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第100話 前触の日の青年
〜宴会から4日後〜
宴も終われば、次に来るのは再び日常である。と、言いたいのだが…………そう言う訳にもいかないようだ。
最近は大きな異変もなく、せいぜい天子が寺子屋を破壊したぐらいしかない。もっとも、その天子は今でも寺子屋を訪れては俺の授業を聞きに来る。
そう考えれば、非日常的な事が日常レベルで起こる幻想郷としては、かなり平和だ。
「平和なのも、貴方のお陰よ?」
と紫さんに言われたが、実体としてはやはり、霊夢のおかげだろう。そもそも、俺の本職は教師であって、異変解決ではないのを忘れないでもらいたい。
まぁ、話が逸れたが、簡単な話、問題が発生したわけだ。
この幻想郷には俺のように時折、外の世界の者が迷い込む事があるそうだ。基本的には博麗神社で保護され、元の世界に戻されるらしい。最悪な場合、妖怪に食われるそうだ。そう考えると、俺も運がよかったな。
こんな話をするのだから、発生した問題は外の世界の者の事だ。問題となっているのは、その者は偶然、幻想郷入りを果たしたのではなく、どうやってか、紫さんと霊夢とで張られた2つの結界を破って侵入してきた事だ。さらには、堂々と紫さんの元に現れたのだと言う。
俺は紫さんの事だからすぐにとっ捕まえたと思ったのだが…………
「ごめんねー、私、怖くて…………逃げられちゃった」
紫さんに怖い者は無かろうに…………それに、ぶりっ子で言われても…………年相応ってものがあるんじゃないのか?
要するに、何者かが幻想郷に侵入。その者はそれなりの実力者であろうから、気をつけるべし、と言ったところか。
まぁ、霊夢が捜索するって事だから、俺はいつも通りに生活するだけだ。日頃より少し用心するだけ。
明日から、また授業をしないとなぁ…………
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〜宴会から2日後〜
森の路地の中に老人が通る。その老人は車椅子姿であり、メイド服姿の女性がその車椅子を押している。
黒い山高帽にカラーのついた黒の上下という古風な服装をした白髪の老人はメイドに手で合図をし、車椅子から手を離させる。
「お気をつけくださいませ、
と、メイドはお辞儀し、老人は車椅子を動かす。老人の背後でメイドは粒子となり、消えた。
「随分と勝手な事をしてくれたわね」
虚空から突如、スキマが現れ老人の行く手を阻んだ。
「この幻想郷に不法に入る者は消えてもらう事になってるの。だから、さっさと消え失せてくれないかしら?」
「不法?ここに法なんてあるのかね?嬢ちゃん」
「嬢ちゃん、だなんて。確かに貴方は人間からしたら
「そうかい、なら右も左も分からんこの
「いいわ。幻想郷の創造者の私が教えてあげる。ここの法はこの幻想郷よ。幻想郷に従わない者、勝手に入る者はみな排除よ?」
そう言い、紫は扇子を老人の首元に突きつける。
「猶予をあげるからさっさと消え失せてなさい。さもないと…………殺すわよ」
「ハハハハハ!」
紫の人外な威圧があるのにも構わず、老人は高笑いをする。
「何がおかしいのかしら?」
「冗談が過ぎるな。私を
「ええ、貴方みたいな老人なんて、一握りでお終いよ」
「私を
「何故か、分かるか?」
「さぁ、でも、遊びは終わりよ?」
「まだ遊べるさ。夜は長い」
「
紫はクスリと笑い、その老人の首を握り潰そうとする。すると、その腕を1つの弾丸が貫いた。
「…………あら、邪魔者が入ったわね」
腕を貫かれて、尚平然としているのは妖怪故か。
「チッ…………化け物か」
黒い瞳に、短い黒髪。もみあげが長く、上下黒いスーツをワイルドに着崩したファッションの男は舌打ちと共に吐き捨てた。
「噂には聞いていたが、妖怪っているもんなんだな」
と、銃を構える。その銃は、レボルバー拳銃なのだが、2つ銃身があるダブルバレル方式という、特異な代物である。
「
「
ダン、と呼ばれる男は上司らしい老人に対しても無礼な言葉を並べる。老人は慣れているのか別段、咎めもしない。
「あら?貴方達は無事にいられると思ってるのかしら?」
「ふんっ、こいつを
「…………好きにしろ。私は先に消える。だが、目的だけは忘れるな」
「はいはい。
そして、老人はメイドと同じく、粒子となって消えた。
「待ちなさい!」
「おっと、相手は俺だ」
「…………どのみち、全員始末するし…………いいわ、貴方から消してあげるわ」
「血の気が盛んな女だ。サシで俺を
「人間がほざかないで」
「けっ…………貴様は4発で十分だ…………」
と、ダンは短く笑い、引き金を引く。しかし、弾丸は紫によって開かれたスキマへと消えた。
「ん?変わった、能力を持ってるんだな」
「ふふ…………なら、もっと見せてあげる」
ダンの横にスキマが開き、そこから先程ダンが放った弾丸が飛んできた。間一髪のところでダンは躱す。しかし、その隙に紫はスキマを使い後ろに回り込み、弾幕を放つ。
「チィッ!」
ダンは躱して、銃を2発撃つが紫はかわしざまに足蹴りで銃を弾き飛ばす。弾き飛ばされた銃は地面に落ちる。
「終わり、よ」
紫はビーム状の弾幕を放つ。それをダンは再び躱す。
「なかなかやるじゃない。まぁ、いずれ死ぬでしょうけど」
「
弾幕をかわしざま、地面の銃を取るダン。雨あられと放たれる弾幕をかわして懐に入り込み、紫の顎に銃を突き付ける。
「This is too easy(余裕だ)」
パァン、という音と共に紫の頭が撃ち抜かれる。
「妖怪の賢者といえども、この程度、か…………」
そう言い、ダンは倒れた紫から去った。
しかし、ダンが去ったあと、頭を撃ち抜かれたはずの紫はむくりと立ち上がった。
「イタタ…………油断したわ…………久々に人間に一杯食らわせられたわ」
「とりあえず、彼らの始末は霊夢か勇人に任せるとしようかしらね」
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〜宴会から5日後〜
最近、よく不審者の情報を寄せられる。俺に情報をを寄せても別に問題があるわけではないのだが…………異変解決は俺の仕事ではない事を理解してもらいたい。
まぁ、話を聞くに紫さんの言っていた侵入者の可能性もあるから、霊夢にでも報告するとしよう。
と、言っていたら、誰か俺の家に来たようだ。戸を叩く音が聞こえる。
「はいはい、今行きますよっと」
戸を開けば珍しい客であった。それと同時に丁度いい客でもある。
「おお、霊夢か。俺の家に来るなんて、明日は雪か?」
「別にいいじゃない。貴方も知ってるんでしょ?」
「あぁ。ご苦労な事だ。それで?用件は?」
「最近、変な奴がうろついているっていう話を聞かされるの。それを貴方に報告しに、ね」
「奇遇だな。俺もその話を聞いたんだ。…………だが、今回の件はお前が解決するのだろ?」
「協力してくれてもいいじゃない。人探しは面倒なのよ」
「分かった。で、その話は?」
「魔理沙からの話なんだけど、魔法の森で袖なしの下着と裾の短いズボンを履いた子供がいたらしいの。何やら、ばんだなとへっどふぉん?っていうのをつけてたらしいわ。魔理沙は追いかけようとしたらしいけど、足がとても速くて逃げられたって」
「え?俺は違う話を聞いたぞ。ていうか、俺も見た」
「ほんと?聞かせて」
「派手な柄の開襟シャツに、ジーンズ姿だったな」
そんな格好だと、幻想郷では嫌でも目立つ。俺だって、当初は変な格好だと言われたものだ。
「ジーンズ?まぁ、いいわ。それで?」
「まぁ、声をかけようとしたら、ジャンプで建物の上に逃げてってしまったよ」
あの時はかなり驚いた。あんなジャンプ力は人間外だ。妖怪なのかもしれない。
「という事は…………侵入者は4人ね」
「4人?」
「紫が2人会ってるのよ。だから、合わせて4人」
複数人かぁ…………そりゃあ、面倒だな。
「勇人さん!勇人さん!」
どこからともなく、文が上空から現れた。どうやら、あわててる様子だ。
「どうした、文。取材はお断りだ」
「違います!妖怪の森に変な奴が現れたんです!」
「「!?」」
「白いスーツにマントをつけて、覆面をした大男です!」
文の言葉に俺と霊夢は頭を抱えた。
「あ、あれ、どうしたんですか?」
「これで、5人だな…………」
「えぇ…………」
スーツにマントって…………どんな奴なんだよ…………
「勇人さん!」
「また?」
「おぉ、鈴仙か…………どうした?」
今度は鈴仙がやって来た。
「いえ、最近また、異変解決をしてると聞いて情報提供を…………」
「「…………」」
俺と霊夢は互いに見、ため息をついた。
「えーっと、どんな奴だ…………」
「白いワンピースドレスを着た女性です!あ、あと、服に血飛沫が付いてて、裸足でした。もしかしたら、幽霊かもしれません…………」
「これで6人、ね?」
「あぁ…………」
今回の侵入者はグールプで動いているのかな。しかし、どいつもこいつも、個性的な格好しやがって…………共通点が見当たらない…………
「先生!」
今度はチルノと大妖精が現れた。
「どうした?宿題がわからないのか?」
「ううん。霧の湖に変な奴がいたの」
「…………はぁ、どんな奴だった?」
「うーん…………変態だった!」
「変態?何かされたのか?」
「いいえ、違うんです…………銀髪の男性だったんですけど…………上半身裸で物凄く猫背だったんです」
「おいおい…………マジモンの変態じゃないか」
「これで7人…………こうなるとまだまだいそうね」
「ああ」
相次ぐ、目撃の情報に俺と霊夢は得体の知れないグールプの存在に頭を悩ませる事になるのだった。
読んでいて分かった人もいるかも知れませんが、この章から『キラー7』というゲームのキャラをモチーフとした登場人物が現れます。モチーフと言っても、基本的な設定はそのままです。しかし、都合上一部の設定が変わったりします。また、ゲームとの関連性はほとんどないと思ってください。あくまでモチーフでありますので。よろしくお願いします。