諸行有常記   作:sakeu

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第18話 宴会の日の青年

「はぁ、はぁ、はぁ…」

 

あれ?こんなに守谷神社で遠かったっけ?霊力は空を飛んでる途中で尽きてしまった。だから、歩いているのだが…

 

「はぁ、はぁ、人里によればよかったかな…でも、もうここからなら、守谷神社の方が近いよな…」

 

遠ーい、遠すぎる。くそ、早苗は思ったよりも軽いが、さすがに背負って山を登るのはきつい。左肩にいたってはもう動かないし、感覚もない。

 

「ふぅ、ふぅ…」

 

 

「ん?誰でしょう?」

 

また侵入者でしょうか…よく見てみましょう。

 

「…!あ、あれは勇人さんと早苗さん!」

 

何があったのでしょうか?早苗さんは気を失っているようです。勇人さんが背負っていますが、その彼は左肩に大きな傷が、足もおぼついていません。

 

「助けに行かないと!」

 

 

 

「はぁ、はぁ…遠い!遠すぎるぞ!」

 

文句を言っても距離は縮まらない。だが、身体ははっきり言って限界だ。

 

「勇人さん!」

「あ?あぁ、椛か…丁度いいところに…早苗を神社まで運んでやってくれ…」

「勇人さんも怪我してるじゃないですか!?」

「いいから…早く…」

 

バタッ

 

「勇人さん!勇人さん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん…はっ!ゆ、勇人さんは!」

「あ!早苗!目覚めたのかい!」

「諏訪子様!ゆ、勇人さんは?」

「あぁ、彼なら安心しな、神奈子が永遠亭に連れてってたから。それより何があったんだ?」

「よかった…無事なのですね…えっと…この事ですよね…」

 

 

少女説明中……

 

 

「そうか…あのロリ吸血鬼め…これは戦争だね…」

「ちょっと、落ち着いてください!」

「落ち着けるものか!こうなったら、紅魔館と守谷神社との戦争だよ!全力で潰してやる!」

「そ、それはダメですよ!」

 

「それより、どうやってここまで?」

「あぁ、それは椛が運んできたんだよ。山ん中で見つけたらしい」

「あれ?確か…私はあの時、気絶して…」

「どうやら、山までは勇人が背負って来たらしい」

「勇人さんは大丈夫なのですか?」

「左肩を大きく損傷、いたるところにも怪我をしている。霊力もほとんど使い果たしていたが、命には問題無いようだよ」

「そうですか…大怪我だったのに…私をここまで運んで…」

「椛にも感謝するべきだろうが、とりあえず勇人に感謝しに行きな」

「は、はい!」

 

急いで、永遠亭に行きましょう!

 

「あ!椛さん!」

「早苗さん!身体は大丈夫ですか?」

「おかげさまで、大丈夫です。椛さんが連れて来てくれたのでしょう?ありがとうございます」

「いいよ、いいよ。それより、勇人さんに言うべきでしょ?」

「椛さんに助けてもらったのも事実です。本当にありがとうございます」

 

 

「今はお礼はできませんがいつか必ず、お礼、させていただきますね」

「別に、いいのに…ほら、勇人さんに会いに行くのでしょう?早く行ってあげなさいよ」

「そうさせてもらいます」

 

 

少女移動中……

 

 

「あ!永琳さん!」

「あら、早苗じゃない、彼に会いに来たのかしら?」

「はい、今、会えますか?」

「今、彼は寝ているから静かにね」

「はい!」

 

 

「スー…スー」

「勇人さん…」

 

肩に包帯が巻かれています…私より酷い怪我だったのに…

 

「…ヒグッ、ごめんなさい…」

 

涙が止まりません。彼が汚れてしまいます。

 

…ん、頭に何か

 

「勇人さん?」

「あぁ、無事なようだな。どうした?泣いたりなんかして」

「うっ…ウワァァァーン!」

「お、おい…大丈夫か?」

 

何故でしょうか、涙が止まりません。

 

「すまなかったな…」

 

彼は私を優しく抱きしめてくれました。

 

 

 

 

「…もう大丈夫か?」

「は、はい。大丈夫です…」

 

あれから、しばらく泣いていました。ちょっと、恥ずかしいです。でも、言わないといけないことが、

 

「ありがとう」

「ん?それは、こっちのセリフだ。忠告も聞かずに行った結果だ。お前は俺を守ろうとしてくれたんだろう?本当にありがとう」

「……//、そ、そんなことよりも、怪我は大丈夫なのですか?」

「うーん、分かんないな…」

 

「安心なさい、3日もすれば、退院していいわよ。別にすぐに直す方法もあるけど」

「い、いや、結構です。3日間安静にしておきます…」

「そう、ならしっかり療養しなさい」

「ありがとうございます」

 

 

「ふぅ、3日間か…寺子屋、どうすっかな…」

「それなら、私が伝えておきます」

「ありがとう」

「いえ、大丈夫です」

 

入院生活か…3日間だけだが、暇だなぁ…

 

と思ってた時期も私にはありました。

慧音さんがわざわざ見舞いに来てくれた。本当にありがたい。寺子屋のクラスたちも見舞いに来てくれた。相変わらずのようで良かった。

ただ、フランドールに本当のことを言うのはやめておいた。いざこざが起こるのは良くない。

まぁ、チルノ達が賑やかにしてくれたし、暇じゃなくて良かった、良かった。

 

 

っと、3日間はあっという間に過ぎて、普通の生活に戻れた。完治というわけではないが生活するには問題無い。

授業も平常通り行え、守谷神社でもいつもの生活に戻った。

 

「平常って、いいなぁ」

「あら、良かったじゃないの」

「あぁ、紫さんですか」

「もう、驚かないのね」

「ええ、慣れてしまいました」

「そう、で明日のことなんだけど…」

「あぁ、歓迎会でしたっけ?別に問題無く参加できますよ」

「そのことじゃないわ、招待しているメンバーに紅魔館の人達もいるのだけど…」

「別に問題無いんじゃないんですか?」

「あら、てっきり、拒否するものかと」

「これを機にしっかりお話できますし、相手も下手に出れないでしょう」

「それもそうね」

 

「それと…」

「何でしょうか」

「貴方…自分の能力分かったみたいじゃないの」

「ええ、分かりましたよ」

「どんな能力かしら?」

「それは歓迎会にて言いますのでそれまでは内緒です」

「あら、残念ね」

「で、用事はそれだけですか?」

「ええ、そうよ、それじゃあ」

 

スキマに消えてってしまった。

 

「つかめない人だなぁ、あっ、人じゃないか。HAHAHAHA…」

 

「どうかしたのかね、あの子は…」

「少し頭打ったんじゃないのか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はー…ようやく終わった…」

 

今日は久々に授業やったが…まぁ、変わらずと言ったところか。

そうだ、今日は俺の歓迎会があるんだった。さっさと帰って準備するか…

 

「勇人」

「はい、どうしましたか?」

「今日、お前の歓迎会があるのだろう?」

「ええ、慧音さんも参加するんですか?」

「ああ、参加させてもらうよ」

「そういえば、結構な頻度で宴会があっていると聞いたんですが…」

 

何でも、どんちゃん騒ぎでとても大変だそうだ。まぁ、歓迎会でそんなことになるとは思わないが、

 

「ああ、あってたな。ただ、最近はあまりやってないな」

「そうですか」

「ところで、お前はお酒飲めるのか?」

「え?飲んだことすら無いですよ。そもそも、未成年なので飲んではいけません」

「飲んだことがないのか!?そうか…今回を機に飲めるようになった方がいいぞ」

「はぁ」

 

慧音さんも変なこと言うんだなあ。未成年はお酒はダメなはずなのに…

 

「もう帰るのだろう?また今夜会おう」

「はい」

 

そう言い、寺子屋を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「博麗神社であるんだよな」

「ええ、そうですが、緊張しているのですか?」

「え、い、いや、き、緊張なんかしてないさ」

 

すいません、緊張してます。元々人の前に立つのは苦手だ。ましてや、話すなんて。あぁ、心臓が飛び出そうだ…

 

「大丈夫ですよ、きっとみんな歓迎してくれますよ」

「あぁ、そうだな」

 

 

「酒だー!酒をよこせー!」

「あ!この料理食べたの誰よ!」

 

\ワー、キャー、ギャー、ガチャン/

 

「何じゃ、こりゃ」

 

宴会じゃあねぇか。外界の宴会より酷いんじゃないのか?人と妖怪が入り混じって、大騒ぎだ。

あ、魔理沙だ。てか、酒飲んでいるぞ!あいつも未成年だろう?早苗は…うわっ、絡まれている。あぁ、無理矢理飲まされて…潰れてしまったようだ。

 

「逃げよう」

「どこに行くのかしら?」

「あ、いや…その…ちょっと…」

「主役がいないといけないでしょ?」

「いや、俺の存在無視されてるから、別にいいかと…」

「ダメよ、私に任せなさい」

 

や、やめてくれぇ、死地に向かいたくない…

 

「みなさーん、こちらに集中して」

 

と紫さんが言うが、

 

\ガヤ、ガヤ…/

 

聞く気、ナッシングですか、そうですか。

 

「あら、ダメね。勇人、貴方がどうにかしなさい」

「えぇぇー…」

 

しょうがない、腹を括るしかない。

銃を取り出してっと…音を鳴らすように霊力を込めて…空に向けて…

 

バァン! バァン! バァン!

 

3発鳴らすと、ああ、うるせー。ただ、効果はあった様だ。みんな静かになって、こっちを見ている…や、やばい、き、緊張してきた….

 

「はーい、みなさーん、こちらが例の外来人の」

「う、碓氷、ゆ、勇人です!よしろしくお願いします!」

\よろしくー!/

 

よ、良かった、どうにかなったぞ。と言うことでおさらばさせ…

 

「へー、君があの噂の…」

 

あ、絡まれた…何だ?見た目は完全に小さな女の子だが、頭に生えている2つの角が人間ではないことを教えている。

う、酒臭ぇ、相当飲んでるな。

 

「君も酒を飲みなよ」

「え、いや、結構です」

「んあー?私の酒が飲めねぇのか?」

 

典型的な酔っ払いのセリフですね。

 

「一杯だけですよ…ん、ゴクッ、ゴクッ、ふー…」

「おお!いい飲みっぷりだねぇ」

 

味はよく分からん。これでいいだろう。

 

「ほら、もう一杯」

「いや、いいです!」

「ああ!?飲みなさいよ!」

 

むむ、どうするか…

 

「なら、賭けでもしましょう!」

「賭けだぁー?」

「えぇ、では、このナイフをあの木に刺しますので抜けた方が勝ちとしましょう」

「ああ、いいだろう!もし私が勝ったらどうするんだい?」

「貴女が飽きるまでお酒につきあいます、俺が勝ったら貴女のお酒は飲まない。どうでしょう?」

「ああ!鬼の力、舐めんなよ!」

 

あ、鬼でしたか。そりゃ、力に自慢があると…ま、負ける気しないが。

 

「刺しましたよー」

「よし、こんなのすぐに終わるな…勇人とか言う奴、飲む準備でもしとけよ!」

 

周りもこちらに注目し始めたな…

 

「こんなの片手で…ふんっ…って、あれ?」

 

ふふ…抜けるわけがない。ちょいと、ナイフに小細工をした。いくら、力があっても抜けない。

 

「ぐぬぬ…」

「おい、鬼の力でも抜けないぞ」

 

「ギブですか?」

「まだだ……ぐぬぬ…何だ?これ、ビクともしないじゃないか」

「変わってくれますか?」

「あぁ、お前で抜けんのか?」

「ほい」

 

スッ

 

「!!」

「私の勝ちですね」

「は、ど、どうして…」

「ちょっと、このナイフに細工を…」

「小細工で取れるわけがない!」

「まぁ、細工というよりか、能力を使わせてもらいました、ちょうどいいです。俺の能力を教えましょう。俺の能力は…」

 

 

 

「物事を不変にする程度の能力です!」

 

ふふ…決まった。

 

「な、何だ?その能力?」

 

ありゃ、分かりやすいと思うのだが、まぁいい、これまで調べてきたことを教えてやる。

 

「まぁ、詳しく言うと、物体に俺の血をつけることで、物体を不変化させます。具体的に不変化された物は絶対に壊れませんし、傷がついたり、変形したりすることもありません。また、その物が何かの動きも不変化できます。さっき、ナイフが動かなかったのは、俺がこっそり血をつけて、ナイフがあの木に留まることを不変化したからです。この不変化の効果は、次元や時間からも干渉されることは無いです!つまり!不変化した物に対し前に飛んでいくことを不変化させれば、次元を変えようが、時間を止めようが、衝撃を与えようが、この次元において、物が前に進む事を止めることはできません!あ、生物に対しては能力は発動しません」

 

ふぅー、長い。これで、理解してくれたかな?

 

「なるほど、それで…」

紫さんは納得してくれたようです。

 

「んー、まぁ…とりあえず、この会を楽しみましょう!」

 

\ワー!、キャー!/

 

「ふぅー、これでも俺は帰っても「ダメよ〜」ア、ハイ…」

「とりあえず貴方、お酒を貰って回りなさい」

「はい…」

 

どこから、まわろう…

 

「先生ー!」

「え?フランドールじゃないか?」

「先生、こっち来てー!」

 

お?レミリアに咲夜さんにパチュリーさんにと…紅魔組ですか…

 

「あぁ、この前はどうも」

「え、えぇ」

 

ふふ…この前のことで随分と焦ってるな。

 

「ほい、これ」

「え?あ、ありがとう」

 

と俺は赤い液体の入った試験管を渡した。

 

「それで、これからは、俺を襲うなんてことはもうしないでくれ。フランドールのこともあるからな。その量でじゅうぶんだろう。」

「あの事はいいの?」

「許した訳ではないが、いつまでも引きずるのは良くないからな、チャラにしよう。これからも、お茶会に誘ってくれ、襲うのは無しだ。いいな?」

「え、えぇ、いいでしょう」

「フ、フフフ…」

「な、パチェ!何が面白いのよ!」

「べ、別に…フフフ…」

「先生も飲もうよ!」

「あ、ああ」

 

そうか、俺よりもずっと年上だった。そりゃ、お酒も飲めるよな。ただ、犯罪の匂いしかしねぇ。

 

「咲夜、彼にもワインを」

「承知しました、勇人さんどうぞ」

「あ、どうも…」

 

は、初めてだな、ワインって美味しいのか?

 

「…ん、ゴクッ」

 

わ、分からん…

 

「ありがとう、次に行ってくる、それでは」

 

 

「あ!永琳さん!」

「勇人じゃない」

「へぇ、彼がねぇ、どうも私の名前は蓬莱山輝夜よ」

「姫、彼に興味でも?」

「えぇ、だって不変をあやつるのでしょう?私達みたいじゃない」

「まぁ、そうですねぇ」

「へ?」

「言ったことが無かったかしら?私たちは蓬莱人といって、不老不死なのよ」

「は、初耳です…」

「いつか、永遠亭に来なさいよ」

「いや、既に何回か…」

「患者としてではなく、客としてよ」

「あ、ハイ…」

「とりあえず、飲みなさい、紫から飲んで回ってこいとか言われているのでしょう?」

本日、三杯目のお酒を飲むのだった…

 

 

 

 




勇人の能力は分かったでしょうか?わからない点があれば質問してください。
宴会はもう少し続きます。

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