女神拾いました。   作:Kっちゃん

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FGO、ヒロインXオルタ爆死。代わりに五人のタイガーをゲットしました。めいんひろいんだよばんざーい(棒)
はぁ~スパッツ良かったなぁ

※今回他の作品のキャラクターが登場します。嫌な方はご注意下さい。


この女神と騒がしい日常を!

 

 

 

 朝、カーテンから漏れる朝日を受け目が覚める。何時もは目覚ましで起きるはずなんだがどうやら昨日はかけ忘れていたようだ。

 起きた状態のまま仰向けでボーっと天井を眺める。何故だろう?いつもより天井が遠い。ベッドで寝てた筈なのにまるで床で寝てたかのような……。そう寝惚けた頭で考えつつ、寝返りをうち身体を横へと向ける。

 そこには涎を垂らし幸せそうに眠りこける女性の顔が……。

 

 「────っ!!」

 

 声に鳴らない叫びが部屋に響く。あまりにも大きな衝撃に頭は急激に覚醒しあらゆる思考が飛び交う。えっ誰?何処から入ってきたの?何で隣に寝てるの?

 多くの疑問が浮かんでは消え浮かんでは消えを繰り返し、自問自答を行うことでようやく頭が冴えてきた。未だ朧気ながらも昨日の記憶が思い出されてくる。

 

 

─────

────

───

──

 

 『へぇ~、ここがカズキの家なんだ。……狭いわね』

 『贅沢言うな居候女神、一人暮らしにはこれで充分なの』

 

 

 『ぁむんっ、おいしぃい!貴方料理なんて出来たのね!女神たるこの私が褒めてあげるわっ』

 『お前はなんでそういつも上から目線なんだ』

 

 

 『…………覗かないでよ』

 『分かってるから、とっとと風呂入ってこい』

 『絶対よ?

 ────ギャァアアー!!冷たっ冷たぁぁあ!何これっ、何で水なのよっ、お湯はっ?お湯はどうしたら……、カズキっカズキィィイ!』

 

 

 『……はぁ、風呂は良いよなぁ。今日は一段と疲れたし、おいアク……、なぁそのポテチどっから出した?』

 『お風呂上がったの?おかえり~

 これは小腹空いちゃって、適当にそこら辺漁ったら出てきたのよ。きっと女神である私に食べて欲しかったのね。むぐむぐ、かじゅきふぃとくちいる?』

 『食うなとは言わないから、ベッド(其処)で食いながら喋るんじゃない!ああっ落ちてるっ、ポテチ落ちてるっ!』

 

 

 『ふぅ、予備の布団敷いたから、こっちに寝てくれ。俺はベッドに寝るから早くどいt』

 『ぐがぁあ~、くかぁあ~、んんっむにゅむにゅ、にへへぇ』

 『もう寝てやがる、しかもベッド占領して……』

 

──

───

────

─────

 

 

 あ~、思い出してきた。そう言えば昨日コイツ拾ってきたんだった。

 身体を起こし何故か隣に寝ているアクアに目を向ける。元々コイツが着ていた服は洗っている為に上下共に俺の(もの)を貸している。上は少し大きめのぶかぶかで今はそのシャツも捲れ上がり腹部が思い切り露出している。この美少女と評すべきアクアの艶姿に正直いって劣情を催したり、間違いを起こしそうな気にもなる。

 ただ、いびきをかき、口をおっぴろげ涎を垂らし、露出した腹を掻いているその姿にそんな熱い感情は消えていき、何とも言えない虚しさが胸に広がるだけだった。

 昨日会った奴の家でこうも無防備にぐっすり寝れるのはある意味才能といっても良いんじゃないだろうか、アホの才能だが。

 

 益体の無いことを考えてると完全に目が覚めてくる。顔洗おう。布団から出て立ち上がると洗面所へ向かった。

 

 

 

 

 

 この女神と騒がしい日常を!

 

 

 

 

 

 朝食をとったあと、コーヒーを飲んでいると扉一枚挟んだ部屋からゴソゴソと何かの音が聴こえてくる。時計を見れば現在八時を過ぎたところ、昨日アイツが寝たのがだいたい九時頃。少し寝すぎじゃないだろうか、あの女神。まぁ昨日までしっかり寝れてなかったのなら仕方ないか……。

 ガララッと扉を開き、アクアが部屋から出てくる。目は殆ど閉じてる、まだ完全に目が覚めてないみたいだ。

 

 「おあよぉ」

 「おはよ。取り敢えず顔洗って来いよ、朝食出来てるから」

 「あい。ふわぁぁあ~あ」

 

 大きな欠伸をしながら洗面所へ行くアクアを見送りテーブルから立ち上がる。もう暫くかかりそうだし取り敢えずゴミでも出して来よう。

 

 「アクア、俺ゴミ捨てに外出てくるから」

 「ん~~」

 

 ゴミ袋を持ち洗面所の外から声をかける。返事になってないような声だがそのつもりなんだろう。顔洗ってんだし、と気にせずに玄関を出る。

 

 

 「「あ」」

 

 玄関を出ると丁度同じタイミングだったのかお隣さんと遭遇した。

 

 「おはようございます」

 「おはよう、ヴィネットちゃん」

 

 彼女は月乃瀬=ヴィネット=エイプリルことヴィネットちゃん。近所の高校に通うために最近このアパートに引っ越してきた女の子だ。近頃の学生にしては珍しく勤勉で、家事が得意で、礼儀正しい良くできた娘だ。少なくとも学生時代、俺はこんな行儀良くしていた記憶はない。

 こんな彼女を知っているからこそ自身を女神と名乗るアクアのことを信用出来ないのだ。女神や天使とはこういう娘のことを言うんだろう。

 

 「昨日はどうしたんですか?叫び声とか何かドタドタしてたみたいでしたけど」

 「あ~、それね。ちょっと色々あってなぁ」

 

 迷惑かけてしまったかと反省しつつ、アパートの階段を一緒に降りながら昨日の事を話す。自称天界から落ちた(・・・)女神アクアのことを。もちろん女神なんて話は出さないが。路頭に迷ってた頭が弱い女性を拾って、現在居候していると伝える。

 

 「えっ?それって大丈夫なんですか?その……年頃の男女が一つ屋根の下なんて

 

 そう頬を少しばかり赤らめながら目線を反らし、恥ずかしそうに小さな声で聴いてくる。……なんだろうこの(天使)は、たぶん無意識に様々な場所で救いを与えているに違いない。自身の救いを願ってすがり付いてきた駄女神と違って。

 

 「大丈夫大丈夫。……そんなことにはならないって」

 

 そう遠い目ををしながら答える。そう、そんなことにはならない、少なくとも今は。

 俺は今朝、現実の非情さを痛感したんだ。何せ想像の中で催した興奮と劣情が残酷な現実によって掻き消えて行くのだ。ああ、これが女兄弟のいる男が女性に幻想を抱かないと言われる所以かぁ、なんて思う。

 周藤和樹二十三歳、どうやら俺はまた一歩大人の階段を登ったみたいだ。

 

 

 その後は俺の雰囲気に何も言えなくなってしまったのかヴィネットちゃんは俺に話してくることはなかった。俺も何か話すような気分じゃなくなってしまったので特に話しかけることもない。特段何も話さずゴミの収集場所へと袋を放り、部屋の前まで戻ってくる。

 そこでふと、ある考えが思い付いた。

 

 「ああ、そうだヴィネットちゃん。ちょっと頼みたい事があるんだけど」

 「頼み事…ですか?珍しいですね、和樹さんが頼み事なんて。良いですよ、私に出来ることなら」

 「実は居候の奴の服なんか買いに行こうかと思うんだよ。ただ、女ものの服のこと何も分からないから出来れば着いてきてくれると嬉しいんだけど」

 

 流石にアイツが着てた服だけじゃあれだろうし、いつまでも俺の服を貸しとく訳にはいかないだろう。それなりに今は懐も温かいし日用品も幾つか買い足そうか。

 

 「何だそんなことですか。勿論良いですよ、その方にもご挨拶しておきたいですし」

 「そうか、ありがとう。ヴィネットちゃんが良く話すお友達と雰囲気似てるだろうから、馬は合うんじゃないかと思うんだけど」

 「え゙っ、ガヴと似た人なんですか?」

 

 そんな俺の言葉に彼女ヴィネットちゃんは渋い顔を浮かべる。

 あれ、違ったかな。確かに彼女が"ガヴ"って娘のことを話す時の内容は愚痴ばっかだったけど、仕方がないなぁって感じで笑み浮かべることも多かったんだが。

 

 「分かりました。覚悟を決めておきます……」

 「まぁ、しておいた方が良いのは否定しないけど。それじゃあ十時くらいに出発しようか、ってことでまた後──ゴッッ!」

 

 ヴィネットちゃんに別れを告げようとしたことで側頭部に強い衝撃を受けた。視界が一瞬真っ白になったあと衝撃と痛みが頭部を貫く。完全に意識の外から来た一撃によろめく。これは痛い、具体的にいうとタンスの角に足の小指が~ってヤツくらい。

 俺達が居た場所は俺の部屋の玄関前。そして今うちの中に居るのはただ一人。犯人が解ったぞ!というかアイツしかいないっ!

 

 「っ、痛っつ~~」

 「だっ、大丈夫ですかっ!?」

 「ねぇ、カズキ。トースターにセットされてる食パンって焼いても……、どしたの?そんな所に蹲って。バッチぃわよ」

 

 アクアはキョトンとした目で痛みによって蹲まる俺を眺める。コイツは自分のやったことに気付いてないのかっ。あまつさえバッチぃだとっ!

 

 「お前が思い切り開けたドアが俺の頭を打ち抜いたんだよっ!そんな勢い良く開けんじゃねぇよ!俺だからまだ良かったものを……、危ないだろうがっ!」

 「何よ、お腹空かせて待ってたのに中々帰って来ないカズキが悪いんでしょ。このアクア様が探しに来てあげたのよ?泣いて喜びなさいよ」

「だあっくそ!ああ言えばこう言うっ」

 

 その場から立ち上がり言葉をぶつけるがアクアは何処吹く風、というよりこっちに文句を投げ掛けさらには感謝しろと宣う。

 こっちはお前の為に色々考えてんのに通常運行しやがって!

 

 「あ、あの~」

 「ん?ああ、ごめんなヴィネットちゃん。心配してくれてありがとう。部屋に戻っといてくれていいぞ、俺は今からコイツに家主の偉大さってやつを物理で見せなきゃならなくなったからな」

 「いっ、いえ、そういうことじゃなくてその人が……」

 

 どちらが上かそろそろ教えこまにゃならん。と、拳をならしていると、ヴィネットちゃんが控えめにこちらに声をかける。どうやらこのアホのことを聞きたいようだ……、そういえば挨拶したいって言ってたな。

 

 「ん?貴女は……」

 「初めまして。私、隣に住んでる月乃瀬=ヴィネット=エイプリルと言います。これからよろ「はぁあああ!?何でこんなとこに悪魔が居んのよぉぉぉおお!!」

 

 挨拶しようとしたヴィネットちゃんの言葉に被せるように叫ぶアクア。このアホは何をいっているんだ、他人を自身の世界観に巻き込むんじゃないっ。

 

 「はぁ?お前何言ってんだよ、お前が女神(設定)ってことは聞いたけど関係ない人に自分の価値観を押し付けるんじゃない」

 「カズキこそ何言ってんの!?この娘は正真正銘の悪魔よっ。ここで会ったが百年目、私の力で浄化してあげるわっ!ゴッドォ!「バッカ!お前相手は学生だぞっ、年下だっ!何を気に食わんのか知らんが拳で語ろうとしてんじゃねぇ!」ちょっ、離しなさいよっ!私はこの一週間の不満をこれ幸いと、そこの悪魔にぶつけるんだからっ!」

 「最低だな」

 

 急にヴィネットちゃんに殴り掛かろうとしたアクアに羽交い締めをかけ止める。こいつ猛獣かなにかか!?初対面の人物に襲いかかるんじゃないっ。

 

 「離し、な、さいっ!!」

 「うおっ」

 「いい?何度も言ってるけど私は女神、女神様なの!そんな私が一悪魔を見逃すなんてこと出来るわけないでしょう!?だからそこを退いてカズキ。私は貴方をヤリたくはないの……」

 

 俺の羽交い締めを解いたアクアは絶対に女性がやってはいけない顔、具体的に言うと人一人くらいヤッてそうな顔でそう言った。何つう顔しやがるんだ、こいつ。

 

 「──解った、お前が言うようにヴィネットちゃんが悪魔だとしよう……「ならっ」だが!俺はお前が女神だとは信じられない」

 「はぁっ!?何度も言ってるのに信じてないってどういうことよカズキ!?言葉通じてないのっ!?それとも頭沸いてんの!?」

 

 「そういう所を言ってんだよ!いいか?お前が昨日から今に至るまでにやって来たことを思い返してみろっ!」

 「へ?」

 

 

 『何方かぁ、何方か拾ってくれませんかぁぁ。若しくはお恵みをぉ、食べ物のお恵みを~!もう三日も食べ物を口にしてないんですぅぅう!』

 「道端で物乞い」

 

 『食べ物とかお持ちではないですかっ!何でも良いんです!パンでもバナナでも駄菓子でもキャベツでもっ!とにかく何かお腹に溜まるものをお恵み戴けないでしょうかっ!』

 「初対面の相手にしがみつき食い物をねだる」

 

 『んくんくんくっ、ダァア゙ア゙ーーっ!久しぶりのお酒は沁みるわぁ~』

 「真っ昼間から酒を煽る」

 

 『へぇ~、ここがカズキの家なんだ。……狭いわね』

 「居候先の家を貶す」

 

 『小腹空いちゃって、適当にそこら辺漁ったら出てきたのよ』

 「勝手に人ん家のものを食う」

 

 

 「──軽く思い返しただけでこれだけ出てくるが……、さて、この中のどこにお前の言う"女神"らしさがあった?答えてみろ、アクアぁ!」

 「ぐっ。そぉ、それはぁ……」

 

 アホ面晒すこの似非女神に指を差し現実を叩き込む。アクアは突きつけられた現実に目を逸らすようにこちらから視線を外した。

 あまりに女神女神うるさいがコイツ本当に自分が女神だと思ってるのか?その設定がどうやって生まれたのかは知らんが、自分は女神という認識がこの横暴な態度に出ているのだろう。

 …………決してただ頭が弱いだけ(・・)ではないと信じたい。

 

 「ったく。お前も少しはヴィネットちゃんを見倣ってみろ」

 「へっ?」

 

 今までの蚊帳の外から急に話を振られたからか、少し驚いたような声が聞こえた。

 

 「いいか?世話焼きで家事万能、真面目で品行方正、困っている人を見るとつい手を差し伸べてしまう、こういう娘のこと女神と言うんだ」

 「めっ女神に向かって悪魔を見倣えとか言ったぁ!況してや私より女神らしいってどういうことよっ!?」

 

 ヴィネットちゃんを例に出し、自身のダメさ加減と悪魔と呼ぶ彼女がどれだけ尊い存在かを教え込む。だが、どうやらまだ納得いかないらしい。一度居候することを許可した手前、追い出したりはしないが、俺も一人の人間、普通に鬱憤は溜まるのだっ。

 

 「そのまんまの意味だよ。ちったぁその弱い頭で考えて行動しろっ!このっ───()女神がぁっ!」

 「う、うゔ~~っ。駄女神っ駄女神って言ったぁ!かじゅきのバーカ!バーーカっ!この脚フェチ~~~!!」

 

 そう捨て台詞を残し、戸を開け玄関から部屋の中へと走って行く。貶す言葉が”馬鹿”しか思い浮かばないのはショックで頭が回ってないのか、それとも元々”馬鹿”しか思い浮かばないような頭なのか。

 ……って、ちょっと待て。

 

 「おっ、お前どこからその情報持ってきたっ!?というか俺は胸のほうg……」

 

 そこまで衝動的に言いながらはたと気づく。しまった、此処にはヴィネットちゃんが居たじゃないかっ!やばい、ドン引きされたか……?そんな焦りとともに振り向いたその先には、

 

 「あはは……、やっぱり私って悪魔らしくないのね

 

 下を向き、呪詛のようにぼそぼそと何かを話すヴィネットちゃんの姿があった。

 

 

 

 

 

 この後、数分してヴィネットちゃんは正気に戻ったが、何が彼女の琴線に触れあんな状態になったのかははぐらかされて聞けず仕舞い。さらには、アクアの機嫌も加味して買い物の日も改めることになった。

 

 

 

「おーい、アクアーそろそろトイレから出てこ~い。朝飯冷めちまうぞ~」

「……いや、駄女神なんて言ったカズキなんか知らない」

「はぁぁぁ、悪かったよ。お詫びに後で酒買ってきて「お酒っ!」(やっぱりダメじゃねぇか、この女神)」




周藤和樹
器用貧乏。何でもできるが殊更これといって得意と言えるものがない。ただ一人暮らしに必要なスキルは使う頻度も多いためかそれなりに高い。アクアが居るので日課をどう発散しようかと悩み中。

アクア
順調にダメってる女神。ウォシュレットの水流に悲鳴上げるなんてこともあったり。天界がどんな感じか知らないのとニートなんて言葉知ってたりするので、言葉や意味なんかは知っていても使ったりしたことがないという設定に。


月乃瀬=ヴィネット=エイプリル
ガヴリールドロップアウトより
天使より天使してる悪魔。悪魔なのに悪魔らしくないのがコンプレックス。怠惰な天使とアホな悪魔の二人が悩みのタネ。
駄天使と駄女神のコラボや天使悪魔といった要素が女神のアクアと絡ませやすそうだと思い投入。なお、駄天使本人はまだ未登場。アクア=ガヴ×サターニャ

今後も他作品のキャラがちょいちょい出ると思います。出しても日常系の作品群だけでしょうけど。
あと徐々にですがUA数は伸びるのを見ると言葉にしにくい嬉しさがありますね。これからもよろしくお願いします。

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