はい。今回の話で幽冥は白たちと合流します。
少し胸糞(?)シーンが入っています。
SIDE◯◯
幽冥たちがウミボウズとその妖姫の自己紹介を聞いてる同時刻。
『転移の札』によって飛ばされた幽冥たちが転移した場所と同じ場所に光が集まり、光が破裂すると中から複数の人影が見えてくる。
「ここに王がいるのですね」
ヴィクトリアメイド服の女性もとい白が言うと。
「間違いありません」
白の言葉に巫女服の女性が答える。
「で、どうするの?」
三度笠を被った和服の女性もとい朧は白にどうするか聞く。
「とにかく、今は王を見つけることを最優先とします。何人かに分かれて動きましょう」
「王を見つけ次第、この札を破いてください。そうすれば、破けた札を起点に我らにしか分からない音が発生します。その音を頼りにその場に集合してください」
白の指示を聞き、擬人態の家族達は数班に分かれて、巫女服の女性もとい蛇姫の手にある数枚の札から1つ抜き取り、それぞれが王である幽冥を探す為に行動を始めた。
SIDEOUT
ウミボウズとその妖姫は自己紹介をすると、そのまま片膝立ちになり頭を下げる。
「改めまして。私はウミボウズの妖姫」
【俺は5大五行魔化魍のウミボウズ。久しぶりだな我が友よ】
ウミボウズが自己紹介に名乗った称号と友が誰なのかと私が聞こうとした時に––
南瓜
【久しぶりだねウミボウズ】
「南瓜?」
南瓜
【え? そういえば話しておりませんでした。王は知らないかもしれませんが私もウミボウズと同じ5大五行魔化魍なのです】
「そうなの?」
南瓜
【はい。私は炎の五行、ウミボウズは水の五行になります】
【こうやって話すのは数十年ぶりだ。他の奴らも集まれればいいが】
南瓜
【その話はまた今度にしようウミボウズ】
南瓜がウミボウズとの話を中断して、私はセトタイショウの言っていた事をウミボウズの妖姫に言うと。
「そうだった。連絡忘れてた。まあ、大丈夫でしょう。ウミボウズのご飯のついでに大量に捕獲しましたので」
セトタイショウはもしかしたら鬼にやられたのかもしれないと心配していたらしいが、先ほどの様子から見るに、その心配は無用のようだ。
睡樹
【王………これ……み……て……みて】
そんな風に思ってると、ウミボウズの現れた場所から睡樹がツタの腕の先に魚を刺して、こちらに走ってくる。おそらく、会話してる間に暇を持て余して獲ったものだろう。
しかし、魚が獲れて嬉しいのか、下の岩場をよく見ずに走ってるので不安だ。そして、その不安は的中した。
睡樹
【あう】
足元の少し大きな岩場に足を引っ掛けた睡樹は顔から転ぶと魚を刺していない反対のツタの腕でコートの襟に引っ掛け、綱引きのように引っ張られボタンを閉じられていないコートはスルッと脱げて、水着姿のウミボウズの妖姫が姿をあらわす。そして、コートを脱がされた反動でウミボウズの妖姫は顔から地面に突っ込む。
「あう。あ、あ、あ、あのコ、コ、コ、コ、コートを」
睡樹にコートを脱がされて、地面に倒れたウミボウズの妖姫はさっきまでのキリッとした表情やピシッとした姿勢が幻だったかのようにふにゃふにゃした状態に変わり、睡樹が持つ脱がしたコートを指差して、早口で吃りながら喋る。
睡樹
【こ、れ?】
「は、は、は、はい。あ、あ、あ、あの返して、く、く、く、ください」
睡樹
【…………】
睡樹がツタの腕に持つコートを指差すと、ウミボウズの妖姫はそれですというように首を縦に振る。
睡樹
【は……い】
「あ、あ、あ、あ、ありがとうご、ご、ごございます」
ウミボウズの妖姫はお礼を言うと睡樹からコートを受け取り、目にも止まらぬ速さで上に着る。すると、先程と同じようになる。
「ふう、すいません。変なのを見せた」
「別に大丈夫だけど、何でコートが脱げるだけでそんな性格というか喋り方が変わるの?」
「変なのは自覚してるのですが、やはり恥ずかしいから」
なんとも言えない微妙な空気が漂い、気まずそうに顔を背けるウミボウズの妖姫を少し可愛いと思う私だった。
とにかく、セトタイショウが言っていた仲間の姿も確認したので、セトタイショウがいる洞窟に戻ろうとすると–––
「王よお待ちを、洞窟に戻ってもセトタイショウはいない」
「どういうこと?」
「私たちは、猛士の目から逃れる為、拠点をいつも変えている。前は洞窟だったから今頃は隠れ家にいるはず」
「そうなんだ」
確かに、いつまでも同じ場所にいたらいずれ猛士に場所を特定される恐れがある。その為に拠点を変えているのだろう。
「じゃあ、その隠れ家の場所はどこに?」
「それですが、隠れ家は私達の仲間がいずれかが居なければ辿り着かないようにされている」
今の話を聞く限り強力な結界を使って、その場所を認識させないようにしたのだろう。跳から聞いた話だと、結界を張ることのできる魔化魍はその術の適正がないと不可能のようだ。だが、それだとセトタイショウと合流できないと思っていると。
「ですから、私が案内します。私が居れば結界を通れる」
セトタイショウの仲間が居れば通れるのだから、ウミボウズの妖姫に案内してもらう方がいいだろう。
「ありがとう青」
「青?」
「貴女の名前。いつまでもウミボウズの妖姫じゃ、長いし。どう?」
「青? 良い。その名前ありがたく頂く」
私がウミボウズの妖姫に青と名を送り、ウミボウズの妖姫、青はその名前を呟いて自身の名として胸に刻み込んでいた。ウミボウズは身体を海に潜らせていく。
「ウミボウズはどうするの?」
【ああ、王よ。俺は別のルートでセトタイショウの居る隠れ家に合流する。妖じゃなくて青を頼んだ】
そう言ってウミボウズは海に潜って消えた。残ったのは私達と目の前の青だけ。
「取り敢えず、その隠れ家に行こうか」
「はい! ………と言いたいのですが……」
「どうしたの青?」
「案内は私がバイトが終わってからでおねがいします」
そう、忘れてるかもしれないが彼女がこの洞窟に男たちを案内してたのはバイトの一環に過ぎず、まだバイトは終わっていなかった。
そう言って、私たちは洞窟を抜け、青がバイトを終わるの待った。
因みに青がバイトを早く上がれるように私たちも協力して、その日の海の家の売り上げはいつもの5倍もあったとかで、店主の女性が大喜びしていた。
そして、青が海の家のバイトを終えて、そのままの服装で店から出て案内を始めた。
「では案内する着いてきて」
「じゃ、行こっか」
そうして、青の案内を受けて、前の砂浜とは違い、山の中に入って歩いて数十分経ったとき。
「…………う………………!!」
「……………………うう…!!」
何かを呼ぶような声が聞こえたような気がするが、気のせいと思っていると。
「王うううううううううう!!」
「「幽うううううううううう!!」」
「え? わああ」
気のせいと思ったのは気のせいではなく3つの声が聞こえ、振り向うとした瞬間に声の主達は私の身体に飛びついていた。
声の主は顔を見ないでもわかる。
「王よご無事でしたか!?」
両眼から涙を流し、私を本当に心配していたというのがよくわかる私の最初の家族であり従者となった白。
「幽、怪我ない?」
大人の見た目と違った幼女っぽい泣き声で聞く、私のこの世界の最初の友達で今は家族の朧。
「幽、良かったよ無事で、前の様に心臓を切り取られそうになった時の様になってなくて良かった」
前世の頃に私が助けて貰った時と同じ状況じゃなくてよかったと安堵する前世からの親友の美岬。
「ああ、王よ。ご無事でご無事で何よりです」
白が力を込めながら抱きついてる為に少し痛いが、心配させた罰として甘んじて受ける。
「あ、そうだ」
美岬がそう言って私から離れて、懐にしまっていたに札を破るとピキーーーンと某機動戦士のあの効果音のような音が響く。
「何ですか? この音は?」
「合流の場所を知らせる札って蛇姫が言っていた。」
そうして少し経って、最初に合流したのは暴炎と蛇姫、昇布だった。暴炎と昇布は私の姿を見て安堵の息を吐いていたが、蛇姫は今回の『転移の札』によって起きた事故で、白や朧に怒られ、私の居場所を特定するの時間が掛かった事で私に謝っていた。
蛇姫を落ち着かせてる間にどんどん合流してくる。
樹を避けるように宙を浮いて移動する浮幽とその頭の上に乗った大尊と迷家。
三尸と蝕を自身の半身ともいうべき骨の艦に載せて樹々の間をすり抜けるように現れた水底。
地面から現れたのは穿殻とその殻の上の突起に捕まっている羅殴と屍と波音。
地響きに似た足音と共に現れた崩とその背の甲羅でぐったりしてる憑とそれを介抱する食香と蝕。
そして、合流した白たちは妖世館に帰りましょうと言うが、まだ帰れないと言い、その理由であるセトタイショウの計画の話をしたら、みんなは既に計画に参加してるかのようになり、帰るのはセトタイショウの計画が終わってからということになった。
白たちと合流した私達は青の案内を受けながらそのまま進む。
「–––––––––っ––––」
「–––––––––––––––」
ふと、擦れるかのような小さな声だが、何かが耳に入った。
先程のことも白たちの合流の時にも思ったがどうやら聴力がまた上がったらしい。
「みんな何か聞こえない?」
「何がですか?」
「聞こえ………た……?」
ルルル、ルルル
白や睡樹、一部の家族は聞こえてないらしく首を傾げる。
「うん。何か聞こえる」
屍
【ああ、俺にも聞こえる】
迷家
【なんか聞こえるよーー♪】
だが、朧や屍や一部の家族には聞こえているみたい。
取り敢えず何かあると不味いので私と朧、屍で声の主達の確認に向かう。
「目–––や––は––––かったがな」
「しかし、––––が––––の––ラッ–––った」
そこには鬼がいた。しかも軍隊でいう小隊位の規模の人数の鬼がいた。
彼らは何かを話し合いながら何かを積んでいた。幽冥たちは鬼たちが何をしているのか確認しようと近づこうとすると。
「魔化魍だ。魔化魍がいるぞ!!」
突然の後ろからの声に驚き、振り向くと音叉刀を構える鬼がいた。
「くたばれえええ!!」
魔化魍のいる中で私に向けて音叉刀を振り下ろす。まさか、半分は魔化魍に近くなったとはいえ、外見上はほぼ人間の私に振り下ろしてくるとは思わなかったので、動けなかった。
鬼の音叉刀は私の身体目掛けて垂直に振り落とされるが、どこからともなく音すら発さずに現れた白が鉄扇で音叉刀を防ぐ。
「鬼風情が身の程を弁えろ!!」
白が鬼の音叉刀を弾いて、その首に向けて一閃すると鬼の首は吹き飛び、そのまま身体は首を無くした事で血を吹き出しながら倒れた。
「ありがとう白。でも、首は飛ばさないで欲しかったな」
「申し訳ございません王」
「まあ、いいよ。本当は確認した後に1人ずつ殺るつもりだったけど、どうせ……」
「何者だ!! 出てこい!!」
「俺らの仲間をよくも殺しやがったな!!」
殺された鬼の首を見て、激昂する鬼達の声があたり一面に喚くように聞こえる。
「ね。あんな感じ」
「誠に申し訳ございません」
「しょうがない。白はみんなを呼んできて、その間は私たちで相手をするから」
そう言って、私と朧と屍で、鬼のいる場所に姿を現す。
「テメェか俺らの仲間を殺したんは!!」
「覚悟しやがれよ!!」
「人の頭に問答無用で刀を振り下ろしたんです。死体がバラバラじゃないだけありがたいと思ってください」
まあ、身体のほうは白が家族を呼びにいくついでに誰かにあげるんだろうけど。それは言わなくて良いかと幽冥は思った。
「ふざけるな!! ぐがああ!!」
キレた鬼は腰の音撃棒に手を伸ばすと、屍が振った尻尾から出た毒血液を顔に浴びて、悶え、影から伸びた黒い棘が鬼の身体を貫く。
屍
【私らの王に手を出した、つまり死。むしろバラしたほうが良かった】
朧
【そうそう。バラバラにしてもよかったんだよ。こんな風に】
そう言うと朧は鬼に影を操って鬼に突き刺した黒い棘を複数の刃に変えて、そのまま鬼の死体をバラバラに切り裂く。
「カイ!! はっ、三津谷! 上だ!!」
「上? ぐはっ」
ボトボトと肉片に変えられた仲間を見ていた鬼は上空から急に現れた昇布の攻撃を腕で防いだがそんなの関係なく昇布は鬼の身体を吹き飛ばす。
白が呼んできた家族達が集まり、陣を組むように鬼を睨む。
「三津谷、大丈夫か」
「ああ、軽い打撲だ」
「くそ!! 魔化魍め。まだいやがったのか!! まあ、コイツらと同じようにすぐに清めてやる」
「(コイツら? すぐに清めてやる? ………まさか!!)」
鬼の言葉に気付き、幽冥は鬼が積んでいた物を見る。
そこにはまだ幼く、自力で餌を取ることもできない幼体の魔化魍(ヤマビコ、ツチグモ、テング)たちの惨たらしく
だが、親または幼体を守る為にいる筈の成体の姿が無いのは、既に
出来れば、前者の方が良い。もしも、魔化魍の死体を猛士が何かに利用しようとしてるのなら、それは
だが、涙を流した様な跡のある幼体の死体を見て幽冥は怒りが沸く。
◯
「おま、【貴様ら––––】」
そして、幽冥が怒りの声を上げようとした瞬間、幽冥の怒りの声を遮るように更に大きな怒りの声が響く。
幽冥が振り向くと。
昇布
【貴様ら、貴様ら、貴様ら、貴様ら】
普段は純白に近い白い身体を持つ昇布だった。
だが、その身は真っ赤に染まり、ほんのり発光していた。
昇布
【貴様ら、よくも、よくも。まだ小さなその子達を殺したな】
鬼たちは昇布の声に気分をよくしたのか、
「はっ。こんな幼体如きに時間はかけらねえんだよ!!」
「お前らのせいでな俺の親友や仲間が死んだ。いい気味だ!!」
「俺たちは間違ってねえ!! 魔化魍は駆逐されるべき存在だ!!」
幼体の死体を持った鬼は幽冥たちのいる場所に投げ、さらに鬼の1人が積み重なっている死体の山を蹴ると幼体の魔化魍の身体は受けた音撃の影響でボロボロと崩れていく。
昇布は蹴り上げた鬼を尾で吹き飛ばし、崩れていく幼体の魔化魍たちの小さな身体を自身の細い手で抱える。だが、抱えたからといって幼体の魔化魍たちの身体の崩壊は止まるわけでなく、昇布の手の中で1体、また1体と塵に変わっていく。
昇布
【ああ–––––ああ、あああ、あああああああぁぁぁぁぁぁ!!!】
そして、自身の手から溢れていく幼体の魔化魍だった塵を見ながら昇布は吠える。
昇布の眼からは赤く濁った涙が溢れるように流れ、怒りと殺意と慟哭の篭った声と共に真っ赤な昇布の身体から白い蒸気が噴き出す。
「何だ!! この煙は!!」
「距離をとれ!!」
鬼たちは昇布の身体から吹き出した蒸気に驚き、昇布の攻撃と判断したのか全員が一斉に距離を取り、音撃管を持つ鬼が煙に向けて構える。
ブジュルルルルルゥゥゥ
後に幽冥たちは言った鬼達は龍の逆鱗を踏みつけ、切り落としたと。
白い蒸気に覆われた中から響いたのは、鬼の行為に怒り、幼体の魔化魍たちの仇を取らんと白龍の声だった。
如何でしたでしょうか?
次回はブチ切れた変異態の昇布による鏖殺劇です。
ーおまけー
迷家
【はーーーーい。おまけコーナーだよーー♪】
穿殻
【前回は申し訳ございません。はい。今日は泣いてませんよ】
迷家
ボソッ【ホントだよ。あの後にどれほど苦労したか】
穿殻
【はい。大変申し–––】
迷家
【ああーーーもう。泣かなくていいから!! 君宥めるの時間掛かるから!! もう泣かないで】
穿殻
【はい。失礼しました】
迷家
【もーーーう。では、今回のゲストは前回と同じゲスト。泣き虫サザエオニの穿殻だよーー。
それじゃあ質問するよ。いつも穿殻ってさ王から頂いた部屋の1つに篭ってるみたいだけどそこで何をやってるの?】
穿殻
【うん。いつも薬を作ってる】
迷家
【薬?】
穿殻
【そう。存在感を高める薬】
迷家
【………存在感】
穿殻
【そう。前にも言ったけど、僕ってさ存在感ほぼ無いっていう位薄いでしょ】
迷家
【う、ん】
穿殻
【それで気付かれなかったり、忘れられたりするでしょ】
迷家
【………】
穿殻
【だから、どんな状況でも分かるような存在感を薬で高められないかなって】
迷家
【そう、だね……………あっ! そうだ! いつも気になってたんだけどさ】
穿殻
【はい】
迷家
【時々、君の部屋を通る度に見る部屋の前に倒れてる戦闘員と大量のダンボールって何?】
穿殻
【ああ!! あれは趣味に付き合って貰って倒れた人たちです】
迷家
【趣味? どんな?】
穿殻
【はい。合成ジュースです】
迷家
【合成、ジュース?】
穿殻
【そうです。王曰く、人間の子供がファミリーレストランという所で良くやってるみたいです】
迷家
【へ、へえ〜〜】
穿殻
【それをいつもあの人たちに頼んで試飲して貰ってるんです。美味いか不味いか】
迷家
【そ、そうなんだ】
穿殻
【あ、そうだ。前回迷惑掛けたんで、今回お詫びの合成ジュースを持ってきたんです。是非飲んでください】
迷家
【………】
穿殻
【どうぞ】ニコニコ
迷家
【じゃあ、一口】ゴクッ
穿殻
【どう?】
迷家
【…………ガハッ…………】ドサッ
穿殻
【………うーーん。やっぱり、梅干しの搾り汁とレモンの果汁と赤紫蘇のジュースはダメか】
迷家
【………】ピクピク
穿殻
【なんか迷家動けないから。今回はここまで。じゃあねーーー♪ ハッ!! 今、僕目立てた!!】