では、どうぞ!!
SIDE?
某中部地方のとある森の中にポツンとある廃屋。その中では複数の影が集っていた。
全身の至る所に包帯を巻き、解けた包帯から重度の火傷跡が目立つボサボサした茶色の短髪の少女。
従来とは異なる蜻蛉の羽を生やし、首に数珠を掛けている濃い紫の蟷螂。
背中に小さな苔を生やした半透明に近い身体をした小さな山椒魚。
そんな一団に向かってひとつの影が太陽を背に飛んでくる。
それを見た少女は降りてきた影のそばに寄る。
「どうだった?」
降りてきたのは骨を支点に複雑に絡んだ枯れ木の枝と木の葉の羽の翼で、片面が黒の布に覆われた黒緑色の雀。
【………駄目でした。遅かった】
雀の魔化魍ことヨスズメは静かに首を振り、先程見た場所の話をする。
「そっか。これで6グループもやられたね」
少女の姿になっている魔化魍 ヒダルガミがヨスズメからの報告と今までの被害に顔を曇らせる。
【そういえば他のはどこに行ったの?】
ヨスズメの報告を聞いた山椒魚の魔化魍ことシュチュウがこの場にいない仲間のことを聞く。
【ワイラは残ったグループの逃亡援助、イッポンダタラとライチョウと姫の方はこないだ襲ってきた鬼を返り討ちにしたので隠れ家を探してる。
クダンは知らん。タンコロリンはいつものだろう。フラリビは潜入中だ】
シュチュウの質問を蟷螂の魔化魍ことチントウが応答する。
「潜入って、あの鬼たちのところに居るんだよね? フラリビ、大丈夫かな?」
少女が潜入中だと聞いた仲間の心配にチントウが答える。
【奴に関しては問題無いだろう。ネコショウから聞いたはな……ん? っ!!! 伏せろ!?】
突然のチントウの言葉に驚くも全員一斉に身を屈めると、廃屋の壁が突然吹き飛ぶ。
「見つけたぞ魔化魍ども!!」
吹き飛んだ壁の向こうには4人の無銘の鬼と2人の天狗。
そしてそれらを引き連れているのは、頭部と腕が橙色に縁取りされており牛に似た2本の角を生やし、緑の体色の鎧を纏い、その手には楽器の数だけある音撃武器の中でも異質な音撃
「戦輪獣展開」 「『魔笛雀』、『壊音鎌』、『酒臭魚』を確認」
「子供がいるがおそらく魔化魍だ」 「まとめてやっちまえ!!」
「魔化魍覚、ごばぁ」
鬼たちの姿を確認したチントウは即座に動き、端に居る鬼の首をその鎌で切り落とす。
【俺が殿を務める。シュチュウはヒダルガミを連れて逃げろ。
ヨスズメ、術を頼む】
死んだ鬼の身体を鎌で突き刺し、側にいた量産型音撃管を持った鬼の攻撃を防ぐ盾に変えてチントウはヨスズメに補助を頼む。
【はい】
ヨスズメは尾翼に仕舞い込んだ横笛を取り出し、曲を奏でる。
「耳障りな音を止めろ」
ヨスズメの笛の音を気に食わない鬼が量産型音撃弦を手にヨスズメに飛びかかる。
【させるか!!】
突然、ヨスズメに飛びかかった鬼が量産型音撃弦を落として頭を抱え始める。ヨスズメの近くにはチントウがおり、その両鎌を擦り合わせてなんとも言えない不快な音が鬼の頭の中に直接響く。
「う、あ、あ、あ、あ」
更に音が激しくなり、鬼は頭から全身が痙攣するようになり、チントウが最後かのように両鎌を擦り合わせた瞬間–––
「あ、あ、あば、ば、あべぇ!」
鬼の身体は風船のように膨らみ音が切れた途端に破裂するようにその身体を爆散させる。
「通彦!! 己っ! 魔化魍!」
「通彦と実誠のいや、三ツ木さん達の仇だ!! 覚悟しろ魔化魍ども!!」
軼鬼たちは死んだ鬼の名を言いながら音撃武器を構えて、チントウたちに攻撃するのだった。
SIDEOUT
SIDEヨスズメ
「通彦と実誠のいや、三ツ木さん達の仇だ!! 覚悟しろ魔化魍ども!!」
その名を風の噂で聞いたことがある。
なんでも此処にいる『8人の鬼』と同じ過激派と呼ばれる鬼たちの仲間で、王に仕える魔化魍の手に掛かり死んだとか。
それが原因なのか、ここ最近は中部地方全域で鬼の姿をよく確認するし、それが原因で中部地方に住う魔化魍たちが次々とその手に掛かっている。
拙が此処に戻る前に確認したグループの惨状は今も覚えている。
雑に死体回収したせいか所々に魔化魍の一部が転がり、清められたことで塵と化した魔化魍が山のように積み重なり、幼体の魔化魍だった塵に向かって手を伸ばした親らしき魔化魍が串刺しにされ、身体の至る所を解体して持っていかれていた。
あの光景を思い出していて動かぬヨスズメに鬼は攻撃を仕掛ける。
「死ね!! 魔化魍!!」
量産型音撃棒を持ってヨスズメに向かって駆ける鬼に対し、近くにいたチントウは動かなかった。
徐々に迫る鬼を見てもチントウは焦ることもなく相対してる天狗の3体の戦輪獣を相手していた。
【はっ!!】
眼前の鬼の音撃棒の攻撃を防ぐと同時に術で強化した横笛でヨスズメは鬼の鎧ごと首を掻っ切る。
鬼は飛び出る血を抑えようとするも血は止まらず、そのまま倒れて事切れた。ヨスズメはそのまま鬼を一瞥することもなく横笛を口に当てて笛を奏で、チントウに強化の術を掛ける。
「今だトオル攻撃しろ!!
軼鬼は残った最後の鬼にヨスズメへの攻撃を命令する。
「何をしてるやつは隙だらけだぞ!! トオル、何故攻撃しない!!」
笛を吹くだけで隙だらけのヨスズメに何もせずに音撃管を下に向けて突っ立っている部下の鬼に軼鬼は呼びかける。
「おいトオル!!」
【無駄です。チントウに術を掛けると同時にそちらの鬼には幻術を掛けさせてもらいました】
「なにぃ!」
幻術を掛けられた鬼に向けてヨスズメは翼の内羽毛(落ち葉)に仕込んだ手裏剣を投げる。
「かぺっ」
手裏剣は頭に吸い込まれる様に当たり、血を撒き散らしながら無銘の鬼が死ぬ。残るは指揮する鬼と天狗の2人のみだ。
「『魔笛雀』。狼鬼の命と今死んだ仲間の為に貴様の命を頂戴する!!」
鬼が奇妙な音撃武器を構え、大きい物と小さい物が繋がっている場所を外すと中からワイヤーが出てくっついていた1つから2つの音撃武器に変わった。
武器の数は増えたとはいえ、接近戦用の音撃武器だろうと判断していた拙を鬼は驚愕させる。
「ふん!!」
なんと持っていた片方を軼鬼はヨスズメに向けて投げた。
驚愕はしたもののヨスズメは自身の翼で飛ばされて来た音撃
だが、ヨスズメに異変が襲う。
【翼が、動かない!!】
「ふふ、効くか」
音撃
その形状は大小異なる三角錐がU字に繋がっている両手剣のような音撃武器だ。繋がっている中心箇所を外せば中に通っている特殊ワイヤーで繋がった双刀に変わる。
中距離程度の離れた敵に向けて投擲も出来る。また投擲したとしても片手に残っているもう一つで中の特殊ワイヤーが巻き戻り、自身の手元に戻ってくる。
そんな近中距離に対応出来る音撃
それは音撃
そんな機構があるとは知らないヨスズメはそれを翼で弾いた。その結果、ヨスズメの翼は麻痺して動かすこと、つまり飛ぶことは出来ず、その場から動けなかった。そして、そんなチャンスを見逃す軼鬼ではなかった。
【はやく逃げろヨスズメ!!】
翼を必死に動かすも拙の身体は地面に固定されてるかのように動けない。
「これで仕舞いだ『魔笛雀』!!」
【くっ】
軼鬼は
【今、助け、邪魔だ!!】
ヨスズメを助けようとするチントウだったが–––
「邪魔はさせんぞ『壊音鎌』!!」 「そこで『魔笛雀』が死ぬ様を眺めてろ!」
【ヨスズメ!!】
2人の天狗が操る戦輪獣 緑大拳と戦輪獣 黄檗盾、戦輪獣 紫角の妨害でチントウはその場から動けずヨスズメの元に向かえない。どんどん迫る軼鬼の音撃
【嗚呼、拙はもう1度、あのひとに会いたかった】
ヨスズメの首を正確に捉えた攻撃はヨスズメの頭を吹き飛ばす。
拙の首を確実に捉えた一撃は来ず、自身の終わりと思い閉じた眼を開き見えたのは–––
【あ、嗚呼】
死の間際の拙が望んだ幻の景色かと思ったがそれはすぐ否定された。
五位
【無事かヨスズメ】
嗚呼、拙が待ち続けた愛しい彼がそこに居た。
如何でしたでしょうか?
今回は微妙な戦闘でしたが次回はヨスズメを助けにきた五位たちが鬼と戦います。
追記ですが、魔化魍に亜種、異常種、混合種の個体設定に新たに派生特種を追加しました。詳しくは魔化魍のオリジナルに追加しましたので、気になったら見てください。
ーおまけー
迷家
【お待たせしました。おまけコーナーがはっじまるよーー♩】
迷家
【今日のゲストは彼だよ!!】
「ふむ。ここは何処だ?」
迷家
【ハローー!! 鋼鉄参謀】
「うん? 貴様か」
迷家
【貴様じゃないよ、僕は迷家だよ】
「ふん。どうでもいい、それよりここは何処なのだ」
迷家
【むーーーー。名前で呼んでよ〜】
「はぁー。ならここは何処だ迷家?」
迷家
【むふぅ〜ここはね、おまけコーナー】
「おまけコーナー?」
迷家
【そう。僕がね、質問する誰かをここに連れてきて質問するための場所】
「貴様が連れてきた?」
迷家
【そう。今日は鋼鉄参謀をゲストとして、ってどうしたの?
そんな鉄球を持って?】
「なに俺の許可もなくこのような場所に連れてきたものを潰そうと思ってな」
迷家
【それって、まさか僕!!】
「なにすぐ済むさ、貴様を潰せばいいのだからな!!」ブンブン
迷家
【これはとてもじゃないけど今日は質問出来そうにないから次回に、おわ!!
危ないじゃん!!】
「動くな!! 貴様を潰せないだろ!!」ビュン
迷家
【あわわ、これは逃げるが勝ち! みんなごめんね!!
僕はこれから逃げるので、じゃあね!! のわっ!!】
「待て!!」
ー次回のおまけコーナーへ続くー