人間だけど私は魔化魍を育て、魔化魍の王になる。   作:創夜叉

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今回の話で番外やコラボ編を除けば100話目です。
そして、鳥獣蟲宴編が始まります。
現在、安倍家の魔化魍のリメイクを急いで書いてます。今月中にはリメイク版の壱をなんとか出したいです。


鳥獣蟲宴編
記録百


 某中部地方の何処かの森の中。

 そこにはいくつもの死体が散らばっていた。

 

 人間の死体はひとつもない。あるのは異形ともいえる魔化魍の死体のみ。

 

 塵に変わりいくツチグモ。

 

 バラバラにされたのか腕や足が散乱してるヤマビコ。

 

 首から下の身体が塵と化して生首のようになったカッパ。

 

 身体中穴だらけのウワン。

 

 他にも色々な魔化魍の死体があるが、そんな死体がある中である魔化魍だけが死体となっても攻撃を続けられていた。

 四肢を斬り落とされ、既に死んでるのに死体に跨り、短剣にしては長く槍にしては短い中途半端な長さの音撃武器 音撃縦笛(リコーダー)を振り下ろすひとりの鬼がいる。

 

 頭部が浅葱色で縁取りされていて、麹塵の体色の鎧を纏い、鬼面にある狼の面、3本の爪が重なったような肩当てを着け、臀部付近には狼の尾が垂れる鬼。

 その名は狼鬼。『8人の鬼』の末裔にして猛士魔化魍殲滅派閥こと過激派に属する鬼である。

 そして、そんな鬼が突き刺すのはバケネコの死体だった。

 

「クソ! クソ! クソ!」

 

 何度も何度も音撃縦笛(リコーダー)を振り下ろして突き刺し続ける狼鬼。その顔は面から分からないがもしも面が無いのなら憎悪で歪んだ恐ろしい表情を浮かべてるのだろう。

 刺され続けたバケネコの身体は徐々に塵に変わり、それでも刺すのを止めない狼鬼。死体が残ることもなく塵に変わったのを見た狼鬼は治らない怒りをぶつけるようにバケネコがいた場所を踏み続ける。

 

「チッ!! 引き上げだ!! 死体は回収しておけ」

 

 狼鬼の指示に従い動く猛士の鬼と死体の回収の為かクーラーボックスに似たものを持ち歩く白い服を着た歩たちが散らばる死体を回収していく。

 

「……………」

 

「何を突っ立っているいくぞ」

 

 その中で1人の鬼が死体を見て、拳を握りしめていたが、他の鬼に呼ばれて死体を後にした。

 

SIDE狼鬼

 魔化魍の殲滅が終わり、労いと感謝の言葉を狼鬼が述べる。

 

「諸君ご苦労だった。これでまた悪しき魔化魍が減り、平和への道がまたひとつ築かれた」

 

 狼鬼たちが倒した魔化魍のほとんどは幼体から成長してばかりの成体の魔化魍だ。

 

「だが、平和の道はまだ遠い。それも我が同志たる三ツ木が魔化魍の王に殺されたからだ!!

 俺は奴ほど魔化魍を倒すことに躊躇のない男は知らない。彼が居れば今の日本に巣食うあの畜生どもを半分以上も殲滅できた」

 

 そのことを聞いた鬼たちは悔しさと怒りで拳を握るもの、歯を食いしばるものと様々な反応が見られる。

 

「しかし、我らの目標は奴だ(・・)。最近は魔化魍の王と上は五月蝿いが関係ねえ。奴を清めることが出来れば魔化魍の王なんて目じゃねえ。

 我ら殲滅派の地位を固める事ができ、さらなる同志を増やして憎き魔化魍どもを駆逐する足がかりとするのだ!!」

 

「「「「「おおおおおおお!!」」」」」

 

 狼鬼の言葉に雄叫びをあげる鬼たち。だが、狼鬼が手で制すと一瞬で静かになる。

 

「だが、その為にも誰かに奴を誘き出して貰わねば」

 

「その役目、私にやらせて頂いても宜しいでしょうか?」

 

 そう言って挙手するのは、つい最近この中部地方支部に飛ばされてきた鬼だ。名前は確か?

 

「あ〜確か、診鬼だったか?」

 

「診鬼です」

 

「あ〜そうそう。そうだったなぁ〜」

 

 見た目は地味に見えるがよく見れば出るところは出て引っ込むとこは引っ込んでる。奴が喜びそうな女だ。

 

「よし。奴への誘い出しはお前に任せる。期待しといてやる」

 

「ありがとうございます」

 

 診鬼は一礼すると後ろの扉から出ていった。

 まあ、ああ言ったが、本当に奴が誘い出されるかはあの女の動き次第だ。もしも、役に立たなかったら俺の発散相手になってもらおう。

 

「では、次のことだが『砂鮫』と『魔笛雀』の討伐を命じる」

 

 内心そう考えなら狼鬼は目の前の部下たちに次の魔化魍の討伐指令を下していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 狼鬼と中部地方の鬼たちの話している部屋から離れた一角。

 そこには先程、奴、もといある魔化魍の誘い出す囮を買って出た鬼、診鬼こと神通 希美がいた。

 

「ふう〜なんとか接触(・・)するキッカケが出来たかな」

 

 彼女が立候補したのは理由がある。

 彼女は魔化魍穏健(・・)派閥こと共存派に所属する鬼だ。表向きとしては普遍派として通しているが、裏では様々な地方支部に飛んでは魔化魍を清めるふりをしながら、魔化魍を逃す逃し屋のようなことをしている。

 今回の彼女の目的も勿論、標的にされている魔化魍を逃すことともうひとつ共存派のトップたる日向から頼まれた重要な事である。

 

 それは共存派としては是非とも逢いたい魔化魍の王との接触だ。

 過激派の2大看板とも言うべき猛士九州地方長崎支部支部長こと三ツ木 照弘。彼が死んだことで同じ2大看板である狼鬼が動くだろうと察知した日向が騒動の中心になるだろう中部地方に彼女を送り込んだ。

 

「今までの行動から魔化魍の王は絶対にここに来る。それに助けれる魔化魍はなんとか救わないと」

 

 そう口にする診鬼は、志願した任務を遂行するために行動を始めた。

 そして、その上司(日向)の読みは意外な形で実現するにだった。




如何でしたでしょうか?
今回は最初に猛士サイドから始まります。
気付いている方もいるかも知れませんが、魔化魍は音撃もとい清めの音によって塵に還るわけですが、当作品の魔化魍は音撃を受けても、死体が残る場合があります。
残った死体の一部を猛士が回収して、研究更なる魔化魍の討伐への知識となる訳です。
さて、次回は安倍家魔化魍のひとりの視点から始まります。
では、おまけコーナーに移ります。

ーおまけー
迷家
【イエイ! こんばんはー! おまけコーナーはっじまるよーーー!!】

灯籠
【えっと、何処ですか此処?】

迷家
【ここはおまけコーナー。君は、今日のゲスト!!】

灯籠
【よ、よく分かりませんが此処では何を?】

迷家
【僕の質問に答えてくれればいいんだよ 
 まあ、早速だけどさ灯籠の火晶って、あるじゃん】

灯籠
【ええ、ありますよ。というか私らの種族はこれと共に産まれるので】

迷家
【僕ってさ、産まれたばっかの魔化魍だからあまり知らないんだけど、灯籠のように火晶と共に産まれてくる魔化魍って居るの?】

灯籠
【私も自分以外の種族はさほど詳しくないのですが、私が知ってるので、3種だけなら知っています】

迷家
【意外と少ないんだね】

灯籠
【この3種は私らの種族とも交流があるので知っています。
 ひとつは私らバケトウロウの白の属性を持つ亜種 グワゴゼという魔化魍で、私らの火晶とは正反対の性質を持つ『白晶(はくしょう)』という物です】

迷家
【名前からして、冷気とか氷を溜め込むのかな?】

灯籠
【そうです。私らの炎とは異なり、氷や雪、冷気を溜め込む特殊な石です。
 ふたつめはライジュウと呼ばれる魔化魍で、南瓜さんと同じ『5大5行魔化魍』の1体で、蓄電能力を持ち、自身のエネルギーに変える『稲光珠(いなびかりのたま)』】

迷家
【電気ってことは、黄色の属性の魔化魍か】

灯籠
【ええ。詳しい話は私よりも南瓜さんに聞いた方が早いでしょう。
 最後のはリュウという種族の異常種の魔化魍セイリュウ。たしか『龍魂(りゅうこん)』という石を持っています。これで私の知ってるのは全部かな】

迷家
【へえ〜、あっ! もう時間だ。じゃ、今日は此処まで。
 まった、ね〜♬】

灯籠
【またいつか】

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