人間だけど私は魔化魍を育て、魔化魍の王になる。   作:創夜叉

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こんばんは。
すいません。本来ならネコショウの話を聞いて、王に連絡する五位を書く予定でしたが前回の話が長くなりそうだったので、半分にしてネコショウの話と連絡の話を一緒にしてコンパクトにまとめられたと思います。


記録百陸

SIDE五位

 自己紹介を終えた『鳥獣蟲同盟』のメンバーは長たるネコショウとヨスズメを残して何処かへ行った。

 俺たちの方も各々好きに動いて残っているのは俺と跳だけだ。

 

【では、あらためて自己紹介させてもらうニャ。

 『鳥獣蟲同盟』の長。ネコショウだニャ。ニャンの仲間であるヨスズメとチントウを助けて頂きありがとうだニャ】

 

【頭は上げてほしいでやす】

 

五位

【ああそうだ。それより話というのを聞きたい】

 

【そうだったニャ。ニャッホン。

 ニャンがお前たちに話したいのは、ココの猛士の壊滅。いや猛士の壊滅ではなくある鬼の抹殺に協力してほしいのニャ】

 

【抹殺でやすか?】

 

五位

【只事ではないというのは薄々感じていたが。

 ある鬼の抹殺という事は、その鬼が此処の猛士の鬼たちの過剰な反応の原因ということか?】

 

【そうだニャ。その鬼の名は狼鬼。

 此処中部地方を中心に動く『8人の鬼』のひとりだニャ】

 

五位、跳

【【っ!?】】

 

 俺たちはまさかの名前に驚く。

 『8人の鬼』という事は間違いなく『魔化水晶』のカケラを持っている。

 しかし、いくら過去に初代魔化魍の王 オオマガドキを倒した末裔である『8人の鬼』といえどもたかが1人の鬼が猛士を過剰にさせることができるのかと思う。だが–––

 

【お前たちは猛士の派閥って知ってるかニャ?】

 

五位

【派閥?】

 

【なんでやすかそれは?】

 

【実は猛士にはニャンたちに対する考え方が異なる3つの派閥があるんだニャ。

 ひとつは、ニャンたち魔化魍との共存を考える魔化魍穏健派閥こと共存派】

 

【あっしらとの共存!?】

 

五位

【そんな考えをする人間が猛士に居るのか!?】

 

 ネコショウから語られた言葉に驚愕する。

 それはそうだ。今まで彼らが戦った鬼たちにそんな考えをするような鬼はひとりも居なかった。そんな鬼たちに自分達との共存を望む者が居る。この話は間違いなく王がかなり喜ぶ内容だろう。

 

【最初はニャンも信じられなかったけどあることでその存在を知ったんだニャ。

 ふたつめは、猛士の理念である『人を守る』を掲げた魔化魍普遍派閥こと傍観派】

 

 これに対しては特に思う事はないつまりは普通の鬼なのだろう。

 まあ、敵対すれば消すことには変わらないが、もしかしたら捕虜として捕らえることになるのかもしれないが、その時はその時だろう。

 

【まあ、傍観派は魔化魍に対してはあまり警戒する必要は低いかもしれないニャ。

 そしてみっつめ、これがかなり厄介なところだと思うニャ。なにせニャンたち、魔化魍に怒りと恨みを抱え、殲滅を主とする魔化魍殲滅派閥こと過激派】

 

 過激派いや、正確に言うのなら殲滅派閥。

 名称の時点でかなりヤバいことが伝わる。しかし、ネコショウはなぜ突然、派閥の話を始めたのだろうか。

 そして、直ぐに理解した。

 

五位

【まさか、その狼鬼と過激派は関係しているのか!?】

 

【その通りだニャン。過激派のメンバーのほとんどはニャンたち魔化魍の被害者だニャ。狼鬼は過激派として魔化魍を清めてきた功績から猛士内でも発言力が高く、猛士に入って間もない人間を過激派のメンバーにしているんだニャ】

 

 話は分かってきた。つまりその派閥の1つの鬼が、派閥仲間を連れて俺たちを殺すために躍起になっているということか。

 おまけにその鬼も厄介だ。『8人の鬼』というネームバリューと魔化魍討伐による功績は味方だとしたら頼もしさを感じる。まあ、俺たちからすれば頼もしさよりも恐ろしさだろう。

 被害については此処に来る前にヨスズメから聞かせてもらった。

 鬼の分類としては王を含めて家族全てが嫌う魔化魍絶滅主義者だろう。オマケにこの鬼は九州地方で白たちが戦った鬼、確か妄鬼という同士の鬼の仇と殲滅派閥の仲間に広げて、魔化魍への徹底的な攻撃を繰り返しているようだ。

 

【改めて言うニャ。

 この地に住まう魔化魍の為に狼鬼の討伐の協力をお願いするニャ】

 

 かつての仲間のピンチだと知り、この地に来てみれば、まさか抹殺を依頼されるとは思わなかった。だが、これは放置する問題ではない。魔化魍を愛する王の為にも件の鬼は必ず討たねばならない。

 それにヨスズメやチントウを助けておいて、ネコショウの話を断り、王たちのいる家に帰ったら間違いなく後悔する。つまり答えは決まっているようなものだ。

 

【………あっしは喜んで協力させていただきやす。それにここの鬼共が苛烈化したのはあっしらも原因でやす】

 

五位

【ヨスズメが安全ならと思っていたが、こんな状況だ。力は貸すさ】

 

【あ、アオサギビ//////】

 

【感謝するニャ】

 

 ヨスズメは布で隠れていない顔を赤らめ、ネコショウは感謝の言葉と一緒に頭を下げる。

 

五位

【でっ、どうする?】

 

【早速、行動といきたいでやすが………】

 

 跳は言い淀む。そうネコショウのこの状況をどうにかするのには五位たちの戦力では足りなかった。確かに並大抵の魔化魍とは比べるまでもなく五位たちは強いが、それでもこの地にいる猛士の戦力を考えると五位とネコショウたちの力を合わせたとしても犠牲無くしての勝利は不可能だろう。

 

 ならどうするか? 簡単だ。

 戦力は増やせばいい、それもただの戦力ではない。鬼との戦闘経験が豊富な自分たちの家族。だがしかし、ここで問題が起きる。

 

 ヨスズメの危機を察知して独断でこの地に来た五位たちはどうしてこうなったのかと言う説明を王にしなければならない。

 魔化魍を家族という幽冥でも信賞必罰。怒る時はそれはもう怒る。その光景はまさにこの地に来る前に土門たちの受けていた『お仕置き』の光景で容易に想像がつく。

 

 確実に王からの罰はあるだろうなと思った五位と跳は今の状況を説明するために向こうに置いてきたある物に繋げて幽冥に連絡する準備を始めた。

 

SIDEOUT

 

 五位たちが居ないことに気付き、数時間が経過した。

 家族が揃い、五位たちがどこへ向かったのかと話し合いは続いている。

 そんな中–––

 

「ん? 何か鳴ってるけどなんの音?」

 

 話してる最中、私の耳に何か音が聞こえてくる。

 私の声で一斉に静まった家族たちも耳を澄ませば、音が聞こえてくる。

 

迷家

【あれ? 主人(あるじ)、机の下になんか着いてるよ】

 

「え?」

 

 そう言う迷家の言葉の通りに机の下を除けば、何かが着いていた。

 そのまま手を伸ばして、剥がすとその正体が分かる。

 

「これって術の札?」

 

 机の下にあったのは術用の札だ。術を使用する為に私や家族たちも使う物だ。何かしらの術式が描かれてるのが理由か、札は淡い光に包まれ、電話の待機音のよう音が鳴っている。

 

蛇姫

【これは連絡用の術式ですね。少々お待ちください】

 

 札を覗き込んだ蛇姫が札の表面をなぞると、カチャリと何かが外れる音と共に札から聞き覚えのある声が聞こえてくる。

 

【あー。あー。もしもしでやす】

 

「跳!?」

 

【おっ、王でやすか?】

 

 そこから聞こえたのは、現在行方不明とされている跳の声だ。

 

「ええ。貴方たちが行方不明になったのかと心配して探していた王です」

 

【それは、誠に申し訳ございやせん】

 

「その感じからして無事だということは分かるんだけど………それで、なぜ急に消えたの? 他の子も巻き込んで」

 

【それを報告する為にこうして連絡を取らせてもらいやした。

 心配させた身で言うのもなんでやすが王の耳に入れて頂きたい話がありやす】

 

 そうして、跳は口にする。跳たちが消えて何があったのか報告する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【–––というわけでやす】

 

 跳から聞かされた話に私は考える。

 『五位の大切なものの救出』、『猛士による魔化魍の殺戮』、『ネコショウ率いる鳥獣蟲同盟』と報告を聞かされた私の思いは五位たちが無事のことの安堵と新しい魔化魍の話による僅かな興奮、そして、殺戮を行う猛士の鬼たちに対する怒りと殺意である。

 

「………うん。状況は理解した。では跳、そこに居るネコショウに伝えて。

 9代目魔化魍の王 安倍 幽冥が『鳥獣蟲同盟』に協力すると」

 

 その言葉を聞いてか、跳は待ってましたという雰囲気が声で伝わる。

 

【感謝しやす王】

 

「…………でもね跳。これが終わったら跳はお仕置きだからね。勿論着いていった全員もお仕置きだから、覚悟しておいてね」

 

【………はいでやす】

 

 死刑宣告に等しい幽冥の言葉を聞き、意気消沈という状態の跳の声に同情するものは少なかった。

 やがて札は黒く染まりボロボロと崩れて跡形もなく蛇姫の手元から消えた。

 

「みんな、聞いた通りだから。

 取り敢えずは跳たちのところに行くよ!!」

 

家族たち

【【【【おおお!!!】】】】




如何でしたでしょうか?
今回の回で初めて家族側で猛士の派閥を知ります。そして、次回の回にて転移してきた幽冥たちとあの鬼の視点を書こうと思います。
では、おまけコーナーの迷家頼んだよ!!

ーおまけー
迷家
【分かった! ……………って、アレっ? 誰に返事したの僕?】

迷家
【まあ気にせずに始めちゃおっか。
 ではでは、おまけコーナー始まり、始まり】

「むぐーむぐーむーーーー」

迷家
【おっと、このままだと酸欠になるのかな。
 まあ、喋ってもらいたいから外すね】

「ぷはっ、おいテメエ。此処はどこなんだよ!!」

迷家
【今回のゲストは妖怪 山蜥蜴だよ!!】

「聞けよ!!」

迷家
【まあまあ、此処はおまけコーナー。
 変な人に頼まれてやってるところだよ】

「おまけコーナー?
 なんだそりゃ?」

迷家
【気にしない。気にしない。じゃあ取り敢えず質問かな】

「なんだよ。変なことなら答えねえぞ」

迷家
【変なことは聞かないよ。えっとね。
 山蜥蜴って妖怪なんだよね?】

「あっ? そうだが、それが何なんだよ」

迷家
【うちにさ暴炎っているじゃん】

「ああ、いるな。オレに似た感じのパイオニアが」

迷家
【…………(多分パイロマニアって言いたかったんだろうけど、気づかなかったにしとこ)
 そう。その暴炎】

「アイツがどうしたんだよ?」

迷家
【単純に気になったことなんだけど、暴炎と山蜥蜴ってどっちが熱いの?】

「熱いだぁ。それは勿論、俺に決まってるだろ」

迷家
【お、そう言うって事はなんか理由あるの?】

「あ? 特にねえよ」

迷家
【え!? ないの?】

「おお、特にねえな」

迷家
【ええ………なんでそんな自信満々なの?】

「そんなの決まってんだろ。俺はな最初から最後までクライマックスだからな」

迷家
【……………】

「おい。タツノコ? なんだ?
 動かなくなっちまったな。しかし、どっちが熱いか?」

「よぉし。だったらあの蜥蜴野郎と戦ってみるか。そうと、決まれば。早速動かねえとなぁ」

迷家
【…………………ハッ!
 ヤバイ、山蜥蜴を止めないと! ああ、そうだった。今日はここまでまた次回ね!!
 ちょっと、待ってえええ!!】

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