人間だけど私は魔化魍を育て、魔化魍の王になる。   作:創夜叉

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はい。お待たせしました。
ダウンタウンの笑ってはいけないを見ながら作りました。
新年もよろしくお願いします。




記録捌拾弐

 攻撃を避けた鬼の2人とは違う鬼が鰐の人型魔化魍にトドメを刺そうと手にした音撃弦を振り下ろすが、身体に当たる寸前でその攻撃は止められる。

 

シュルゥゥゥゥ

 

 幽冥の側にいた睡樹はツタの腕を地面を這うように伸ばし、鰐の人型魔化魍の上に振り下ろされる音撃弦にツタの腕を絡み付けて止める。

 

「邪魔をするな!!」

 

 すると、鬼はツタの腕で絡みとられてる音撃弦の柄を引くと、柄から細い刀身の音撃武器が姿を現し、その音撃武器を鰐の人型魔化魍の頭に突き刺そうとするが、標的だった鰐の人型魔化魍の姿はそこから消えていた。

 

シュルゥゥゥゥ

 

 何処だと探す鬼だが、探していた魔化魍は睡樹の出した鳴き声で発見した。睡樹の方にむくとツタに掴まれて、地面に横たわる様に鰐の人型魔化魍が居た。鬼がさっきまで魔化魍がいた場所をよく見ると睡樹のいる場所まで引き摺った様な痕があり、睡樹が鰐の人型魔化魍をそうやって助けたと理解した。

 

 1度ならず2度もトドメを邪魔された鬼は音撃弦に絡まっているツタを音撃武器で破壊すると、そのまま音撃武器と音撃弦を持って睡樹に向かって走り出す。

 

「おい馬鹿! 戻れ!!」

 

 同僚の鬼が、走る鬼に言うが、怒りで頭に血が上った鬼は聞く気もなく。睡樹へ更に近付く。睡樹はその様子を見て、焦ることもなくただ樹のようにジッと立っていた。鬼は動こうとしない睡樹に更に怒り、その走りをさらに加速させる。

 だが––––

 

カッカッカッカッカ

 

 加速した鬼の前に現れたのは、歯をカチカチ鳴らしたような鳴き声を上げながら、炎を灯した右腕を自身の顔に目掛けて振り抜く南瓜の姿だった。

 

「!!」

 

 加速した自身の脚を止めようとするも既に止められる筈だった速度を超えて、止まる事ができなかった鬼は南瓜の炎を灯した拳を加速した速さ分をプラスして顔面から受けて、鬼の頭はスイカ割りのスイカのように打ち砕かれた。

 頭を失った鬼の身体は頭を砕かれた衝撃でくるくると回転して幽冥の後ろにある樹に潰れた音と共に赤い飛沫を飛び散らし、鎧に僅かに付着した炎がその身を包んで、首のない鬼の死体を激しく燃やす。

 

「たかと!! ちぃぃ魔化魍め!!」

 

 死んだ仲間の鬼の名前を叫び、仲間の仇を討とうと音撃管を構え、南瓜に撃とうとするが。

 

「なんだ………急に、眠気が………」

 

 急に眠気に襲われた鬼はふらつく音撃管をしっかりと狙いをつけようとするも、どんどん眠気が酷くなっていく。

 やがて、音撃管を落とし、足腰が安定せずに鬼は千鳥足の様にふらふらと動く。

 

シュルゥゥゥゥ

 

 睡樹が両腕を勢いよく地面に突き刺すと、荊のように鋭い棘となったツタの両腕が鬼の両脚を貫き、千鳥足でふらつく鬼の意識を戻した。

 

「ぎゃああああああああ!!」

 

 ツタに貫かれた両脚からだらだらと血が流れ、睡樹はそれを見ると脚を貫いているツタをさらに伸ばして、鬼の身体に巻きつける。

 

「な!! ぐがあああああ!!」

 

 ドンドン強く巻き付くツタから逃れようと身体を動かそうとするが、ツタに貫かれたままの脚は動かず、そのまま鬼の動きを止めており、逃げる事ができなかった。つまり–––

 

「がああ、あ、がっ………」

 

 背骨を含めた各所の骨を粉々に折られた鬼の身体は、睡樹がツタを解くと、軟体生物のようにぐにゃぐにゃと地面に落ちて、そのまま鬼はこと切れた。

 

「なっ、晢!! くそっ!! ゲン!! こっちに来い!!」

 

 仲間の死に際を見た鬼は残りのもう1人の鬼を呼び掛ける。

 

「…………」

 

「おいゲン!!」

 

 だが、呼んでも仲間の鬼は来ず、その場に立っていた。

 

「…………」 

 

 鬼は倒れる。その背中にはいくつもの鋭い氷柱が突き刺さっており、その背から流す血を凍らせて、血を流さないようにしていた。そして、鬼の立っていた位置のそばには、手を突き伸ばした姿で立っているの着物姿の少女である幽冥がいた。

 

「ゲンも。よくもやりやがった!!」

 

「五月蝿い!!」

 

 幽冥は鬼を恨みのある眼で睨みつけながら口を開く。

 

「よくもやりやがった………それは、こっちのセリフだよ。1体の魔化魍相手に複数で襲うとは、鬼の風上に置けない下衆ですね。そんな奴はこの9代目魔化魍の王 安倍 幽冥が直々に殺してやる!!」

 

 幽冥はそう言うと、右腕を狼の如き鋭い爪の腕に両脚を狼の脚に変化させる。

 変化した幽冥を見て、鬼は腰元の音撃棒を構え、鬼石に鈍い朱色の炎を灯す。

 

「…………」

 

「…………」

 

 ジリっとお互いに睨み続けながら、互いの動きを注視する。

 そして、近くの樹に燃え尽きていた鬼の死体がボロッと崩れると同時に2人は動く。

 

「うおおおおおおおおおおん!!」

 

「うおおおおおおおおおおお!!」

 

 幽冥は狼のような咆哮を上げながら、鬼は雄叫びを上げながら、迫る。鬼の炎に包まれた音撃棒が幽冥の頭に目掛けて振り下ろされる。幽冥は変化させていない左手に氷柱を作り出して、音撃棒の炎に突き刺して音撃棒の鬼石を破壊し、鬼は鎧の中にある隠し爪を伸ばして、幽冥の胴に突き刺そうとし、幽冥は右腕に風を集めて、鬼の攻撃の軌道を逸らし、そのまま生み出した風を鬼の身体に向けて振るう。 

 

 そして、そのまま鬼の横を通り過ぎ、腕をそのまま振り切った幽冥は鬼に背を向けながら、そのまま睡樹と南瓜の居る場所に歩き始める。

 

「なんだ。何ともねえな。こけ脅しか?」

 

 呆れと馬鹿にしたかのような声で鬼は言い、腰にあるもう1つの音撃棒を幽冥に向ける。それに対して幽冥は呟くにように答える。

 

「哀れですね。斬られてるのに気付かないなんて」

 

「なっ………」

 

 幽冥が背を向けたまま言った言葉の通り、幽冥が生み出した(かまいたち)によって横一刀両断された鬼の身体はズプリという音と共に前にズレていき、そのまま上半身は地面に落下し、下半身も静かに倒れた。

 鬼が死んだのを確認した幽冥はそのまま腕と脚を元に戻した。

 

「2人ともその鬼たちの始末をお願い」

 

シュルゥゥゥゥ カッカッカッカッカ

 

 鬼の死体を睡樹と南瓜に任せた幽冥は睡樹がツタで釣った鰐の人型魔化魍の側に寄り、傷口を子犬を撫でるように触る。

 

「さて、この魔化魍の治療をしよっか」

 

シュルゥゥゥゥ カッカッカッカッカ

 

 私の声に反応した2人は睡樹のツタの腕で、南瓜の背中に籠を作り、南瓜は横たわっている鰐の人型魔化魍を乗せて、睡樹は転がる鬼の死体にツタを突き刺して、私達はその場所から離れた。

 

 謎の魔化魍を追いかけ、重症の傷を負わした4人の鬼は『転移の札』の事故に巻き込まれた幽冥たちによって殺され、幽冥は殺した鬼の死体肉のほとんどを南瓜に、僅かな血を睡樹に与えて、謎の魔化魍の怪我の治療に取りかかった。

 

SIDE◯◯

 鬼が追いかけてくる。俺を清める(殺す)為に。

 

 俺は止まるわけにいかない。あのお方に会うまで、友人のアイツの目的の為に。

 

 だが、鬼に追いつかれた。俺は反撃した。しかし多勢に無勢、俺は追い詰められて、痛めつけられていく。

 

 しかし、俺は救われた。あのお方に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺のいる場所は全体が黒く染まったような空間だった。出口もないただの闇の広がる漆黒の世界。

 俺は出口を探す為に歩き始める。

 

 どれくらい歩いたか、時間感覚的には5分か、30分か、はたまたは1時間か、時間の分からない俺はただこの暗い世界から出れる出口を探す。

 

 ふと、歩みを止めて。周りを見る。何も無い。

 周りは歩き始めた時と同じ漆黒の空間だった。少しずつ息苦しい感じがしてきて尚更、出口を探す為に歩きをやめて走る。

 

 だが、走っても闇のような漆黒を抜けず、暗い空間が広がっていた。

 

 もう諦めようと思いかけていると、薄らと光が入るのが目に入った。出口らしき、光に向かって俺は走り出す。

 少しずつ暗い道が薄くなり光が強くなるのが分かる。そして、光にそばに立つと。

 

 光は俺の前に勢いよく広がり、暗かった空間は明かりに満ち始める。俺は更に光のあるそこに手を伸ばすと–––––

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【ここはいったい? っう! これは】

 

 光に向けて手を伸ばして目を覚ました俺は、身体を起き上げると身体に巻かれた潰して伸ばしたツタのような包帯に気付く。誰かが治療をしてくれたと理解した。目に入ったのは焚火とその焚火で焼かれている木の枝に刺さった魚とその焚火を中心に火で身体を温めている3人の人間の姿だった。

 

「ようやく目を覚ましたね」

 

 焚火の近くで座っていた人間の1人、いやあのお方がこちらに顔を向けた。

 あのお方のことはあいつ(・・・)からよく聞かしてもらった。

 

 人間にして魔化魍の王にして、様々な種族の魔化魍を家族と呼ぶもの。

 

 北海道では、魔化魍の間でも悪名高い猛士北海道第1支部(魔化魍の墓)の支部長抹殺と支部破壊、更には北海道を縄張りとする8人の鬼の1人、想鬼の撃破。

 

 佐賀では、多数の人間と鬼を相手に見事な戦略によって排除。

 

 最近では、魔化魍の王に恨みを持つと言われている悪魔魔化魍の1柱を従者である妖姫と共に倒した。

 

 と、色々な話がある今世の王。

 

【自己紹介をさせて頂きます。俺の名はカツラオトコ。王よ、貴女に会いたかったのです】

 

 カツラオトコは、頭を王である幽冥に下げて、そのまま言葉を続ける。

 

【王よ。唐突で申し訳ないと重々承知しておりますが、お願いがございます……………貴女の、王の力をお貸しください】

 

 そして、カツラオトコは幽冥に向けて土下座をする。

 

「まずは土下座をやめて」

 

 王には俺の誠意が届かなかったのかと思ったが。

 

「違う違う。話を聞くのに土下座のままじゃ話しづらいでしょ。だから、まずは土下座をやめて。それとお腹空いてない。人間の肉は無いけど、睡樹と南瓜が獲ってくれた魚があるから。それを喰べない。話はそれからだよ」

 

 王の言葉を聞いて、土下座をやめた俺は届きやすいように王が突き出した焼き魚を受け取り、それを喰らった。

 

SIDEOUT

 

 

SIDE朧

 突然の音が蛇姫のいる部屋から聞こえて、大急ぎで駆けつけると、ボロボロになった札を拾う蛇姫がいた。

 

【何をしてるの蛇姫?】

 

蛇姫

【これはその何というか、ええと】

 

 そう言って、蛇姫はボロボロの札を背中に隠すように持っていくが、ふと、蛇姫が前に話してくれた改良版の『転移の札』のことを思い出した。

 

【蛇姫。それって前に言っていた『転移の札』ですよね。そして、幽冥お姉ちゃんの匂いがするのに何処にもいないのはどうして?】

 

 私がそう言うと、観念したのか蛇姫は頭を床に下ろして素直に喋った。

 

蛇姫

【すまない!! 王が、完成した『転移の札』を持っていたら、突然術が発動して、気付けば王達は何処かに】

 

 『転移の札』は、目的とする場所を札に書き込まないと発動できないが、改良された札は使用者のイメージによって発動するようになっていると蛇姫が前に説明してくれた。

 

【はあーーーー、分かった。白には私から伝えるから、蛇姫は早く幽冥お姉ちゃんの居場所を探して】

 

蛇姫

【分かった】

 

 そう言って蛇姫は急いでボロボロの札を持って机に向かった。札に残った僅かな幽冥お姉ちゃんの気を頼りに何処に向かったのか調べ始めた。

 さてと、私はおそらく先ほどの音を聞きつけた白に対しての説明と蛇姫が殺されないようにしなければ。白は幽冥お姉ちゃんのことに関したら、おそらく家族だろうと手を掛けれる人だ。幽冥お姉ちゃんが帰ってきて蛇姫が居ないとなったら、絶対に悲しむし、私の友人でもあるからなんとか落ち着いて貰わないとね。

 幽冥お姉ちゃんが何処にいるかは分からないけど、分かったらすぐに向かわないと。いくら睡樹と南瓜が護衛についてるとはいえ、何かがあったら嫌だし。それにもしも、何かあったら私自身が正気でいられる自信がない。

 白が来るのと蛇姫の報告を待つしかないか。

 

 あ、勿論、ことの原因である蛇姫に対してのお仕置きは幽冥お姉ちゃんを見つけたら必ず行うけどね。

 

蛇姫

【(あ、結局。お仕置きされる)】




如何でしたでしょうか?
謎の鰐の人型魔化魍の正体はカツラオトコでした。
次回はカツラオトコの友が出ます。


ーおまけー
迷家
【はーーーい。おまけコーナー始まるよーーー!!】

迷家
【今回は新年というやつでゲストは呼んでないよーー】

迷家
【だからーー今回はこのままお別れだよーー新年もよっ、ろしくねーーーー!!】

迷家
【ばいばーーーーい!!】

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