第1話 プロローグ~初めの一歩
「ここか…」
少年の口から出たセリフは蚊の鳴くような独り言でその先に続く言葉は虚空へと消えていく。
その少年は黒髪黒眼の短髪で中肉中背の‘何処にでもいる学生’である。
付け加えると少し顔が整っている。
「確か入口の近くに迎えの車があるって聞いたんだけど…」
少年は又もや独り言を言いながら辺りを見回し、ある一点でとまる。
少年の視線の先には一台の車が停まっている。側には腕時計で時間を確認しているであろう男がいる。その男は少年に気づいたのか少年の方に近づいてくる。
「やあ、ゲートチェックご苦労さん。大変だっただろ。」
男の年齢は30前半位で身長は少年より20cm程高い。鍛えているのか体はとてもガッシリとしている。黒髪をボサボサに生やしており、刃物のような鋭い目付きからはあまり良い印象は持てないが、気さくなしゃべり方とこちらを心配する言動から悪い人ではないのだろう。
今は2月半ばということもあり、紺色のロングコートを着ている。
「いえ、大丈夫です。心配していただきありがとうございます。…ええと、」
「
「は、はい。ええと…
「そんなに畏まらなくてもいいよ。お互い堅苦しいのはなしにしよう。」
「あ、ああ。分かりました。よろしくです桂木さん。」
「別に敬語もいらんぞ。何だったら気軽に下の名前で呼んでもいいし。」
「あ、すいません。でも年上の人と話すとどうしても敬語になってしまって…」
「まあ、徐々に馴れてけばいいさ。」
「ホントすいません。」
「いいよいいよ。それじゃあ早速行こうか。」
そう言いながら車の方に歩いていく桂木はふと思い出したかのように北桐の方を向き
「ようこそ学園都市へ。歓迎するよ、北桐博威くん。」
ニカッと効果音が聞こえてくるような笑みを北桐に向ける。
北桐は呆気にとられたような顔をした後、自然に零れる笑みをそのままに一歩を踏み出した。
学園都市
東京西部の多摩地域に位置し、東京都のほかに神奈川、埼玉県、山梨県に面する完全独立教育研究機関である。総面積は東京都の3分の1の広さを占めており、総人口は約230万人でその8割は学生というなんとも不思議な街。あらゆる教育機関・研究組織の集合体であり、外部より2、30年進んだ最先端の科学技術が研究・運用されているため科学の街とも言われている。
そんな科学の街が最も力をいれている研究、それは‘能力開発’である。
能力とは俗に言う‘超能力’のことであり、手を触れずに物を動かしたり、人の心を読んだりする力のこと。学園都市はそれらを科学的に作り出している。
だが稀に能力開発を受けずに発現した、所謂天然の能力を持つものがいる。その数は世界的にみても希少で現在確認されているのはたった50人前後。それらを学園都市では‘原石’と呼ばれていていて北桐博威もまたその一人である。
これは不思議な能力を持った少年が
一つの想いを心に刻み
出会った人々と喜怒哀楽を分かち合い共に成長する。
そんな物語
読んでいただきありがとうございます。
出来るだけ早めに続きを投稿したいと思います。