とある少年の万物略奪《オールコレクター》   作:スリー

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どうもスリーです。
四日ぶりの投稿ですね。
今回から第1章をはじめます。
そして、今回の話はかなり少なめです。
それではどうぞ~


第1章 とある少年と幻想御手《レベルアッパー》
第1話 僕と私の願い


side???

 

真っ暗な闇の中彼は自分の目の前でうずくまっている。

この空間は右も左も上も下も前も後ろも分からない。

そんな中、彼だけが自分の視界に入ってくる。

彼は体育座りをしながら、小刻みに震えている。

きっと泣いているのだろう。

その姿は自分からしたらとても醜く、不快で今からでも自分の視界から消してやりたいと思うのだが、それは出来ない。

何故なら彼は'昔の自分'、いや'もう1人の自分'であるから。

泣くだけで何も行動しない、惨めでちっぽけだった自分。

思い返すだけだけで虫ずが走る。

それでも自分は彼を見届け、導かなければいけない。

どんな手を使ってでもだ。

 

 

 

 

それが彼女との約束であり、'私'の答えである。

 

 

 

 

自分は彼から背を向け、この場から立ち去る。

後ろから聞こえる、啜り泣く声を聞きながら。

 

sideout

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side北桐

 

香ばしい匂いが鼻腔をくすぐる。

それを合図に意識が徐々にはっきりしていく。

一瞬自分がどんな状態か分からなかったが、すぐに研究所のベッドで寝かされていることを理解する。

寝ていために凝り固まった筋肉を、腕を上に向けて伸ばしていると、僕が起きる切っ掛けになった人物に声をかける。

 

「おはようございます、海月先生。」

 

「あら、おはようございます博威くん。いつもの煎れておきましたよ。」

 

「いつもありがとうございます。それじゃあいただきます。」

 

「ええ、どうぞ召し上がってください。」

 

これはいつもの光景だ。

正確に言うと、実験が終わった後のというのが付け加えられるが。

今僕が飲んでいるのは、海月先生が煎れてくれたコーヒーである。

このコーヒーは海月先生と出会った当初から煎れてもらっていて、僕は実験が終わるたびに飲ませてもらっている。

煎れてもらっているだけでは駄目だと思い、海月先生に煎れ方を教わっているのだが、どうにも海月先生と同じ味が出せず悪戦苦闘している。

ちなみに海月先生のことを先生と呼ぶようになったのは、研究所に通うようになり、足りない知識を補填するために行われた授業からだ。

当初はこう言うと、凄く上機嫌になったことを今でも思い出す。

 

「そういえば、今回の実験の結果はどうでした。」

 

「はい、順調と言ったところです。博威くんの成長速度は凄まじいですからね。」

 

海月先生はそう言いながら僕に手渡してくる。

それを受け取り目を通してみると、ある一点で目が止まる。

そこにはこう書かれていた。

 

 

能力連続使用限界時間------'30分'

 

 

僕が学園都市に来て半年が経ち、能力を上手くコントロール出来るようになり、最大収集重量や基点の数も大幅に増えた。

だがこれだけはどうしても上がらない。

原因は不明、30分以上使用すると頭痛がして、それでも無理して使用とすると、今回のようにぶっ倒れる。

無理な演算を行ったのならまだ説明がつくのだが、'原石'である僕は能力を使用するのに演算を必要としないため、脳に負担がでるはずがないのだ。

しかもこの能力は30分連続で使用していれば大なり小なり脳に負担がでる。

つまり全力でやろうが手を抜こうが30分経てば、頭痛に襲われる。

まるでそれ以上能力を使用することを制限されているように。

どうすればこの問題が解決されるか頭を悩ませていると、突然海月先生が口を開いた。

 

「………ごめんなさい。」

 

「え?」

 

「博威くんがこんなに頑張っているのに、私たちは今だに原因を掴めていません。そのせいで博威くんは実験の度に倒れてしまって………本当にごめんなさい。」

 

そう言って海月先生は俯いてしまう。

海月先生が言っているのは、今僕が悩んでいることであろう。

別に悩んではいるが、身体に異常があるわけではないのだから、そこまで深刻になる必要はないのだが。

海月先生は真面目で優しいから、いろいろ抱え込んでしまうことがあると翔真さんが言っていた。

海月先生が自分のことで悩んでいるとなると物凄く心苦しいため、僕は慌てて言葉を紡ぐ。

 

「い、いや別にそんな気にしなくていいですよ!それに海月先生や翔真さん、研究スタッフの皆さんが僕なんかのために頑張ってくれていることを知っていまし……あっ、それにこれ見てください!今回の実験で最大基点数が20個も増やせました。これだけ成長出来たのも皆さんのおかげです!だから………そんな落ち込まないでください!」

 

言い終わった後、部屋に静寂が訪れる。

罪悪感にかられ早口になってしまったせいで、海月先生は目を見開き驚いている。

しばらくすると、海月先生は先程の落ち込んだ顔が嘘のように頬を緩め微笑む。

 

「ふふっ…優しいですね、博威くんは。」

 

「え?」

 

本日2度目のえ?である。

それもしょうがないと思う。

だっていきなり褒められたのだから。

 

「それってどういう………」

 

「言葉通りの意味ですよ。それよりもコーヒーのお代わり如何ですか。」

 

「あっはい。お願いします。」

 

そう言うと海月先生はコーヒー豆をすり始める。

---僕はこの音が好きだ。この音を聞いていると、とても落ち着く。

しばらくして、翔真さんが部屋に入ってきて、一緒に話しをしてコーヒーを待つ。

---僕はこの時間が好きだ。翔真さんが話し上手なため、聞いていて飽きない。

海月先生が3人分のコーヒーを煎れ、こちらに持ってくる。

3人集まったところでまた話しはじめる。

---僕はこの空間が好きだ。翔真さんが話して、それに僕が指摘して、海月先生は僕たちを見て微笑む。

この時がとても楽しい。

 

 

 

願わくば、この関係がずっと続くといいなと僕は心の中で願った。

 

7月16日 北桐は目の前の幸せを噛み締める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




北桐の能力検査結果

能力名:物体収集

(表記は当初→現在)

最大基点数:129個→1580個

最大収集重量:約10t→約2600t

能力作用範囲:半径100m→半径600m

最大物体射出速度:時速150km→時速2450km(マッハ2)

能力使用限界時間:30分→30分







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