とある少年の万物略奪《オールコレクター》   作:スリー

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どうもスリーです。
出来るだけ早めに投稿しました。
それではお楽しみください。


第2話 万乳引力には勝てない

今、北桐は桂木の働いている第7学区にある研究所にいる。正確に言うと研究所内施設の1つであるシミュレーションルームで汗を流している。これだけを聞くと彼が健康的に体を動かしているように聞こえなくもない。だが彼の後ろには運動では使わないような機械がいくつか置いてあり、彼の目の前には体を動かしているだけなら絶対に出来ない大きなクレーターがいくつもある。当の北桐は見るからに疲労困憊である。そんな北桐をシミュレーションルーム兼実験施設の管理室から見ていた桂木と眼鏡をかけた女性が唖然という言葉が良く似合う表情をしている。

この状況から彼らが実験中だということが伺える。では一体何の実験だろうか?それは-----

 

「博威くんの能力スゴいね。」

 

「この施設は一番頑丈なはずなんだが……おい北桐大丈夫か。体調悪かったりするか。」

 

「はあはあ……だ、大丈夫です。ま、まだ……いけ、ます…」バタッ

 

「あ!博威くんが倒れた!」

 

「おい、担架持ってこい!」

 

言わずもがな、超能力の実験である。

 

 

 

 

 

 

side 北桐

 

実験が始まる2時間前。

北桐と桂木は車から降り、研究所の前に立っていた。

 

「うわあ~でけ~」

 

「ははは、まあ他の研究所と比べればうちは大きい方だけど、これぐらいの研究所ならいくらでもあるよ。」

 

(こんなのが大量にあるのか、流石学園都市だな。というかそこで働いている桂木さんってまさかかなり優秀なのかな?)

 

そんな失礼なことを考えながら研究所に入っていく桂木に付いていく北桐。入ったすぐ横には、警備員室があり警備員が窓越しからこちらを見ている。桂木は警備員に「ごくろうさん。」と言いながら歩きだし北桐は会釈だけして桂木を追い掛ける。その後エレベーターに乗り地下に降りて、長い廊下を進んでいく。途中自分の身長の半分の大きさのゴミ箱型の警備ロボを見て興奮したのは割愛。

 

「あの、桂木さん。」

 

「ん?どうした北桐。」

 

「今、何処に向かってるんですか?」

 

「ああ、そうか。言ってなかったな。今向かってるのは俺の上司がいる部屋だよ。」

 

「上司ですか……。」

 

「そんなに不安そうな顔しなくても大丈夫だぞ。別に怖い人じゃないし、寧ろ可愛い人だ。」

 

「はあ…」

 

ようやく目的地についたのか桂木は1つの扉の前で止まる。自然と北桐の顔が強ばる。桂木はそんな北桐の心情など露知らず、ポケットからクレジットカード台の大きさのカードを取りだし、扉の横にある差し込み口にいれる。そしてピーという機械音が聞こえて瞬間、扉が横にスライドして開く。随分と近未来的な扉である。

 

「海月さーん。今戻りました。」

 

部屋の構造は1言でいうと校長室を少し広くした感じである。目の前にはフカフカした高級感溢れるソファーがテーブルを挟んで向かい合うようにして置いてある。その奥にはにはこれまた高級そうな机と椅子が鎮座している。その横にはもう1つ部屋あり、扉には給湯室と書いてある。すると給湯室の扉が開き、1人の女性が出てくる。

 

「あれ?お帰りなさい。随分と早かったですね。」

 

その女性はエメラルドのような明るい緑色の髪を肩に掛かるか掛からないかくらいに伸ばし、目の色は髪色と同じエメラルドグリーンで、眼鏡を掛けている。童顔だからだろうか高校生くらいと言われても信じてしまいそうだ。身長は自分より15cm程小さく、おっとりした雰囲気を醸し出している。桂木さんのいう通り美しいというより可愛いという表現がぴったり合う人だ。

そんな初対面なら見惚れてしまうような彼女から北桐は必死で目を反らしている。その理由は彼女の体の‘ある部分’が原因である。

 

「大丈夫だぞ北桐。それが正しい反応だ。俺なんて最初の時はガン見しちまったし。」

 

体の‘ある部分’、それは---------胸である。

 

(イヤだってスゴいデカイんだよ!彼女の胸にはメロンでも入っているのか。なに食ったらあんなに大きくなるんだよ。世の貧乳が泣いて羨む大きさだよ。)

 

北桐は桂木の言葉を無視しつつ、尚も彼女の乳袋に目が行かないように必死に堪えている。そしてこの現状を無意識にも作ってしまっている彼女は北桐を見て緊張しているのだと思い、緊張を和らげようとする。

 

「緊張しなくても良いですよ。ここではリラックスしてくださいね。ああ、そうだ。自己紹介しましょうか。私は七瀬海月(ななせみつき)と言います。こう見えて私、翔真くんの上司なんですよ。」

 

えっへんと胸を張る七瀬。その結果余計に胸が強調されてしまい北桐の顔はトマトのように真っ赤になってしまっている。無論彼女の自己紹介は彼の耳には入っていない。

 

「おい落ち着け北桐。気持ちはわかるが今は耐えろ。海月さん、すいませんがコーヒーを淹れてもらえますか。海月さんのコーヒーを飲めば少しは緊張も解れると思うので。」

 

「ああ、そうですね。今美味しいのを淹れてきますね。座って待っててください。」

 

そう言いながら七瀬は給湯室に入っていく。

 

「ふう、行ったか。大丈夫か北桐。」

 

「は、はい。大丈夫です。ありがとうございます桂木さん。」

 

「良いってことよ。しかしお前も初心な反応するな。まああの胸は反則だよな。」

 

「かなり心臓に悪いです。」

 

「だろうな。でも安心しろ、さっきの話しはホントだからな。」

 

「さっきの話?」

 

「彼女の淹れるコーヒーは絶品だからな。緊張なんざ直ぐに吹っ飛ぶさ。」

 

「……それは楽しみです。」

 

そう呟いた北桐は桂木と一緒にソファーに座り七瀬がコーヒーを淹れ終わるまで駄弁ることにした。また会話の内容が七瀬の胸の話だったのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

七瀬がトレイにコーヒーをのせ戻ってきたので話しを強制終了させ七瀬からコーヒーを受け取り口にする。桂木が絶賛していただけあってとても美味しかった。北桐は思わず「美味しい。」と口にしたら七瀬は「お口にあってよかった。」と言いながら微笑む。

なんというかおっとりした態度と母性(主に胸部)が相俟ってまるでお母さんのようだ。

 

「それでは落ち着いたところで改めて自己紹介をしましょうか。私は七瀬海月と言います。そこの翔真くんの上司で今回あなたの能力を調べる研究員よ。」

 

「北桐博威です。よろしくお願いします。」

 

「博威くんね、うん覚えた。此れから宜しくね。」

 

「は、はい。」

 

「よし、じゃあ自己紹介も終わったことだし、さっさと初めちゃいますか。」

 

「そうね。それじゃあ行きましょうか。」

 

「?何処行くんですか。」

 

「何処ってそりゃあ---------お前の能力がどんなもんかを確認しに行くんだよ。」

 

 

 

 

 

七瀬の部屋から移動し、とある部屋に入る。そこは先程の部屋と違いよくわからない機械やコンピューターがズラリと並んでいる。北桐が辺りを見回していると、七瀬がこれからやることについて説明し始めた。

 

「今から博威くんは能力スキャンをしてもらいます。」

 

「能力スキャン、ですか?」

 

「と言っても博威くんは別段することはないから安心していいですよ。」

 

「というか検査中お前は麻酔を掛けられて眠ってるから何も出来ないよ。」

 

「そうなんですか。」

 

「博威くんが起きた時には検査は終了してるから、なにも心配することないですよ。ですが博威くんにはそのあとやってほしいことがあります。」

 

「やってほしいことですか?」

 

「そう!博威くんにはシミュレーションルームで能力を使ってもらいます。」

 

「能力、ですか?」

 

「はい。そこで博威くんが能力をどれだけ使えるかを確かめる必要がありますから。」

 

「まあ、はい。分かりました、やってみます。」

 

「うん、いい返事ですね。それでは翔真くん、準備はできましたか?」

 

「2人が話している間に終わってますよ。何時でも始められますよ。」

 

「相変わらず仕事が早くて助かります。それじゃあ博威くん、あの上に横になってください。」

 

言いながら七瀬が指差したのはCTスキャンのような機器である。北桐は七瀬の言う通りに上に横たわると電極のようなものを肌に貼られる。

 

「それでは力を抜いてください、始めますよ。」

 

その言葉が聞こえた瞬間目の前がブラックアウトし北桐は意識を手放した。

 

 

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誰かの声が聞こえる。

 

-----サ……イ、ヒ…リハ…ダ…

 

上手く聞き取れない。

 

-----ボ…ノ、タ…セツナ…ノ、ト…ナ…デ…

 

何を言っているの分からない。

 

-----オイ…カ…イデ、ヒ…リニシナ…デ…

 

ただ1つわかることと言えば

 

-----モ…、ボク…ラ、ナ…モウバ…ナ…デ…

 

彼は僕と同じだというこだ。

 

 

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「知らない天井だ。」

 

思わず口からそんな言葉が出てくる。まさかこのセリフを言う時がくるとは思わなかった。可笑しな達成感に浸っていると、寝る前に飲んだあのコーヒーの匂いが鼻腔を擽る。

 

「あら、起きたんですね。そろそろ起きると思ってコーヒー淹れたのですが、飲みますか?」

 

見れば七瀬がコーヒーを淹れていた。かなりちゃんとした機器を使っているようだが、それはどっから持ってきたんだ。

 

「それじゃあいただきます。」

 

「はい、分かりました。」

 

七瀬はカップにコーヒーを注ぎ北桐に手渡す。北桐はそれを美味しそうに飲み、その姿を見て微笑んでいる七瀬。北桐はコーヒーを飲み終えるとあることに気付き七瀬に聞く。

 

「あの、桂木さんはどうしたんですか?」

 

「翔真くんなら先にシミュレーションルームに行って準備をしていますよ。ちなみに私は博威くんが目を覚ますまで待っていました。」

 

「そ、そうなんですか!す、すいません。待たせてしまって…」

 

「いえ、良いのですよ。待つのは馴れていますから。それではシミュレーションルームに向かいましょう。そろそろ翔真くんの準備も終わる頃だと思うので…」

 

「そ、そうですね。待たせるのも悪いですし早く行きましょうか。」

 

そう言いながら2人は部屋を後にした。

 

 

 

 

 

また場所は変わってシミュレーションルーム。大きさはサッカー場と同じくらいだろう。ただ周りは一面真っ白な空間であり、とても殺風景な場所である。上には一部分だけ窓ガラスが取り付けられている空間があり、そっから桂木と七瀬が見ている。しばらくすると放送流れはじめて北桐に指示を出す。

 

「それじゃあ今から指示出すからその通りにやってくれ。」

 

「はい!」

 

「いい返事だ。さっそくいくぞ。」

 

その声を聞きながら北桐は集中し始めた。

 

 

 

 

 

そこから20分後北桐はぶっ倒れ、話しは冒頭に戻る。

 

「大丈夫か。すまないな、無茶させて。」

 

「いえ、しょうがないですよ。まだ能力の扱いは馴れてませんから。」

 

「でもすごいですね博威くん。あのような大規模なものを演算なしで行うなんて。」

 

そうなのだ。本来能力を発動するには頭脳による演算が必要不可欠であるはずなのに、北桐の能力は演算を必要としない。理由としては彼が‘原石’だからだろう。

 

「でも‘原石’にしてはそこまで稀少性のある能力でもなかったな。能力は念動能力《テレキネシス》よりだったしな。」

 

‘原石’が持つ能力は、人工の能力者における発火能力(パイロキネシス)発電能力(エレクトロマスター)などの“発現しやすい能力”とは方向性が違い特殊性・稀少性が高いものが多いのだ。

 

「まあでも能力の出力は申し分ないし応用もきくみたいだから、強度(レベル)は5だよ。」

 

「あの、レベルって何ですか?」

 

「簡単に言うとランクのことです。0から5までの6段階に分けられていて、博威くんはその中でも最高位に位置するレベル5。学園都市の全学生約180万人の内今いるのは博威くんを抜いてたったの7人しかいないんです。」

 

「え、それだけですか。」

 

「ああ、そうだな。要するにお前はかなり凄い力を持っていたってわけだ。」

 

「………何か実感がわきません。」

 

「それりゃあそうだろうな。俺たちだって先に聞いてなかったらもっと驚いてただろうし。」

 

「そうですね…あっそうだ。能力の名前を考えないと行けませんね。」

 

「能力の名前ですか?」

 

「そうです。能力者にはそれぞれの能力に名前がありますから、博威くんの能力にも名前をつけなければいけませんね。」

 

「名前ですか……」

 

「一番有名なのはレベル5の第3位、能力名は超電磁砲(レールガン)だったかな。」

 

「かなり物騒な能力名ですね。」

 

「あっ、ならこんなのはどうでしょうか。

 

 あらゆる物体を自由な場所に集めることができるから

 --------物体収集(マテリアルコレクター)というのは。」




如何でしょうか。
最後のほうは少し、いやかなり適当になってしまいました。
次回は主人公のプロフィールと能力の詳細を載せたいと思います。

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