悪役(?)†無双   作:いたかぜ

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ヤンデレタグを増やしました。
理由?
……本編をどうぞ!


第10話

〜洛陽・臧覇サイド〜

 

 

臧覇です。前回、呂布さんに衝撃的な通告を受けてから記憶が曖昧な状態になっておりました。そして意識がハッキリした頃には何故か呂布さんの部屋にいました。

そしてそして現在は……

 

『ワン!』

『ニャーン』

『ピヨピヨ』

『■■■■■■■』

 

動物に囲まれながら、戯れております。さながら飼育員状態です。どうやら俺は動物に懐かれ体質のようで、身体の至るところに動物が絡みつく。

というより1匹、完全に地球外生物がいるんすけど……大丈夫だよね? SAN値チェック必要?

 

高順(こうじゅん)殿! 次は張々もお願いしますぞ!」

 

そう言って愛犬を渡してくれる呂布さんの軍師、陳宮(ちんきゅう)さん。最初はメチャクチャ警戒されていたのだが、陳宮さんの愛犬である張々がものすごく俺に懐くのを見て警戒を解いたらしい。基準緩くないっすか?

ちなみに高順とは此処での俺の名前です。

 

「了解しました。張々、こっちにおいで」

「バウ!」

 

よしよし可愛いな。だからね、少し落ち着いて。俺の足は食べ物じゃないから。こらこらやめなさい。やめなさ……やめんか!

 

「相変わらず張々は高順殿が好きですな!」

 

違いますよ陳宮さん。コイツは俺のこと、非常食くらいしか思ってないないですよ。つーかマジで離せよ!

そんな感じで動物たちとじゃれ合っていると……

 

「ふふっ。みなさん、今日も元気ですね」

「………………」

 

今の上司である呂布さんとその更に上司の董卓(とうたく)さんの登場である。

 

(ゆえ)殿に恋殿! おはようですぞ!」

「おはようございます。董卓様に呂布殿」

「はい。おはようございます」

 

原作通りに淑やかで可愛さが残る人だ。なんかもう……浄化されそうです。

 

「…………ねね」

「わかっておりますぞ! すぐに準備してくるであります!」

「では俺は董卓様の護衛に移ります」

「…………お願い」

 

口数は少ないがある程度話していると大体わかってくる。習慣って怖いね。

そもそも新参の俺が董卓さんの護衛なんて引き受けていいのか? 華雄(かゆう)さんや張遼(ちょうりょう)さん辺りが妥当じゃないのかな?

 

「いつもすいません……まだまだ治安が悪く、皆さん忙しいので」

 

ということらしいですよ。

黄巾の乱以降、規模は少なくはなったがまだまだ荒れ放題の地域が多く、その度にみんな頑張ってる。

 

「いえ……このような新参者には余る任であります」

「け、決してそのようなことはないかと。高順さんはとても頼もしいですよ」

 

何すかこれ? 天使かな? ダメだ、眩しくて見てらんない。

 

「…………行ってくる」

「ではでは参りましょう!」

 

そう言って2人は姿を消す。残ったのは俺と董卓さんと動物たちである。張々、そろそろマジで離してくれない?

 

「今日はこれといった仕事もありませんので、此処でゆっくりしていきましょう」

「了解です。ではこの高順直伝の動物たちの芸を披露致しましょう」

 

俺は手を挙げると鳥たちが一斉に俺の目の前に集まり、輪っかを作る。次に犬や猫、地球外生物がその輪っか目掛けて走り飛び越えていく。

 

「わぁ〜……凄いです!」

 

その芸に董卓さんはとても喜んでいる。

 

「この子らは優秀です。董卓様、手を出してみてください」

「え? こ、こうですか?」

 

董卓さんが手を出すとその手にリスが止まり、花をプレゼントした。

 

「わぁ〜……ありがとう、リスさん」

 

何この萌兵器……こんなん見せられたら俺の悪なんて馬鹿みたいだな。

そんな感じで動物たちの芸を見せていると……

 

「こんなところにいたのね(ゆえ)

「あ、(えい)ちゃん」

 

眼鏡軍師である賈駆(かく)さんの登場である。

 

「どうしたの? 今日はこれといった仕事は……」

「仕事じゃないわ。ボクも時間が出来たから遊びにきたの」

「あ、そうなんだ」

 

そういって董卓さんの近くで座る賈駆さん。

……それと同時に一瞬だが、俺を睨みつけた。

 

「今、高順さんが動物さんたちと芸を披露していたの。みんな凄くて面白いよ」

「ふ〜〜ん……」

 

賈駆さん……というより、華雄さんと張遼さんもだが、俺のことは信用していない。ここ最近、霊帝付近の動きが怪しいらしく、警戒を強めてる。

その中で呂布さんが俺を連れてきたのだ。怪しくないわけがないだろう。逆に呂布さんや董卓さんが甘いと思う。

 

「ま、そんな凄い芸ならボクも見ていこうかしら」

「ホント? ……高順さん」

「お任せあれ」

 

疑うのも仕方ないさ。だけど、足を洗ったのだ。

俺はもう董卓さんの優しさで目が覚めたのだ。あんな馬鹿みたいに悪を目指すより、この人の笑顔のためなら頑張れる。

 

「ではまず、このクトゥルフの名状しがたい踊りを……」

『■■■■■■▲▲▲▲▲▲!!!』

「……お願いだからそれは見せないで」

 

……やっぱりダメだよな。

 

 

〜深夜〜

 

 

「………………」

 

この次に起こるのは虎牢関の戦い……所謂、董卓討伐だ。確か無実の罪で大軍と戦うことになるんだよな?

それはマズい。そうなってしまっては……

 

「董卓を人質に出来ないではないか!」

 

先ほど足を洗ったと言ったな? あれは嘘だ。

呂布さんが俺は悪に向いてないと言っていた。それで「はいそうですか」と諦めるなら最初から真っ当な人生を送ってやるわ!

だが、俺は運がいい……今いる状況はとても素晴らしいのだ。数人に疑われているこの状況。最高のくっころイベントではないか! しかも今回、有能な部下たちもいないときた。誰も俺を邪魔する奴はいないのだ!

 

「賈駆は強気な性格と董卓を大切にしている。必ずくっころイベントへと持っていける。そのついでに、張遼と華雄も一緒にくっころだ……」

 

ククク……決行は明日の朝。この時は全員が食事をする日となっている。ならば狙い目は此処。

 

まず食事は普通に行なう。そして皆が食べ終わった時、俺が作ったこの“衝撃で爆音がなる爆竹”を入り口付近に投げる。この爆音で全員がその音の方へと向くが俺だけは董卓の方へ移動する。一瞬さえあれば董卓さんを確保出来るのでその後は……お待ちかねのイベントだ。

 

「今回こそは上手くいく……これで俺は大悪党になれるのだ!」

 

悪は諦めん……絶対にだ!

 

 

〜王座の間〜

 

 

「モキュモキュモキュモキュ」

「恋殿〜!? それはねねの分ですぞ〜!」

「アッハハハ! しゃーなしや、ねねっち。恋の近くで食うてるアンタが悪い」

「くっ……大食いでも呂布に勝てんのか!」

「…………何やってんのよ」

 

皆さんとても楽しそうに食事をする。心なしか董卓さんも嬉しそうな顔をしてらっしゃる。

俺は新参者なので黙って食べる。クッソ、顔のフードが邪魔で食べにくいな。

 

「高順殿? どうされたのですか?」

「いえ、皆さん楽しそうに食べているので……」

「……なんや悪いんか?」

「まさか。羨ましいと思っております」

「……ふん」

 

おうおう当たりが強いのう張遼さんに華雄さんよう。此処から地獄を見るなんて想像もしとらんのにな……。

 

「……喧嘩は、ダメ」

「み、みなさん、楽しく……」

 

食事をしていた呂布さんと董卓さんが止めに入る。あいも変わらずお優しいことだ。だが、まだだ。焦るな俺……チャンスは食事が終わった時。

そして皆が食べ終わり、食器等を片付け……

 

「それじゃあこのまま軍議に……」

 

賈駆さんが立ち上がった。

今が好機! 袖の中にしまっていた爆竹を素早く取り出す。

 

「ッ! ちょい待ちぃな!」

 

チィ! さすがは張遼さん! だがもう遅い! 俺は爆竹を入り口付近に投げ捨てる。

そしてその爆竹は凄まじい音を鳴らす。

 

「「「ッ!!」」」

 

皆がその音の方へと顔を向ける。よし! このまま董卓さんの場所だ!

そう思った矢先……

 

「馬鹿なッ!? 何故バレた!?」

 

俺が投げた場所に、数人の男たちが現れた。

………………………………どちら様ですか?

 

「やっぱ、動いておったか! 華雄ッ!」

「ああ!」

 

その男たちを見てすぐに臨戦態勢に入る2人。呂布さんも既に得物を手にしている。

 

「せぃやああああああ!!」

「うぉりゃああッ!!」

 

な、何か戦いが始まっているが関係ない! 俺は俺の計画だ!

そして俺はすぐに場所に移り……

 

「……ッ! 月ッ!」

「え?」

 

董卓さんの手を取り、俺の元へと引っ張った。や、やった!!

そう思った矢先……

 

「ガッ!!?」

 

俺の背中に何かが刺さったのだ。

 

 

〜詠サイド〜

 

 

最近、宦官の動きが怪しい。皇帝を思うままにしようと模索しているのか、邪魔だと思った奴らは亡き者にしようとしている。世の情勢など気にせず、己の欲のままに。

そんな奴らのために月を巻き込みたくない。だから、(しあ)と恋、そして華雄をなるべく月の側近に置こうと頑張っていたが、世はそれを許さない。黄巾党に始まり、続々と荒くれ者たちが暴れているのだ。

さすがに放置にすることは出来ず、各地に配下を派遣する。この時のボクは本当に生きた心地がしなかった。

 

そんな状況が続いていた時である。恋から紹介したい人がいると言われたのだ。

 

「高順と申します。よろしくお願いします」

 

顔を隠した男であった。いくら恋の紹介とはいえ怪しすぎる。顔のことについて尋ねてみたら……

 

「大変申し訳ありません。私は顔を見られてしまうと全身の穴という穴から血が噴き出してしまう病気でして……」

 

それは病気ではなく、呪いよ。こんな男を月の側に置きたくないが、恋は大丈夫との一点張り。とりあえず霞と華雄には報告して何かあれば動ける準備だけ用意することにした。

そんな心配をよそに月はどんどんと仲良くなっていく。ねねも注意するようにと伝えていたが既に仲良くなっていた。だからボクは自分でも月に付き添うようにした。しかし、この男は動かなかった。

そして久々に集まる機会があり、朝は皆で食事をすることにした。

 

「ふふっ……」

 

やっぱり月も楽しそうな顔をする。それを見たボクも笑顔になる。

食事も終わり、そのまま軍議に移ろうとした。

その時……

 

「ッ! ちょい待ちぃな!」

 

霞が大声を出す。ボクはすぐに男の方を向くと何かを投げる様子が見えた。

 

「やっぱり……!」

 

何かを投げた瞬間、ものすごい爆音が響いた。嫌でもそちらに顔が向く。

すると……

 

「馬鹿なッ!? 何故バレたッ!?」

 

謎の集団が現れたのだ。きっと宦官たちの送った刺客だろう。いつかは来ると思っていたので霞と華雄はすぐに対処に移る。

ボクはあの男が気になりそちらに視線を移すと既に月の近くであった。

 

「……ッ! 月!」

「え?」

 

だが少し遅かった。男は月の手を引っ張ったのだ。

その瞬間……。

 

「ガッ!!?」

 

男の背中に数本の矢が刺さったのだ。まだ隠れていた刺客の矢である。あのまま何もしなければ月に襲っていた矢。

 

「……え?」

 

この男……月を守ったの?

 

「クソッ! 邪魔がはい」

「……死ね」

 

その刺客たちも悲鳴もなく恋の手によって首が飛んだ。

それはともかく……。

 

「高順さん! しっかりして下さい!」

「高順殿! 高順殿!!」

 

今、倒れているこの男は確かに月を守った。なら最初からボクの勘違いだったの? もしもボクが追放してたりしたら月が……死んでいたの? ボクは……ボクは……。

 

「しっかりせんかい詠っち!」

「……霞?」

「落ち込むのは後や! 急がんとこの男、くたばってまうで!」

「罪悪感に浸る時間はないぞ。先にどうするか考えろ」

 

霞も華雄も焦りながらもこの男を救おうとしている。ボクだけが何もせずに呆然としていた。

……ボクの馬鹿。まずはコイツを救うのが先なのに何をやってたんだ!

 

「みんな落ち着いて! 華雄は応急処置に心得がある人を探して! 霞はそのまま医者を呼びに……」

「いってええええええ!!!」

 

………………は?

 

 

〜臧覇サイド〜

 

 

「いってええええええ!!!」

 

何かが刺さったあああああ! メチャクチャ痛いいいいい!

 

「こ、高順さん?!」

「と、董卓様……今、私の、背中は、どうなって、いますか?」

「え、えと……や、矢が刺さってます」

「はぁ?! ふざけんなよ死んだらどうすんだよマジで!」

「落ち着くのです高順殿! 本来なら死んでますぞ!」

「黙らっしゃい!!」

 

つーかマジで痛い! とりあえず誰か助けてお願い!

 

「…………えい」

「ゲロッピ!?」

 

呂布さん……助けてくれたのはありがたいんですけどもう少し優しく抜いて下さい。

 

「えと……少しええか?」

「あ、はい、どうされましたか?」

「いやいや、自分、大丈夫なん?」

「そうですね……特に問題ないと思います」

 

背中の傷は既に塞がっており、血も出ていない。やはり此処らはチートの恩恵を貰ってるな。

 

「はぁ〜〜……なんやえっらい疲れたわ」

 

頭を抱える張遼さん。そういえば今どうなってるの?

 

「高順さん」

 

真っ直ぐな目で俺を見つめる董卓さん。この時に俺はある確信をした。

 

「このような事態に巻き込んでしまって申し訳ありません」

 

あ〜……今回もダメだったんだな。

 

「もしも、あの時に助けてくれなかったら私は此処にいなかったと思います」

 

もうこれはどうしようもないわ。しかも今は怪我しているから下手に暴れらんないし……。

うし、切り替えよう。チャンスはいくらだってあるんだし。めげずに頑張るぞい!

 

「言葉なので恩は返せないとは思っています。ですが、聞いて下さい」

 

そう言って董卓さんは俺の手を取り……

 

「本当に……ありがとうございました」

 

慈愛に満ちた笑顔で感謝をした。

 

「………………」

 

その時である!

俺の心の中にある悪の波動と慈愛の擬人化である董卓さんの善の波動がぶつかったのだ。この波動は全て俺の体内に蓄積されて未知数の塊となっていく。その塊はすぐに大きくなり、限界点に到着する。

その結果……

 

「ぐわああああああ!!?」

 

壮絶な痛みへとなったのだ!

 

「こ、高順さん!?」

「あかん! さっきの矢に毒が盛っとったんか!」

「霞! すぐに医務室に運んでちょうだい!」

 

お、おのれ董卓=サン! なんと凄まじい善だ! 人間が持てる善の数値ではない!

み、認めよう董卓=サン! 貴様は俺の最大の敵だ! しかし、今回仕留めなかったのを呪うがいい!

 

「ッ! 全員、下がれ!」

 

華雄さんが全員に指示をして、俺から離れる。

 

「サ……サヨナラッ!!」

 

直後、俺は膨大な気を爆発させる演出をする。残ったのは董卓さん御一行のみとなる。

 

 

〜詠サイド〜

 

 

高順は突然爆発したかと思ったらその場にいなくなっていた。

 

「……な、なんなのよ、アイツ」

 

結局、アイツは何がしたかったのかわからないまま。敵か味方かも判断できない。だが、月を救ったのは事実である。それだけはちゃんと礼をしたかったわ。

 

「…………詠ちゃん」

「? どうしたの月?」

「このままじゃダメだよね」

「……え?」

「何も恩を返せないままなんて……ダメに決まってるよね」

「ゆ、月?」

「ちゃんと恩返しをしなくちゃ……恋さん」

「…………ん」

 

恋は何か感じとったのか、すぐにその場からいなくなる。

 

「詠ちゃん」

「は、はい!」

 

あまりの凄みに思わず敬語になるボク。

 

「詠ちゃんもしたいよね……恩返し」

 

いつもの優しい笑顔を見せる月。しかし、その目に光はなかった。

 

「も、もちろんよ!」

「そうだよね……ふふっ」

 

 

これ以降、普段と変わりないいつも通りの月に戻っていった。しかし、アイツ関連となるとこの時の月になってしまうのだ。

 

もしかしたら……アイツはどの勢力よりも厄介なのかもしれない。そう思うボクなのであった。




というわけでヤンデレが増えました。
ますますくっころから離れていきますね。

それでは次回もよろしくお願いします。

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