女神拾いました。   作:Kっちゃん

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アクアのss少ないんで突発的に思い浮かんだネタを上げます。現在小説未読、アニメとssの知識のみ。


この捨て女神に救いの手を!

 

 

 

 とある日の正午。昼食の用意をしようと作業を止め椅子から立ち上がったが、たまには自分で作ったものではなくコンビニの弁当でもと思い立った。

 最低限身嗜みを整え、財布を持ちアパートを出る。因みにコンビニは歩いて五分ほど位置にある。うちの立地は最高だと思わざるをえない。

 

「────」

 

 とりあえず何を食べようか、と考えながらしばらく歩いていると何かか細い声のようなものが聞こえた。どうやらそれは自分が良く使う通りから脇へと入る小道の奥から聞こえてくるようだ。

 空腹より好奇心が勝った自分はその小道へと入ることにした。今思えばこれはターニングポイントだったのだろう。あの楽しくも忙しない日常へと至ることへの。

 

 

 しばらく道なりに進むと詳しく聞き取れなかった声が耳に入ってくるようになる。

 

「何方かぁ、何方か拾ってくれませんかぁぁ。若しくはお恵みをぉ、食べ物のお恵みを~!もう三日も食べ物を口にしてないんですぅぅう!」

 

 ところどころ泣きの入った必死な声だ。捨て犬や野良猫なんかの里親でも探しているんだろうか、それにしてはえらく感情の入った声だな、なんて思いながらも歩を進める。

 

「うぅ、そもそも何で女神の私が物乞いなんてしなきゃいけないのよ。普通は貢ぎ物でも何でもいいから渡すもんでしょ。この世界にアクシズ教があったら……」

 

「……」

 

 歩を進めた小道の奥。そこで見たものは水色の綺麗な髪に抜群のプロモーションを持った、端的に言って絶世と呼ぶほどのまるで"女神"のような美少女

 

 

 

 

 

 この捨て女神に救いの手を!

 

 

 

 

 

 ──が"ひろってください"と書かれた看板を首に吊るし、ダンボールの中に座りこんでいる姿だった。

 

 「…………」

 

 言葉を失うとはこのことを言うのだろうか?今、人生最大の衝撃を受けた俺の頭は、ただその何とも言えないシュールな情景を視覚から届け処理すことしか出来ないでいた。

 

 「………?、っ!、そこの貴方!」

 

 気付けば思いの外見続けていたようで彼女に気づかれてしまった。その端正な顔を爛々と輝かせながらダンボールから身を乗りだし、こちらへと近づいてくる。

 正直こんな地雷臭のする人物とは関わり合いになりたくは……

 

 「食べ物とかお持ちではないですかっ!何でも良いんです!パンでもバナナでも駄菓子でもキャベツでもっ!とにかく何かお腹に溜まるものをお恵み戴けないでしょうかっ!」

 「……いえ、その今からコンビn「今から買いにいかれるんですかっ!?パンをっ!お腹に溜まる惣菜パンをっ!懐に余裕があるのであればお弁当をっ!お願いします!」

 

 こちらの服を掴み必死に懇願してくる少女。俺の言葉に被せるように自身の要望ぶつけてくる。

 いや、あんたのを買うとは一言も言ってないんだが。

 

 「……っあー、分かりました。買ってくるのでしばらくここで待ってて下さい」

 

 ゆっくりと服を掴んだ指を外しながら、肯定の声を掛け踵を反す。さらば美少女、どこかの誰かに幸せにしてもらってくれ。

 

 「待って!待って下さい!昨日も一昨日もそう言ってどこかに行ったまま誰も戻って来なかったのよっ!お願いだから、お礼なら何でもするがら゙っ!わ゙だじをみずてないでぇ、お゙ね゙がいじま゙すぅ゙ぅぅゔ!

 

 逃がすものかと裾を握りしめ泣き叫ぶ美少女。せっかくの整った顔が涙と鼻水で残念に彩られている。何という残酷な世界だろうか。

 手っ取り早くこの場から去りたいが為にパッと思い付いた事が口から出たのが仇になったか。というかこれで三度目なんだ……。

 

 「分かった。分かったから本当に買ってくるから裾を離し……、ちょっと待て。嬉しそうな顔は可愛らしいがそのまま裾で顔を拭おうとするやめっ、ヤメロぉぉお!」

 

 

 

 

 

「ほら、こっちにチーンしなさい」⊃ティッシュ

「チーンっ!!」

 

 

 

 

 

コンビニにて

 

 「はぁ、危うくTシャツダメにされるとこだった」

 

 商品棚を見ながらはしゃぎ回る少女を眺める。三日ぶりのメシで嬉しいのは分かるがもう少し静かにしてくれないだろうか?店員さんの目が痛い。

 

 「ねぇねぇ、いくらまでなら買っていい?五百円?千円?それともまさか諭吉先生まで!?」

「んなわけあるか。というか急に図太くなったな。まぁ千円くらいまでなr「千円ね、選んでくる!」おい」

 

 そう言って駆け出す少女。あぁ、ほらまた店員さんの目が笑ってない。え?何?……黙らせろ?それが出来たら苦労しないよ。

 

 「選んできたわ!お会計お願い!」

 「おう、分かっ……」

 「何?どうしたの?何か変なものでも入ってた?」

 

 ニコニコと笑みを浮かべた少女から渡された買い物カゴ。その中に入っていたものは弁当、チューハイ(・・・・・)、スルメ。

 

 「なぁ、お前って歳幾つよ?」

 「ちょっ、女性に年齢聞くってどういう神経してんの!?訴えるわよ!」

 「飯たかっといてどの口が言ってんだよ。奢んねぇぞ「ごっ、ごめんなさい!出来心だったんです!お願いだから見捨てないでぇ!」わかっ、分かったからいちいちしがみつくなっ」

 

 冗談のつもりだったがあまりにも必死な物言いに逆にこちらの腰が引けそうだ。というかそんな必死になるくらいなら最初から噛み付いてこなけりゃ良いのに。

 

 「はぁ、酒が二十歳からしか飲めないのは知ってんだろう?」

 「ふぇ?……ああ、何だそのこと?それなら大丈夫よ、しっかり二十歳過ぎてるから」

 「……分かった、とりあえず信じよう」

 

 その不自然な間は何なのか?……色々と疑問は尽きないがまぁいい。正直空腹も限界だし会計しよう。

 受け取った買い物カゴに自分の分の昼食を入れる。せっかくだから自分では中々作れない手の込んだものが良い、ドリアと……サンドイッチなんかで良いか。

 

 「すいません、会計お願いします」

 「はい」

 

 はぁ~、あっ温めお願いします。え?家近いんだからいいだろって?まぁ今日は勝手が違いまして。あと箸とスプーンを一本ずつ、ああ一応フォークもお願いします。ん?次騒がしくしたr……。

 

 

アリガトウゴザイマシター

 

 「?、どうしたの?そんな真っ青な顔して。あの強面の店員さんに何か言われた?」

 「いいか、次にもしあのコンビニに行くことがあったら騒ぐなよ。良いか?絶対だぞ!?「それって振r」振りじゃないからぁ!俺が冗談じゃ済まされない状態になるからぁ!」

 

 

 

 

 

小道の奥

 

 「んくんくんくっ、ダァア゙ア゙ーーっ!久しぶりのお酒は沁みるわぁ~。お弁当も美味しいし、んぐんぐ……ほんおうにあいあとねぇ」

 「何となく言いたいことは分かるがしっかり飲み込んでから喋れ」

 

 昼食の買い出しを終えた俺達は元の場所へと戻ってきた。彼女は着いた途端に袋から自分の分を出してその中身をどんどん減らしていく。

 酒を呑み、つまみを貪り、弁当をかっ食らうそんな彼女の食事風景を見て先程まで彼女に対して使っていた"少女"という形容を辞め、世界中の少女に対して謝罪したいと思う。こんな奴と同類扱いしてごめんなさい。

 

 「それで?お前なんでこんな所で物乞いなんてしてるんだ?」

 「ふも?むぐむぐ、んっ。そのこと?天界で死者を転生させる時になんかミスっちゃったみたいで、私もこっちの世界に送り出されちゃったのよねぇ~。んくんぐっ」

 「…………へ~」

 

 どうやら彼女は夢想の世界を生きる人物らしい。確かに俺もそんな時期はあったが二十歳過ぎる頃には流石に……、人前でどうどうと設定語ったりはしなくなったが。

 

 「天界ってことは何か?お前って天使か何かなの?」

 「ん?へぇ~、なるほど、この世界にも見る目がある人には分かっちゃうものなのね。

 惜しいけど違うわ、私は天使じゃなくて女神。この日本にて若き死者の魂を導くという重大な役目を追ったエリート中のエリート!水を司る美しき女神、アクアよ!此処じゃない世界には私をご神体として崇める宗教だってあるんだからっ!」

 

 ……エリートなのにミスったんだとか、女神なのに何故こんな残念なのかとか、此処じゃない世界とか色々突っ込みたい所はあるが。

 

 「お前アクアって名前なのか」

 「ええっ、そうよ!ってそう言えばまだ名乗ってなかったわね。アハハ、お腹空いててそれどころじゃなかったし許してね。それで貴方の名前は?」

 「俺は周藤(すどう)和樹(かずき)

 「へぇ、カズキっていうのね。フフっ良い名前じゃない」

 

 良く聞くような名前だし名前を誉められたのは始めてだ。というより、不覚にもその微笑みにドキッとしてしまった自分が悔しい。さっきまで居酒屋の親父のように酒傾けて笑ってた奴にっ。

 

 「そっそれで?お前これからどうすんの。家無し文無し信用無しじゃ腹に入れれるの公園の水くらいだろうし。(天界)に帰れる手立てかなんかないのか?」

 「うん、もうこっちに来て一週間くらい経つけどあっちからの音沙汰は一切無いし、かといって此方からアプローチする方法も無いし…………、はっ、はれ?本当にどうしたら良いの?どうしたら゙グシュッ」

 

 自分で今の状況を再確認する内にお先真っ暗ということが改めて実感出来たのかコンビニに行く前のように再び目に涙を溜め、鼻をすすり出すアクア。

 涙腺弱すぎないか、こいつ。感情が豊かというか情緒不安定というか。まぁいいや。

 

 「ほらティッシュやるからチーンしなさい、チーン」

 「ゔん。チーーンッ、うゔ」

 「ああほら目擦るな、ハンカチ貸してやるから」

 

 手渡したハンカチでのそのそと目元を拭っている様子を見てふと思う。もうなんというか年下、というより小学生の世話してる気分だ。隣の家の歳の離れた女の子を思い出す。良く遊び相手になってたなぁ。

 

 「ね゙ぇ、グシュ」

 「なんだよ?自称女神さん?」

 「ん、アクアで良いわよ。あの~カズキの家に置いてくれないかなぁ~なんて」

 「は?」

 「だって!今までカズキみたいに話くれる人なんていなかったんだもん!遠目でヒソヒソ話す学生とか、近づいてきた子供を白い目で引き離す母親とか!そんなんばっかだったんだもん!」

 

 急に目を見開いたかと思えばこっちに向かって今まで自身が逢ってきた様々な事を吐き出してくる。

 うわぁ、俺みたいに嘘ついて離れるような奴以外にもそんな目に遭ってたのか。いや俺もあの光景(姿)に引いて白い目向けてた手前何も言えん、というよりそんな対応取る気持ちも分かるけど。

 

 「いや、お前の気持ちは分からんでもないが良いのか?俺一人暮らしだけど」

 「良いの!そんな些細なこと気にしてられないわ!もう嫌なの!鳩に餌上げてるお爺さんからパンクズ貰うために土下座するのも!食べられそうな野草食べてお腹壊すのも!犬に吠えられて追いかけられるのももう懲り懲りなの!」

 

 何だろう此方が泣きそうになってくるんだけど。苦労してんやな。……ん?

 

 「お願いよ!私頑張るから!掃除でも洗濯でも何でもするから!出来ることなら何でも頑張るから!お願いだからもう私を捨てないで!」

 「ストップストップ!分かった分かった!うちに来ていいから!見てる!見られてるから!既に白い目を向けられてるから!御近所からの俺の評判ががた落ちするからっ!主婦の噂の伝達速度嘗めるなよぉ!!」

 

 違いますっ、違いますからね!痴話喧嘩とか別れ話とかじゃないですからっ。ああっそんな話のタネが見つかったかのような輝く顔で去って行かないでっ。奥さ~ん!

 

 「ほっ本当!?うっ、ゔゔっ!あ゙りぎゃどぉ、あ゙りぎゃどねぇ!カジュギ~っ!」

 「分かった。分かったから!毎度毎度抱き付くな!平然と見せ掛けて心臓バクバクイッテんだぞっ。童貞嘗めんnだから拭くな、Tシャツで顔を拭うんじゃないっ!涙は許容だけどっ、鼻水は鼻水はァァあっ!!

 

 

 どうやら俺の穏やかな生活は終わりを迎えるらしい、この捨て女神によって。ただまぁ少しだけこの騒がしさをどこか楽しんでる自分も居るのは確かだった。

 

 

 

 

 

 

「なぁアクア聞きたいことがあるんだけど」

「何?女神たるこの私が大抵のことは答えてあげるわっ。具体的に言うとスリーサイズ以外」

「コンビニ行った時から思ってたんだけど、お前下着ちゃんと着けてるのか?」

「した……ぎ?あぁ~、あれ窮屈なのよねぇ~

「おい、答えになってないんだが」

 

 




周藤和樹(23)
何だかんだ言ってお人好しで面倒見が良い。
胸が好きだが最近太ももも良いんじゃないか?と悩んでいる。

アクア(?)
皆大好き駄女神様。前書きの理由とfgoハロウィンのブレエリの"ひろってください"を思い出してこんな展開に。アニメでは触れられず、どっちだと議論されてるがこの小説の中では……。

コンビニ店員(37)
192cm116kg
イメージはこのすばの"荒くれ者"
がっしりした身体に丸太のような腕、厳つい顔で無口。かなり取っつき難く見えるが意外にもユーモア溢れる性格。ただそれが分かるのは現状アイコンタクトで会話出来る店長と主人公のみ。怒るとヤバい。因みに筆者はロ○ソン派である。


次回未定。ネタが浮かんである程度文量が書けたら投稿。

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