人間だけど私は魔化魍を育て、魔化魍の王になる。   作:創夜叉

63 / 166
お待たせしました。コラボ編最後の話と……………思いきやなんか長くなりそうなので、
前編、中編、後編に分けさせてもらいます。



陸 宴会前編

 私の家族と薫さんと陽太郎さんの戦いは凄かった。

 私もいつかあのくらい戦えるようになりたいと思ったら、ユキジョロウさんの声が頭に響き、一喝された。

 曰く、『中途半端な貴様にはまだ無理だ』だそうです。

 

 薫さんと陽太郎さんがコロシアムから戻ってきた。

 

「さて、自分の家族の戦いはどうだったかな」

 

「はい。普段は見れないもの見れて楽しかったです」

 

「それは良かったよ」

 

 陽太郎さんがヒトカラゲから何かを聞き、薫さんに近付く。

 

「義姉さん。そろそろ向こうの準備も出来たみたいだよ」

 

 陽太郎さんが薫さんに何かを伝えると微笑んだ顔でこちらに向く。

 

「幽冥ちゃん、これから宴会があるんだけどどう?」

 

「宴会ですか?」

 

「そう宴会。もちろん、貴方の家族のも用意させて貰ってるは」

 

「良いんですか?」

 

「いいも何も元々は私が陽くんに頼んで招待したんだからそれくらいはさせて」

 

「ありがとうございます」

 

そして、幽冥はこの報告を家族達(特に魔化魍たち)にするとかなり喜んでいた。

 

SIDE◯◯

「凄かったな異界の客人達」

 

「………確かに」

 

「我らもあのお方達に仕えてみたい」

 

 コロシアムから離れた城の中にある一室で模擬戦を見ていたヒトカラゲやクローズ、眼魔コマンドなどの戦闘員達がが話しをしていた話題はもちろん客として招待された幽冥たち安倍家の事だ。

 別に薫や陽太郎に不満があるわけではない。しかし、彼らは惹かれてしまったのだ。

 薫や陽太郎と戦った魔化魍が魅せる数々の戦い。

 そして、異形ともいえる怪物 魔化魍を家族というあの王という存在に–––

 

「やはりそうなりましたか」

 

「「「「!!」」」」

 

 突然聞こえた聞き覚え、いや何度も聞いたことのある声にヒトカラゲ達が驚き、見た方向にいたのは陽太郎だった。

 

「よ、陽太郎様。何故こちらに」

 

 1体のヒトカラゲが陽太郎に質問する。

 

「貴方達がお客の戦いを夢中になって見ていましたのでね」

 

 その言葉を聞き、また驚くが今度はクローズの1体が陽太郎にある事を言おうとする。

 

「陽太郎様!! 失礼を承知で申し上げさせて貰ってよろしいでしょうか?」

 

「良いですよ」

 

「「「「「「我ら戦闘員12名はこれより主 鬼崎 陽太郎様の元を離れ、魔化魍の王 安倍 幽冥ならびにその家族に仕えてよろしいでしょうか!!」」」」」」

 

 言い終えたヒトカラゲ達は頭を下げ、主である陽太郎の返事を待っていた。

 

「良いですよ。許可します」

 

「「「「「「ありがとうございます!!」」」」」」

 

 再び、感謝を表すように頭を下げるヒトカラゲ達を見て満足したのか陽太郎は宴会の場所に向かう。

 

「(あの戦闘員たちと他にもいくつか考えねばなりませんね)」

 

 幽冥たちに贈るものをどうしようかと考えながら、陽太郎は宴会を行う会場に向かった。

 

SIDEOUT

 

 コロシアムから城に案内されて着いた部屋の中に幽冥たちは感動した。

 そこはまるで絵画の中にあるパーティ会場がそのまま飛び出した一種の芸術のような部屋だった。

 天井を明るく照らす巨大なシャンデリア、赤を主体とした豪華なカーペット、汚れが1つもない純白のテーブルクロスを乗せた巨大な円卓があった。

 円卓を見ると私と妖姫の従者3人と春詠お姉ちゃん、ひな、あぐり、ランピリスワーム、マシンガンスネーク、インセクト眼魔、薫さん、陽太郎さんと書かれた紙が置かれていた。

 だがこれでは、上記の家族以外の家族は座れずに宴会に参加できないと思い、その事を聞こうとすると、薫さんが手をパンパンと鳴らし、注目を集めた。

 

「幽冥ちゃんの言いたいことは分かるけど、彼らには彼らの一番好きなご馳走ともいうべきものを用意させて貰ったは、なので土門さん達はそこにいるクローズに着いて行ってもらっていい?」

 

 薫さんの言葉で家族(魔化魍のみ)は少し考えたが、先に歩き始めたクローズの後ろを着いて行き、どこかに向かった。

 

「薫さん。なんで土門たちだけ別の場所に」

 

「落ち着いて幽………薫さんもさっき言ってたでしょ。魔化魍にとってのご馳走は何だっけ」

 

「あ!!」

 

 そうだった。魔化魍にとってのご馳走といえば人間。確かに私の家族の魔化魍は全部で32もいる。普段は食べる人間の量をセーブしているので、楽しんできてほしいな。

 

「さて、まずはみんな座って」

 

 薫さんの言葉を聞いて私達は座る。ひなは座りずらそうで、必死に座ろうとしても座れずに端にいた眼魔コマンドの1人がひなを持ち上げて椅子に座らせてくれる。

 

「ありがとう」

 

 ひなが眼魔コマンドにお礼を言うと、いえいえと首を振って、また端に戻る。

 クローズ達がグラスに飲み物を注ぎ、薫さんが立ち上がる。

 

「では、我ら鬼崎家と安倍家の交流の宴会を始めます。では乾ーーー杯ーーー!!」

 

「「「「「「「「「「「乾ーーー杯ーーー!!」」」」」」」」」」」

 

SIDE土門

 クローズといわれた異業に着いて行き、着いたのはプレートの貼られた3枚の扉だった。

 それぞれ、住宅街、森、海と書かれていた。

 

「この扉は貴方達、魔化魍のご馳走となる人間が大量にいる場所へと繋がる扉です。食事されたい場所が決まりましたらそのまま扉をあければ向かうことが出来ます」

 

土門

【質問よろしいでしょうか?】

 

「はい」

 

土門

【我らが満腹にならずに人間がいなくなったらどうするのですか?】

 

「そちらの心配はご無用です。我らが皆様方の様子を見ていますので、いなくなりましたら補充ということで増えていきます」

 

土門

【そうですか】

 

「他に質問はありますか」

 

鳴風

【ハイハーイ。好きなだけ食べていいんだよね】

 

「その通りです」

 

鳴風

【ヤッターー】

 

「では、皆様お好きな扉へどうぞ」

 

 土門たちはそのまま好きな扉に入っていき、案内係をしたクローズを除いて全員が扉に入って行った。

 

SIDEOUT

 

「そういえば幽冥さんあの館の名前は何というのですか?」

 

 私がスープを飲んでいる時に陽太郎さんが唐突にそんな事を言った。

 待っても返答しない私に陽太郎さんは首をかしげるがその理由はすぐ理解する。

 

「あれ、もしかして」

 

「はい。あの館に名前は存在しません」

 

 返答出来なかった私の代わりに海鮮サラダを食べてる白が答える。

 

「そうですか名前無いんですね」

 

 そう言って陽太郎は窓から外の庭にある館を見る。

 

「じゃあ、陽くんが名前つければいいじゃない」

 

「!!」

 

 箸で天ぷらをつまんでいる義姉の言葉にハッとなり後ろに雷が落ちる義弟。

 

SIDE◯◯

 ここは森と書かれた扉の繋がっている先である。

 そこにはひとかたまりになった何十人もの青年と女性がいた。

 

「何なんだよアレは!!」

 

 青年の1人が怒鳴り声で叫ぶ。

 

「落ち着いてください」

 

「そうだ。それにお前の声でヤツラに気付かれたらおしまいなんだぜ」

 

「俺には王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)があるんだヤツラなんか俺の宝具で片付けてやる」

 

無限の剣製(アンミリテッドブレイドワークス)の持ってた宝具を受けて無傷だったのを忘れたのか!!」

 

「他にもベルカ魔法、ミッド魔法、斬魄刀 氷輪丸、ドラゴンクエスト魔法、ゼロの使い魔の魔法、霊丸、かめはめ波etc、etc」

 

 彼らは話していてわかると思うが、かつて様々な世界に転生して自分勝手に生きていた屑転生者達の細胞から培養された本物と同じ記憶とガワを似せて劣化させた特典を持つクローンだ。

 彼らは陽太郎によって培養器から解放され、自分の連れていった場所のある目的地につけたのならまた転生させてやるという言葉を聞き、すぐさま自分勝手な事を言って、この場所に連れられた。

 

 目的地を探し始めて、数分経った頃に妙なことが起きた。

 自分たちの最後尾を歩いていた男が忽然と姿を消した。彼らは気にせずにそのまま進んだが、空から降ってきたからからの干からびた雑巾のような死体に誰もが驚き、警戒をするが地面から飛び出した白蟻のような生物に転生者の1人は頸動脈を切られ、さらにその地面から植物の根が頸動脈を切られた転生者の身体に巻きつき地面の中に白蟻と共に消えた。

 

 人間の肉の裂ける音と咀嚼の音が穴から聞こえ、ある者達は吐き気を覚えてうずくまり、ある者達はその場から逃げた。

 そして、今此処にいるのはその場から逃げた者達だ。彼らは逃げている最中に転生特典を使って異形に攻撃していたがどれも影響がなく、容赦無く肉を切られ、頭蓋骨を抜くために溶かされ、四肢をバラバラに引き裂かれたのだ。

 

「とにかく今の目的はある場所というのを探してあの化け物どもからとっとと逃げる事だ」

 

「ええ。早くしましょ」

 

「いつヤツラがこっちに来るか分からないからな」

 

 そうして行動を始めようとした転生者たちの耳に何かが聞こえて来る。

 

……ギ…ギ………ギ…ギ…ギリ……

 

「おい。何だあの音は」

 

ギ…ギ…ギリ…リギ…ギリギリ…リ

 

「確かに聞こえる」

 

ギリギリギリギリギリギリギリギリ

 

「おい! アレは」

 

 青年の指差した方向には、穴があった。

 

「ま、まさか…もう」

 

 そう言った青年は樹の根を踏むと、根は三叉に分かれて青年の身体に根を突き刺す。

 

「あが、あああああ、ああ」

 

 根は青年の身体から何か吸い取っていき、青年の身体はドンドン干からびていく。

 そして、青年の身体がミイラのようになると根が集まり、仙人掌の頭を持った魔化魍 ジュッボコの命樹が姿を現わす。

 命樹は青年だった者を引き裂き、空間に仕舞った。

 

ユレレレレレ

 

「クソおおおおお!! メラゾーマ!」

 

 命樹の声に苛立った男は命樹にメラ系の最大呪文メラゾーマを放つが、炎は見当違いの方向に飛んでいく。

 炎は大口を開けた蛇の頭を持った鰐の魔化魍 ノヅチの大尊に吸い込まれる。炎を何事もなく吸い込んで、さらに吸い込みを強くして、メラゾーマを放った男を吸い込み始める。

 

「ぐぐ、ぐあああああああああ」

 

 男は足からドンドン飲み込めれていき、やがて首元に来ると大きく開いた口を閉じる。 

 閉口した顎の先には首だけの男がコロコロとその状況を見ていた転生者達の元に転がる。

 

「いやあああああああああ!」

 

 それを見て、悲鳴をあげる女の身体に肌色の何かが纏わりつき、巨大化していく。

 

「な、なにコレ……」

 

「待ってろ。今…………」 

 

「いや、た、助け…………」 

 

 身体の自由を奪われ、女は目の前の男に手を伸ばすが、男の身体は上半身と下半身に分かれ、それを見て声を上げようとした女も肌色の球の魔化魍 ヌッペフオフの食香に身体を圧壊される。

 

王の財h(ゲート・オ)………があああ!!」

 

 先程まで自慢の転生特典で倒すと言った男の喉元にはザンバラ髪の猿の魔化魍 ヤマビコの羅殴が喉元に腕をめり込ませて、引き抜くとその手にクルミのような取り出す。

 そして、急いで男から離れると上から高速回転しながら降りて来る甲羅によって青年は踏み潰され、されに回転で血飛沫が飛び散る。

 

 回転の止まった甲羅から顔を出した岩の甲羅の象亀と犀を合わした魔化魍 オトロシの崩が踏み潰して紙のようになった青年を喰らう。そして、甲羅の上で羅殴もクルミ状の何かを齧る。

 

 男は逃げる後ろから迫る脅威から、だが走っても走っても聞こえる声に男は狂いそうになる。

 だが、脚に何かが掛かると脚の力がふと消えて、倒れる。

 

 男は自分の足を見ると異様な光景を目にする。それは自分の脚が離れた位置に落ちてる。

 

「うわあああああ!!」

 

 男は脚の方に向かおうとすると何かが顔に垂れてきて、上を見上げると–––

 

ジャラララララララ

 

 下半身が白骨の独眼の蛇の魔化魍 ガシャドクロの骸が大口を開けていた。

 

「んんんんんんんんん」

 

 骸は男の上から大量の溶解液を吐いて、男は数十秒経つと骨だけになり、骸はおちた頭蓋骨を見ると–––

 

【チッ!! こいつもハズレだ。だが、骨は頂くか】 

 

 骸はお目当の頭蓋骨では無かったのか尻尾で砕こうとするが、それを口に運び飴を噛み砕いて食べるように骨を喰べていた。

 

 男は走っていた。そして、大きな樹の下に行って、後ろからなにも来ていないか確認すると安堵の溜息をだす。

 

「此処まで来れば」

 

「お兄さん」

 

「!?」

 

「こっちよ、こっち来なさい」

 

 男は何処からと探すと巫女服の女性が古い小屋の扉から顔を出して男を呼んだ。

 男はそのまま小屋に走り、扉を閉める。

 

「大丈夫でした、キャア」

 

「ありがとうよ姉ちゃん。ついでにものはあれなんだが少し身体貸してくれよ」

 

 この転生者は前世から生粋の性犯罪者で女を片っ端から襲って来た、そして遂にある世界のヒロインに手を出そうとした所を陽太郎に殺されたのだ。

 そして、男は禁欲とストレスで巫女を見た瞬間に襲ったのだ。普通の女性だったのならこの後は強姦されるんだろうだが、それは人間だったのなら話である。

 

「ふふふ、いい感じに引っかかって来れてありがとう」

 

「なんだと」

 

「ふふふふふふふ」

 

 男の両腕を抑えた巫女はその身体を大きくして脚は蛇の尻尾のように変わり、さらに4本の腕を生やした魔化魍 カンカンダラの蛇姫は男の脚や首に腕を置く。

 

蛇姫

【さあ〜苦痛の悲鳴を聞かして】

 

「ひっ!」

 

 何をするのか理解した男は逃げようともがくが、さらに力を込めて–––

 

「…………」 

 

蛇姫

【ふふふ。いい心臓ね】

 

◯◯

【ねえ。蛇姫は心臓しか食べないんでしょ】

 

 そう訊くのは、此処に男を呼び込んだ細長い白い狐の魔化魍 クダギツネの葉隠だった。

 

蛇姫

【そうよ】

 

葉隠

【じゃあ、その肉頂戴】

 

蛇姫

【いいよ。そもそも貴方が此処に誘い込んで来れたんだから】

 

葉隠

【ありがとう】

 

 葉隠は竹筒から数十の分体と共に男のバラバラに死体に群がり、中からはグチャ、ピチャと咀嚼音が響く。

 葉隠が竹筒に戻る頃には男の死体は何処にも無く。あったのは血だけだった。

 

SIDE昇布

フシュルルルル

 

「あああああ」

 

「うわああああ!!」

 

「だ、誰かああああ!!」

 

 鹿の角と犀の角を生やした白龍の魔化魍 シロウネリの昇布は逃げ惑っている3人を尻尾で巻き付いて自身の身体ごと捻るように絞っていく。

 もちろんそんな身体に3人は一緒に巻き込まれ、身体中の水分が一気に抜けていく。やがて干からびた3人を一纏めにして団子のように捏ねていき、それを一口で呑み込む。

 

昇布

【フシュー、やっぱり人間団子は美味い】

 

◯◯

【相変わらず好きだな人間団子】

 

 昇布は声の方に顔を向けると、僅かに湾曲した爪に突き刺した裸の人間を3人を担いだ、提灯の尻尾を垂らす赤と黄色のオッドアイの二足歩行の蜥蜴の魔化魍 ショウケラの三尸が現れる。

 三尸は3人の死体から血を吸って、ある程度残した段階で根元の爪を折って、地面に置く。

 組み木をして提灯の尾を組み木に近付けると組み木は炎をあげる。

 

三尸

【そろそろか】

 

 そう言って、三尸は組み木に人間を乗せる。

 それをクルクルと回しながら焼いていく。いい焼き加減と呟きながら三尸は火を消して、焼いた『人間串』を喰らう。

 その光景を見ていた昇布に三尸は人間串の1つを昇布に渡す。

 

三尸

【喰いなよ】

 

昇布

【すまんな】

 

 昇布も人間串に噛みつき、肉を噛みちぎって咀嚼する。

 

昇布

【……美味いな】

 

三尸

【そうだろう】

 

昇布

【偶にならこれもいいかもしれない】

 

 2体はそのままもう1本の人間串を半分に分けてまた獲物を探しにいった。

 まだまだ、宴会は続く。




如何でしたでしょうか?
今回は描かれてなかった魔化魍の捕食方法を乗せて見ました。

気になることがあったら、活動報告の作品質問コーナーに書いてください。
次回は海の食事を書こうと思います。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。