そんなこんなで今年最後の更新です。
今回は長崎支部襲撃の話、おまけでは前回登場した睡樹の槍の宝具風紹介になります。
SIDE長崎支部襲撃メンバー
猛士九州地方長崎支部。
家族や友人を魔化魍に殺され、恨みを抱く支部長 三ツ木 照弘を筆頭に魔化魍に対しての憎しみを抱えた鬼や人で構成されており、その憎しみを原動力として魔化魍と戦う。
例え、腕がなくなろうが、足がなくなろうが、目を抉られようが魔化魍を殺すことに躊躇しない。
そんな長崎支部は建物の一部に大きな穴が空き、そこから炎と黒煙が噴き上げていた。
その建物の入り口前では、上陸した大尊や渦潮、水底の艦の操舵を担当する片割れが長崎支部から出てくる鬼と戦っていた。
「ふぎゃ!!」
大尊
【んぐっ………ぷはーー】
渦潮が尾を振って当たった鬼は大尊の口元に飛ばされ、そのまま大尊は鬼の身体を一飲みする。
「くたばれ!! 魔化…」
隙を見た鬼は渦潮に斬りかかろうとするも甲羅から飛んできた棘に貫かれて倒れる。
「何なんだよこいつ、ガア!!」
「音撃波 雷、ぐはっ!」
鬼に攻撃はさせないというかのように水で作られたカットラスで鬼を斬り殺すのは水底。音撃を使おうとした鬼の顎を触手で打ち抜き、気絶した鬼を引き寄せて別の鬼の音撃管から放たれる空気弾を防ぐ盾にする。
空気弾が鬼の身体に命中し、とどめに脳天にカットラスを突き刺す。
「よくも仲間を!!」
「落ち着け。このままではやられる。陣を作れ!!」
激昂し、水底に飛びかかろうとする鬼の肩に手を置いて落ち着かせるのは、銭鬼と呼ばれる長崎支部で実力のある鬼だ。
「「「「応!!」」」」
鬼は集まりだし、渦潮たちを囲むように円を組む。
「さあ、始めるぞ!!」
銭鬼の号令と共に、音撃弦を持った3人の鬼が飛びかかる。
水底
【単純な攻撃に、なっ!!】
「撃て!!」
3人の鬼の背後には音撃管を構えた2人の鬼が立っており、音撃弦を振るう3人の隙間から空気弾を撃ってくる。
大尊
【水底!! ふん!! なっ!?】
「やれ!!」
大尊は水底に向かってくる空気弾を自身の口から放った空気弾でかき消し、音撃管を持つ2人の鬼に迫るが音撃弦を持った銭鬼が大尊の空気弾を切り裂き、空気弾を斬られて隙を見せた大尊に銭鬼の指示で現れた鬼が音撃棒を大尊の頭に振り下ろす。
渦潮
【ちっ!!】
しかし、渦潮の甲羅から放たれた棘が攻撃しようとする鬼を大尊から引き離す。
大尊はその瞬間に3本の音撃弦に当たりそうな水底を吸い込み。自身の口に咥えた後に渦潮のいる場所に跳び、渦潮の側に降りると咥えていた水底を離す。
水底
【ありがとう大尊】
大尊
【うん。しかし厄介】
渦潮
【ここまで変わるのか】
先程までの動きが嘘のように変わった鬼たちに翻弄される渦潮たち。
銭鬼が陣と呼んだもの。
それは、長崎支部支部長である三ツ木 照弘が生み出した対魔化魍集団戦闘技法である。魔化魍の行動に合わせて、流れるように動きを変え、司令となる鬼が指示をする一種のヒット&ウェイ戦法。
元々は鬼に成り立ての新入りの生存を考えて生み出したものだったが、さらに攻撃性を高めた結果、魔化魍の討伐率が上がったので、魔化魍に憎しみを持つ三ツ木の指示で長崎支部の鬼のほとんどが陣を使える。
三ツ木はこの技術を所属する鬼たちに覚えさせて、魔化魍の討伐を行なっていた。更には長崎支部から他支部に移動した鬼がこの技術を教えているので、長崎支部の鬼だけしか使えないというわけではない。
また、この九州地方から逃げようとした魔化魍たちを
水底
【どうする?】
渦潮
【先ずは、敵の司令塔を消すか】
渦潮が睨むのは、鬼の指示をする銭鬼。
大尊
【でも、周りが邪魔】
渦潮
【なら俺が仕留めよう。周りの鬼の足止めを頼む】
水底
【分かりました。ですが足止めではなく、纏めてやったほうがいいでしょう】
水底が触手の1つを海に向ける。
長崎支部から離れた安全位置に浮かぶ水底の艦。
操舵をする水底が居ないのに艦の2つの骨の砲塔がひとりでに動き出し、その照準を長崎支部の前に群がる鬼たちに向けられる。照準が終わると遠く離れた水底の合図と共に撃ち出される。
「なんだ?」
鬼の1人が空を見上げると何かがこっちに近付いていた。
「避けろ、攻撃が」
だが、気づいた時には遅かった。
鬼の声をかき消すように6つの砲弾は警告しようとした鬼の身体を砕き、地面に着弾と同時に爆発した。
爆風と衝撃によって陣は崩れ、更には陣を組んでいた鬼の半分はやられ、その無惨な死体が各所に転がり、残りの半分の鬼も爆風で目がやられてたり、腕が千切れてたり、脚が焼失してたり、様々な怪我を負って地面に倒れている。
「銭鬼さーーん」
「どこですか!?」
その中でも比較的軽症な2人の鬼が司令たる銭鬼を探していた。
「銭鬼さん、ぶじ、え?」
「そんな」
2人の鬼が銭鬼の側によるとその状態に目を疑う。
銭鬼は仲間を爆風から守るために前に立ち、爆風と飛んできた釘の如き破片でやられズタボロされた。特に利き腕の右腕が酷く、指は5本のうち4本は消え、肘から骨が突き出ていた。愛武器である音撃弦も同様で真ん中に空いた穴が原因で真っ二つに割れている。
これでは、音撃を使うことも戦うことも出来ないと2人の鬼は悟った。
「俺のことはいい、早く陣を、な!!」
戦意の消えていない銭鬼は崩れた陣を戻すように命令するが、その隙を逃さないのは–––
渦潮
【いい援護だ。終わりを見せてやる】
渦潮だ。
ザアアアアアアアアアアアアアアア
渦潮の雄叫びで、地面が揺れ始める。
水底と大尊はなんとか踏ん張って耐えるが鬼の何人かは揺れで尻餅をつく。
地面に亀裂が入り、そこから飛び出すのは海水。側にある海水を渦潮は呼び出し、呼び出された複数の海水は畝りながら渦潮の前に集まり渦巻き始める。渦潮はバラけて複数の触手となった前鰭で渦巻く海水を球状に圧縮する。
不純物がない透明なはずの海水はその渦の勢いで白く見える。
「これが渦中球!!」
渦潮の手元から離れた渦中球は真っ直ぐと銭鬼に迫る。
「「銭鬼さん、あぶ」」
「くそ、おぶ」
銭鬼を守るために前に立った2人の鬼は渦中球を防ごうとするも2人の鬼を呑み込み、そのまま銭鬼の身体も呑み込んだ。
渦潮が前鰭をぐるぐるすると渦の勢いが増した渦中球の白い水はどんどん赤く濁り、さらに回転が増すと粘度も増し、水の中で半減するもグチョ、ビキッ、ズチュと人間の肉で奏でられる音が響く。
そして、渦潮がその場に留まる渦中球に尾を振るうと、球はパシャんと割れて、銭鬼と銭鬼を守るために入った2人の鬼の身体はバラバラの肉片にされ、割れた衝撃でその肉片をあたりに撒き散らす。偶然飛んできた銭鬼の頭を渦潮は首を動かしてそのまま頭を噛み砕き咀嚼する。
陣の司令だった銭鬼が死ぬと鬼たちの攻撃も脆弱だった。なにせ、この場に出てる鬼の中で陣を使いこなしていたのは銭鬼だけ、他の鬼も使えないことはないが、どこか粗がある。おまけに水底の砲撃によってまともな戦いも出来ずにどんどん数を減らしていく。
渦潮の海から呼び出された海水を渦に変えて鬼の身体を千切り、前鰭の触手を使って鬼の動きを止めて甲羅の棘で貫く。
水底の水で生み出されたカットラスで鬼の首を刎ね、軌道の読めない触手を使って鬼の身体を捻る。
そして、大尊が死体となった肉塊を某掃除機のように吸い込んで捕食していく。
数十分経つ頃には、渦潮が喰らい、大尊が吸い込み、水底がお土産として死体のいくつかを空間倉庫に仕舞ったことで地面に染み込んだ血を除けば、何も残っていなかった。
3体は中に侵入した白と青の帰りを待つために水底の艦に戻った。
SIDEOUT
SIDE白
白と青は外を渦潮たちに任せて、建物内に侵入していた。
勿論、建物の中にも人間や鬼がいる。当然、陣を使って攻撃を鬼たちは仕掛けるが。
「物足りないわね」
「集団は面倒だ」
しかし、この2人はそんな陣を正面から打ち破った。
撹乱の動きをする鬼は白が脚を鞭のようにしならせて動きを抑える。
その隙に青が手に持っている元弭に目高の卵に似た飾り物の付いた大弓。
従来の妖姫と違い、この2人は鬼と戦い慣れている。一方、鬼たちは幼体の魔化魍を連れて逃げ回る妖姫しか相手にしたことがなく戦闘を行う妖姫と戦ったことがなかった。
こうして陣を苦労することなく破った2人はこの支部にいる支部長を探す。
やがて2人が出たのは、だだっ広い部屋だった。だが、壁には大きな穴が空いている。おそらく最初の号砲で開けられた穴だろう。そして、その穴から漏れる光で照らされてるのは、ここ長崎支部の支部長である三ツ木 照弘と4人の鬼だった。
「お前らが侵入した妖姫か」
「そうだと、言ったら」
「ここで死ね!!」
三ツ木は手に持つ変身鬼笛を吹く。
「妄鬼!!」
三ツ木の頭の上に黒雲が生まれ、三ツ木の吹く笛音で大きくなりやがて滝の様な雨を降らせる。
滝の様な雨を浴びて三ツ木の姿が見えない白と青は警戒する。そして、滝の中から両手が突き出て、その両手が滝の雨で出来た膜に手を掛けると力任せに引きちぎった。
中から出てきたのは、青紫で縁取りされた頭部に左右非対称に側頭部から伸びる角、青に近い水色の体色の鎧を纏い、その手には音撃管が握られている。
この鬼こそ九州地方長崎支部支部長 三ツ木 照弘が変身する鬼 妄鬼である。
「陣を組め!! 一気に片付けるぞ!!」
妄鬼の指示で4人の鬼は妄鬼を起点にして白と青を囲む。
「道中で戦った鬼たちの使っていたものですか? ですが、もう見破っていますよ」
「そうか。だけどなこっちはレベルが違うんだよ!!」
妄鬼が口にした瞬間に妄鬼は反対の位置にいた音叉刀を持つ鬼と入れ替わっており、白と青の腕に切り傷が出来る。
「「っ!!」」
見破ったからと言って、油断する2人ではないのだが、妄鬼の攻撃は目視できなかった。
移動した妄鬼はまた移動し、今度は横の鬼と位置が入れ替わる。カードシャッフルの様に入れ替わる姿に白と青は冷や汗が垂れる。
「さっきの鬼たちとは大違いね」
「ああ。少し驚いた」
長崎支部に侵入した際に戦った鬼たちとは比べものにするのが烏滸がましいほどに違う動きに白と青は認識を変える。
白は鉄扇を使って、鬼の1人に接近すると、それを読んでたのかのように妄鬼とは違う音撃管を持った鬼が白の動きを止めるために空気弾を撃つ。
「っ!?」
迫る空気弾を鉄扇で防ぐ白に音撃棒に風を纏わせた鬼が此方に向かってくる。
「ちっ!!」
舌打ちをした鬼は音撃棒の鬼石のついた先を外すと中からアイスピックのような針が現れ、鉄扇の隙間を抜いて白に刺す。
「甘い!!」
だが白はすかさずにもう1つの鉄扇を出して、その攻撃を防ぎ、蹴りを鬼の腹に叩き込んで距離を取る。
一方、青は
矢は途中まで飛ぶとバラけるように複数の矢に分かれて、妄鬼に迫る。しかし、妄鬼の側にいた音叉槍を構えた鬼が音叉槍を回転させて飛んでくる矢を弾いていく。
妄鬼は守られながら青に向けて音撃管 妄想から空気弾を撃ってくる。
青は矢を放ち、自身に当たりそうな空気弾のみを撃ち抜く。
青は流れを変えるために床に向けて矢を放つ。コンクリート製の床は簡単に壊れ、散った破片を更に細かく矢で砕いていく。
砕けた破片は細かい塵となって視界を奪う。
目障りな塵を散らすために妄鬼が動く。だが、妄鬼が動く瞬間に青は手に持つ
「へ!! こんな矢に当たるわ……」
「避けろ!!」
さっきまでの拡散する矢とは違いただ真っ直ぐ飛ぶ矢を叩き折ろうと音撃弦を構える鬼に妄鬼が注意の声を出すが––––
「へっ? がああああああ!! 眼が、眼が!!」
鬼の前にまで接近した矢は突如爆発して鬼の視力を奪う。
「あ、ああ、妄鬼さん。どこですか、あ、ぐぼ」
視力を失って無茶苦茶に音撃弦を振るう鬼の背後から白が閉じた鉄扇で身体を貫く。
「もう、きさん、か、かたきを–––」
「ふん!」
白の鉄扇が開かれ内側から外側に広がった鉄扇で鬼の身体は分かれ、上半身はそのままドサッと地面に落ちる。
「イサキ!! ちっ、てめえ!!」
音撃棒から音撃針に変わったものを持った鬼が白に迫ると、鉄扇を交差させて音撃針を受け止める。
「くそっ!! はなせ、はなせ!!」
交差した鉄扇に挟まれた音撃針を動かそうともビクともしない。音撃棒の片方を離して、変身音叉を一瞬で音叉刀に変えて、白に斬りかかるが白は音叉刀を持つ腕に伸ばした右脚でぐるぐるに巻きつける。
「ぎがあああああ!!」
そのまま白が脚に力を込めれば腕をぐしゃぐしゃに砕き、中で細かく折れた骨が腕から突き出る。
白は巻いた脚を外して、鬼の背中に移動し、そのまま組んで鬼を後ろの床に向けて叩きつける。鬼の頭はひしゃげた車のように潰れる。
「榊さん!! おのれ、妖姫!!」
「待て、宍戸!!」
激昂した妄鬼の隣に立っていた音叉槍を持った鬼が妄鬼の静止の声を無視して、白に槍を向けて突撃してくる。
だが、青が白のそばに移動して矢を番えて放つ。
「っ!!」
最初の鬼のように爆発する矢だと知った鬼は手持ちのディスクアニマルを矢に向けて投げる。
投げられたディスクアニマルと矢を衝突した瞬間–––
「爆発しない!!」
ディスクアニマルは矢に当たった筈なのに爆発せず地面に落下する。だが、ディスクアニマルをよく見ると全体が白いものに覆われて、動物の姿に変形する変形箇所が壊れていた。
鬼は疑問に思うが、しかし、青は待つはずもなく矢を放つ。
「っ、なっ!!」
鬼は自身に迫る矢を避ける。すると標的を失った矢は地面に刺さり、とてつもない電撃が地面に迸り、刺さった地面は少し赤く溶けていた。
「何なんだよ!! 爆発したり、凍らせたり、今度は電撃、何なんだよ!!」
鬼の質問に答えるはずもなく今度は、2本番えて放つ。
2本の矢はほぼ同じ速度で鬼に迫る。だが、鬼には今度はいったい何が起きると疑心暗鬼だった。
「くそっ、がはっ、しぶ、ちょ–––」
矢の1本を切り落とすも、もう1本の矢が鬼の身体に刺さり刺さった箇所を中心に身体が抉られる。胸元近く、心臓の近くを抉られた鬼は血を吐きながら倒れる。
「宍戸さん!! がっ」
倒れた宍戸の名を叫んだ音撃管を持っていた鬼の首は何かに切り落とされる。鬼の首を切り落としたのは白の鉄扇で、ブーメランのように回転しながら白の手元に戻ってくる。
白は鉄扇についた血を払うと鉄扇を広げたまま妄鬼に鉄扇を使って挑発する。
「くそ妖姫!! なっ!!」
「これで終わり」
最後の部下が殺され、白の挑発に乗せられた妄鬼の隙を突いた青は
1つ目は妄鬼の面を割り、2つ目は手に持つ音撃管 妄想を弾き、3つ目と4つ目は右肩と左脚に突き刺さり壁に張り付ける。
「くそっ!!」
白は青の放った矢で壁に張り付けられている妄鬼に近付き、妄鬼の左脚を踏み砕く。
「がああああああああああ!!」
「どんな気分ですか? 格下と思う妖姫にやられる気分は?」
「……まえ………」
「何ですか? もう少し声を大きくしていただけませんか聞こえづらいので」
「お前たちが俺の家族や友を殺したのが原因だ!! お前たちが居るせいで悲しむ人がいる!! 全てお前たちのせいだ!! だからお前たちを
だが、魔化魍の王。あんなのが産まれて、またお前らが動き出した。せっかくの平和を乱した。だから、殺す魔化魍の王を!!」
「……五月蝿い。その前にお前を殺す」
青はとどめを刺そうと変出世に矢を番えようとすると––––
「……白。その手を離して殺せない」
「やめなさい青。殺したいのは分かるけど、もうすぐ時間よ。引き上げましょう」
白が待ったをかけるように番えていた矢を止める。
「………そうだな。このままで良いか」
「ええ。ああ、それと貴方が王を殺す?
ふふふふふふ。なんて愚かなんでしょうか」
「なんだと!!」
「ですから愚かと言ったのです。あなたの実力はハッキリ言って弱いとしか言えません。おそらく、魔化魍を清める際はこの支部の鬼と共同で清めていたのでしょう。集団として、連携をする貴方がたは確かに強かった。私たちの動きを的確に突いた攻撃、攻撃を防ぐ防御、こちらに隙を見せない動き、素晴らしかったです。ですが個々の力–––
つまり個人としての戦闘能力はお粗末でした。何ですかあの動きは連携をしてた時とは大違い。まるで案山子。どうぞ当ててくださいというかのように、お陰で楽に始末することが出来ました。
これならば以前戦った兄弟鬼たちの方が強かったです。まあ、そんなことも分からないから部下が死んだ。せいぜい部下の死を嘆きながら張り付いていなさい。
では、さようなら鬼」
「待て!! 待てぇぇぇぇぇぇぇえええ!!」
静止の声を掛けるも白と青は矢で壁に張り付いた妄鬼を置いて、砲撃で穴の開いた壁から外に出て去った。
「コロシテヤル、コロシテヤル、コロシテヤル、コロシテヤル、コロシテヤル、コロシテヤル」
矢に刺さった傷を気にせずに怨嗟の声を吐きながら白と青の去ったほうに手を伸ばす妄鬼が最後に目にしたのは自身に目掛けて放たれた砲弾だった。
SIDEOUT
SIDE水底
銭鬼と戦いが終わり、自身の片割れのいる海に戻った水底たちは白からの指示である時間と共に砲撃を長崎支部に行う。
そう指示された水底は大尊と渦潮と共に白と青の帰還を待っていた。
「戻ったわ」
「……戻った」
水底
【おかえりなさい】
「………時間ね。水底やりなさい」
水底
【かしこまりました】
時間となったのを懐中時計で確認した白の指示を受けた水底は艦の主砲を長崎支部に向ける。
主砲が長崎支部を捉えると、砲撃が始まる。
次々と放たれる砲弾は一部健在だった長崎支部に吸い込まれるように命中し、その形を破壊していく。
砲撃中に放たれた1つの砲弾が白と青が出た妄鬼が張り付けられている部屋の穴に入り込み、穴から炎と何かが飛び出す。
「(ん?)」
何かに気付いた青は落ちた先の海をよく見ると、そこには砲撃を食らい、各所に火傷のような痕のあるバラバラ死体となり変身の解けた三ツ木の頭が浮いていた。
「(本当は私が殺したかったけど、まあ死んだし、いいか)」
水底の放った終幕の号砲は長崎支部に命中し、爆発の轟音と長崎支部崩落の音とともに怨嗟を吐くイカれた復讐鬼を潰した。
そして、海から王の指定した合流地点に戻った。
如何でしたでしょうか?
なんとか今年中に書けました。今年の投稿はこれがラストです。
本当は『陣』による戦闘をもう少し長くしようと考えましたがやめました。
来年も本作品をよろしくお願いします。
ーおまけー
迷家
【はいはーい。おまけコーナー。今回は、前回のあとがきに書いてあった睡樹の持つ槍の宝具風紹介だよーー♫ でも、僕は武器の紹介は苦手だから。
紹介してくれるゲストを呼びました!!】
常闇
【それで何故、私なのだ】
迷家
【だって、アレの名付け親みたいなもんだから良いじゃん♫】
常闇
【そうだが】
迷家
【お願い】
常闇
【はあーー。仕方ない。その解説とやらをやってやろう】
迷家
【やったーーーーーー♬】
身を蝕み糧とする緑槍(グラスリィ・パラサイツ)
ランク:B
種別:対人
レンジ:40〜50
最大捕捉:1人
由来:睡樹が常闇との鍛錬で偶然生み出した睡樹のツタの腕を幾重にも巻いて出来た槍。
相手に向けて投擲し、命中すれば寄生するように柄の一部を残して体内に入り込み、内部から成長する。相手の血肉または水分を糧に成長したツタは内部から体外に出るように成長して皮膚を突き破る。また睡樹の意思でツタを操作して、特定の臓器を取り出す事もできる。
またこの槍は「身体を変化させて攻撃を避ける敵」に有効で、刺さった箇所から侵食していき変化させていた身体を元に戻して、最終的には「変化出来なくさせる」。
霧に身体を変えることができる常闇はこの槍で危うく死に掛けた。
しかし、自動追尾のような力は持たないので対象が身動きの取れない状況でなければ使えず、睡樹自身の腕もあって、相手が動いていた場合での命中率は半分以下。だが、相手が動いてなければ必中させられる。
名付け親は常闇で、グラスリィとはアイルランド語で緑=グラスと槍=スリイを合わせた造語。
常闇
【という感じだ】
迷家
【うんうん。ありがとうねーーー。じゃあ今日は此処までバイバイーー♪】