物語の執筆者   作:カボチャッキ―

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少し編集しました。


第二十七話

 遠い遠い昔の話、遊牧騎馬民族の大王である女性はある男と二つの約束をした。一つは、‘あなたが文明を破壊しないように一緒にいます。もし破壊しようとしたら止めます’というもの。そして二つ目は‘お前は私の虜である。そして私はお前の虜だ。だからどんな時でも私といてくれ。絶対に他の女性とは駄目だぞ’というものである。一つ目は男から。二つ目は女性からの約束であった。

 

 男性はこの約束をこの生涯のみであると考えた。しかし、女性は……。

 

 

「レフううううううううううううう!」

 

 俺は久しぶりに怒鳴った。俺の声にびっくりしているマシュちゃんや藤丸君には悪いが俺は怒りでどうにかなりそうだった。

 

「ロムルスに続いてアルテラにローマを破壊させるだと。ふざけるなよ! ロムルスがどんな思いでローマを建国したのか、アルテラがどれほど嘆きながらローマを滅ぼしたのか知らないくせに!」

「だから何だと言うのだ。虫けらが吠えるな! 建国者と終焉者がローマを破壊する。これこそ人類史の最後には相応しいではないか! ふははははははははは!」

「貴様ああああああああ!」

 

 絶対にこいつだけは許せない。殺してやる、絶対に殺してやる。

 

 俺の憎しみが伝わったのか全員が臨戦態勢に入る中ジャンヌとネロが俺の隣に来て肩に手を置いた。

 

「落ち着いてください。怒りで我を忘れてはいけません」

「そうだぞ。怒っている顔はお前らしくない。お前には笑顔が似合っておるのだから」

 

 二人にそう言われて少し落ち着いた。レフはすでに死にかけ、アルテラも強いとは言ってもこのメンバー全員なら勝てるはず。

 

 俺は二人にお礼を言ってから、深呼吸して前を見た。アルテラは前世と同じように変化の乏しい顔でこちらを見ている。

 

 レフは俺の怒りに満足したのか笑いながら言った。

 

「見ているかオルガ、そしてロマニ・アーキマン! 人理が滅ぶその瞬間を!」

「黙れ」

 

 ぼそっと呟いたアルテラは剣を振りレフを切った。

 

「な…に…」

 

 何が起こったのか理解できないレフは呆然としながら床に倒れた。

 

「何故……」

「私はフンヌの戦士であり、大王だ。何より、私は文明を壊したくない」

「ふざけるな! 私はお前を召喚した! 無理やりにでも言うことを聞かせる。聖杯よアルテラに、このローマを滅ぼさせろ!」

「死ね」

 

 叫ぶと同時にレフはアルテラによって首を飛ばされた。転がったレフの頭は何も話さなくなった。

 

 レフに言いたいことがあったのに今はそれどころでは無くなった。あいつは最低なことをしていきやがった。このままでは彼女がローマを滅ぼしてしまう。

 

 焦っているとレフが使用した聖杯はアルテラに吸収された。するとアルテラは先ほどまでは機嫌の悪そうな顔をしていたのに対して今度は無表情になった。

 

「私は世界を滅ぼす」

 

 彼女が愛用していた三色蛍光ペンの剣を前に構えた。するとその剣が回りだした。それは前世で何度か見た彼女の剣が真価を発揮する前兆であった。

 

「マズイ! ヤバいの来るぞ!」

「分かっています、ジャンヌ、マシュ、宝具解放だ!」

「はい!」

 

 藤丸君が令呪を発動したことによって二人はすぐに宝具を発動した。俺のサーヴァントには防御できるやついないなと思いながら、二人に守られた。

 

 そしてアルテラの宝具が発動したのだった。

 

 

 俺たちは無事に生き残れた。藤丸君があそこですぐに令呪を発動していなければ俺たちは全滅していたかもしれない。そしてアルテラの宝具から生き残っていたブーディカや荊軻と合流した。スパルタクスと呂布は直撃してしまったらしい。

 

 荊軻にアルテラの偵察を頼みながら全員で今後について話し合う。

 

「これから、どうするんですか?」

「止める。アルテラにこんなことさせるわけにはいかないからな」

「その通りだ! 神祖にもローマを守ると約束したのだ。何があっても後世にローマを繋いで見せる!」

 

 ネロの言葉に全員が頷く。そのタイミングで荊軻が戻ってきた。

 

「奴は歩きながらゆっくり移動中だ。すぐにでも追いつける」

「よし、皆の者追いかけるぞ!」

 

 俺たちは走り出した。しかし、アルテラを追いかける途中、聖杯の影響で現れたワイバーンに足止めをくらってしまったが簡単に突破して彼女の前に立った。

 

「行く手を阻むのか」

「当たり前だろう。約束したからな、‘あなたが文明を破壊しないように一緒にいます。もし破壊しようとしたら止めます’って。約束はちゃんと守る」

「約束……?」

 

 少し動きを止めるアルテラ。俺とした約束を彼女が忘れてしまったのか、それとも聖杯によって記憶を変えられたのかは分からない。でも俺がすることは変わらない。

 

「余は貴様を絶対に先に行かせない。この世界は美しいものであふれている。それを貴様に破壊されてたまるか!」

「……私は破壊の大王、ただ壊すだけ」

「会話では止まらぬか、ならば実力で止めてみせよう。春樹、立香、力を貸してくれ。これが最後の戦いだ!」

「はい!」

「おう!」

 

 

 アルテラとの戦闘は苛烈であった。しかし、こちらはサーヴァントが六人ということもあって無事に勝つことができた。

 

そして、彼女は地面に倒れ伏して空を見上げている。

 

「アルテラ……」

 

 消えかけている彼女に近づく。

 

「ああ、●●●●か。思い出した」

「忘れるなよ、お前は俺の虜なんだろう」

「違う、お前が私の虜なんだ」

「どっちもだよ」

「そうだったな」

 

 アルテラはずっと見せていなかった笑顔を俺に見せた。

 

「約束を守ってくれてありがとう」

「当たり前だろう。約束は絶対に守るって約束したじゃないか」

「そうだったな。ああ、こうしてお前と再び会えて嬉しいのにすぐにお別れなんて悲しいな」

「きっと、会えるよ」

 

 少し泣きそうになりながら言った。

 

「そうか、ならよかった。また会おう。そして会ったら約束を守ってもらおう」

「ああ」

 

 アルテラは満足そうに消えた。

 

「ああ、また会おう」

 

 俺が呟いた後ろでは藤丸君が聖杯を回収した。ネロとの別れが訪れた証拠だった。


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