〜???〜
多く軍が押し寄せきた洛陽。俺たちを囲むように構える。しかし、手は出せない。何故ならばこちらには大きな人質がいるのだから。
「劉さん! 何故このような……」
「何故? 馬鹿を言うな! これこそ俺の目的だ!」
その大将である袁紹さんが俺を説得しようとする。だが、今の俺には響かない。何故ならば俺は大悪党だからだ。
「こちらにはお偉いさん2人の人質がいる。ならばすべきことはわかるはずだよな?」
「……この外道が」
「フハハハッ! 褒め言葉だな!」
隣にいる曹操さんも鋭い目付きで俺を睨みつける。最高ですありがとうございます。
「さあどうする英雄さん?答え次第では……」
「………………」
「ッ! おやめなさい!」
気絶している将軍と陛下の首には部下の刃がある。
「……わかりました」
「ん〜〜?」
「お二人を殺すくらいなら……わたくしを!」
〜臧覇サイド〜
「此処でくっころが完成するんだよ。わかる?」
「へ、へぇ……」
「お、その顔わかってないな? よしもう一度最初から説明してやる」
「も、もう十分ですぜ兄貴!」
俺の妄想……じゃなかった、確定的未来を部下その1に伝える。かなり熱く語ったので引いてるのがわかるが俺には関係ないね。
俺たちは今、洛陽に向かっている。原作では洛陽の戦い……つまりは反董卓連合が董卓さんに攻め込まれる場面だ。袁紹さん率いる連合軍らがこの洛陽に向かってくる。
故に俺はある策を考えた。その名も……
「国のトップを巻き込んじゃえ作戦だ!」
「……とっぷ? なんなのですかそれは?」
おっと、熱が入り過ぎた。俺は自分の名が広まることを恐れ過ぎて行動が狭くなっていた。その結果がくっころ人数0人。これはマズい……かなりマズいぞ。
だからこそ、この戦いで俺は大々的に悪党宣言をする。そうすれば嫌でもヒロインたちは俺を敵視するはず。
「まーた騒いどるで。ようやるわ」
「…………かわいい」
俺と陳宮さんのやりとりを近くで見る張遼さんも呂布さん。何故くっころを目指す俺がこの2人と協力をしているのか。それにはちゃんとした理由があった。
「お主らはいつもこうなのか?」
「楽しくていいじゃない。私は好きよ」
何進さんと何太后さんの確保である。この2人……というか姉妹はかなり有名人なのだ。何進さんは大将軍様だし、何太后さんに至ってはあの皇帝(姉)の奥さんなのだ。
……女同士の結婚。何故だろう、すごく興奮します。
ともかく、この2人を捕まえるのにどうしても人手と面識のある人間が欲しかったので仕方なく協力をお願いした。
そしてこの姉妹がいる場所に行ったら何太后さんが捕らえられられる寸前であったので奪取し、何進さんもなんやかんやあって確保出来ました。え? なんやかんやじゃわからない? なんやかんやはなんやかんやです!
これで俺は国のトップwith奥さん、そして大将軍様を人質に取ることに成功した。此処だけならとんでもない悪党だな。だか俺はその更に上をいく!
「これで袁紹も……上手くいけばあの場にいる全員を……ふふふ」
「あやつは時々、変なことをぶつぶつと言うのだな」
「………………そこが、いい」
「あら? 呂布ちゃんはあの人みたいなのが好みなの?」
「………………………………ぅぅ」
「恋殿が照れてるのです……」
「ホンマ珍しいわ」
外野が少しうるさいが今の俺は気分がいい。見逃してやろう。
さぁ! 最高のパーティを始め……
「で、伝令!」
ゆっくりと歩いていた俺たちのところに董卓さんの兵が息を切らしてやってきた。
ぬぅ……せっかくの気分が少し下がってしまった。
「許可する。何があった?」
おお、流石は大将軍。なんか偉い感じが出てる。
「ち、張譲様が突如現れ、皇帝陛下を連れ去ろうとしております!」
「何やと!?」
「あの竿なし……動きあったか!」
………………張譲って誰?
〜玉座の間・趙忠サイド〜
「はあああああ!!」
私たちの前に突如現れた張譲の率いる軍隊。本人は現れていないが、目的は
「お、お姉ちゃん……」
「大丈夫よ白。安心して」
そういう空丹様の手も震えている。こういう時、力がないことを後悔する。
「大人しく皇帝陛下両名をこちらに渡せ!」
「断る! 陛下に刃を向ける者たちなぞ信用出来ん!」
しかし、現状を見る限りでは明らかに不利。もしも、華雄様がやられてしまったら……その時は覚悟を決める時です。
「趙忠……いえ、
「………………」
今思えば、力を手にした時から我らは変わった。国の為より己の欲を優先し、今がある。もしも、この地位にいなければ……我らは狂わなかったのかもしれない。しかし、全て遅すぎた。
「お二人とも……今までありがとうございました」
「ッ! 馬鹿を言わないで! 絶対に諦めるんじゃないわよ!」
普段ならとても気持ちいい罵声だ。しかし、今の私はひどく落ち着いている。ふふっ……ですが、悪い気ではありません。
「華雄様! お二人を連れてお逃げください!」
「ッ! 趙忠様はどうなされるのですか!」
「……私とて陛下に命を捧げた人間です」
包丁なら慣れている。だか、剣を持つのは初めてだ。ひどく震えているのがわかる。私なんかが戦っても時間稼ぎすらならない。しかし、此処でやらなければ心すら張譲らと同じ。私は違う!
「やめなさい黄! 此処はみんなで逃げるのよ!」
「……本当にありがとうございました。空丹様、白湯様」
「「ッ!!」」
私が真名を言う時は……命を落とす時と教えていた。
「やめて……やめてえええええ!!」
白湯様が悲鳴をあげたその時である。突如一部の天井が崩れたのだ。
「な、何だ?!」
向こうも何が起きたのかわかっていない様子。そして砂煙が晴れると……
「ん? 適当に突っ込んだが当たりだなこれは」
お二人を救って下さったお方の姿があったのだ。
〜臧覇サイド〜
なんかトップ姉妹が襲われていると聞いたから地面を思いっきり踏んで空を飛び、城の適当な場所に突っ込んだら目的の部屋だった。日頃の行いが悪いから運が味方したのかな?
「き、貴様! 何者だ!」
「え? 俺? ん~~……悪者だ!」
そう言って俺は回転斬りを行い、数人を吹き飛ばす。何これめっちゃ楽しい。
しかし、何人かが生き残っており俺を囲む。
「目的は皇帝陛下のみだ! 此処で手こずっているようで」
「死ね」
隊長格の人が言っている途中で呂布さんが降ってきて真っ二つになってしまった。
「りりりり呂布?!」
「た、退却!!」
呂布さんが登場した瞬間、謎の集団は退却していった。さて、まずは安全を確保出来たな。トップ姉妹は無事かな?
「……ッ! 兄様!」
すると妹さんが俺の胸に飛び込んできた。というよりいつのまに俺たち兄妹になったの?SoulBrotherなの?
「本当に……本当にありがとうだもん!」
満面の笑みを見せてくれる妹さん。
もしも、此処で強くて優しい万能なイケメン主人公なら頭を撫でて爽やかに笑う場面だ。
だが、俺は違う!
「………ふふふ」
「?……兄様?」
格好の餌が飛び込んできたわ! 此処で離すなよ俺!
そう思っていると……
「伝令! 張譲の軍勢は退却していったのこと! 現在、安全確保を董卓様らが行っております!」
ふん! 俺の邪魔をするからこうなるのだ。さて、妹さんは俺を信頼しているが、それを利用し、連合軍に地獄を見せてやるわ!
「流石は竿なしの軍だ。女々しいことこの上ない」
「こんなのに振り回されていたなんて恥よ」
「ホンマあの竿なし……絶対殺す!」
お! ちょうど目的の2人と張遼さんも到着したな! よし、ならこのまま……
「おーっほっほっほ!」
………………いやいやいや。まさかそんなことはない。きっと欲望が溜まり過ぎて幻聴が聞こえてきたんだよ。うん。
「袁紹、曹操もよくやった。褒めてつかわす」
「ありがたく受け取ります、何進将軍」
あれれー? おかしいな? 金髪でクルクルの髪型をした女の子が2人見えるぞー?
「あら? ……劉さん?」
「……やはり動いていたのね」
「え、袁紹に曹操?!」
汗が止まらない。な、何故だ。何故……此処にいるのだ?!
「貴様らは連合軍を作っていたのではないのか!?」
「まぁ! 流石は劉さん! もうそこまで知っているのですね!」
「御託はいい! 質問に答えろ!!」
「……確かに予定ではあったわ。だけど、余りに不審点が多く、もう一度私と麗羽で何進将軍に話をしようとしたのよ」
「その途中でちょうどお会いしたかと思えば……張譲らが皇帝陛下を攫おうとしているとの情報が入りましたの」
………………………………うん。
「私たちも出来る限りをと思いましたが……その前に劉さんが動いていたようですね」
「………………違う。高順」
「……劉さんですわよ?」
「……違う」
何だよこれ?
「それにしても貴女、中々の腕ね。ウチにどう?」
「おおきに。けど、今はええわ」
そもそも、あの戦いって劉備さんとかが活躍してとか……夏侯惇さんの目がやられてとか……どうなるの?
「兄様」
放心状態の俺を呼ぶ妹さん。
「今回、朕たちが不甲斐ないばかりに兄様や多くの人を巻き込んでしまった。本当に申し訳ない。そして二度も朕たちの命を救ってくれたことに感謝する」
「……わらわたちも救われた。なぁ
「ええ。これまで会った男の中で1番よ。ふふっ」
「朕も。黄も救ってくれたし、感謝しかないわ」
「ああ〜……ま、また真名で呼んでくれました!」
「うるさいわよ趙忠!!」
お偉いさんらから感謝の言葉を貰う俺。
違う……違うのだ。俺はこんな結末は望んでない!
「皇帝陛下らから感謝されるとは……」
「ウチもはじめて見るで。せやけど、そんくらいのことはしてるからええわ」
「………………凄い」
「流石なのです高順殿!」
やめろ……俺に感謝の言葉を言うな!
「私たちも危うく道を外れるところだったわ」
「ですが! 劉さんが皆を救ってくれました! これこそ袁家の婿としてふさわしき殿方ですわ!」
「………………え?!やっぱりこの男だったの!?」
ターゲット2人からも祝福を貰う。違う……違う違う違う!!
俺は……俺はああああああ!!
「これで勝ったと……思うなよーー!!」
「「「ッ!!?」」」
この空気に耐えきれず俺は再び空の旅に出た。
俺は諦めない! 諦めないぞおおおおおおおおおお!!!
かくして皇帝陛下を巻き込む事件はある1人の英雄によってことなきを得た。しかし、事態の大きさ故に目を瞑ることが出来ないと判断した皇帝陛下両名は生前退位を決める。それに伴い、騒ぎを止められなかった何進将軍もまたその座を降りる事を決意。
これは大陸全土に広がり、群雄割拠の時代へと続く……
余談だが、皇帝を救った英雄が各地を救った“名無しの救世主”だと噂され、市民の希望の象徴となりつつあったのである。
〜???〜
「本当にこれで良かったの? 月?」
「うん」
皇帝陛下を守っていた董卓と賈駆は今、城を離れている。
「それにしたって……」
「お二人とも無事を確認出来たし、あのまま私たちが出てもややこしくなるだけだよ」
「……まぁね」
「それに……また恩が増えちゃったから」
「ゆ、月? 落ち着いてね?」
その目に光はなかった。
「董卓様……準備が出来ました」
「ありがとうございます。それではお願いします……」
そして董卓はある人物たちに頭を下げる。
「こちらこそよろしくお願いします」
「ちぃたちと一緒に神様の力になりましょう!」
「これも全て神様の想いだよー!」
この瞬間、董卓と賈駆は自分の名を捨てるのであった。
董卓編を長く書こうかなと思いましたがそれだと独自展開っぽくないと思い、こういった展開になりました。苦手な方は注意ください。
これ……恋姫を借りた何かの小説ですので。
ありがとうございました。