とある少年の万物略奪《オールコレクター》   作:スリー

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どうもスリーです。
投稿をこんなに遅らせてしまい申し訳ありません。
仕事の都合でなかなか時間が合わずこんなに日が開いてしまいました。
仕事せずに小説だけ書いてたいです……………
それではどうぞ!



第5話 目標は2人で一人前。それから………

side北桐

 

 

ガラガラガラガラガラガラガラガラガシャンッ

 

 

(案外上手くいくもんだな。)

 

僕がやったことは至って単純でただシャッターを'正常な状態のまま無理矢理開けた'だけだ。無理矢理といっても、シャッターの軸を基点にして能力を使ったのだ。構造上はシャッターカーテンと同じだったので簡単に開けることが出来た。この能力凄く便利。

 

(それじゃあ中に入りますか。)

 

無理矢理開けたためか目の前に立っても自動ドアが開かないため能力を使い開ける。中に入った瞬間複数の視線がこちらに向いているのを肌で感じる。それもそうか、閉まっていたはずのシャッターが出入口のところだけ開いたと思えば、急にそこから人が入ってきたのだ。不思議に思うのも無理はない。そんな疑問と困惑が入り混じった視線を受けながら、辺りを見回す。床には研究所にあった同じ警備ロボが無惨な姿で転がっていて、その近くには学生服を来た少女が頭から血を流して倒れている。もう1人男が倒れているがこっちには外傷は見られない。

そんな中一際目立っているのは、僕の目の前で相対している2人である。1人はいかにもな悪人面での男で、クリーム色のコートを着ている。多分だがこちらが強盗だろう。もう1人は、茶髪でツインテールの女の子で所々ケガをしている。特に足が酷いようで、ケガをしているであろう左足を庇いながら立っている。こちらも多分だが、花飾りの女の子が言っていた白井さんだろう。

 

「貴方が強盗ですか。」

 

「あぁ?だったら何だって言うんだよ。」

 

どうやらこの人が強盗であっているらしい。素直にハイそうですって言えばいいのに。

一様もう1つ聞いてみようと、倒れている制服少女の方を見てもう一度問う。

 

「それでは、あちらで倒れている彼女は貴方がやったということでいいんですね?」

 

「だから!だったら何だって言うんだって聞いてるんだよ!」

 

僕の質問が気に食わなかったのか、凄い剣幕で怒鳴り始めた。まあ見て分かるようなことを聞けば誰だって怒るか。そして僕は今からこの怒っている強盗をどうにかしなければいけないのだが…………

 

(…どうしよう…………)

 

僕は'意識的'に能力を人に向けるのはこれが初めてで、どのくらいの加減をすれば良いのか、どのくらいの出力なら気絶させることが出来るか、それが丸っきり分からないのだ。どうすればいいか悩んでいると、それを無視をしていると捉えた強盗が………

 

「おい!てめぇ、無視してんじゃねぇ!!」

 

そう言いながら、先程シャッターを壊したと思われるパチンコ玉を複数投げてきた。

 

「なっ!そんなに……逃げてくださいまし!」

 

「はっ、もう遅えよ!」

 

白井が何かに驚いているが、今はこっちの対処だ。投げてきたパチンコ玉は、速さはそこまでではないが、先程のシャッターの状態からして威力はかなりのものなのだろう。

 

(まあ、これなら大丈夫だろ。)

 

僕は右手を突き出し、

 

「集まれ。」

 

そう言った瞬間、掌の前に投げられたパチンコ玉が球状に集め、足元に床に落とす。周りの人の表情はというと、驚きと唖然が殆どで、前方の2人も驚いている。そして、先に口を開いたのは強盗だった。

 

「お前、一体……何をして……………」

 

僕は強盗の質問を無視して、

 

「……吹っ飛んでください。」

 

「は?何言って………うあっ!」

 

僕の向かい側の壁に強盗を吹っ飛ばした。もちろん白井に当たらないようにして。

 

 

ドォンッ!

 

 

「グハッ……」

 

何か凄い音がしたけど大丈夫だろうか。血とかは出てないし大丈夫とは思うけど………

一様近づいてみると、白目で気絶しているだけでしんではいないようだ。

 

(ふぅ、よかった………)

 

内心ホッとしながら、今度は受付の人に話しかける。

 

「あの、すいません。」

 

「……あ、はい。何でしょう。」

 

「この銀行に救急箱ありますか。ついでにこの人を縛れるようなものがあれば、それも……」

 

「その必要はありませんの。」

 

受付の人と話していると、突然会話を遮られた。その鈴のような声が聞こえた方を見ると、ツインテールの女の子-----白井が左足を庇いながら立っていた。

 

「必要ないっていうのは、どういうことかな?」

 

「言葉通りの意味ですの。強盗はもう拘束しましたもの。」

 

白井の視線の先を見てみると、さっき僕が吹っ飛ばした強盗の両手首にゴツくて機械的な手錠が付いている。よく見ると先程倒れていた男にも手錠が付いている。彼も強盗だったのだろう。

 

「……あれは一体何かな?」

 

「能力を抑制する手錠ですの。あれをつけている間は能力を使うことが出来ませんの。」

 

流石学園都市、あんな物まであるのか。だがそれよりもおかしな点がある。それは……

 

「何でそんな物持ってるの?」

 

この手錠を警備員が持っているなら、納得がいくのだが、まだ小学生位の白井が何故そんな物を持っているのか分からない。まさか学園都市では手錠を携帯するのが普通なのだろうか。そうなると僕も手錠をどこかで買わなければいけないのだが、何処で売っているのだろうか。

そんな思考に耽っていると白井が怪訝な表情をしながら先程の自分の問いに答える。

 

「何故と言われましても……わたくしが風紀委員だからですの。」

 

「ジャッチメント?」

 

一体何のことだろう。警備員と同じものだろうか。

白井の答えに首を傾げていると白井はより怪訝な顔になる。

 

「知らないんですの?」

 

「うん。僕今日学園都市に来たばかりだから、そういうのはまだ分からないんだよ。」

 

そう言うと納得してくれたのか警戒を解き風紀委員について説明してくれた。何でも風紀委員とは学生で構成された学園都市の治安維持機関らしく、白井や制服少女もその1人だそうだ。

 

「へえ、そんなものがあるんだな。……あっ、そうだ。ちょっと失礼。」

 

「えっ、一体何を……きゃっ!」

 

突然の僕の行動で可愛らしい声を上げる白井。それもそのはず、僕が白井にしたことは俗に言うお姫様抱っこだ。びっくりするのも仕方ない。

 

「何をしますの!犯罪ですの!変態ですの!訴えますわよ!」

 

「ちゃ、暴れないでよ。近くの長椅子に運ぶだけだけだよ。」

 

「ひっ1人で歩けますの!」

 

「ダメだよ。君、足をケガしてるでしょ。」

 

「うっ………」

 

「すぐに付くから大人しくしててね。」

 

そう言うと渋々言うことを聞いてくれた。白井を長椅子に座らせると同時に受付の人が救急箱を持ってきた。

 

「あの、これどうぞ。」

 

「はい、ありがとうございます。じゃあちょっと待っててね。あそこで倒れている君の先輩も、ここに運んで来るから。」

 

「は、はいですの。」

 

僕は直ぐに倒れている制服少女を先程白井にやったようにお姫様抱っこをして運び、長椅子に寝かせる。

 

(さてと、手当てしますか。)

 

制服少女は頭を少し切っただけでその他に目立った外傷は診られない。頭の傷もかすり傷程度だったので傷口を軽く水で洗い、救急箱の中にあったガーゼを直接当てて、その上に包帯を巻く。

 

「よし、出来た。じゃあ次は君の番だ。」

 

「こ、これくらい自分で出来ますの。」

 

「いいから大人しく座ってて。」

 

「で、でも……」

 

「い・い・か・ら」

 

「は、はいですの。」

 

やっと大人しくなった白井を横目に救急箱から消毒液や絆創膏などを取り出す。まず、左頬の傷を消毒して絆創膏をつける。次に赤く腫れている左手を応急処置していく。すると白井が口を開き始めた。

 

「あの、助けていただきありがとうございますですの。」

 

「別にそんな大したことはしてない。それよりも、お礼なら君の友達に言ってあげて。彼女が助けを求めなければ、僕は君を助けることが出来なかったからね。」

 

「友達……初春のことですの?」

 

「その初春って子が、花飾りの女の子のことなら、その子で合ってるよ。」

 

「そうですの、初春が…………」

 

あの花飾りの女の子の名前は初春と言うらしい。花飾りの女の子改め初春を頭の中で再確認しながら、今度は左足の応急処置を始めようとした時、1つの疑問が脳裏に浮かんだ。

 

「ねえ、何で君は強盗に1人で立ち向かってたの。警備員を待っててもよかったと思うんだけど。」

 

風紀委員には風紀委員の証である腕章をつけているらしいのだが、白井や制服少女はそれを付けていなかった。つまり彼女達が風紀委員だと言うことは強盗達からは分からないはずなのだ。こういう場合の対処法も治安維持機関というくらいなのだから知っているはずだ。だが結果はご覧の通り、白井や制服少女がケガをする事態になってしまった。白井が感情的になって初春を助けようとしたのならまだ分かるのだが、それだともう1人倒れている強盗の説明がつかない。人質を取られてる間は強盗にてを出すなど出来るわけもなく、ましてや強盗2人のうち1人を制圧することなど出来るのだろうか。

こっからは僕の予想だが、白井は初春が強盗に人質に取られる前に、強盗1人を制圧し、その後、初春が人質に取られた。これだとつじつまが合う。制服少女は多分、パチンコ玉の能力で壊された警備ロボが爆発した時の爆風で、吹っ飛ばされたのだろう。まあ結論から言うと白井は最初単独で強盗を制圧しようとしたことになる。

 

「……………」

 

「あ、いやゴメン。言いたくなければ言わなくてもいいよ。少し疑問に思っただけだから。」

 

そう言ってまた手当てに戻ろうとすると、白井が俯いていた顔を上げて話しはじめる。その顔は複雑な表情をしている。

 

「いえ、大丈夫ですの。それよりもお話をきいていだけますか。」

 

「……うん、いいよ。」

 

そこから白井はポツリポツリと語り始めた。白井が風紀委員に入って1年が経ったこと、先輩が白井を半人前扱いすること、今回の事件を1人で解決し自分が一人前だと言うことを先輩に見せようとしたこと、その結果、先輩は白井を庇いケガをして、初春は人質に取られてしまったこと、全て話してくれた。何故白井が話す気になったかは分からないが、白井は本音で話してくれたのだ。なら僕も彼女の話に本音で答えよう。

 

「別に1人で一人前になることはないと思うけどなあ。」

 

「え?」

 

「自分の弱点を補ってくれる人、自分の隣に立って同じ道を一緒に歩いてくれる人、自分と一緒に苦難や困難に立ち向かってくれる人。そんな人と一人前になるのも1つの手だと思うよ。」

 

「……………」

 

「確かに1人で何でも出来るのに越したことはない。でもいつか限界はくる。そんな時、支え合えるような関係が築けていれば、それはとても良いことだと僕は思う。」

 

彼女は認められたかったのだろう。だから1人であんな行動に出た。彼女に必要なのは、彼女を慰めてくれる人ではない。彼女を隣で支えてくれる人だ。残念ながら僕は白井を支えることは出来ない。出来ることと言えば、彼女のことを認めてくれる理解者が現れること祈ることだけだ。

 

「よし、左足の応急処置完了。じゃあ僕は初春を呼んで来るから座って待ってて。」

 

白井にそう言い残し出入口の方へ向かおうとすると、

 

「あの!」

 

白井が僕のことを大声で呼び止めた。

 

「ん、何?」

 

「……いろいろとありがとうございますの。」

 

「……うん、どういたしまして。」

 

僕は今度こそ初春を呼びに、出入口の方へ向かった。

 

sideout

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side白井

 

(不思議な人でしたの。)

 

自分のピンチに颯爽とヒーローのように駆け付けてくれた少年。別段変わったところもなく、何処にでもいそうな一般人であった。その少年の口から出てきた疑問。その核心をついた疑問はわたくしを困惑させるには充分だった。その疑問は自分の行動を全否定するものであるのだが、冷静になり今の自分の状態を見れば当然の疑問だと思う。そんな複雑でそれでいて胸の中の気持ち悪い感情を吐き出したくて、彼に全てを話した。殆ど愚痴に近かったその話を彼は嫌な顔1つせずに聞いてくれて、彼は彼なりの答えをわたくしに話してくれた。その答えは自分にとって予想外の答えなのにとてもしっくりきて、自分の胸の中にすっぽり収まった。そしてそれと同時に、自分にもいつか隣で一緒に歩んでくれる人が現れるのかと、そんな疑問が脳内を駆け巡る。

 

「だ、大丈夫ですか白井さん!」

 

そんなことを考えていると、彼が向かった方から飴玉を転がしたような甘ったるい声が聞こえる。その声の主は遠目から見たら、花瓶のように見える花飾りのついたカチューシャをつけている。そんな彼女は自分を心配するように、こちらに向かって走って来る。体力があまりないためか、自分のところについた時には、息が上がっており、手を膝におき息を整える。

 

「大丈夫ですから、少し落ち着いてくださいまし。」

 

「だ、だって白井さん私を助けてケガを………」

 

「ケガは彼が応急処置をしてくれたから、心配要りませんの。」

 

「彼って、あのスーツケースを持ってた人ですか?」

 

「そうですの………初春。」

 

「は、はい。何ですか……」

 

「ごめんなさいですの。」

 

「え?」

 

「わたくしの身勝手な行動であなたを危険な目に合わせてしまいましたの。ホントに……わたくしはダメダメですの。」

 

「………そんなことないですよ。」

 

「え?」

 

「あの時、白井さんの声、聞こえてました。自分の信じた正義は絶対曲げないって、わたし凄くカッコイイと思いました。わたしも白井さんみたいに、胸を張ってそんな言葉を言えるような立派な風紀委員になりたいと思いました。白井さんはダメダメなんかじゃありません!」

 

「………」

 

その場凌ぎの慰めかもしれない。でも、それでも嬉しかった。心が温かくなった。自分が誰かの目標になることが、自分が誰かに認められるのが、言葉に出来ない位に嬉しかった。だが自分は人の目標になれるような人間ではない。まだまだ未熟で、失敗だってたくさんする。だから………

 

「それではわたくしはその目標に相応しい風紀委員になりませんとね。」

 

「え?」

 

「わたくしはまだ半人前にもなれない未熟者ですの。だから2人で一人前になりませんか?」

 

「………良いんですか。」

 

「いいも何もわたくしからお願いしますのよ。」

 

「………はい!よろしくお願いします。」

 

「ええ、こちらこそ。」

 

そう言いながら右手は初春の手をとり、左手は無意識に左頬の絆創膏を触っていた。

 

sideout

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side初春

 

白井さんが一緒に一人前になろうと言ってくれた時、私はとても嬉しかった。それと同時にこれから頑張っていこうとも思った。

そして-----困っている人がいたら彼が私にしたように、安心させてあげられるような微笑みを向けられるよう頑張りたいと思った。

 

「そう言えばあの殿方は戻ってきませんの?」

 

「ああ、そう言えば戻ってきませんね。」

 

「戻ってきたら名前を聞きませんとね。」

 

「あ、そう言えば聞いてませんでしたね。私はお礼も言わないとです。」

 

「言うことも聞くことも沢山ですの。」

 

「フフフ、そうですね。」

 

2人で笑いながら話していると中に重装備をした人達が大勢入ってきた。警備員が到着したのだ。

 

「そこの2人!大丈夫じゃんかよ!」

 

「あ、はい大丈夫ですの。」

 

「はあ、それはよかったじゃんよ。」

 

この警備員の人は心の底から心配していたらしく胸を撫で下ろしている。するともう1人警備員が近づいてきて私達と目線が合うようにしゃがみこむ。

 

「其処で倒れている強盗を拘束したのはあなたたち?それなら話を聞きたいんだけど。」

 

「い、いえ。拘束したのはわたくしですけど、気絶させたのわたくしではありませんの。」

 

「あ、あの。外にスーツケースを持った男の人を見ませんでしたか?その人が気絶させたんですけど………」

 

「スーツケース?そんなの持ってる奴は居なかったじゃんよ。」

 

「「え?」」

 

どういうことだろう。彼は行ってしまったのか?まだお礼も言ってないのに……

 

「……初春。」

 

彼にお礼が言えないことに対して落ち込んでいると、白井さんが急に私に話しかけてくる。

 

「次に彼に会うまでに少しでも一人前に近づけるように頑張りませんとね。」

 

「!?………はい!一緒に頑張りましょう。」

 

そうだ、こんなところでへこたれている場会ではない。次に会うときまでに白井さんと頑張って成長しなければ。

そして次こそは、お礼を言って、名前を教えて貰いましょう。

もう1つの目標を胸に刻み、次に合うときを心待ちにしながら微笑んだ。




どうでしたか?
今回はかなりの文字数だったので、誤字脱字があるかもしれません。
次回はもっと早く投稿出来るように頑張りたいと思います。
追記:最後に初春sideをふやしました。

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