SIDE◯◯
奈良県吉野郡の八経ヶ岳。ここには魔化魍の天敵と言える鬼を率いる『猛士の総本部』がある。
1年に数回の会議か緊急時の緊急会議の時のみ各支部の王と呼ばれる支部長と一部の許可を許された音撃戦士が参加する。ここに1人の角、音撃戦士が到着した。
彼の名前は練鬼。総本部直属の若く優秀な鬼である。
「せっかく関東支部に挨拶行こうとしたのに」
「まあまあ落ち着いてください」
「そうです。それに緊急会議はしょうがないですよ」
「まあ、何年かに1度しかない緊急会議ですから」
「はぁ〜まあ直属だからしょうがないか」
僕の隣で慰めてくれるのは関東地方の王 箱田 了と金の箱田 あかりの2人である。ちなみにこの2人は親子である。
緊急会議に呼べれて、東京からとんぼ返りで総本部に戻るとは思わなかった。思えば、僕が総本部に直属になって2年も経つのか。
しかし、今回の緊急会議はいったいなんでしょうか。そう思ってる間に、会議室の部屋に着く。
扉を開けるとそこには、北海道の王、東北地方の王、関東地方の王、近畿地方の王、四国地方の王、九州地方の王が席に座って待っていた。
空いてる席から後は中部地方の王と中国地方の王が来ていない。
「おお。来たか練鬼」
緑の服を着た男性、近畿地方の王をする大塚 拓己が話しかける。
「総本部直属 練鬼ただいま戻りました」
「ほほう。彼が練鬼か噂はよく聞いてるよ」
白い髭を生やした老人が話しかけてくる。この老人は九州地方の王 千葉 武司。昔は白鬼という音撃戦士だったが、引退して今は九州地方の王をしている。
「久しぶりだね練鬼」
着崩した和服を着た女性が挨拶してくる。この人は北海道の王 水野 絵梨奈さん。ここ総本部に来る前にお世話になった人である。
「ねえ〜練鬼〜いい角いない?」
怠そうに喋るこの人は四国地方の王 加藤 勝が僕に相談してくる。
「おお練鬼! これお土産な」
紫の風呂敷に包んだお土産を渡すのこの男性は東北地方の王 三原 春。今の王の中では最年少の王だ。
「いや〜すまんすまん遅れたよ」
「何故、私まで……男の………」
僕の後ろから入って来たのは中部地方と中国地方の王の2人である。遅れたのを全然反省していないのが中部地方の王 飯塚 徹。その隣でブツブツ文句を言っているのが中国地方の王 若草 みどりの2人である。
2人は席に座り、テーブルに全員座ったのを確認した僕は奥にいる人に話しかける。
「全員揃いましたよ武田さん」
テーブルの一番奥で腕を組み、目を瞑っている人。猛士の総本部のトップ 武田 烈火その人であり、僕の師匠でもある。
「では、今日の緊急会議の議題を言おう」
その言葉により、さっきまでとは違う空気が漂う。ふざけていた徹さんですら、真面目な顔になる。
「魔化魍の王が現れたようだ」
その言葉は各支部の王を驚かせた。
「遂に現れましたか」
「ほぉう」
「以前の王が現れたのは
「そうだな。
だが………と烈火さんは言った。
「武田さん、今回の魔化魍の王は今までと何か違うのですか?」
「!!! 流石だな練鬼」
「烈火さんどういうことですか?」
すると、武田さんはケースに入った透き通った紫の水晶の破片を取り出した。
「皆も知っていると思うがこれは、『魔化水晶』のカケラだ」
魔化水晶。
それは最初の魔化魍の王と呼ばれた魔化魍 オオマガドキが持っていた水晶の名前。
音撃の無効化や魔化魍と無機物を合わせる力、人間や動植物に使えば童子、姫、魔化魍に変えることのできる厄介な道具。これによって無限に増殖する魔化魍達により当時の猛士は壊滅に近い打撃を受けた。
だが、これは完全な形になった時にのみ発動する力で、オオマガドキと最後の戦いに挑んだ8人の鬼の一人 覇鬼によって魔化水晶は砕かれ、今は8つのカケラに分けられてオオマガドキを倒した8人の鬼の子孫が代々受け継ぎながら守っている。
だが、魔化魍の王は発生条件も不明で、常に別の魔化魍が魔化魍の王となっている。『魔化水晶』のない魔化魍の王は強いことには強いが倒せない訳ではなかった。
500年前に現れた魔化魍の王 シュテンドウジも他の魔化魍の王に比べれば、かなり弱体化していたと武田さんの師匠の師匠が言ってそうだ。
そして、この『魔化水晶』は魔化魍の王が現れた時に赤く光を放つのだが–––
「これは!!」
ケースから出された魔化水晶は光を放つには放っているのだが、それは
「これが今回、緊急会議を開いたもう1つの理由だ。もしかすると、今回の魔化魍の王は今までとは違うのかもしれん」
SIDEOUT
睡樹に頭を撫でられ眠ってしまった。現在私は–––
「あなたは王に何をするんですか?」
シュルルゥゥゥ
「まあまあ、わざとじゃないんだから。もうその辺で許してあげなよ白」
睡樹を正座させる白をなだめていた。
「はあ~~分かりました。」
シュルルゥゥゥ
睡樹が前に倒れる。魔化魍でも長時間正座をすると足が痺れるようだ。土門が睡樹の足を前脚で突くと、睡樹は、ビクッと悶えて、地面をゴロゴロ転がる。
面白く思ったのか、鳴風も尻尾でツンツンと突き、さらに悶えて転がる睡樹の様子を眺める顎と崩。
「こらこら、土門も鳴風もやめてあげなさい」
土門と鳴風の頭を撫でて、睡樹の足を突くのをやめさせる。撫でられて嬉しいのか睡樹の足を突くのやめた土門と鳴風は私の胸元に飛びついて来る。
グルルルル ピィィィィ
胸元に土門たちを抱えて、白たちが直した洋館を見る。窓はまだ嵌められていないが、壁はレンガで埋められ、館の中は掃除されてるのをさっき館を出る前に見たから、あとは窓だけなのだがここが問題だ。少なくても数十枚の窓ガラスが必要だ。
「あっ!!」
随分前に、近所に住んでた大工のおじさんからガラスの作り方を聞いたことがある。
珪砂と炭酸ナトリウム、石灰石の三つを1500度の高い温度の釜でドロドロに溶かし、それを引き伸ばして作る。珪砂は砂から採れるし、炭酸ナトリウムは重曹を加熱させれば作れる。問題は石灰石のほうだな。確かこの近くで石灰石を取れるのは武甲山だったはず。
「白、旅の支度を」
「何処にでしょうか?」
「武甲山に行くよ。石灰石を取りに」
「分かりました」
白が旅の支度のために館のほうに行った。さてと、私も支度をしないとね。
いかがだったでしょうか?
今回は主人公の存在が猛士にバレました。次回の話でまた魔化魍が増えます。