人間だけど私は魔化魍を育て、魔化魍の王になる。   作:創夜叉

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お待たせしました。
今回は次回の悪維持さんのコラボに向けての話を少し入れます。


記録伍拾伍

SIDE慧鬼

 幽冥が眠って1週間経った。

 相変わらずすやすやと眠る幽冥を見て、春詠は眠る幽冥の頭を撫でる。

 撫で終わって、部屋からでようとする。

 

「ん………お姉…ちゃん」

 

「おはよう幽」

 

 ベッドから起き上がる妹を見て、春詠は微笑みながらその言葉を言った。

 その数分後には幽冥を心配した魔化魍たちによって部屋の扉が壊れるとは幽冥は思っていなかった。

 

SIDEOUT

 

 

SIDE崩

 幽冥が目覚めた同時刻。

 貸家の外に崩、跳、狂姫、波音の4体の魔化魍が貸家の外に集まっていた。

 現在、崩たちがやってるのはこの貸家を王の暮らす館に転移させる術を地面に描いている。

 

 崩は今では失われていた古代の術を知ってる為に、その知識を跳に教え、狂姫と波音は転移する先の館の情報を跳に伝えて、それらの情報をまとめて跳は貸家を中心に術式を描いてる。

 

 何故このようなことをしているのかというと、全員で北海道から東京に移動する事が出来ないからだ。

 全員擬人態になれるようになったとはいえ、新幹線に乗るにしても大量の金が必要で、現在持ってる所持金と美岬が持ってるお金を合わせても足りず、ならば眠眠を気体化して全員で乗ればいいと案もあったが、眠眠曰く『そんな人数で乗られると身体が霧散しちゃう』と言って、この案も却下された。

 ならばと出されたのがこの案だった。

 

【これで完成でやす】

 

【我の知ってる中でもかなりの上位術だったんだが、よく描けたの】

 

【少し不安な所もありやすが、全力で術は描きやした。成功するはずでやす】

 

 集中していた汗を作務衣の裾で拭く跳。

 

波音

【後はお姉ちゃんが起きるのを待つだけ………あ、この後ひなと遊ぶんだった】

 

 そう言う、波音は擬人態に姿を変えて貸家の中に走っていく。

 

狂姫

【私も荒夜様の所に戻ります】

 

 狂姫も自分の夫でもある荒夜の所に向かうため、その場から一瞬にして姿を消した。

 

【術式に不具合があると困るからな我らはこのまま残ろう】

 

【そうでやすね】

 

 とくに予定のない2体はそのまま外で自分達の描いた術式を調べていた。

 

SIDEOUT

 

「私が起きて嬉しいのは良いんだけど、一気に入って来ようとしたら扉が壊れるに決まってるでしょ」

 

 現在私は目の前に正座させている擬人態となった土門たち(その中には姉である春詠も一緒)に説教している。

 

「取り敢えず今日はこれまでにしておきます」

 

 土門たちはそれを聞いて、安堵の溜息を吐くが–––

 

「でも、扉は壊したんだからその罰は後で全員きっちり受けてもらいますよ。という事でその時はお願いね白」

 

「分かりました」

 

 ふふふっと、白の少し気味悪い笑い声が溜息を吐いた土門たちの安心した顔から絶望に落とされた顔をしてお互いに抱き合った状態でブルブル震えている。

 ちなみにこの時、白が手に持っていたのは普通の縄だった。

 

 私はそのまま貸家の外に出ると、固まって何かを喋る白髪の物腰柔らかそうな老人と青い作務衣を着た短髪の青年が話をしていた。

 私の姿が見ると話をやめて此方に向かって来る。

 白によると私が1週間眠ってる間に跳から擬人態に変化する術を教わり、人間に変身できるようになったと聞いた。

 そして、説教した擬人態の家族で私が会っていないのは1体のみ。

 

「崩と跳だよね?」

 

 疑問形の言葉で聞く私の声に白髪の物腰柔らかそうな老人は少しビックリするもすぐにその顔を笑顔に変えて返事を返した。

 

「1週間ぶりです我らが王」

 

「お久しぶりでありやす」

 

 そう言って、2人は片膝をついて私の前で頭を下ろす。

 

「王よ。ご許可頂ければこの貸家を王の住む館の一部として転移させてもらいたいのです」

 

 突然、崩が私を驚かせる事を言ってきた。

 

「どうしてこの貸家を館に持っていこうとしてるの?」

 

「その理由はこの貸家が魔化魍になるからでありやす」

 

 跳の言葉に私は驚いた。

 この貸家が魔化魍になると跳は言った。つまり私の知らない魔化魍に変わる、そして家族が増える。

 その話を聞いた私は断る理由もないので、崩と跳に許可した。

 

「「ありがとうございます(やす)」」

 

 2人は下げている頭を上げて感謝の言葉を言う。

 

「では、崩に跳はそのまま準備をして、用意が完了したら私に連絡して」

 

「「分かりました(やした)」」

 

 私は2人の準備を待ちながら新しく生まれる魔化魍の名前を考えながら貸家の中に戻った。

 

SIDE◯◯

 とある空間に幽冥を見る1人の女性がいた。

 

「義姉さん何を見てるですか」

 

 女性の後ろから1人の青年が現われる。

 

「ちょっと転生者の気配を感じたから様子を見てたんだけどね、この娘凄いよ。

 人間なのにあの魔化魍を育てて、しかも家族って呼んでるんだから」

 

「!? あの魔化魍(・・・)を育てているんですか!?」

 

「そう。凄いと思わない」

 

「確かに、ですが僕としては義姉さんが転生者を褒めてることに驚いていますよ」

 

「そりゃ転生者(クズ)とは違うからね」

 

 女性はそう言うと幽冥の顔を見る。

 

「ねえ陽君」

 

「なんでしょうか義姉さん」

 

「あの娘たち、ここに招待しない」

 

「良いですよ義姉さんが招待したいなら」

 

 そう言って2人は空間から姿を消した。




如何でしたでしょうか?
次回はコラボ編になり、幕間を少しでひな編に入ります。

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