人間だけど私は魔化魍を育て、魔化魍の王になる。   作:創夜叉

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大変待たせて申し訳ございません。

今回は調鬼&ショウケラ達VS志々田 謙介のつもりでしたが、その戦いの前に遂に王自身を戦闘に参加させます。


記録肆拾弐

SIDE調鬼

 何ですかあの腕は!!

 

 私の視線の先にいる北海道第1支部支部長 志々田 謙介の右腕は人間の物では無かった。

 全体的に緑色で蛙のイボの様なブツブツが沢山ある不気味な腕で爪が人間の平均を上回るかの様に生えていた。

 まるで–––

 

「魔化魍のようだ………かな」

 

「っ!!」

 

 心を見透かしたかの様に吐いた台詞に私は驚く。

 

「私の研究目的を忘れたかな調鬼」

 

「っ!!」

 

 この男の言葉で思い出す。そう此処は魔化魍を人工的に作り出すのが目的。その副産物であの腕になったのだろうと私は推測した。

 

「本当は魔化魍の王を捕まえる為に使おうとしたんだが、予想以上にその下等植物がしつこくてな。使わざるおえなかったんだよ」

 

ユレレレレレ

 

 ジュボッコが自身の傷をツタで覆って治すが、明らかに疲労している。

 

「ジュボッコ、もう休んで」

 

 私の言葉を聞いてジュボッコは断る様に首を横に振るが、ショウケラがジュボッコの心臓近くの所を手刀で叩きつけると、ジュボッコは意識を失って倒れる。

 私はジュボッコを戦闘の被害の無い場所に移動させる。

 

「ふん。完全に裏切った様だな調鬼」

 

「そうです。もうこれ以上この子達にあんな事をさせない為にも!!」

 

「まあ良い。お前達を殺した後に魔化魍の王を捕まえればいいだけだ」

 

 すると、志々田は消える。いつの間にか私の右側にいて異形の右腕を振り下ろされる。

 

クルウウウウウウ

 

 が、ショウケラが爪で志々田の右腕を突き刺し、動きを止めている。

 

「ぐううう!!」

 

 人間じゃない腕でも痛覚がある様で痛みの声をあげる志々田。その隙に調鬼は音撃三味線の撥で右腕の肘から先を斬り落とす。

 

「があああああああああ!!」

 

 腕を斬り落とされ、かなりの声が響く。だが、志々田は服の中から緑色の液体の入った注射器を3本取り出す。

 そして、それを自分の身体に一気に刺して、中の液体を身体へ注入していく。

 

「………………」

 

 中身のない注射を抜き捨てると志々田の身体はガクリと下に向き。

 

「あはははははははははははははは」

 

 狂った笑い声をあげる。

 

「あギィイぎゅがあららばゔぁありああ!!!!!!!」

 

 そして笑い声から不気味な声に変わり、志々田の身体が変化する。

 上に羽織っていた白衣はビリビリと音が鳴り、背中に背鰭の様なものが複数生えて、身体が大きくなり人間の3倍はある大きさに変わる。

 切り落とされた腕と同じ異形の腕が斬られた断面から生えて、左腕や両脚も同じ様に変わっていく。ズボンからは刺々しい尻尾が姿を現わす。

 顔も人ではなく口を半開きにして涎をだらだら垂らす大山椒魚のような顔に変わっていた。

 

 志々田だったものは最早、理性の無い怪物だった。

 そして、焦点の合っていない眼が調鬼たちの眼に合うと、涎をブチまけながらこっちに向かって突進する。

 

 さっきまで人間だった化け物が突進してくるが調鬼は冷静に自身の武器 音撃三味線 調奏を構えて、弦に撥を掛ける。

 

ギィィィヤヤガガガガガガアアアアアアァァァァ

 

 迫り来る化け物が何か弾き飛ばされ、壁に激突した化け物は外へ弾き飛ばされた。

 そこに居たのは–––

 

カッカッカッカッ  ピァァァァァァ

 

 此処に潜入していた魔化魍 ジャック・オ・ランタンと囚われていた魔化魍 アカエイだった。

 

SIDEOUT

 

 目を覚ましたら、瀕死に近い傷だったアオサギビの怪我は完治して私の前でじっと私を見つめている。

 そして起き上がって気付いたが、私の服が防寒コートからシュテンドウジさんの着ていた赤紫の和服になり髪の色も黒から白に変わっていた。というかシュテンドウジさんと似た姿に変わっていた。

 

––––アアアアアアァァァァァ

 

 そんな自分の変化に驚いていると壁が割れる音と叫び声とともに猛士の北海道第1支部の建物の2階から何かが瓦礫と一緒に落っこちてきた。

 それは所々に破れた服が付いてる化け物だった。

 化け物は血走った眼で、私を見つめて咆哮をあげ、不気味な両脚を動かして私の方に向かってくる。

 

 私は迫り来る化け物を見て殺意が湧いた。何故か分からないけど分かる、この化け物がアオサギビや囚われてた魔化魍に実験をした張本人なのだと。

 そして、私は私の事を守ろうとする仲間(家族)を手で制し、動きを止めた。

 

SIDE赤

 得体の知れない化け物が王に向かってくる。

 私も含めて、土門や鳴風、顎たちも一斉に王を守る為に動こうとするが、王が手で制すと私達の身体が動かなくなった。

 

 そして、いつの間にか王の手には先程、アオサギビの傷を癒すのに使った瓢箪があり、それを呑み、瓢箪に吹き掛ける。

 すると瓢箪は形を変えて、柄に瓢箪の蓋が付いた巨大な太刀へと形を変える。

 

 王はそれを構えて、化け物に向かって走る。土門たちの話によると、王は今まで戦ったことがないと言っていたが、今の王は明らかに熟練の戦士の様な動きをしている。

 

 化け物にすれ違いざまに太刀を腹に食い込ませて、顔に蹴りを叩き込み、衝撃で飛ばされそうになると腹に食い込ませた太刀を掴み、引き抜く。

 化け物の腹から大量の緑色の血が流れる。化け物は激昂して、自身の爪を王に向かって振り続ける。

 その攻撃を太刀と少しの体制移動で躱す王。隙を見て、王は化け物の顔に拳を叩き込み。遠くに殴り飛ばした。

 

 戦闘が始まって数十分経った。

 初めは優勢だった王も少しずつ劣勢になっていく。

 それはそうだ。初めて戦ったにしては充分だ。そして、王の身体に化け物の爪が入り、白い肌の左腕から赤い血を流す。

 その痛みで王は手に持つ太刀を落とす。そして、ふたたび爪を王に振り下ろそうとする化け物だったが。

 

「はああああ!!!」

 

クルウウウウウウウ  ピァァァァァァ

カッカッカッカッ  ユレレレレレ

 

 王を守るかの様に上から落ちてきた1人の鬼と4体の魔化魍が化け物を弾き飛ばす。

 化け物は第1支部の壁に叩きつけられる。

 

 そこに立っていたのは、猛士の鬼と謎の魔化魍とそして私達の仲間のショウケラとアカエイ、ジュボッコだった。

 

「ぐがらうああああああああああああああ!!」

 

 化け物は攻撃を邪魔されたことが原因か壁から飛び出し、ショウケラ達の方に向かってくる。

 

ピァァァァァァ  カッカッカッカッカッカッカッカッ

 

 だが、アカエイが尻尾の先にある突起を銃弾のように飛ばし、化け物の右肩を貫き、謎の魔化魍のゴツゴツとした腕に炎が灯され、その炎を化け物に向かって放つ。炎は化け物の身体に勢いよく広がり全身を包み込む。

 

「ぐぎやああああああああああああああああ!!」

 

 悲鳴に似た叫び声が響く。

 次にショウケラが動いて化け物の近くに移動する。化け物はショウケラに向かって爪を振り下ろすが、爪はショウケラの身体に触れた瞬間に粉々に砕けて、化け物は動揺する。

 その隙にショウケラは尻尾の提灯を化け物の両眼に届く所に向ける。

 

クルウウウウウウウ

 

 尻尾の提灯から放たれた強烈な光が至近距離に浴びせられた化け物の両眼は焼く。

 

「ぐるあああああっあああああああああっあああああ!!」

 

 両眼を焼かれた化け物はゴロゴロと情けなく地面を転がるが、地面から出てきた無数の根が化け物の身体を拘束する。ショウケラの背後にはジュボッコが立っていて、根の脚がうねうねと地面の上で動いていた。化け物はそのまま直立させられ、身動きは止められていた。

 その近くには、鬼が立っていた。

 

音撃響斬(おんげききょうざん) 付和雷同(ふわらいどう)

 

 止めというばかりに調鬼の持つ音撃三味線から雷の清めの音が化け物の動きを完全に止める。そして撥を水平に持ち、化け物に向かって撥の連続切りを行う。

 化け物の身体は音撃三味線の撥によって、どんどん削られていき、虫の息となる。調鬼は撥に紫電を纏わせて化け物の首を勢いよく掻っ切る。

 化け物の首は身体から離れて、ゴロゴロと転がる。

 根で拘束された化け物の身体は塵のように変わって、同じように遠くに飛んだ首も塵となり空へ散っていた。

 

 あらゆる魔化魍を人体実験に掛けていた猛士北海道第1支部の支部長 志々田 謙介はその名を幽冥たちに知られることがなく塵となって消滅した。

 

 王はその姿を見た後に、倒れそうになるが王の姉である慧鬼さんがいつの間にか現れて、王を腕に抱えていた。よく見ればシュテンドウジ様の姿から元の王の姿に戻り、慧鬼さんの腕で王は安らかに眠っていた。

 

 そして、私たちはこの場にいる慧鬼さん以外の鬼に対して警戒をするが、ショウケラやアカエイ、ジュボッコに王に治療されるまで瀕死だったアオサギビまでもが鬼を庇うように前に立つ。

 鬼の全身が光り、鬼の人間としての姿を現す。男性が着るような大きな白衣を着て、額を隠す程度に伸びた黒の髪の女性が姿を現す。

 

「私はこの子達の面倒を見ていた鬼 調鬼と申します」

 

 ショウケラ達以外の魔化魍からは敵意の眼を向けられているのに臆することなく鬼は私達に挨拶をした。

 

 

 

 

 

 

 そして、そんな風に話をしていた所為で赤たちは気付かなかった。調鬼やショウケラ達と共に戦っていた謎の魔化魍ことジャック・オ・ランタンがいつの間にか姿を消していたことに。

 

SIDEOUT

 

 

SIDEジャック・オ・ランタン

【まだ、挨拶は出来ませんが、いつか挨拶させて貰います今代の王】

 

 そう言って離れようとしたジャック・オ・ランタン目掛けて炎の龍が迫る。

 ジャック・オ・ランタンは避けずに右手を突き出して炎の龍の頭を掴み、そのまま握り潰した。

 

【お前は誰だ?】

 

【このままバイバイといった感じじゃ逃がさないよ】

 

 やっぱり居ましたか、ヤドウカイとヤオビクニの仲間が、っま問題はありませんが

 

【今はあまり私の存在を知られたく無いんです】

 

【関係無い、捕まれ!!】

 

【そうです】

 

 ヒトリマとクダキツネの炎と分体の攻撃が私に目掛けて来るが。

 

【【なっ!!】】

 

 ヒトリマとクダキツネの攻撃は私の目の前に発生した幕に飲み込まれて消えた。

 迎えが来たようですね。

 

【また何時かお会いしましょう】

 

 私はそう言って、幕に飛び込んだ。

 ジャック・オ・ランタンが幕に飛び込むと幕は消えて、ヒトリマとクダキツネはその光景を見ているだけだった。




如何でしたでしょうか?
長かった北海道第1支部の戦いが終わりました。さあ、次はいよいよヤドウカイ&ヤオビクニに王が会う!!

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