プロローグ
キラが世界から消えて、ちょうど7年が経った。
キラ。
犯罪者を筆頭に社会的な悪人を裁いていった、新世界の神。
本来法で裁かれるべき者たちを己の裁量ひとつで殺した、大量殺人者。
デスノートと呼ばれる死神のノートを用いて、他者の名をそこに書く事で心臓麻痺などの死を振り撒いた人間。
夜神月。
彼は世界を変えた。
人間の世界だけではない。
死神の世界すらも。
7年の間で何冊ものノートが死神界から人間界へと落とされ、人々の手を渡り、誰かを死なせた。その多くは、只人には過ぎたる力に呑み込まれ、翻弄され、押し潰されていった。
しかし極稀に、ノートを使い己の望みを果たさんとする者たちもいた。だがそれは泡沫の夢と終わる。
Lと呼ばれる男によって。
L。
世界中の警察を動かすことができると言われている、唯一の男。
世界最高の探偵。
今のLは3代目だ。
初代は
そして夜神月がキラであると明かし、その死を見届けキラの存在に終止符を打ったLの後継者、ネイト・リバー――通称ニアが3代目を襲名した。
7年。
幾人もの死神が人間界にノートを落とした。その裏では、死神界の混乱があった。
人間界に落とすノートを確保する為に死神大王を欺いたり、他の死神からデスノートを盗む者が現れ始めたのだ。
腐敗し堕落していた死神界で、ノートを盗まれ人間の寿命を得られず死んでいく死神が増え始める。本来死神の死などそうそうあるものではなかった。
何故死神が存在しているのかはわからない。
しかしおいそれと死に絶えて良いものでもない。
そう考えた6人の死神は、人間界からデスノートがなくなった時点でそれぞれノートを落とした。
人間界で機能できるデスノートは6冊まで。それ以降人間界に落ちたノートは効力を発揮しなくなる。つまり、これ以上の死神界から人間界へのノート流出を止めようという事だ。
人間界でどうノートが使われても構わない。とにかく人間界でノートが消滅しないようにする。
それが6人の死神、チコ、ヒウ、ヲンス、セーヘル、グド、ニュケイの共通の目的だ。
6人は各々、その目的の為に最も適格だと見込んだ人間の下にノートを落とした。
地上に舞い降りた6冊のデスノート。
ノートを手にした6人のノート所有者。
ノートを人間に守らせる6人の死神。
ある者は新たなキラとなり。
ある者はLになろうとし。
ある者はキラを捕らえようとし。
ある者はキラの命を狙い。
ある者はノートを隠そうとし。
ある者はノートを蒐集しようとする。
それぞれの目的と意志が交錯するゲームが始まった。