人間だけど私は魔化魍を育て、魔化魍の王になる。   作:創夜叉

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こんばんは。
今回はある家族が王には何も言わずに私情による独断行動を始めます。
そして、今回のおまけコーナーは悪維持さんの兵鬼 薫がゲスト登場します。
では、どうぞ!!


記録百壱

SIDE跳

 土門たちがあの魔化魍(モモンジイ)と戦ってから数日経ちやした。

 あっしは今、妖世館の外にいる。

 

「王、ご慈悲を」 「もうダメ〜」 「お、お許しを」

 

「足の感覚が!!」 「限界がぁぁぁ」 

 

「まだ喋れると言うことは余裕があるということだね。

 じゃあ、あと2枚追加♪」

 

「「「「「ひぃいいいいいいいい!!」」」」」

 

 あっしの隣にいる王が目の前に居るモモンジイと戦ったことを隠していた土門たちに王直々に課せた罰またはお仕置きをしていやす。

 擬人態の姿になってる土門たちに三角形が並んだ木の板の上に正座させて、その足の上に石を数枚載せていやす。そして、王は言葉通りに石を2枚ずつ土門たちに載せた。

 

 王曰く、『これは江戸時代にあった拷問』らしい。

 本来は4枚の石を一気に載せるらしいのでやすが王は土門たちは魔化魍だからと、一気に8枚も載せた。

 しかも王が載せた石はただの石ではない。巫女だったことから(まじな)いを込めた道具作成に優れた蛇姫の手製で従来の3倍の重さの石で、更にあっしや紫陽花が石に術を掛けて土門たちに載せてる間は足を動かせなくなる特別仕様。

 試しにどれほどの重さか持たせてもらいやしたが、正直に言ってあれを10枚(現在土門たちに載せてる数)も載せて数時間ジッとしているのは地獄でやす。

 

 もちろん、実行犯ではないが土門たちの行動を隠していたあっしらにも(隠してることを知らない例外にはありやせんでしたが)罰はありやしたが、あの罰に比べれば優しかったでやす。

 

「も、う、無理ぃぃぃ」

 

 罰を受けるメンバー内で擬人態の姿が比較的に小さい鳴風は色々と限界なのかブルブルと身体が震えている。

 

「ほら、あとちょっとだから」

 

 そう言うと王は土門たちに載せている石を2枚ずつ外す。

 

「うん………頑張る」

 

 多少は楽になったのか、鳴風がそう答えると、土門たちも姿勢を正し、呼吸を整えたりしている。

 それから何も言わずただひたすら静かに罰が終わるのを待っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい。お仕置き終わり。跳、術を解いてあげて」

 

 お仕置きが終わり王があっしに石に掛けている術の解除を頼む。

 これがあっしが王の側にいた理由。お仕置きが終わった後の術の解除でやす。

 あっし以外にも紫陽花が術を掛けているので解くことが出来るのでやすが雛の面倒で長時間のお仕置きに付き合うわけにいかず結果的にもうひとりの術者であるあっしがここに残ることになった。

 

「分かりやした」

 

 軽く手を振れば、石に掛かっていた術は消え、石はただの重い石となり土門たちの足から滑ってその場に散乱する。

 

「お、終わった」 「た、立てない」 「動けない」 

 

「痺れる」 「あああ、脚が」

 

 しかし、長時間正座していたのと載せられた石が原因で土門たちは足を痺れさせてまな板に乗せられた魚のようにはねて、ゴロゴロと転がる。

 

「まあ、仕方ないか。葉隠、凍」

 

葉隠

【はーーい!】

 

【【何でしょうか?】】

 

 動けない土門たちを見た王がふたりの名前を言うとどこからか現れた葉隠と凍が王の背後に佇む。

 

「土門たちを部屋に連れてって、終わったら自由にしていいよ。

 跳もお疲れさま。いつもの楽しみに待ってるよ」

 

葉隠、凍

【【【分かった】【かしこまりました】】】

 

 すると葉隠と凍は大量の分体を生み出して痺れて身体を動かせない土門たちの身体の下に潜り込んで身体を浮かせると部屋に連れて行った。

 

「さて、これを放っておくと邪魔だから片付けよっか。ん、ヨイショっと」

 

 王もお仕置きに使っていた石を全て(・・)持ち妖世館へ片付けに行った。

 

「あの石自体相当重いはずなんでやすが」

 

「それはつまり王は俺らと同じになりつつある証拠ってわけだな」

 

「うん?」

 

 そこにはボサボサな灰色の髪に首にゴーグルをぶら下げ、薄鈍色の作業服を上下に着て、右手に銅製のカンテラを持ち、安全靴を履いた青年が立っていた。

 

「五位でやすか、珍しものでやすね擬人態で過ごしているとは」

 

「俺だって人間の姿で動く時もあるさ」

 

 そう言うと、五位はさっきまで王のいた場所まで来るとそこに座り込む。カンテラを地面に置き、五位は懐から何か取り出す。

 

「ん、それは?」

 

「あ? ああ、これはお守りだ」

 

 五位は恥ずかしそうに答えながら手にあるものをあっしに見せてくれる。

 

「お守り?」

 

 五位の手には時間が経ってなのか所々に綻びがあるも手入れがされてのか綺麗な朱色の護符があった。

 

「波音のところに来る前に一緒にいた魔化魍から貰った俺のお守りさ」

 

 懐かしむように護符を眺める五位。

 ……あっしの見たところ。かなりの力が籠った護符でやすね。しかも、持ち主の危機に一度だけ反応する術式も刻まれてる。これほどの護符を作れる魔化魍はそういないだろう。

 まあ、あっしらのところには蛇姫がいやすが、それにしても見事な出来でやす。1度この護符の製作者に御指南願いたいものでやすなぁ〜。

 

「大切なものなんでやすね」

 

「ああ」

 

 五位が手にした護符を懐に仕舞おうとしたその時–––

 

「え?」

 

 護符に結ばれていた紐が千切れ、重力に従ってカンテラの側に落ちる。

 

「…………まさか、あいつの身に何か」

 

 紐の千切れた護符を拾い、五位は何かを呟く。

 声が小さかったのでよく聞こえなかったが、雰囲気からして只事ではない。人間の姿から本来のアオサギビの姿に戻る五位。

 

五位

【すまんが、可及的速やかに向かわねえとならない用事ができた。

 しばらく留守にする】

 

 そのまま空を飛ぼうとする五位の脚を掴んで、その場に留める。

 

「ちょい待ち、王に報告しないんでやすか?」

 

五位

【王には申し訳ないが、俺個人の私情に付き合ってもらうわけにはいかない】

 

「まあ、落ち着くでやす。

 あっしらは種は異なれど家族でやす。そんな家族をひとりで行かせて死なせたとなっちゃ王に申し訳がない」

 

五位

【そ、それはそうだが】

 

「だから行くならあっしも連れて行くでやす」

 

五位

【跳】

 

「それに着いて行きそうなのはあっしだけじゃないみたいでやすね」

 

 あっしがそう言うと、壁から身をより出している数名の影が見えた。

 

SIDEOUT

 

 

SIDE五位

 俺と跳の話を聞いていた者たちも呼び話の続きをしていた。

 

五位

【本当にいいのか?】

 

命樹

【なに水臭いことを言っている】

 

三尸

【お前の大切な奴のピンチなんだろ? なら、お前の家族の俺たちのピンチだ】

 

 命樹と三尸がそう言うと、俺は反対の方にいる者にも言う。

 

五位

【無理に付き合わなくていいんだぞ】

 

【五位が困ってるしね】

 

昇布

【ああ、お前には世話になってるからな。礼くらいは返したい】

 

 ふたりはそう言うが北海道にいた頃には俺の方が何度も世話になった。礼を言いたいのこっちの方だ。

 

五位

【命樹、三尸、兜、昇布ありがとう。だが、お前らが来るのは意外だったな】

 

 そう意外だったのは拳牙と大尊と単凍と不動だ。

 正直、俺とはそんな接点がないし、何なら会話した回数も少ない。

 かたや何を考えてるのか分からない筆頭とその相棒、かたや家族になって日の浅い鍛治師とその護衛。

 

大尊

【………私は拳牙の見張り】

 

不動

【ワタシは単凍の護衛だ】

 

拳牙

【なっ!! み、見張り!? なんか私がしたのか!?】

 

単凍

【俺は魂集めと試作の試しに丁度いいと思ったからな】

 

 俺たちが王に秘密で行動するというのも既に話している。それでも俺のために着いていくとあいつらは言った。

 少し目頭が熱くなるが、そんなことよりも善は急げだ。

 

五位

【みんな感謝する。

 跳、よろしく頼む】

 

【任されやした。

 じゃあいきやしょう!!】

 

 擬人態を解いた跳は最近完成した『転移の札』を使い、俺を含めて9名は俺が思った目指す場所に向けて飛んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 だが、この時の俺たちは知るよしもなかった。これから向かう場所で始まる戦いで新たな家族がまた増えるということも俺の目指す場所で何が起きているのかを。

 

 そう。彼らの飛んだ場所にいるのは友の仇と家族の復讐に燃える鬼を率いた狼がいる中部地方だ。




如何でしたでしょうか?
今回は跳視点から始めてみました。
家族のお仕置きは幽冥と春詠の2人が考えたいくつものお仕置きを蛇姫作成の『お仕置きくじ』から出たランダムなお仕置きを実行しています。
そして、五位の独断行動に跳や他の家族が付き合って一足早く『転移の札』で中部地方に飛びます。
次回は中部地方の魔化魍から始まります。では、お楽しみに。

ーおまけー
迷家
【イエイ!! 今日もやってきたよおまけコーナー!!】

迷家
【変な人に最初頼まれた時はちょっとメンドって思ったけど今じゃ、楽しんでやってるよ!】

迷家
【さ〜て、今日のゲストは〜「私がゲストでいいかしら?」……へっ?】

「こんばんは」

迷家
【うおおおお! 君、誰!?】

「あれ? アタシのこと覚えて、ってよく見たら君はあの時いなかったね。なら、自己紹介をしようか。
 アタシは薫………兵鬼 薫。貴方の王である幽冥ちゃんの友達よ」

迷家
【友達って、君どう見ても人間でしょ。春詠や捕虜の鬼ならまだしも、ただの人間が主人(あるじ)の友達って?】

「事実よ。それに貴方のところにいる戦闘員たちいるでしょ?」

迷家
【え? 黒服とか群青鎧とか黒帽のこと?】

「あの戦闘員たちは前にアタシとアタシの弟の世界で働いてたんだけどね。幽冥ちゃんのところに働きたいって言ってね。アタシらのところから幽冥ちゃんのところに移って働いてるんだよ」

迷家
【ええええええ!!】

「戦闘員たちちゃんと働いてる?」

迷家
【うん。いつもマシンガンスネークやインセクトに扱かれてるよ】

「そっか」

迷家
【で、君に質問していいの?】

「もちろん♪ 此処はそういうところなんでしょ?」

迷家
【まあ、そうだけど。
 う〜〜ん。でも、どうしようかな〜?】

「じゃあ、アタシが貴方に質問していい?」

迷家
【僕に?】

「そう。貴方はアタシに質問するにしてもアタシのことをよく知らないだろうし、だったらアタシが貴方に聞きたいことを聞いてもいいでしょ」

迷家
【そっか。そう言えば僕は此処では司会のような物だから質問をすることはあっても貰うことは無いんだっけ】

迷家
【うん。そうだね。
 せっかくの機会だし、僕への質問をお願いするね♩】

「分かった。うーーーーん…………………そうだね。
 じゃあ、今いる戦闘員たちをさらに増やせたらどうする?」

迷家
【戦闘員たちを?】

「そう。君はどうする?」

迷家
【そうだね。僕的には増えてもいいと思う】

「どうして?」

迷家
【そりゃねぇ〜。いっぱい居たほうが楽しそうだし、主人(あるじ)を守ってくれる仲間、ていうか家族が増えるし。
 僕はね、愉快なこと、楽しいことは全力でっていうのがモットーなんだよ♬ ………こんな感じでいいかなぁ?】

「………そう。ありがとう」

迷家
【ふーーー 初めて答える側になったから、ちょっと緊張しちゃったなぁ。
 ………あ、もう終わりだ。ありがとうね薫。楽しかったよ♬ バイバイ♩】












「楽しいことは全力で、ね。
 今度そっちに行く時にはあの子たちだけじゃなく、色んな(・・・)子を連れていこうかな。
 幽冥ちゃん驚くだろうなぁ〜。ふふ、楽しみ」

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