ただし、基本は五位VS軼鬼なので、仲間VS天狗+伏兵は戦闘描写なしになります。彼らの活躍はのちの戦いで。
では、どうぞ!!
SIDE五位
転移した場所が見覚えのある場所の近くで良かった。
更には、近くに感じた気配のお陰で場所はすぐに分かった。だが、その場所にいざ着いて見えた光景に俺はヨスズメの盾となるべくその場に向けて飛ぶ。
跳
【五位! ちっ、硬化!!】
飛び出した五位を見た跳が咄嗟に掛けた強化術 硬化は対象の防御力を上げる強化術だ。その術によって五位の翼は鋼の如き硬さに変わり、軼鬼の音撃
五位
【無事かヨスズメ】
俺は後ろに居るヨスズメに無事か尋ねるがヨスズメは幻を見たかのように驚いて言葉を出す。
【嗚呼、幻なのでしょうか、拙が待ち続けた方が目の前に】
五位
【相変わらずだな】
【えっ? ………本当に、あなたなのですか】
五位
【待たせちまったな、もう何十年も】
【嗚呼、アオサギビ、ずっと、ずっと待っていました】
涙を流すヨスズメを見て安堵したいが、今は––––
「魔化魍如きがいちゃいちゃするな!!」
抑えられている音撃
五位
【甘い!!】
斬りかかる鬼の音叉刀を翼で防いでいた音撃
「っ!!」
軼鬼も羽根を見て、音撃
軼鬼が離れた瞬間、羽根が弾けるように壊れ、壊れた羽根を中心にドーム状に炸裂して辺りを照らす。
五位
【知っていたのか? 俺の攻撃】
「貴様ら魔化魍の攻撃手段は全て頭に入れている。どんな攻撃が来よと、俺には通じねえぞ!」
アオサギビ種の魔化魍のことを少し話そう。
大自然を巣とすることの多い鳥型の魔化魍の中で彼らは洞窟内に巣を作り縄張りとする珍しい鳥型の魔化魍だ。同じように洞窟などを巣とするオオアリ種の魔化魍の天敵でもある。
本来、洞窟や暗い場所を住処とする生き物は大抵目が退化していく傾向にあるが、アオサギビには両翼にある光によって視力低下することもなく暗がりのある洞窟内を明るく照らしながら暮らし、獲物である人間を捕まえるために外に出たとしても他の鳥型魔化魍同様に行動することが出来る。
そんな彼らの武器は一見何の変哲もない羽根だ。だが、この羽根を地面や宙にばら撒き、アオサギビの意思を羽根が感知すると急激に熱を持ち、やがて自壊する。そして、自壊した羽根は周囲にその熱エネルギーを放出する。つまりアオサギビの羽根は設置型のリモコン式熱爆弾のようなものだ。
しかし、そんな強力な力を持ったアオサギビは攻撃手段の乏しさと洞窟という住処が災いして、当時の鬼たちにアッサリと攻略されたことよって清められて、今ではその数は明確にはされてないが数十体ほどしかいない魔化魍だった。
そして、ここでこの鬼、軼鬼の話をしよう。
彼は至って普通な一般家庭で産まれた人間で、何不自由なく父と母、そして可愛い妹と暮らしてた。しかし彼が9歳のときにその幸せは崩れた。
家族に連れられ、この中部地方に旅行に来た軼鬼たちは魔化魍に襲われ、父親は惨殺され、母親は生きたまま体を裂かれて喰われ、妹は連れ去られて数日後に見るも無惨な姿で発見された。
軼鬼が無事だった理由は不明だ。魔化魍が無視したのか。それとも魔化魍が気付かなかったのか。
天涯孤独の身となった軼鬼を先代の軼鬼が引き取り、猛士のこと、魔化魍のことを教えてもらい。復讐のために弟子入りし、実力をつけていったことで先代に認められて軼鬼を継承したのだ。
話は戻り、軼鬼は過激派に属する鬼だけに最愛の家族を殺した憎き相手である魔化魍の情報は古い文献だろうとも読み漁り、読み漁った知識を活かして魔化魍を清めてきた。
現代においてはそれほどの数を見られない五位ことアオサギビの攻撃手段を知っていたからこそ、回避行動に移ったのだ。
「お前の攻撃方法は全て分かっている。何をしようと避けてみせるさっ!!」
五位
【……全て、ねえ〜。いいぜ。見せてやるよ俺の本気を!!】
「無駄だ。大人しく俺に清められろ!!」
五位
【無駄かどうかは受けてから判断しなぁ。
それにな、俺の大事なものの手を出したんだ。キッチリ片付けてやる幻魔転身!!】
翼から発した光が五位の身体全体を包み込む。軼鬼は眼を腕で庇い、猛烈な光を防ぐ。
そして、ものの数秒にも満たない時間で光は徐々に弱まり中から五位が姿を現す。
チッチッチッ、チッチッチッ、チッチッチッ
全体的なフォルムで言うのならやや鋭利になった体躯に、金属的質感のある青銅色の両翼、その両翼端に青白い光球を浮かべ、剣山の如き鋭さを持った鋼の尾羽、首回りと右脚には独特の紋様が彫られた装甲を着けた姿へと変わった五位。
自身の大切なものを殺そうとした鬼を葬るために光熱を携えた鋼翼の鷺はその翼を盛大に広げる。
五位
【待たせたな。この姿でさっきまでの余裕なんて一瞬で吹き飛ぶぞ】
「所詮は魔化魍だ。多少変わったところでなんだ? 俺のやることは変わらない。
お前を清め、後ろのお前の仲間、『魔笛雀』、『壊音鎌』も纏めて清めてやるっ!!」
五位
【やれるもんなら、やってみやがれ!!】
幻魔転身をした五位の変異した姿は両翼端の光球と身体の所々の装甲、尾翼などと以前の姿に比べて変化点は少ない。軼鬼はさほど変わったように見えない五位を嘲笑う。だが、五位はそんな言葉を気にせずに眼前の鬼を睨みつけた。
SIDEOUT
SIDE跳
五位が幻魔転身したことで勝利は確信でやすね。あっしらの出る幕は無いでありやしょう。
そして、五位とは違う場所に眼を向ければ–––
昇布
【過剰というか敵でありながら天狗どもが哀れだな】
兜
【ええ、数分で終わりそうね】
2人の天狗もとい3体の戦輪獣を相手に戦う拳牙と単凍に更に援護に向かった大尊と不動の姿で天狗の勝利はないも等しいとふたりは呟く。
命樹
【五位やあそこの加勢は必要ないだろうが……】
三尸
【ああ、居るな】
跳
【さあて、あっちの相手はあっしらでやりやすか】
跳たちの視線の先には援軍として集まった中部地方の5人の鬼がいた。
「魔化魍だ!」 「退路を固めろ」 「殺す殺す」
「仲間の仇を逃すな」 「仕事だ。早く片付けるぞ」
この中部地方での運動相手には丁度いいでやす。
跳はそう思いながら、作務衣に引っ掛けたざるをとり、裾に仕舞った『吸血小豆』をざるに移して他の家族同様に戦闘態勢に入った。
SIDEOUT
SIDE軼鬼
姿の変わったアオサギビとの戦いは確かにあのアオサギビの言う通り、余裕は一瞬で吹き飛んだ。
先ず、攻撃手段が先程の羽根爆弾だけでは無くなった。両翼端にある光球から弾幕、熱線、光の矢と放たれるたびに妙に眩しく手元の武器をマトモに当てられない。
翼を羽ばたかせれば突風が起きてこちらの動きを阻害し、動けない中で先程の光球からの攻撃だ。
五位
【どうした、どうした。手も足も出ないのか!!】
アオサギビの声にイラつきを覚えるが、言っていることは事実だ。手も足も出ない。
初めてだ。今までどんな魔化魍を相手にしたとしても無傷とは言わないが軽症程度で魔化魍を清めてきた。だが、姿が少し変わっただけのアオサギビを相手に苦戦し、更には攻撃もできない。これほどの屈辱は初めてだ。
音叉刀で何度か光球からの攻撃を防いだが、下手すれば折れて変身が解けるという理由で今は双刀状態の音撃
「(このままじゃやられる。なら!!)」
軼鬼は守りから攻勢へと切り替える。今まで防いでいた攻撃で自身の身体の急所に当たる攻撃だけ弾き、それ以外は無視して五位に向かって接近する。
突然の接近に焦ることなくに光球から放たれる攻撃を止めない五位に面の下でうすら笑みを浮かべて手の音撃
五位
【なにっ!?】
軼鬼の行動に初めて驚愕の声を上げる五位に軼鬼はしてやったりと言わんばかりに手にしていた音撃
戦いの最中にどさくさに拾った音撃棒は五位の不意を確かについたが、だが普段投げていた音撃武器とは重さも長さも異なる音撃棒は狙っていた場所から少しズレて、狙っていた顔から翼に当たった。
それによって僅かに体勢が崩れた五位の身体に本命だった音撃
急いでワイヤーを起動して回収しようとするが、光球から放たれたひとつの熱線が音撃
「しまった!! があぁあ!!」
片割れを失い防御もやめて攻撃に転じていた軼鬼に情け容赦のない五位からの攻撃が牙を剥く。肩には光の矢が刺さり、鎧に無数の弾幕がぶつかり、熱線が膝を貫いて脚を焼く。
満身創痍と言ってもおかしくない軼鬼。しかし、その闘志は消えることなく手の小三角錐を構えて、五位を睨みつける。
五位
【そろそろ終いにしようか】
軼鬼を見た五位がそう言うと、両翼端の光球が今までにない輝きを起こし、それに合わせて翼を羽ばたかせて目の前に風の球を作り出す。
そして激しく輝いたことで徐々に熱を持った光球は周りにある気体の分子を解離して原子に変え、さらに原子核のまわりを回っていた電子が原子から離れて,正イオンと電子に分かれて電離が起こり、そして電離によって生じたプラズマを目の前の風の球に溜め込んでいく。
どんどん大きくなりプラズマを迸らせる巨大な風の球に五位は翼を勢いよく打ちつける。
風の球から猛烈な竜巻が放たれる。視界を埋め尽くすプラズマを帯びた竜巻が敵である軼鬼に向かって迫ってくる。
この場に、かつて睡樹の作った武器に名付けをした常闇がいたらその技をこう名付けただろう……………
軼鬼は迫る
「
双刀状態の音撃
今までどんな魔化魍だろうとこの音撃で仕留めてきた。そんな軼鬼の絶対の自信を持っていた音撃は––––
「馬鹿な!!」
それでも足掻きで何度も
だがそんな中、竜巻の中に見えたものが軼鬼の動きを止める。
「(父さん? 母さん? りな!)」
それは魔化魍によって殺された自分の家族の姿だ。死んだあの頃と同じ姿の家族の幻影は軼鬼の方に向けて手を伸ばし、全員微笑んでいる。
「(ああ、今、そっちに逝くから)」
亡き家族の幻影に手を伸ばした軼鬼は迫るプラズマが迸る竜巻に呑まれて、その意識は消滅した。
竜巻が通り過ぎた跡に残ったのは僅かな右足首と幻影へと向けて伸ばした右腕のみだった。
亡き家族の為に戦った鬼の僅かな肉はその後、五位に喰われてその存在を残す物は何も無くなった。
SIDEOUT
SIDE単凍
たまたま通りがかった時に聞いた話でこの中部まで来た。
俺の新しい武器の検証と武器の材料となる魂を集めるため。早速出てきた天狗に武器を試そうと思ったが–––
「がふっ、た、す、k………」
単凍
【つまらん。試し斬りにもならなかった】
不動
【所詮は鬼のなり損ない。
倒れた天狗にとどめを刺すように試作の武器を背に突き刺した単凍と戦輪獣 黄檗盾と戦輪獣 紫角だった残骸を踏み潰す不動。
拳牙
【脆いですね。大尊これを喰う…………大尊、せめて腕は残しておいてくれるか。私も喰いたい】
大尊
【はぐはぐ、もむ、ごっくん、分かった】
その隣には戦輪獣 緑大拳の捥ぎ取った腕を持った拳牙と仕留めた天狗を
そして、そんな単凍から少し離れたこっちでは–––
兜
【あっけない】
昇布
【がぶっ、所詮は
三尸喰うか?】
呟く兜の下には面を貫通されて息絶えた鬼の死体が転がり、兜の呟きに答える昇布の尾には『人間団子』にされた鬼があり、一口と咀嚼する。咀嚼した一部を喰べ終わると三尸に喰うかと尋ねる。
三尸
【いやいい。俺の分はあるからな。
命樹、
そう言う三尸の手には自身の生え変わる爪と赤い肉を持ち、爪に肉を突き刺している。
命樹
【血なら自分の栄養になる。ありがたく貰う】
跳
【すいやせんが、血は少し分けてくだせぇ。
この小豆に血を吸わせてえでやんす】
三尸の隣にいる命樹は殺した2人の鬼の血を抜くように吸いながら
鬼の伏兵はものの数分で全滅した。昇布は無銘と言ったが、決して彼らは弱い無銘の鬼では無い。五位と戦っていた軼鬼と同様に過激派の実力もある名持ちの鬼たちだ。遠中近どの距離の音撃武器にも対応する柔軟な思考と身体、相対した魔化魍の的確な弱点看破、魔化魍たちに対する怒りと怨みによる底知れぬ精神力、優れた才能を持ちし鬼たちだ。
だが、伊達に何十年も波音を守っていた兜たちは強かった。跳は兜たちと違うが、こちらも数年に渡り鬼を数名拐い、その血を『吸血小豆』に与えていた過去を持つ。
つまり戦いの経歴が違ったのだ。鬼たちは確かに経験はあった。だが、その経験を跳たちは上回っていた。
経験故に跳たちを侮り、そのままこの世を去った鬼たちを跳たちは『愚かな無銘たち』としか記憶しないだろう。
SIDEOUT
SIDEヨスズメ
それほど時間は経ってないはず。だけど目の前の光景は今も信じられない。
拙達を苦しめていた中部地方の鬼を瞬く間に倒した光景が。鬼の死体を喰らった
【先程は拙を助けて頂きありがとうございます】
【俺からも礼を言わせてくれアンタらのお陰で助かったよ】
五位
【いや礼を言うのならこっちだ。
そう言って頭を下げる
【しかし、いい面構えにいい覚悟した奴じゃねえか。
おめえさんを助けるために来たんだろう?】
拙が
どうやら、その護符を繋げる紐が切れたことで拙に何かあったと思い、噂の魔化魍の王には内緒で
ボソッ【はい。拙の大好きな方です//////】
【ほぉ〜。それはそれは、ならちゃっちゃっとやることをやるんだな】
【何をですか?】
ボソッ【
下世話に近いチントウの言葉に拙の顔は赤くなるが、
【拙と一緒に会って欲しい方がいるんです】
さっきまで赤らめていた顔が嘘だったかのようにヨスズメは五位に話し始めるのだった。
如何でしたでしょうか?
五位とヨスズメの再会と五位の変異態による軼鬼との戦いを書かせて頂きました。
もうちょっと軼鬼はマトモに戦う予定だった気がしますが一方的にやられる痛さと怖さを五位に叩きつけられました。
前書きに書いた通り五位以外の家族の本格戦闘はこの後の戦いで書きますので、今回は戦闘後と言う形になりました。
次回は鬼サイドか、五位たちが居なくなったことに気付く幽冥たち、もしくは両方まとめてで書こうと思います。
それでは、次回をお楽しみにしてください。
では、おまけコーナー、前回の話の続きになります。
ーおまけー
迷家
【みんな、こんばんは…………うう、ひ、酷い目にあった】
「貴様が俺を此処に無理矢理連れてこなければ、こんなことはしなかった」
迷家
【だからって、5度も鉄球で潰さなくていいじゃん!!
僕、死にかけたよ!!】
「なに、まだ潰され足りないようだな。ならばもう5回ほど潰して」
迷家
【あー、わかったわかった。十分分かったから、質問に入らさせてよ】
「ふん。分かればいい。で、何が聞きたい?」
迷家
【うん。前に王から聞いたんだけどさ、鋼鉄参謀ってさ。
デルザーっていう組織にいた大幹部だったんだよね?】
「そうだ。俺は誇り高きデルザーの改造魔人だ。で、それが何だ?」
迷家
【そのデルザーってどういう組織なの?】
「ふむ。……どういう組織か、端的に言うのなら完全実力主義の猛者の集った少数精鋭軍団で大首領直属の大幹部だな。
それぞれが人間の世界でいう伝承の魔性または妖怪、いや此処ではお前たち魔化魍か。それらを祖にもつ子孫の集団とも言える」
迷家
【ふーーーん。ていうことは鋼鉄参謀も何か祖先がいるの?】
「ああ、俺はフィンランドに伝わる黄金魔神が祖になる」
迷家
【ねえ、うちの家族に似たデルザーもいるの?】
「そうだな。屍王と同じミイラの祖のマシーン大元帥、元は違うが朧と似たオオカミ長官、また同じようにもとは違うが屍の場合は蛇女か、いや髑髏の頭という部分的にはドクロ少佐とも言えるかもしれんな」
迷家
【やっぱり強いの?】
「ああ、全員強いな」
迷家
【そっか。………おっと、もうこんな経ったのか、じゃあ今日はここまで、次回のおまけコーナーで会おっか。
じゃあ、バイバイ】
「さらばだ……………ところでいつ、元の場所に返してくれるのだ」
迷家
【あ、すぐに帰れるようにするから、鉄球は勘弁してぇぇぇ!!】