諸行有常記   作:sakeu

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第17話 紅き日の青年

「ん…ふぁぁ…あれ?俺寝てしまったか?」

 

お茶会で寝てしまうとは…

相当、失礼なことだよな…どうしようか、謝った方が良いよな。

あれ?でも、早苗も寝てたよな。少々天然とはいえ、基本的にはしっかりしているから、寝るなんてしないはずだが…

そもそも、同時に寝てしまうなんてあるか?じゃあ、なぜそんなことに…

考えてもしょうがねぇ、今の状況を整理しよう。ん?腕が自由に…

 

「!?」

 

どういうことだ?なんで、鎖で俺の腕は繋がれている?よく見たら、牢獄のような部屋じゃないか。

 

「は?は?」

 

なぜだ?意味が分からん。

そうだ、武器は?

 

「よかった…ある」

 

だが、余計に謎が深まるだけだ。

とりあえず、俺は監禁されている。しかし、武器は取られていない。

急に眠くなって、寝たらここにいた。急に眠くなるには、薬を用いるか、なんかの術のどちらかだろう。疲労では、あり得ないな。毎日たっぷり7時間以上は寝ているからな。

術を使うといっても、そんなのがかけられた感覚はないし、第一にそんな怪しいことしている奴がいればすぐに気がつく。

ということなら、薬かな。でも、この場合は使われている可能性は1つだけだ。弁当は早苗が作ってくれたものだからあり得ない。となると、それ以外で口にしたのは…

 

「あのお菓子とお茶だけだよなぁ」

 

これだと、犯人はレミリア確定ではないか。じゃあ、なぜだ?ワケワカメ。

 

「…とりあえず脱出するか…」

 

武器は取り上げられてないわけだから、どうにかなるでしょ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん〜、はぁ〜………は!」

 

私、何をしてたのでしょうか?そういえば、急に眠たくなって…

 

「あれ!?勇人さんは?」

 

どこにいったのでしょう!?

とりあえず、ここは客室のようですが…部屋から出ましょう。

 

ガチャ

 

「あら早苗」

「あ!咲夜さん」

「貴女、大丈夫かしら?急に眠るもんですから、体調悪いんじゃない?」

「いいえ、私はいたって元気です。それより、勇人さんは?」

「あぁ、彼ならまだお嬢様といるわ、それより、貴女もう少し休みなさいな」

「大丈夫です、それより勇人さんの元へ…」

「今は2人で話したいそうよ」

 

おかしいです。なんでしょうか…嫌でも私を勇人とレミリアさんの元へ行かせたくないようです。

 

「咲夜さん、少しおかしいですよ。まるで、勇人さん達に会わせたくないじゃないですか」

「おかしくなんかないわ。私はいたって正常よ?貴女は少し寝てなさい」

「!!」

 

気づくと彼女もう前に…

 

「もう少し寝てなさい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これをここに通して…よし!」

 

今、脱出のために鎖を取ろうとしてます。え?方法?ナイフだと切れ味が落ちてしまうので使いません。銃だと音がどうしても…だから、糸で切ろうとしてます。

糸では切れないだろうって?大丈夫、霊力で強化してある。余裕よ、こんなの。

 

「せーの、ふんっ!」

 

よし、切れたな。あとはこの部屋をだが…扉は1つだけ、窓は無しと…

扉から出るしかないな。鍵は開いてないに…

 

ガチャ

 

開いてんのかよ。ホントに意味わからん。何がしたいんだね。あーもう、メンドくさい。

牢獄みたいな部屋から出ると廊下に出た。俺は銃を取り出しリロードしておく。あぁ、自動拳銃も持ってくるんだった。

廊下をしばらく歩くと他の扉とは明らかに違う少し大きめの扉があった。

 

「ここには誰も…」

 

いるな。扉を開けた先には玉座に座った吸血鬼の姿が。目が紅く光っている。

 

「なぁ、少し聞きたいのだが」

「えぇ、かまわないわよ」

 

なんだ、あの目は獲物を見つけたような目をしてやがる。

 

「なんで、俺はあの部屋にいた?早苗はどこだ?」

「安心なさい、あの巫女にはあっちから攻撃してこない限り、危害は加えないわ」

 

と言うと、彼女は笑みを浮かべながら

 

「だって…目的は貴方ですもの」

「はぁ、俺も人気者になったものだねぇ」

 

俺は銃を構え

 

「早く出してくれよ、面倒ごとは嫌いなんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう少し寝てなさい」

 

ガッ!

 

「!!」

「時間止めて、後ろから奇襲と言うのは定番ですよね」

「あら、防がれたわ…」

「さぁ、答えてください!勇人さんはどこです!」

「お嬢様の命令で言わないように言われているの。あと、何もしてこなかったら、危害は与えないわ。でも、攻撃してくるのなら、迎撃してもかまわないと言われているわ」

「そうですか」

「そうよ、分ったなら帰りなさい」

「レミリアさんは勇人さんをどうするつもりなのですか」

「さぁ、食料にするのじゃないかしら。彼は外界の人間だし、襲ってもなんの問題ないわ」

「大アリです!こうなれば力づくでも」

「あら、私と戦うのかしら?」

「そうです!」

 

確かに咲夜さんは強いですが、逃げ出すにはいけません!絶対に勇人さんを連れ戻します!

 

「いいわ、すぐに終わらせるわ」

「!!」

 

消えたと思ったら四方八方からナイフが!でも、慌てません!風によってナイフを吹き飛ばします。

 

「あら、これも防がれるとは」

「その技もう、知っていますので」

 

時を止めるキャラの攻撃と言ったらこれでしょう!

 

「ならこれはどうかしら?」

 

格闘戦ですか、得意では無いですが応戦するしかありません!

 

「はっ、はっ」

「くっ…くっ」

 

やはり、得意では無いせいか、少しずつ押されて…

 

「隙だらけよ」

「うぐっ!?」

「まだまだね」

「けほっ、けほっ、でも!」

 

私は負けられないのです!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パァン!パァン!パァン!

 

「その位のスピードだと、避けるのは簡単よ?」

 

くそっ、吸血鬼は身体能力が高いと聞いてたが、ここまでとは…俺の撃つ弾が簡単に避けられてしまう。

 

「こっちからもいくわよ」

「!?」

 

な、なんだ!?あれは、槍のようだが、俺の思う槍より大きいぞ!

 

「神槍『スピア・ザ・グングニル』」

「しまっ」

 

速い!避けられ…

 

ドゴーン!

 

「あら、もう終わり?大したことなかったのね…」

「へぇ、そうかい」

「!いつの間に後ろに…」

「射程距離内だ!早撃『クイックドロウ』!」

 

バッバッバッバッバッバン!

 

「きやっ!」

「全弾命中!」

 

ふう、助かった…このリストバンドはフックとしても使えるのな…とっさに上に逃げて正解だった。

銃弾は弾幕ごっこ用ではなく、一応、殺傷能力が高くなるように、本来の銃弾同様高速回転させてある。さすがに吸血鬼の嬢ちゃんもキツイだろう。

さて、早苗を探しに…

 

「あら、どこに行くのかしら?」

「!?チィ!」

 

リロードしないと!

 

「そんなことさせないわ」

「残念だな!既にリロード済みだ!」

 

バッバッバッバッバン!

 

「同じ手は喰らわないわよ」

「!?」

 

姿が蝙蝠となり、散り散りに…って、ぼーっとしてる場合じゃねぇ!

 

「後ろよ」

「なっ!」

 

しまった、もう一回…

 

「ふんっ!」

 

ザシュッ!

 

「グワッ!」

 

左肩が抉られた!なんとか避けて、致命傷では無いが…血が止まらない!

 

「フフッ…やっぱりなかなか面白いわ!ますます貴方を気に入ったわ」

「そ、そうかい。でも、こっちは全然面白く無いのですがね!」

 

と強がってみるはものの、左肩から下にかけて感覚が無い。これでは戦いにくい…どうすっかな…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ」

 

少々身体がきついです。でも、相手も同じなのでしょう。肩で息をしてます。

 

「はぁ、はぁ、やるじゃない…はぁ、でも次で最後よ!」

「えぇ!次で最後です!」

とっておきの技を喰らわせてやりますよ!

 

「幻世『ザ・ワールド』!」

「奇跡『ミラクルフルーツ』!」

 

「やっぱり、どう考えてもそれ、DIOのパクリじゃないですか!」

「知らないわよ!それよりも貴女のネーミングセンスの方がぶっ飛んでるわ!」

 

ドゴーン!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドガーン!

 

「うわっ!」

「どうしたかしら?もう終わりかしら?」

 

はぁ、はぁ、畜生…さっきから逃げることしかできねぇ。牽制にと撃つものの、全く無意味だ。血が出すぎている…少々頭がふらつく、貧血か?どうすっか…打開策は…

 

「 隠れても無駄よ」

 

ドガーン!

 

「ガハッ」

 

吹き飛ばされた、意識が…

はっ!いかんいかん。あれ?銃は…

あ…もう!よりによって、あいつの近くに!この状態じゃあ近づけねぇ…ナイフで頑張るしかないのか…

 

「もう、満身創痍ね…この際だから教えてあげる。私の能力は運命を操る程度の能力よ」

「へぇ、そうかい。それで?」

「貴方は私の配下になるのだから知ってもらうだけよ…貴方は何か能力を持っているのかしら?」

「生憎、持ってるか、どうかすら分かってないんだ」

 

そういえば、俺の能力はなんだろうか…じいちゃんはあると、言ってたが…ん?あの時の手紙に俺の血が鍵になるって言ってたな…

紫さんと戦った時、スキマを無視してナイフが紫さんを貫いたな…その時、確か…確かめる価値はあるな。

 

「今から宣言してやる!俺はこのナイフでお前を倒す!」

「そのナイフで?アッハッハ!頭でもトチ狂ったからしら?」

「残念だが、いたって正常。俺は本気だぜ!」

「面白いわ、やってみなさいよ…これを避けれたらね」

 

また、あの槍か…だが、俺はこれに賭ける。ナイフには血が滴っている。

 

「おらぁ!いっけー!」

「神槍『スピア・ザ・グングニル』」

 

サイズも威力もあの槍が上だろう。だが、俺の考えが正しければ勝算はある!

「もう、終わりね…」

 

ナイフと槍が衝突する…

ドガーン!

 

「!?」

「よし!」

 

やはり、間違ってはなかった!ナイフは宝石から光を放ちながら槍を貫いた。そして、そのまま彼女を貫いた。

 

「グフッ!」

「そのまましばらく再起不能になってもらう!」

 

貫通しただけではすぐに治ってしまうだろう。だから、

 

「ふんっ!」

「人間に負けるとでも!」

「あぁ!これで終わりだ」

 

ナイフには糸がついている、そこにありったけの霊力を流す。

 

「きゃああ!」

「しばらく、寝てな」

 

体内に直接、霊力を流せばひとたまりもないだろう。それと、俺の霊力の性質が合わさるからな。

 

「ガハッ…」

「俺も能力を教えとくぜ、俺の能力は…」

 

彼女は目を見開いて倒れた。

 

「はぁ、はぁ、キツかった…ま、俺の能力が分かったしいいか。もう少し研究する必要があるが、これであながち間違っては無いだろう」

 

「それはいいとして…早苗を…」

 

ドゴーン!

 

「!?」

 

爆発音が…向こうからか…もしかして早苗が…急ごう!

 

「イタタタ…」

 

肩が痛いが我慢するしか無い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドゴーン…

 

「はぁ、はぁ…やっとこれでね、お嬢様のところへ…」

 

「まだです…」

「はぁ、立つので精一杯じゃない。なぜそこまでするのかしら?別に死んだからって、貴女には問題無いじゃない」

「問題大アリです。だって…」

 

あれ?身体に力が…

 

「やっぱり、限界じゃない」

 

こんな時に、限界だなんて…

嫌です!勇人さんを助けないと…

 

ガバッ

 

誰でしょうか?倒れそうな私を抱えてくれてます…

 

「お疲れ、早苗。後は俺に任せろ」

「勇…人さん!」

「!?お、お嬢様は?」

「向こうでぐっすり眠ってるさ、それより、もう帰っていいかな?」

「ゆ、許しません!」

「はぁ…俺も疲れてんだ」

 

お嬢様が負けたとでもいうのかしらこの人間は。たかが、人間にお嬢様が負けるわけないじゃない!

銃を構えたところで無駄よ。私は時を止めれる。こいつを仕留めて、お嬢様の仇をうたないと…

 

「お前もしばらく寝とけ」

 

パァン!

 

「無駄よ」

 

周りの時間が止まる。これで…

 

ビシッ!

 

「え!?」

 

なんで…他は止まっているのに…弾だけ動くの…

 

バタッ

 

「フゥ…」

 

急に咲夜が倒れたようにみえたが、時でも止めたのだろう。だが、俺も能力には目覚めてんだ。残念だが意味がないのだよ。

 

「帰るか…」

 

早苗は寝てしまったようだ。本当に申し訳ない。忠告をきちんと聞くべきだったな。

 

帰ったらしっかり謝ろう…

そう言いながら、胸の中で眠る早苗を抱えながら、守谷神社にむかうのだった。


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