⑦
1月30日。
「――新しいキラ、か」
〈派手に動き出したらしいな……貴様はどうする?〉
「無論、回収する。この手でノートを管理し、隠匿する。利害は一致するからな」
〈眼の取引は?〉
「せんよ。せずに済むならばそれに越した事はない」
〈なるほど、ではノートを集める手立ては?〉
「簡単だ。ノートとは別の力を使う……
風見はスマートホンを手に取り、連絡をつけた。相手は政府高官で、警察にも伝手を持っている男だ。
「それにしてもヒウ……他の5冊のデスノートと5人の死神の居所について心当たりはないのか」
〈ねぇよ。日本に集まる可能性が高いとは思うが、全員集まると断言はできねぇ。ノートの集め方や所有者の選び方は死神によって違ぇからな。ノートを集められるだけの能力がある奴に預けるのは確かだが〉
「何故死神自身がノートを地に落とし、死神同士で管理しない? 人間界に落とすのはまだしも、人間の手を介する必要はあるのか?」
〈1つには、誰が裏切るかもわからねぇって理由があるな。それと、やっぱ人間界の事は人間にやらせた方が良いだろうってハナシだ〉
「死神も一枚岩ではない、か。神を名乗る割には随分と謙虚な自己申請だ」
〈へっ……マフィアには言われたくねぇよ〉
「強いてカテゴライズされるならそこに振り分けられるのは認めるが、生憎俺にも筋と道理はある。お前もそれを知っているから、俺にノートを渡したのだろう」
〈ああ、貴様は御誂え向きの人材だよ。風見〉
返信があるまで本業を片付けながら、風見はいくつものメールアドレスやスマートホン、携帯電話を使って連絡を取る。
〈そういや、千切ったページはどう使うんだ?〉
「実験と目眩しと、仕事の一環だ。殺しが必要なら撒いたページにメモを加え、それが殺人に繋がると本人にも悟らせないように名前を書かせる。幸いこの業界には、電子媒体でない方が都合の良いケースもあるからな。不自然ではない」
〈へっへっ……自分では名前を書かないんだな〉
「当然だ。折角所有権を破棄したのだから、手間を増やすつもりもない」
風見龍兵は、俗に言う裏社会を牛耳る男だ。自分の影響力の及ぶ地域で薬物取引などを管理し、そこから漏れた者は現地警察との繋がりを使って取り締まる。そういう陰の権力を持っている。広範に渡る情報収集力と支配力は、ノート争奪戦においては一定のアドバンテージを発揮するだろう。
二重三重の隠蔽によって風見龍兵という男の名前や風貌、それどころか存在を知る者はかず少ない。だからこそ、ヒウは風見をノート所有者に選んだのだ。