悪役(?)†無双   作:いたかぜ

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第24話

孫家との戦いでは惜しいとこまでいった。本当に惜しかった。だが、孫家の壁は厚い。あらゆる邪魔と自分の失敗が重なり、俺は撤退を余儀なくされた。

しかし、手応えはあった。これまでとは違い、確実に追い込めた。あのままいけば確実に孫権さんのくっころを見ることが出来た。だからこそ俺は諦めない。諦めたら試合終了だからな。

 

そして俺は次なるターゲットを決めた。南中王、孟獲さんだ。諸葛亮さんの策で7回捕まっても諦めない精神は共感出来るものがある。そしてそんな精神があるならば必ずくっころを見れると確信していた。

だが、現実は恐ろしく残酷である。

俺は動物に好かれやすい体質である。その体質は孟獲さんやその兵士さんたちにも対象となっていたのだ。

その為、俺が孟獲さんと対峙した瞬間……

 

 

〜回想〜

 

 

「待つにゃ!! ここはみぃの土地じょ! 見ず知らずの人間が踏み込んで…………にゃ、にゃんかお前、すごくいい匂いがするじょ。も、もうちょい近づくにゃ……ふへへへ」

 

 

〜終了〜

 

 

孟獲さんとの戦いは誰も傷つくことなく、向こうの降参で終了した。こんなの絶対おかしいよ……

ともかく無条件で国の王となってしまったわけだ。

そんな俺は今……

 

「ズピー……ズピー……」

「にょ〜……」

「にゃにゃ〜……」

「にゃ〜〜ん……」

「くぅー……くぅー……」

 

孟獲さんと愉快な仲間たちwith呂布さんの包囲網にて、お昼寝タイムと入っている。そらもう、幸せそうに寝ている。完全に動けないけどね。

 

「何をやってんだ……俺は」

 

こんなのほほんとした日常なんて誰も求めていない。俺が欲しいのは屈強な女たちが窮地に立たされた時に輝くくっころ顔を見たいんだ!

そうなると次のターゲットを決めておかないとな。しばらくは孫呉はやめておこう。俺の第六感のアラームが鳴っているからな。

 

「ここだと劉備たちの陣営が近いようだが……今の時系列はどうなっている?」

 

その領地にいって誰もいませんでしたじゃ話にならんからな。ここは慎重にいこう。

 

「お、なんや微笑ましいな〜」

 

そんな俺の前に現れた張遼さん。この地に来てからは兵士の底上げをしながら世話もしているようで皆からは“母ちゃん”と呼ばれているらしい。黄忠さんのポジションを取りに行くなんて……中々の悪!

 

「何かようか?」

「せや。実はな、ちぃーっとメンドイことがあんねん」

「メンドイ?」

「なんていうか……うーん……」

「……?何か言いにくいのか?」

「いや、そうではないねんけど……まぁ一度見たらわかるさかい、ちょっち付いて来てくれへん?」

 

張遼さんは基本的に自分で出来ることは自分で行う。なのでよほどのことがない限りは事後報告のみ。そんな張遼さんがここまで困るとは……これはもしかしたら張遼さんのくっころを拝むことにも使えるかもしれんな。

 

「わかった。すぐにいこう」

「おお! おおきにな!」

 

さて……その問題とやらに向かうとするか。

 

「「「「ぐぅー……ぐぅー……」」」」

 

……こいつら寝すぎじゃね?

 

 

〜とある場所・臧覇サイド〜

 

 

やってきました問題の場所。そしてすぐに理解できました。何故かって?

それはね……

 

「ええい!! だから此処を通せと言っているだろ!」

「………………はぁ」

 

なんで此処にいるんですか夏侯姉妹?

え? なに? 此処って曹操さんの領地だったの? いや、あの夏侯淵さんの顔を見るに夏侯惇さんの暴走だな。

 

「な? 困る理由、わかるやろ? ウチはちょいちょい曹操の領地に邪魔してたから顔、バレてるんよ」

「ああ……確かに困るな、うん」

 

いきなり曹操さんとこの二大将軍がやってきました! って言われても信用できないしね。

と、とりあえず話だけでも聞いてみるか。

 

「皆、ご苦労」

「にゃ!? 大大王にゃ! お願いにゃ! あの怖い人間を止めて欲しいにゃ!」

「「「にゃー!!!」」」

 

おれの姿を見た瞬間、兵士たちは俺になすりつけるようにその場から去って行く。いや、君たち、王を守ってよ? やくめでしょ?

 

「誰だ貴様は!」

「いや……一応、此処の主をやっております」

「……主?」

「ええ」

「ならば話が早い! 此処の宝を私に寄越せ!」

 

オイ曹操。アンタの配下、山賊みたいなことやってんぞ?

 

「姉者……それだと山賊と変わらん」

「む? そうか?」

「…………突然の訪問、そして多くの失言、本当に申し訳ない」

「いえ……苦労されてますね」

「はは……いつものことです」

「???」

 

夏侯淵さんの乾いた笑みが、その苦労を物語っいた。

このままだと話も進まないのでとりあえず、中へ迎え入れる。念のため、張遼さんと呂布さん、陳宮さんは隠れてもらった。今いるのは夏侯姉妹と孟獲さんと俺の4人。

そして何故この地に来たのか話を夏侯淵さんから聞く。

 

「それで……遥々、この地まで足を運んだ理由を教えて頂いても?」

「もちろん。我らはあるお方に日頃の感謝を込めて、贈り物を渡そうと思っておりました。しかし、そのお方は物事を完璧に行えます故に中途半端な物はかえって失礼に当たるかと思っておりました」

「ふむふむ」

「何かないものかと自分で調べたり、商人などに話を聞きに行くなどしておりましたら……ある宝がこの地に眠るというのが耳に入りました」

 

え? 嘘? そんなんあるの?

 

「しかし、この地は未知数。右も左も分からない状態で進めても成果など期待出来ないと思い、他の方法を探そうとしたら……」

 

 

〜回想〜

 

 

「秋蘭! 華琳さまからお休みを頂いたぞ! さぁ! なんちょうに向かうぞ!!」

「南中だぞ、姉者」

 

 

〜終了〜

 

 

「……ということで、引くに引けなくなってしまったのです」

「ふふん! これで華琳さまからの褒美は確実だ!」

 

うわー……色々ツッコミたいけど……大変だな。

しかし、一つ気になることがある。

 

「孟獲。この地に宝があるのか?」

 

俺自身もまだ調べていないことだらけ。ならば前王に聞くのが一番だ。

 

「あるじょ」

「ホントか!?」

「ホントにゃ。この南中はいろんなモノがたくさん眠っているじょ!」

 

どうやら、一つ二つではなく、かなりの宝が眠っているらしい。

 

「それは大丈夫なのか? 呪われたモノとか不幸になるとか、そんなオチはないか?」

「大半が危険な場所にあるにゃ。みぃたちも近づくことはしないから詳しいことはわからないじょ」

 

なるほど。つまりはそんなオチも可能性としてあるのか。

 

「このまま置いといても損も得もしないから持っていっても構わないじょ」

「おお! 話がわかるな!」

「みぃと大大王の器の大きさに感謝するにゃ!」

 

俺関係なくね?

 

「しかし姉者……我らもあまり時間がないぞ?」

「うっ……そ、そうだな。おい! この地で1番の宝は何だ?」

「それなら“龍の天玉”という宝石にゃ!」

「おお! いかにも宝って感じだな!」

 

……何だろう。それってフラグの匂いがプンプンするんですが?

 

「けど、その宝の近くに龍が現れるという言い伝えがあるにゃ。行くなら気を付けて行くじょ」

 

フラグ回収お疲れ様です……やっぱ出んのかよ。

まぁいい、今回は俺は関係ない。どう考えても今の状況くらくっころ出来る策が浮かばない。下手に動くよりは一度身を潜めるのも一つだ。

 

「任せておけ。もし、出たとしても我が剣で真っ二つにしてくれるわ!」

「おおー! 頼もしいじょー! あの龍にはみぃたちも困っていたにゃ!」

 

おし、このままいなくなってくれ。ピンチになったら呼んでくれ、すぐに駆けつけてくっころを見てやるから。

 

「さて……行くぞ!」

 

すると夏侯惇さんは俺の後頭部のフードをガシッと掴んだ。

 

「………………え?」

「………………ん? どうした?」

「いや……何で私の服を掴んでいるんですか?」

「お前は此処の王なんだろ?」

「いやまあ……そうですけど」

「ならば、国の問題を解決しなければいけないだろ」

 

嘘……少し正論を言ってるような気がする。

だけどマズい! このままいけば絶対に何かしらに巻き込まれる!

 

「え、えーっと……も、申し訳ないのですが、私はこの後に大事な会議がありまして……」

「よし、ならば会議が始まる前に終わらせればいいのだな」

 

あ、ダメだ。この人は話を聞かないタイプの人間だったわ。

な、ならば妹さんに! そう思い、俺は夏侯淵さんに視線を送る。

 

「………………………………許せ」

 

夏侯淵さぁぁぁあん!!?

 

「では出発だ!!」

「気を付けていくにゃー!」

 

そのまま俺はズルズルと引きずられながら宝の眠る場所へと進んでいくのであった。

 

 

〜奥地〜

 

 

さぁやってまいりましたよ。道中は何も問題なく進めました。というより野生の勘なのか、動物が1匹もいなかったといえばいいのだろう。

 

「……静かですね」

「うむ……このままでいてもらいたいが」

 

そう上手くはいかないな。今のでフラグを立たせてしまぅたからね。

 

「何を弱気になっている! もうすぐで宝は目の前だぞ!」

 

見るからにハイテンションになっている夏侯惇さん。多分だけど、子供が欲しいオモチャを買ってあげるとこんなテンションになるんかな?

 

「………………………………ハッ!!」

 

俺は何をやっている! このままでは夏侯姉妹の願いを叶えてしまう! それではくっころを拝むことは出来ない。乗り込んでしまった船だ。ならばどうにかしなければ……

 

「どうされた領主殿?」

「いや……何でもない。それより、もう少しで目的地のはずだが」

「む……あれではないか?」

 

夏侯惇さんが指さす方を見ると何もない崖に虹色に輝く宝石が土台らしき場所に置いてあった。マジであんのかよ……

 

「おお……確かに宝と呼べる美しさだな」

「うむ! これならば華琳さまも喜んでくれるばず!」

 

そして夏侯惇さんがその宝石に手に取り、持ち帰ろうとした。

 

「…………あれ?」

 

しかし、宝石は微動だにしない。

 

「どうした姉者?」

「いや……フン!」

 

今度は全力で取ろうとする夏侯惇さん。思いっきりやっているのにも関わらず全く動かない宝石。

 

「だ、ダメだ……全く動かない」

「姉者の力で無理なのか……ならば何かしらの仕掛けがあるのか?」

「此処は崖だぞ? しかも、来る途中も何もなかったではないか」

「確かに……怪しいモノはなかったですな」

 

そうなると本当に呪われたアイテムなのか?そう思い俺もその宝石を手にする。

すると、宝石は輝き始めたのだ。

 

「ッ! 何だこの光は!?」

 

夏侯姉妹は得物を構える。俺も離れようとしているが宝石から手が離れないのだ。

その光は天に向かい、輝きを増す。

そして……

 

『………………』

 

巨大な龍が現れたのだ。何でもアリかよこの世界! いや、原作でもいたけど!

というよりマジで動けないんだけど!

 

「秋蘭!」

「ああ!!」

 

夏侯淵さんがすぐさま矢を放つ。しかし、その矢は龍を通り抜けていった。

 

「馬鹿な!?」

 

実体がないのか? というより助けてください!

すると……

 

『待て……人の子よ』

「秋蘭、私の気のせいならいいのだが……今、アレは喋ったのか?」

「姉者も聞こえてたか……」

 

大丈夫大丈夫、俺も聞こえたから……全然大丈夫じゃねー。

 

『我が封印を解いたことに、まずは感謝を』

 

もしかしてこの宝石って龍の封印的な何かだったの? マズくない?

 

「オイ! 貴様がこの地を荒らしている龍か?」

『否、それは我よりも下位の位置にいる龍の仕業。我が封印されていたことが影響されている』

「……何故封印を?」

『龍の世界とて一枚岩ではない。その争いの最中に封印されてしまったのだ』

 

普通に龍と会話している夏侯姉妹。

俺はまだ困惑中なんですけど……

 

『……貴殿のおかげで再び秩序を守ることが出来る。悪しき龍は我が抑えよう。汝らの生に天龍の加護を』

 

そして龍は天へと戻っていった。龍が去った後、再び光が発生し、俺たちを包みこんだ。

そして……

 

 

~???~

 

 

「…………む?」

「此処は?」

「……何処?」

 

光がなくなり目を開けるとそこは街中であった。全く見覚えのない街。なので困惑しておりますはい。

 

「姉者……」

「馬鹿な……何故この地に?」

 

しかし、この街に見覚えがあるのか、戸惑う夏侯姉妹。

 

「えっと……此処は何処でしょうか?」

「……此処は我らの街だ」

「………………はぁ!?」

 

 

臧覇、再び曹操の下へ……




孫堅→想い人・捕食対象
曹操→宿敵
劉備→まだ見ぬ憧れ
張三姉妹→神様
董卓→恩返しを……
献帝(劉協)→命の恩人
袁紹→未来の旦那
袁術→優れた元配下
孫策→全てを救ってくれた軍神
孟獲→新たな大王
龍→封印を解いてくれた恩人

救世主的な主人公かな?


ありがとうございます。

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