴染む事は、外の世界で忘れ去られる事と同じ」
「外の世界で区切りをつける事は外の世界でのことを全て捨てることになる。それが簡単に済まされることでは無いわ。多分、相当傷つくことになる」
「でも、彼のことだから、きっと表には出さないでしょう。なんだって、あの人の孫だもの……彼もそうなることをどこかで分かってたのよ」
「それで、貴女たちはそんなことになるだろう彼を支えれる自信があるかしら?彼をこの幻想郷で再び生きていこうと立ち直らせることができるかしら?その自信があってこそ、彼の隣にふさわしいんじゃない?」
「「……」」
「勇人」
「なんでしょうか?慧音さん」
「お前は明日、一旦里帰りをするのだろう?」
「そうです」
「そうか……けじめをつけるんだな?」
「……はい」
「なら、しっかりつけてこい!そして、ここに戻ってこい!安心しろ、みんないるからな!」
「あ、ありがとうございます!」
け、慧音さんは全てお見通しだった様だ…
「はぁ…」
「どうした?早苗?」
「諏訪子様……」
「わ、私は本当に勇人さんと一緒にいる人にふさわしいんでしょうか?」
「ど、どうしたんだい?急に…」
「実は……」
少女説明中……
「そういうことか…勇人も苦労してたのか…」
「私は勇人さんを支えれるでしょうか?私は勇人さんほど心も強くありません…」
「何言ってんだい!」
「す、諏訪子様!?」
「支えれるか、だって?支えるんだよ!勇人のこと思ってんのなら、どんなに下手でも精一杯支えるのが大事じゃないのか?」
「……そうですよね!やってみせます!」
「………」
「妖夢」
「なんでしょうか?」
「お主、何か悩みがあるだろう?」
「いえ…ありませんが…」
「誤魔化さんでいい、バレバレじゃ、そんなにため息つかれると」
「す、すいません……実は……」
少女説明中……
「そうか、勇人が傷ついてしまって帰ってきたら、それを癒してあげれる自信が無いと」
「面目ないです…」
「いや、これは難しいことじゃ、ワシは少なくともできておらん」
「?」
「勇人の祖父である、あいつとは昔からの付き合いであり、いがみ合ってはいるが、大切な友として師としてあいつを尊敬している」
「師としてですか?」
「ああ、あいつはワシよりも随分年上だからのう……幼き頃はあいつからしばかれたわい」
「師匠が…」
「まぁ、そんなあいつだが、天降りをしたということを聞いた時は驚きはしなかった。前々から聞いてたからな。で、天界の者たちにより死んでここに来たという知らせを聞いてここに戻って来た…」
「あいつは飄々としてるようだが、自分の死よりも、勇人がここに来たことにショックを受けておる」
「え?」
「勇人がここに来たことは多分、天界にバレてしまったことと同じ。そして、まだ若い彼に今までのことを捨てさせることは相当心にきたようでの…友であるワシは何もできとらん……」
「師匠……」
「じゃが、お主は違う、まだ若い故にどうにかすることができる、ワシからもあいつの友として頼む、勇人を支えってやってくれんか?」
「もちろんです」
「明日か……」