とある少年の万物略奪《オールコレクター》   作:スリー

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どうもスリーです。
今年も残すところ後僅かになりました。
これからも頑張って(出来れば早く)書いていきたいと思います。



第4話 パフェパーティーは突然に

「なんてこったい……」

 

突然だが僕、北桐博威は現在頭を抱え項垂れていた。

理由はというと、とある問題により外出しなければならなくなった。

 

事の発端は30分前。

朝目を覚ますと体が縮んでしまって………いたわけではなく、ベットがびしょ濡れだった。

決して僕の下のダムが決壊したわけではなく、身体中が汗だくだっただけだということをここに記載しておく。僕の名誉のために。

 

それでは何故、僕の部屋が灼熱地獄なっているかというと、夏の救世主クーラーくんがお釈迦になってしまったからだ。

ワンチャン何かの拍子にタイマー設定なっていたり、もしくはブレーカーが落ちているのではと確認したもののそんな幻想は儚く散った。

だがこれは、単なる始まりに過ぎなかった。

 

この後、喉が渇いたのでジュースを飲もうとしたら冷蔵庫が暑くなっていたり、洗濯機から少々焦げた匂いがしたりしたあたりから、ようやく現状の深刻さに目を向け始めた。そして結果、家中の家電製品が遺体となって発見された。

 

これだけで命の危機なのだが残念。本題はここからだ。

 

このままでは死んでしまうと判断した僕はすぐに電話で修理を依頼したのだが、早くても3日、長くて5日以上かかると言われてしまった。理由を聞いたところ、昨夜第7学区に巨大な雷が落ち、大規模の停電があったようで、僕と同じように電話してきた人が大勢いて混み合っているためらしい。それを聞いた瞬間頭に電流が横一線に流れるエフェクトが入った。

 

突然だがこの学園都市には樹形図の設計者(ツリーダイアグラム)という、たしか超高度並列演算処理器だったか、そんな感じのものがある。それは世界一の名に恥じない演算能力を持っており、一ヶ月先の完全な天気予報を可能にし、もはや予言の域だとか何とか……

 

そんな樹形図の設計者の天気予報では、雷が落ちるなんてことは言っていなかった。樹形図の設計者がドジっ子という可能性もなきにしてあらずだが、あまり現実的ではないだろう。

 

だから僕はもう1つの可能性ーーーーーーー能力者、それもかなり高位の能力を持った奴の仕業だろうと結論にいたり、そこから考えるのをやめた。

 

僕ですらこの結論に至ったのだから警備員や風紀委員だってそっち方面で調査しているだろう。ここはプロに任せて、一般人はこれからのことを考えよう。

 

決して、4日前のじゃじゃ馬常盤大生が頭に過ぎったとかそんなのではない。

まあ、もう二度と会わないだろう………あ、今フラグが建った。

 

そんな思考の脱線もありながら、結果として店まで直接買いに行くことになり、話は冒頭にもどる。

 

え、それならさっさと行けばいいじゃないかって?

お外気温ご存じかしら、38℃ですってよ。今年の最高気温更新だそうですよ!

ドア開けた瞬間溶ける自信がある。

 

やだなー、外出たくないなあーと駄々を捏ねながら、電池で動くミニ扇風機(商品名:マワール君β)の前でゴロゴロしていると、ぐうーという別段可愛らしくもない音が聞こえる。当然この部屋には自分しかいないため必然的にこの音も僕の腹がなった音だ。

 

そういえば冷蔵庫の中も死体だらけの阿鼻叫喚な状態だったから、起きてから水しか口に入れていない。意識し始めた途端、空腹感が襲ってくる。

 

「しゃーない、行きますか。」

 

掻いた汗をシャワーで軽く流し、外出するための準備をする。

オシャレには特に執着が無いため、無難に半袖シャツに短パンを着用する。

財布と携帯をポケットに突っ込み準備完了。いざ行かん、扉の先の地獄へ!

 

「いってきまーす。」

 

返事はない、ある分けない、行きたくない、ないない尽くしだね!……うれしくない。

そんなくだらないことを考えながらドアノブを捻り、扉を開ける。

 

「さっさと買い物済ませてファミレスにでも行くか。」

 

この熱さに拒絶反応を起こしている足に鞭を撃って歩き出す。

ジャンボパフェが僕を待ってるぜ!

 

この時、隣人兼親友の上条当麻がこれから始まる数々の物語のプロローグの幕を開けていることを当然彼は気づいていなかった。

 

 

 

※※※※※

 

 

 

「~~~~~ッ、この冷たさがたまらん!」

 

時間は午後3時、場所はファミレス。そこにテーブル席を陣取りながら、巨大パフェを頬張っている男が一人。そう僕だ!

 

え、家電はどうしたのかって?買いましたよ。重いのは、時間を指定して届けてもらうようにした。追加料金には目をつむろう。しょうがないよね、あれを全部一人で運ぶのは正気の沙汰ではない。因みにエアコンは明日取り付けてもらうことになっている。今日の夜はマワール君βに頑張ってもらおう。

 

チリンチリン イラッシャイマセー ナンメイサマデショウカ

 

しかしこのパフェ本当に美味いな。

フルーツやコーンフレークの間にホイップクリームやアイスクリームが入っているのだが、これがまた一つ一つの味を際立てるように、綿密に配置されている。それに、上方にはプリンやポッキーのようなものがあり、満足感を十分味わえる。お、プリンうめぇ~

 

アチラノテーブルセキデオモチクダサイ

 

というか今更だがこれ食いきれるだろうか。

軽いノリで頼んで食べはじめたはいいが、今になって不安になってきた。

そもそも客観的に見て、大きさがおかしい。器が45Lのポリバケツくらいの大きさで席から立たないとちゃんと掬えない。そのため取り皿に移して食べていたのだが、一向に減っていないきがする。これを一人で食べきれると思った僕は、どうやらこの熱さに当てられてテンションがおかしくなっていたらしい。

 

さて、どうするか。上条達でも呼ぶか?でも確かあいつら小萌先生の補習を受けてるよな。他のクラスメイトを呼ぶか?この熱さの中で一体何人来てくれるだろうか。ここで僕の人望が試されるんですよね、わかります。

そう思い携帯を取りだし操作していると、後ろから怒鳴り声が響く。

 

「ア、アンタ!何でここにいんのよ!」

 

こらこら、公共の場であまりはしゃぐもんじゃないぞ。他のお客さんに迷惑でしょ。

おかげで手が滑って『緊急事態!たすけ』で一斉送信しちゃったじゃん。

間違いで送ったことも追加して書かなければ………

 

「まあいいわ、捜す手間が省けたし。さあ、アタシと勝負しなさい!」

 

やばいよやばいよ、送信して数秒足らずで返ってきたクラスメイトのメールの量がやばい。何がやばいかというと、文字を打つ隙を与えてくれないのだ。

1秒に10通ぐらいの頻度で返信が来ているのではないかと錯覚してしまうほどやばい。

メールを開いてみると、「大丈夫か!」「今何処にいるんだ。」「またなんかやらかしたのか?」「何や、美少女が落っこちてきたんか!」「俺の妹は世界一だにゃ~」、etc………という感じだ。

最後の2つは見なかったことにしよう………

 

「ちょっとアンタ!無視してんじゃないわよ!」

 

さっきからうるさいな。こっちはメール受信の隙間を縫って文字を打っているところなのだ。もうちょっと静かに出来ないのかね。夏休みではしゃぎたい気持ちは分かるが、節度を持ってだなぁ………あ、変換ミスった。

 

「ーーーーーッ!」

 

「ちょお姉様、こんなところで能力を使ってはいけませんの!北桐さんもお気持ちは分かりますが、無視しないでくださいまし!」

 

後ろから聞こえるバチッバチッという音にため息をつきながら、しょうがなく後ろを振り向く。そこには僕の中で会いたくない相手ランキングぶっちぎり1位であり、うちの家電を亡き者にした元凶(暫定)である御坂美琴が女の子がしてはいけない顔をしながらこちら睨んでいた。

ハハハ、フラグ回収乙……ごめんなさいそれ以上睨まないで下さい死んでしまいます。

 

 

 

sideout

 

 

 

side 御坂美琴

 

 

 

 

「何でアタシがこんなことを………」

 

「ま、まあまあいいではないですか。お姉様も甘いものを食べたいとおっしゃっていたではありませんか。」

 

「それは、そうだけど………」

 

ため息をつきながらアタシは自分の目の前に座って無心でパフェと格闘している男を睨みつける。

 

この男は4日前、アタシがぶっ飛ばした車を止めた能力者であり、アタシが勝負したい相手の一人さ。最初はかなりの速度で落下する重量のある車をいとも簡単に止めたことに興味を持ち、勝負を持ち掛けたのだが、こいつはそれを断り逃走。アタシはそれを追いかけたのだが、その際こいつはアタシに生ゴミをぶつけてきた。たしかに先に能力を使ったのはアタシなのでそこは申し訳なく思っているが、それとこれとは話が別だ。おかげでアタシはその日、生ごみの臭いを引き連れて寮に帰ることになった。

 

そんなこともあり、次にあったらボコボコにしてやろうと思っていたのだが、現在当のこいつにパフェを食べるのを手伝ってくれと頼まれた。これでは拍子抜けではないか。あ、イチゴ甘くて美味しい。

 

「………」

 

「…あの、木山さん。僕の顔になんか付いてますか。」

 

「いや、顔には何も付着していない。安心したまえ。ところで君は七瀬美月という女性を知っているか?」

 

「え、はい。知ってるも何も、僕の能力の担当研究員ですよ。木山さんは美月先生のこと知っているんですか。」

 

今北桐と話しているのは、大脳生理学を研究している木山春生(きやまはるみ)さんである。今日は黒子達風紀委員が調査している事件の捜査の手伝いをしてくれるということで話し合いをするためにファミレスに来たのだ。

 

「ああ、知っているとも。最近は忙しくて会っていないが、世話になっていたことがあってね。その時に君の話も聞いたんだよ。」

 

どうやら木山さんは北桐のことを知っているらしい。

少し聞いてみるか。

 

「木山さんはコイ…北桐のことをどこまで知ってるんですか。」

 

「なんだい、気になるのか?君もlevel5とは言えど年相応の乙女ということか。」

 

「は?」

 

一瞬何を言われたかわからなかったが、言葉の意味を理解した途端、アタシの熱くなるのを感じ、慌てて否定する。

 

「ななななな何言ってんのよ!何でそういうことになるのよ!アタシはただ………」

 

「お姉様!今の話は本当ですの。黒子認めませんのよ!」

 

「ちょ黒子!話がややこしくなるから黙ってなさいよ!」

 

「コラコラ二人とも、あまり騒ぐと周りのお客さんに失礼だよ。」

 

「誰のせいだと思ってんのよ!」

 

勢いのままため口を使ってしまったが言われた本人はどこ吹く風といった感じに小皿に盛りつけられたパフェを食べている。ふと視線を感じてそちらを向くと、北桐がパフェを食べる手を止めて目を見開きながらこちらを凝視していた。

 

「何よ、変な顔して。い、言っておくけどさっきのは別にそういう意味で言ったんじゃないから!勘違いすんじゃないわよ!」

 

「いやそこは微塵も気にしてないから大丈夫。それより聞きたいことがあるんだけど………ってどうしたの?」

 

「別に……」

 

たしかに否定したにはアタシだが、ここまであっさり言われると女の子としては複雑である。たしかにアタシの通っている常盤大の子達よりお嬢様らしくもなければ女の子らしくもないことは自覚しているが、容姿はかなり整っていると自負している。少しは意識してもいいのではないかと考えた直後、全力でその思考を振り払う。

 

何を考えてんのよアタシは!それじゃあまるでアタシがこいつのこと意識して欲しいみたいじゃない。そんなことは断じてない!当の本人はアタシのいきなりの行動に不思議なものを見る目で見てくる。

 

「そ、それよりも聞きたいことって何よ。」

 

「ああ、うん。木山さんが言ってたのって本当か?」

 

「は、何のことよ。」

 

「御坂がlevel5ってこと。」

 

「そうよ、言ってなかった。」

 

アタシの返事を聞いた北桐は頭を抱えため息を吐く。その反応に少々イラッときて口を開きかけたところで、それよりも先に木山さんが口を開く。

 

「しかし今日だけでlevel5に二人も会うことができるとわな。」

 

「え、木山先生お姉様以外のlevel5にお会いしたのですか。」

 

木山さんの言葉を聞いて最初に思い浮かべたのは、自分と犬猿の仲の金髪運動音痴が「胸囲力が足りないんダゾ~☆」と言っている姿。思わず堪忍袋の緒が切れそうなのを必死に我慢していると、木山さんが不思議そうに此方を見ていた。

 

「何だ教えてないのか?」

 

「教えるも何も御坂さんと知り合ったのは四日前で白井さんとは半年以上前に一度しか会ってないんですよ。自己紹介ぐらいしかしてませんよ。」

 

「それでは君のことも知らないのか。」

 

「はい、そうなりますね。」

 

何やら北桐と話しているが話に付いていけないアタシと黒子は当然おいてけぼり。一体何だというんだ。いい加減しびれを切らし、口を開こうとしたがまたしても木山先生に割り込まれる。この人狙ってやってるのか?

 

「先の質問だが、もう一人は既に君達の目の前座っている。」

 

『え?』

 

木山さんの言葉に目を見開き驚くアタシと黒子。

 

アタシ達の目の前には木山さんと北桐の二人だけ。そこから木山さんを外すと必然的に答えは絞られた。

 

「まさかアンタが………」

 

「まあうん。序列は第8位ってことになってる。」

 

アタシ達の目線の先には頭を掻きながら照れたように話す北桐の姿。

 

7月20日 二人のlevel5が初めてお互いの素性を認知した。

 

 

 

 

 




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