今回は幽冥&朧&美岬VS想鬼です。
長かった北海道編最後の戦いです。
白、黒、赤と家族たちに松竹梅兄弟を任せて、私と朧、美岬と目の前にいる8人の鬼の1人 想鬼と戦う。
この事に白達は反対したが、私の説得で納得してくれて今はそれぞれの転移先で松竹梅兄弟と戦っている。
そして此処では–––
美岬
【ハアアアアアア!!】
「デヤアアアアア!!」
美岬の魚呪刀
アオオオオオオオオン
朧の遠吠えが衝撃波となって、砂浜の砂を削って想鬼に向かう。
「はっ。自動衝反結界!!」
想鬼が音撃
朧
【なっ!!】
「朧、上に飛んで!!」
私の指示で朧は上に向かって飛び、衝撃波を躱す。衝撃波はそのまま漂着していた大木に当たり粉微塵になる。
美岬
【自動衝反結界とは、かなりの術師ですね】
「ありとあらゆる戦いの状況に適応出来るように覚えた物の1つさ」
美岬
【ああっ!!】
美岬は
その衝撃で、美岬は後ろに飛ばされるが、朧が尻尾で美岬を包み受け止める。
先程からも激しい攻防の繰り返しで、どちらも一手足らずという状態だ。私は前のようにシュテンドウジさんの力を借りようとしたが、シュテンドウジ様はうんともすんとも言わずだった。
その結果、私は朧と美岬に指示を与えて攻撃を任せていた。どう考えても後、一手が足りない。
「(何かないの。この状況をどうにかする何かが)」
そう思っていると、私の服のポケットに入ってる4つある『魔化水晶』のかけらの1つが青く輝き始める。
【今回は私が力を貸そう。あの程度の鬼に負けるなよ9代目】
私の頭にあの巨狼の声が聞こえる。
その瞬間に私の身体は前と同じように変化が起きた。
SIDE想鬼
想鬼は退屈していた。
折角来たのに肝心の魔化魍の王とは戦えず、その周りにいた2体と戦っている。
だが、個々で攻めていた時より、王の指示を受けて連携に変えた2体には少し危機を覚えた。的確な指示を与えて、動きを変えた2体は先程とは違う。
王の指示だけでコレだ。
王本人と戦えたら、この封じた闘争本能を解き放ってくれるかもしれねえ。だから、純粋に俺はこう思った、戦いてえと。
すると突然、魔化魍の王が光に包まれる。光が起きるとその周りに複数の竜巻が起き、光を中心にして複数の竜巻が光を呑み込む。
複数の竜巻は1つの大きな竜巻となり数秒留まった後に竜巻は勢いを無くして中心にいる幽冥は姿を変えて現れた。
頭の半分を隠す三度笠に頭頂部には三度笠から突き出た立派な一対の狼の耳、黒の髪は白の三つ編みに変わり、首元には地面に届きそうな青いマフラー、袖のなくなった腕の指先には鋭い爪が生えて、短くなった着物の裾から見える脚は狼の脚に変化し、腰には3本の尻尾が生えて真ん中の尻尾には王の証の青い龍の痣があった。
想鬼は感じた先程まで指示を出した人間ではない。俺を睨む空色の眼が獲物を喰い殺す為に放つ狼のような眼になっている。
俺の願いを聞いたのかどうかは知らねえが、やっと
SIDEOUT
SIDE朧
あの姿は…………お母さん?
現在の幽冥の姿に亡き母に似た姿を見て、朧は無意識に脚を幽冥に向けようとするが–––
美岬
【朧、幽の所に行きたいのは分かるけど我慢しなさい】
1つの声がその動きを止めた。
朧
【美岬】
美岬
【今ではなく後にしなさい。多分これから私たちは手を出せないは】
朧
【どういうこ………】
朧と美岬の
見えなかった。自分もかなりの速さで動くので速さには自信のあった朧は
確かに私の眼で追いつけない速さで、幽冥お姉ちゃんの助けになることはない。
だが、出来ることはある。
朧
【ねえ、美岬。気付いてるさっきからこっちを見てる視線に】
美岬
【ええ………出て来なさい!!】
そう言って姿を現したのは全身が黒で統一された醜悪な肉のような数十体の異形だった。
その姿に見覚えのあった朧と美岬はその異形の正体に気付く。
朧
【………北海道第1支部の実験体】
美岬
【さしずめ第1支部の置き土産というところでしょう】
魔化魍を実験に掛けていた第1支部と想鬼は繋がっていたのだ。たまにその実験体を第1支部支部長 志々田 謙介に流してもらっていたのだ。
そして、朧は思った。王の邪魔はさせないと。
朧
【どっちが多く仕留めれるか、勝負しない?】
美岬
【いいですよ。勝った方が今日、幽と一緒に寝れるといのでどうでしょうか?】
朧
【良いよ。絶対に負けないけど】
美岬
【それはこっちのセリフです】
実験体の異形に振り向く2体。
朧は自慢の牙と爪を光らせ、美岬は手に持つ
こうして幽冥の知らぬ間に一緒に夜寝る為の勝負が始まった。
SIDEOUT
上、右、左、上、下、斜め右–––
凄いこの体になった瞬間に速さと動体視力が上がり、さっきとは違うスピードで攻撃する想鬼の攻撃が流れていくようにゆっくりと見える。
こっちも避けながら爪を当てようとするが、向こうも似たように躱して、こっちに攻撃してくる。
「ははは、楽しいなあ魔化魍の王!!」
相手はさらに勢いを増していき少し、追いつかなくなってきた。
何か、今の攻撃をさらに速くする事ができれば。
【本当はお前の力で気付いて欲しかったが………仕方ない】
イヌガミさんの声が頭に響くと………頭に何かが流れ込んでくる。
幽冥はその何かにそって手を動かす。
臨、兵、闘、者、皆、陣、烈、在、前!!」
ボソボソ声は次第に大きくなり、やがて声が大気を震わせて、印を組んだ両腕を広げると黄緑色の小さな球が2つ、両掌に発生し、球はどんどん大きくなる。
それを目の前で重ねると巨大な竜巻が生まれ、右腕で目の前の竜巻を勢いよく払った。
風は砂浜の砂を巻き上げて、やがて巨大な砂嵐に変わって想鬼に向かっていく。
想鬼は音撃
「音、撃波
振り下ろした手は弦を勢いよく弾くが、出て来た音は軽快で先程の勢いよく振り下ろしや音にしては軽すぎた。
しかし、迫る砂嵐に音撃の音がぶつかると。
軽快な音から打って変わってピアノを勢いよく弾いたような音が砂嵐を霧散させるように響く。
砂嵐の勢いは徐々に弱まっていくが、それと同時に音撃の音も少しずつ小さくなっていく。そして、砂嵐になった砂が落ちていき竜巻も音撃のどちらも姿を無くす。
【ほおー。凶烈風を音撃で封じるとは】
「感心してる場合じゃないですよイヌガミさん。どうするんですか?」
【安心しろ。凶烈風は小手調べに近い技だ。だから………少し身体を借りるぞ】
「え!! イヌガミさ……n………」
SIDE美岬
美岬は迫り来る異形を
後ろで戦う朧の方を見ると、こちらも疲労が顔に表れている。
この刀を作ったイッポンダタラという魔化魍が美岬たちの元にいたが、彼は魔化魍の王と会う1ヶ月前に刀の鍛造を依頼されて美岬の元から去った。
だが、彼の作った魚呪刀は何も2本だけではない。
美岬
【さあ初めて使いますからその力を見せてください
何もない空間から取り出したのは柄に斑模様が入った刀身が紫色の小太刀。
そして、
「グガガガガガッ」
当たった箇所から白い煙が発生し、醜悪な姿がドロドロと溶けていく。
美岬
【掛かって来なさい!! この
◯
【美岬様だけじゃねいでありやす】
宙から落ちて来た影の正体に気付き、普通に話しかける。
美岬
【貴方の出番はありませんよ跳】
跳
【そうはいきやせん。皆はもう集まってやすから】
美岬
【え?!】
跳の言葉を聞いて後ろに向くと屍王とマシンガンスネークを除く、美岬の仲間が集まっていた。
SIDEOUT
SIDE朧
美岬は新しい魚呪刀を使って、異形共を倒してるけど、こっちはそろそろ限界に近い。
朧
【あ、しまった!!】
異形の相手で疲労した朧は遂に脚を踏み外して地面に倒れる。
その隙を逃さない異形は朧に飛びかかるが–––
「グギョ、ぎょ、ぎょょょ」
音撃管特有の高い音が響き、異形たちに当たると異形は爆散し、炎の龍が異形の腹を突き破って燃やす。
朧
【な、何が】
◯
【大丈夫か、朧】
◯
【怪我はない】
そう近づいて来たのは、朧の仲間。
朧
【蛇姫! 暴炎!】
2体の魔化魍だった。
それでも朧を襲おうとした異形は–––
◯
【行きなさい!!】
◯
【ハッ!!】
頭蓋骨が異形を喰い千切り、肌色の球の波が異形を呑み込み、獰猛な拳が異形を粉砕する。
朧
【骸! 食香! 拳牙!】
此処に眠眠と大尊を除いた朧の仲間達が合流した。
SIDEOUT
「久しぶりに蹂躙しようではないか、なあ………鬼よ」
手を地面に付けて想鬼を睨みつける幽冥。突然雰囲気の変わった幽冥に驚くも想鬼は鎧の中で歪めた笑みをするが、この歪んだ笑みも絶望に染まるとは知らず。
幽冥の意識は現在、イヌガミに変わっている。
「私の風を受けてみろ!!」
両腕を組んで、勢いよく振るうと想鬼の足元に竜巻が起きる。
「?! があああああああ!!」
竜巻は勢いよく回り想鬼の右脚を捻り切る。
「どうだ!! 自慢の風の力は!!」
「はっ!! 隙ありだ!!」
片脚を無くした想鬼はダラダラと血を流しながらも音撃
「何だ、こりゃ」
音撃
その先にいたのは–––
グルルルルルルル シュルゥゥゥ
「ほお〜ツチグモともう1体は知らないが、いい腕だ」
土門と睡樹だった。そして、一瞬にして音撃
「王、大丈夫ですか?」
そう言って駆け寄って来たのは白だった。その後ろから仲間も白を追いかけて来ていた。
「俺の音撃
◯
【実験体だったら私たちが片付けました】
そこには大量の異形の死骸が積み上げられて、その前に立つ朧と美岬とその仲間達だった。
「そんな……馬鹿な………いやまだ彼奴らが………」
「コイツラノ事カ?」
そう言って黒は手に持つ風呂敷を解いて、中身を想鬼の前に投げる。
頭の一部が陥没して両眼の無い松鬼の頭、ボロボロとガラクタのようになった竹鬼の鎧の破片、全体的に血で赤黒く染まった梅鬼の面が投げられた。
この瞬間に想鬼は分かった。松竹梅兄弟は既に死んでいると。
頭を下に下げてなにか考え込む想鬼。その想鬼を囲むように立つ仲間達。
そして、幽冥が想鬼にとどめをさそうとすると–––
「ま、待て待て魔化魍の王。俺の降参だ。見逃してもらえねえか」
まさかの言葉に幽冥の中にいるイヌガミは動きを止める。
だが、それは罠だった。
「馬鹿が!!」
そう言って、想鬼は右腕の隠し爪を幽冥に腹に突き刺す。
「がぼっ………」
衝撃と共に腹に叩きつけられた一撃で幽冥の口から血が垂れる。
「王!!」
朧
【幽冥お姉ちゃん!!】
美岬
【幽!!】
白と朧と美岬の声が響く。
「ハハハハハは、隙ありだぜ。魔化魍の王様よ。こっちの演技に乗ってくれてありがとうよー、礼にてめえをすぐに殺してやるよ」
「…………………」
想鬼の声に何も反応しない幽冥。その様子につまらなそうにする想鬼だが、腕をさらに突き刺そうとすると手が動かない。
よく見ると想鬼の腕を幽冥ががっしり掴んでいた。
「久々だよ、貴様のような外道は………貴様は今、私が引導を渡してやる」
「がああああああ!! てめえ!!」
幽冥の爪で腹に突き刺した腕を斬られた想鬼はもう片方の隠し爪を幽冥の頭に目掛けて攻撃するが–––
「見せてやる。この王の前世で見ていたものからヒントを得たこの技を受けてみろ」
迫るもう片方の腕を弾いて、幽冥は想鬼の頭と腰を掴み、頭上に持ち上げる。
「何をしやがる!!」
「受けてみよ、超大嵐!!」
そのまま、遠心力を加えて、想鬼を上空に投げ飛ばして、幽冥は両掌から風で作り出した球を想鬼に向けて投げ飛ばす。
2つの風の球は想鬼の身体に当たると竜巻で全身を包まれて身体がブチブチと千切れていき、竜巻が消える頃には、汚い肉塊と青い水晶の破片が上空から落ちて来た。
8人の鬼の末裔である鬼 想鬼は無惨な最後を遂げたのだった。
如何でしたでしょうか?
幽冥が最後に使った技はとある特撮ヒーローが敵に使った技をイヌガミがアレンジしたものです。技名を英語にしてある言葉を付けると元の技がわかります。
そして、次回には新たな魔化魍の王が2体登場します。
その後に幕間編とコラボ回です。
お楽しみに!!