人間だけど私は魔化魍を育て、魔化魍の王になる。   作:創夜叉

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はい。大変お待たせしました。
少しゴタゴタのために書くのが遅くなっていました。
今回は屍と出会ったある魔化魍の話です。


止むことのない雨

 それは唐突に聞かれた。

 

「止むことのない雨?」

 

美岬

【そう。幽ってこういう都市伝説とか真っ先に知ってそうだと思ったけど】

 

「……あーーー!! そうだ。私この世界に生まれたからそういうの全然見てなかった」

 

 そう。今、思い出したがあの両親が原因で私はそういう本を読む時間がなかった。

 何せ『本を読むくらいなら。とっとと飯を作れ、皿を洗え、掃除をしろ』と言われて、読めなかった。ああ、思い出すだけでーーーああムカつく。

 

「で、結局、何なのその止まない雨って」

 

美岬

【うん。神奈川県にある1つの山に雨がずっと降ってる場所があるの】

 

「でも、山だからって雨は流石に止むでしょ」

 

美岬

【普通ならね。でも、その雨は止むこともなくその場所から離れないかのようにずっと降るの。

 この都市伝説は信憑性が高くて、この10年本当に止んだことが1度もないからから近々、都市伝説じゃなくなるかもしれない】

 

「そうなの。あ、そうだ。美岬、今から本屋行くよ」

 

美岬

【本屋って………まさか幽…】

 

「そう。今まで読めなかったからその為に買いに行くよ」

 

美岬

【分かったよ幽。でも、私だけだと無理だから白も呼んでいい?】

 

「白も…………まあ、本を持つ人が増えるから良いけど」

 

美岬

【ありがとう。じゃあ白を呼んでくるから準備して待ってて」

 

 美岬は買い物に付き合うために擬人態に姿を変えて、白を呼ぶために部屋を出た。

 

SIDE美岬

 や、やったああああああ!!

 

 心の中の声のはずなのに、表情で何を思っているのか分かりそうなくらいに美岬は喜んでいた。

 

 恋愛などに対してかなりが付くほどの鈍感な幽冥は気付いてないが美岬は幽冥に恋心を抱いていた。それは前世から続く思いである。

 今世に生まれた時も幽冥の事を想っていたが、女として生まれたという事と幽冥自体が居ないという2つの理由で、その時代で自分の事を愛してくれる人間の男と結ばれた。

 ある時、その男が知り合いの漁師から貰った魚肉(・・)を食べた結果、私の身体は人間から魔化魍に変わった。それでも男は私を愛していたが、魚肉を食らった日を境に私は老いなくもなり、比較的に軽い怪我ならすぐ治った。そして、私は老いは無くなったが男は魚肉を食べなかったので、そのまま歳をとり私に看取られて亡くなった。

 男が死んだ後は、この場に住めないと思い、旅に出た。旅に出た先で別の男に声を掛けられることも多かったが、あのように自分だけ歳がとれずに死ぬ様を見たくないと思い。結婚する事をやめた。

 

 それから何年も何十年も時が経ち、飼っていた(葉隠)が魔化魍に変わり、屍王や跳、常闇に出会い荒夜や狂姫を人間から魔化魍に変えて、そしてマシンガンスネークと闘い………まあ、そこらへんはいつか話すとして、とにかく今は幽冥と一緒に買い物に行くことが先決。

 それと何故、白を一緒に言ったのかも理由がある。その理由は、白とは『幽冥を一緒に純愛で堕とすぞ同盟』の同志だからだ。

 最初の白は私の想いに気付き、敵意剥き出しの狂犬のような感じだったけど、私が別に正妃出なくても良いと言ったら、敵意を無くして今では幽冥のことで知らない部分のことを白に教える位の仲になった。

 

 その為に美岬は幽冥に『白も呼んでもいい?』と聞いたのだ。

 そして–––

 

「それじゃ、本を買いに行くよ!!」

 

「はい!!」

 

「じゃ、先ずは大手の本屋に行こうか」

 

 幽冥を先頭に白と美岬が後ろから歩き、幽冥の趣味の妖怪とオカルトの本を買いに出掛けた。

 

SIDEOUT

 

 

SIDE屍

 神奈川県某所。

 梅雨のくる少し前だというのに、鬱陶しい雨で私の頭は楽器のようにピチャピチャと鳴る。

 

 屍がこの雨が止まずに降り続けるという都市伝説の山に来たのは、尾から出る毒血液の元である動物の怨念を集めるのに適した山だったからだ。

 屍の尾から出る血は屍が動物の怨念を尻尾に集め、それが攻撃的に変異したものだ。その血を使って攻撃すればするほど、または放置しているだけで、集まった動物の怨念は減っていく。その為に屍は普段は古樹に術をかけてもらい、血の流出を防いでいる。

 今回は前の時の戦闘で使った分の血を補充する為に山に訪れた。

 

【しかし、最近の怨念は質がいいね。この質なら今まで以上のモノになりそう】

 

 屍の言う質とは勿論、怨念の怨みの質だ。

 最近の動物の怨念は昔よりも怨みは強くなっている。

 その原因として思い浮かぶのは、捨てられたペットや動物虐待などといったものが原因だろう。死したペットまたは動物が魂となった時に霊的な土地に縛られて、その場に留まりそのまま怨みを強める。屍はそういった怨みを持つ動物の怨念を尻尾に溜め込んで、血に変えている。怨みが強ければ強いほど勿論、血の攻撃力は上がる。

 

 

 

 

 

 

 それから3日が経ち、動物の怨念を集め終わり、いざ帰ろうとした時に屍は気付く。この近くに同族がいると、屍はそのまま気配のする方向の方に向かって進んでいくと–––

 

【お前、誰?】

 

 屍が見つけたのは青い傘を差し、レインコートを羽織ったペンギンの魔化魍だった。屍の声に気付き、ペンギンの魔化魍はこちらに顔を向ける。

 

【僕はアメフリコゾウだよ。この山にいるのは僕の住処みたいなもんだから】

 

【しかし、あなたこんなところになんで住んでる】

 

【………知ってるかどうか知らないけど、僕の種族アメフリコゾウは自分を中心とした場所に雨を降らす能力を持っているの、つまり僕が行くところには雨が必ず降るだよ。

 まあ、そういう能力だしね。

 昔は雨が降っている事をそんな気にするのは居なかったけど、今はいく先々で親の魔化魍や童子や姫なんかの育て親に子供の成長に悪いからって追い出されるんだよ。それで思ったんだよ。誰も迷惑にならない場所でひっそりと過ごそうって】

 

 魔化魍は本来、最も成長に適した環境がある。その環境の中には湿度というものがある。湿度が僅かにズレるだけでも魔化魍を成長させるのは難しくなる。だが、アメフリコゾウはその場に居るだけで雨を降らす。

 つまり折角、幼体の魔化魍を育てる環境が出来てもアメフリコゾウが原因で、その環境が壊されるのだ。

 

【…………】

 

【だから、僕はこの場所から動かないよ】

 

【あなたはそれで良いの?】

 

【良いんだよ。それで誰も迷惑にならないんだし】

 

 アメフリコゾウがそう言った次の瞬間、アメフリコゾウがいた場所には屍の尻尾があり、アメフリコゾウが座っていた倒れていた樹がへし折れる。

 

【何をするんだよ!!】

 

【気に食わないね。その目、今の自分を変えようしないで現状に甘えてるその目が気に食わない!!】

 

 屍が気に食わなかったのは、アメフリコゾウの目だった。

 それは、南瓜と出会う前の自分と同じ目だった。そもそも屍は純粋な魔化魍ではなく、動物の強烈な怨念によって姿が変わった元蛇である。

 屍が自意識を初めて持ち、尻尾から出る血の存在が何なのか分からず、同族に聞こうと思っても同族は居らず、自分が何なのか分からないと、ただ時を過ごしていた時に南瓜や古樹、緑と出会う。その出会いをキッカケに屍は徐々に自分がどういう存在か理解し、尻尾から流れる血も理解した。

 

 だから、山の中に逃げようとするアメフリコゾウを捕まえ、屍は動物の怨念を集め終わった際に使う予定だった蛇姫の作った試作の『転移の札』を地面に叩きつける。

 

 

 

 

 

 

 光が治まって見えたのは、妖世館のホールの中。屍は転移したのを確認して、アメフリコゾウに巻きつけた尻尾を離して、そのままアメフリコゾウを見る。

 

【いたっ! ………ここ何処!?】

 

【此処は9代目の王が住まう妖世館】

 

【お、王のいる館!!】

 

 屍の言葉にアメフリコゾウは驚き、ホールの中を見回す。

 

【で、僕をどうするつもり?】

 

【あなたが雨を自由に降らせられるまで、ここに居てもらうからね!!】

 

【えええええ!!】

 

 妖世館を中心に降る雨の中でアメフリコゾウの声が木霊した。

 それからアメフリコゾウは–––

 

【確かに、天候の術もとい雨を操る術はありやすが、これはちっと扱いが難しいでやんす】

 

【うーーん。それはちょっと】

 

 術に詳しい跳に聞くも扱いの難しさに困ったり。

 

鳴風

【うんと、黒くてね水がピチャピチャしてて】

 

【いや感想じゃなくて、どうなっているのかを】

 

 雨を降らす雲の中どうなっているのかを鳴風に聞くが、本人はただ遊んでたり。

 

拳牙

【先ずはですね、水分を認識するところから始めますか】

 

【出来るわけないでしょ!!】

 

 雨を自由に降らせられるようにする為に屍に協力を頼まれた拳牙が空気中の周りの水分を視認する事を始めようとするも出来ないとハッキリ言ったり。

 

 

 

 

 

 

 屍にお願いされて色々な家族の協力を得て1ヶ月経った。

 アメフリコゾウは遂に雨を自由に降らせられる様になり、屍に半ば拉致の形で妖世館に連れてこられたアメフリコゾウは私物なども特に無く、身支度をせずに自分の居た山に帰ろうとしていたが–––

 

【待って!!】

 

【なんだい。僕は雨を自由に降らせられる様になったし、これで山に帰っていいよね】

 

 アメフリコゾウはこの王のいる館に連れて来た屍に言う。確かに屍がアメフリコゾウを妖世館から出さないと言ったのは、雨を自由に降らせられる様になるまで、その条件通りに言うならもうアメフリコゾウが妖世館で暮らす理由はない。

 

【………ねえ、ここに住みませんか。雨も自由に降らせられるようになってるし、此処にいるのは誰もそんな事を気にしない。それに雨を敵の上に降らせられるようにならないと、だから……】

 

 そう。アメフリコゾウが降らせられる雨はあくまで自分の周囲だけだった。だから、屍は敵の上に降らせられるようにということを言っているが、実際はアメフリコゾウが妖世館から居なくなるのが嫌だっていう理由だ。

 

【はあーーー分かったよ………此処にいれば良いんでしょ!! わあぁぁ!!】

 

 アメフリコゾウがそう言った瞬間に屍はアメフリコゾウに抱きつき、尻尾で拘束してその事を報告する為に王の元に向かった。

 

 ちなみに幽冥が買った本を読破して新たなオカルト本を買いに美岬や白を連れて出掛けている事を知らない屍は数時間探し続け、見つけたのは幽冥たちが買い物から帰ってきた時だった。




如何でしたでしょうか?
次からは覇王龍さんの作品であるレレレの零士とのコラボ回になります。

それと、今回の投稿でしばらく、投稿を中断させて貰います。
理由としてはコラボ回は大体の流れが出来たのですが、あるアニメを見て、これを足してみようと思った事で一部書き換えようと思ったことと、とある事情でしばらく、書くのが難しくなるからです。

時々、投稿中断をしますが、これからも「人間だけど私は魔化魍を育て、魔化魍の王になる。」をよろしくお願いします。

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