人間だけど私は魔化魍を育て、魔化魍の王になる。   作:創夜叉

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言い訳になるかもしれませんが言います。
Fate/Grand Orderの新たなサーヴァントの育成やポケモンの育成、AKFのイベントなど、ゲームをかなりやって、この作品の番外作品である『妖世館の地下第5空間の店には色んな客が来る』のプロローグとその次の話を書いていました。番外編はある程度の話数が溜まったら上げようと思います。因みにこの番外編は設定上、この話が終わり、様々な世界を行った後の話なので、まだ書いていない部分のキャラがたくさん出てきます。
そして、今回の話ですがこんなに待たせておきながら短めで展開が早い(?)です。
その分戦闘回の時はきっちり長めで書かせていただきます。


記録捌拾玖

 幼体の魔化魍たちを殺した鬼たちを昇布が鏖殺し、その暴走を止める為に氷漬けにされ、昇布の破壊跡に猛士が気付く前にその場から離れて数時間経った。

 

 青の案内で、セトタイショウの隠れ家のある結界の前に着いた。

 

「この先にセトタイショウはいる」

 

 そう言った青の先には何も無い土の壁しかなくとても入り口と呼んでいいのか分からないものだった。そうしてジッと壁を見てると青が思い出したように喋る。

 

「そうだった。王たちには見えないんだ」

 

 青が土の壁に手を当てた瞬間、土の壁は消え去り、目の前に大きな洞穴が現れる。

 

「では、こちらへ」

 

 青が先頭を歩き、私たちはその後を付いて中に入っていく。

 じめっとしていて少し湿気ぽい中を歩いていく。こうも湿ってると足を滑らせて転びそうだが、洞穴の壁の至る所に蝋燭が灯されており、暗い道を薄く照らしているお陰で転ぶ心配はなかった。

 そうしてどんどん進んでいくと–––

 

【––––––––––––––】

 

【––––––––––––––】

 

 魔化魍の話し声らしき声と蝋燭の灯りよりもさらに明るい光が見えてきた。

 そこには–––

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 セトタイショウと鋼鉄参謀、そしてセトタイショウの身体で隠れてるが小さな魔化魍が話し合っていた。

 

【––––––おお!! 王!! ここに来れたということは、無事に会うことができたということですね。そして、お前もやっと戻ってきたか。1週間ぶりか】

 

 私と青、そして後ろの私の家族に気付いて、鋼鉄参謀達との会話を止めたセトタイショウは私たちに話しかける。

 

「ああ。済まない。空腹で倒れてたところを人間に救って貰って、その礼で働いていた。だが、人間の肉も集めた。しばらくは保つと思う」

 

【そうか………ウミボウズは先程着いて、ツクモガミたちに肉を分けている】

 

【ねえーセトタイショウ。その人がボクたちの王?】

 

 少女のような声がセトタイショウから聞こえてくる。

 

【ああ。この方こそ我らの王だ】

 

 セトタイショウの肩の上からひょっこり現れたのは、熊のぬいぐるみだった。

 だが、ただの熊ぬいぐるみではないだろう。全身にある綻びを不気味に縫った跡、背中には特徴的なチャックが付いていて、脚には某猫の履いてそうな長靴。そして極め付けは手に持つ赤黒い物もとい人間の肉だった。

 熊のぬいぐるみは手に持つ肉を口に押し込んで、セトタイショウの肩からぴょんと跳んで、目の前に着地。そして流れるように片膝を着いた。

 

【初めてまして、私はツクモガミと申します】

 

「初めまして、私が9代目になる安倍 幽冥。よろしくツクモガミ」

 

 私はツクモガミに握手のつもりで手を差し出すと。

 

【あーーダメダメ! 今汚れてるからボクの身体!!】

 

 そう言うツクモガミの身体は先程まで喰べていた人間の肉から溢れた血で至る所に血が付き汚れている。だけど私は。

 

【あーー!! 汚れてるのに】

 

 ツクモガミの汚れてる身体を気にせずにそのまま、ツクモガミを本物のぬいぐるみのように抱き抱える。

 見た目とは裏腹に、凄くモフモフしていて、血が混じってるがフローラルな匂いが鼻腔に入ってくる。そして、慌てるツクモガミに言う。

 

「魔化魍が人間喰べるのは当たり前だから別に血で汚れていようと気にしないよ」

 

【でもでもーー】

 

【諦めろツクモガミ。王はその程度のことを気にする方ではない。安心して抱きしめられていろ】

 

【うーーーーー】

 

 いつの間にか私の側に立っていたカツラオトコもとい桂がツクモガミに説明して、ツクモガミは項垂れながらも素直に幽冥に抱きしめられる。実は、カツラオトコには桂というな名前を与えていた。カツラオトコの名前はセトタイショウのところに向かう途中で考えて、青のいる場所に向かう前にこの名前を与えた。セトタイショウに名前を与えなかったのは、まだ考えついてなかったからだ。

 

【王よ。無事にお戻りで何よりです】

 

 ツクモガミを抱きしめている時にいつの間にか側に桂が立っていたのは気にしてはいけないだろう。後ろから嫉妬じみた視線を4つほど感じるがそれも気にしてはいけないだろう。

 そんなことを考えながら私は桂とセトタイショウに話す。

 

「そうだ。桂、セトタイショウ。貴方達の仲間でまだ紹介していない子たちがいるでしょう。うちの家族の顔合わせと一緒に紹介してよ」

 

【では、私が呼んできますセトは王と話を】

 

【ああ、頼んだ】

 

 桂はその場から立ち上がり、奥にある襖に向かって、隣の部屋に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 隣の部屋に行って数分後、襖の奥から桂に連れられてきた魔化魍たちが私の前に集まった。

 

【先程ぶりだな王】

 

 洞窟で会った時よりも2回りほど小さくなったウミボウズが出てきた。私の家族もやっている術を使って身体を小さくしているのだろう。

 

「うん。無事に会えてよかったよ」

 

【俺は鬼に殺されるほどやわでは無い】

 

 まあ、南瓜と同じ強さかそれ以上のウミボウズはそうそう清められることもないだろう。そうしてウミボウズは南瓜と会話するために離れていった。

 次に目に入ったのは、なんというか変わった光景だった。

 

【仲、仲、仲間。嬉、嬉、嬉しい!!】

 

ルルル、ルルル

 

 同種族同士なのか? 同族に会えて嬉しそうに浮幽の周りをぐるぐる回り、変わった喋り方をするのは頭頂部に金と翡翠の装飾が施された豪華な鏡を着け、触手の先が金ピカな海月の魔化魍だった。

 

【あの魔化魍はウンガイキョウと言います。最近産まれたばかりですが強さは折り紙付きです】

 

 桂が浮幽の周りを飛ぶ魔化魍の名を教えてくれる。

 ウンガイキョウは浮幽の頭にべったりとくっ付き、浮幽が触手で引っ張っても離れようとしない。

 そして、最後に奥から出てきたのは、巨大な汽車を彷彿させ、身体の各所に電車のパーツを身につけた団子虫のような背甲を持つ灰色の百足の魔化魍だった。

 

【初めまして魔化魍の王。私はユウレイキカンシャと申します。セトタイショウの補佐をしております】

 

 ウミボウズと同じように術で身体を縮めているのだろうが、それでも大きいい。頭の先にある突起から白い煙がぽくぽく浮かんでいる。

 身体の所々に穴が空いており、そこをよく見ると席のような物が見える。

 ユウレイキカンシャという名の通り、おそらく中に入って座ることもできるのだろう。今回の計画が終わった際には、途中まで乗らせて貰いたい。

 

【? ああ、これですか良いですよ。今回の計画が終わった後には王には是非、乗ってもらいたいです】

 

「良いの?」

 

 私の視線に気付いたのか、自身の身体の中にある物に載せてくれるといった。以前、崩に乗せてもらった事があるが見るからに汽車のような外見を持つユウレイキカンシャに乗り心地はどうなのか、計画が終わった後が楽しみだ。

 

【はい。それに………魔化魍の王を乗せた魔化魍として名を広められそうですから】

 

 意外とちゃっかりしていると私は思った。そして、桂に呼んで貰ったのだからやるべき事をやろうと思う。

 

「では、セトタイショウ、ウミボウズ、ウンガイキョウ、ツクモガミ、ユウレイキカンシャは私の前にきてもらってよろしいですか」

 

 その指示に従って、セトタイショウ達は私の前に集まり、私が手を下ろすとそれに合わせて座り出す。名前を呼んでいない桂と青には理由を説明しているので、今は鋼鉄参謀と共に私の家族達と話していた。

 

「桂と青には名前があるのに貴方達に名前がないのはおかしいから。今から貴方達に名前を与えます。そして、私の家族になってもらいます」

 

 その言葉にどう反応すればいいのかセトタイショウ達は困惑している顔と嬉しい表情を混ざった顔を見せるが、私は気にせずに名前を与えることにする。

 まずは、青に育てられいるウミボウズから。といっても名前は決まってる。

 

「ウミボウズの名前は渦潮。青から聞いたんだけど主に渦潮を使って人間を喰らうんでしょ。そこから考えた名前」

 

渦潮

【ほおーー。渦潮、俺に相応しい名だな。感謝する】

 

「ウンガイキョウの名前は写鏡。安直だけど、どうかな?」

 

写鏡

【嬉、嬉、嬉しい!! 感、感、感謝!!】

 

「ツクモガミの貴女は、縫。ぬいぐるみのツクモガミの貴方にピッタリ名前でしょ」

 

【ありがとうございます】

 

「ユウレイキカンシャの君は穢流。君の元となった機関車で考えた名前。どう?」

 

穢流

【その名しかと胸に刻みました】

 

「最後にセトタイショウ。貴方の名前は鉄。極めて堅固な身体と仲間から頼られる貴方に相応しい名前だよ」

 

【ありがたく頂戴します】

 

 こうして桂、渦潮、青、写鏡、縫、穢流、鉄と名を貰った九州地方に住う魔化魍たちは幽冥の9代目魔化魍の王の家族として新たに加わった。

 

 そして、家族になったばかりの鉄を混えて、今回の話の大元である九州地方猛士壊滅計画の話を始める。

 まあ、始めると言っても実はある程度の話は白や朧、美岬、南瓜、青とこの場所に来る前に話してたのもあってそんなに時間がかからなかった。

 この場で出来た新しい家族たちの力を聞いたことによって、ある程度決まっていた組み分けに鉄たちを足す形で九州地方各支部の襲撃班が完成した。

 

「まず福島支部は私と鉄で、次に長崎支部は–––」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「–––ね。これで以上。何か意見は?」

 

 襲撃場所に誰を送るかという話が終わり、意見があるかを尋ねる。誰も反論する気はないらしく静かに王である私の言葉を待っていた。そして、この計画で決まったことを私は目の前の家族に伝える。

 

「それじゃあ、今日から3日後。九州地方猛士壊滅計画を発動します。各自、戦いに備えて休息をとるも良し、共に襲撃するメンバーと作戦会議をするも良し、己を鍛えるも良し、セトタイショウいや鉄をこれ以上悲しませない為に、九州地方の支部を終わらせるよ!!」

 

 幽冥の指示を受けて、この場に揃う魔化魍たちは声を上げる。そして、幽冥の家族である魔化魍とこの計画の立案者である鉄たちはその場から離れて3日後の計画の為に各々休息を取ったり、支部襲撃の際のメンバー同士で会話を始めたり、襲撃に向けて己を鍛え始めた。




如何でしたでしょうか?
ラストに書いてた通りに次回は襲撃メンバー同士の会話や鍛錬、休息。そして、妖世館留守番組を書きます。
次回もよろしくお願いします。
更にその次は猛士九州地方支部の支部長同士の会話シーンを書こうと思います


ーおまけー
迷家
【はいはーい。始まりました。おまけコーナー。どんどんぱふぱふ】

「何ですか。そのセルフ効果音は?」

迷家
【気にしない気にしない。で、今回のゲストは何と驚き! 初めての人間だよ。
 じゃあ、ご紹介。三尸の未来の奥さん。調鬼こと月村 あぐりだよ!!】

「まだ、そこまで入ってません。…………おほん。何故か久しぶりな気がしますが、月村 あぐりです」

迷家
【じゃあ、早速質問。ぶっちゃけ三尸との進展はどう?】

「………………」

迷家
【あらーー? 予想してたの違う反応。どうしたの?】

「いえ、別に」

迷家
【そんな反応されると気になるじゃん! 如何したの?】

「最近なんというか、三尸が素っ気ないんですよ」

迷家
【素っ気ない?】

「私が側に近付くと慌てて何かを隠すんですよ」

迷家
【隠すの?】

「はい。私が何をしてるのか聞いても答えてくれなくて、そんなのが最近続いてて、私嫌われてたんですかね三尸に」

「それは違う!!」

「え? あ!!」

迷家
【え? 三尸!!】

「俺はお前を嫌ってない、むしろ大好きだ」

「じゃあ、何で私のことを避けてたんですか?」

「…………実はな、コレを」

「これは箱?」

「…………」

「開けていいですか?」

「ああ」

「これは、髪留めですか?」

「春詠からお前の誕生日を聞いて、ハハマナコから作り方を教わったんだ」

「誕生日?」

「ここに来てから髪を切ってないだろ、髪がかなり伸びてきたしなんか止められる奴がいいかなって」

「……………」

「それに春詠が言っていた。色々なことがあったから自分の誕生日を忘れてるかもしれないって、だから俺だけでもお前を祝ってやれたらなって」

「……………」

「誕生日おめでとうあぐり」

「ありがとう三尸」






迷家
【うんうん。良かった良かった♫ あの2人の仲違いなんて見たくないからね。
 うん。じゃあ、良い雰囲気のまま終わらせよっかな。じゃ次回もよろしく。バイバイ♪】

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