○月D日
今日、気になるニオイをした人間と出会った。
うん、すごく気になる、なんて言えばいいんだろう、とにかく異常なまでに魅かれるニオイ、
香水とは違う…なんていうかすごく落ち着くニオイっていうか…。
ああいけないいけない、考えてたらまた思い出しちゃう。日記を書いてるんだからまずキッカケからだね、
まずー、そうだね、退屈な学会を抜け出して、近くの公園で日向ぼっこしてたところからだね、
その時の志希ちゃんは黒い人達の目を盗み、ほんのりと暖かい草むらの上でスヤスヤと眠っていたのでした。
すると何か柔らかい物が足にすり寄ってくるではありませんか!
まあただの黒猫なんだけどねー、
んで、そこで志希ちゃんの鼻はうっすらと香るその匂いを感じとったのです、
もう周りなんて気にしないで無我夢中に嗅いでたね、
「いったいなんだこの匂いは」って感じに、
するとそこで、背後からこの匂いの元が現れた。
これが出会いのキッカケ、
少しほっそりとしてて、身長は170半ばくらいだったかな?まあその時他の事で全くアタマが回らなかったから、あまり覚えてないんだけど。
今までいろんなものを見て、感じてきたけど、
ここまで心を動かされる思いをしたのはいつぶりだったんだろうにゃー、
あたしのアタマの中は
「嗅ぎたい、そしてこれが何なのか確かめたい」って思考でいっぱいだったね。
目を合わせてゆっくりと彼に近づき、距離を詰める。近くなるにつれてだんだん匂いが濃くなっていき、後少しでゴール!のハズだったんだけどにゃー…
タイムリミットが来ちゃったみたい、
あーあ、なんでいいタイミングで来ちゃうカナー、志希ちゃんつまんない!
また、いつ会えるかもわからないのに…
ま、こっちから会いに行けばいいんだけどね!
匂いは覚えたし、次がたのしみだにゃー♪
○月E日
さーって!昨日の彼を探そー♪
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見つけた!場所は図書館前!
いやーまさかこんなに時間かかっちゃうとは、
にゃはは、志希ちゃん少し疲れちゃったよ。
もう夜遅かったし、彼の家だけ覚えて帰ってきちゃったケド。
時間ならタップリとあるし、しばらくは観察かにゃー、
うーん、あの時感じたスメルが忘れられない、でもガマンガマン。
○月F日
もうガマンするの飽きた!
志希ちゃんもう限界!
でも今雨降ってるんだよねー、あー、どうしよう、すぐにでも向かいたい、
なんなんだろうねー、この感じ、さっきからずっと彼の事が気になって仕方がない、
いったい何をしたらこんなに惹かれちゃうんだろ?、もしかして別の意味があったり?
でも、あまりこういうのは熱中しすぎちゃダメだったりするんだよねー、
オモチャや本と同じ、
いつもいつも、遊び尽くしたら飽きちゃうし、中身を全て知ってしまうと用は無くなっちゃう、
彼は、あたしをもっと夢中にしてくれるのかな?
○月G日
晴れてる!もうげんかい!しゅっぱーつ!
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にゃふふー♪、収穫収穫〜♪
志希ちゃんアイドルになりました!パチパチ!
いやー、彼は想像以上に面白いよ、期待していたよりもずっと。
流れを書くとね、
朝、あたしは彼の家の前で彼が出てくるのを待ち伏せてた。
しばらくすると、彼が欠伸をしながらドアを開けて姿を現した。
そこをすかさず回り込んでギュッ!、彼は何が起きてるのか理解できてないような顔してた。
まあ、それはあたしもなんだけど、
一瞬体が固まってしまった、至近距離だからかこの前とは段違いのスメル、脳内麻薬が出るような中毒性、
その時あたしは
「彼はある意味キケンな存在なのではないか?」
と疑ってしまった。
なぜかわからない、彼の近くだと自分を見失う程に夢中になってしまう、
依存してしまいそうな…いや、もうしているのかな?彼の側にいるといずれあたしは自分を壊す事になるだろう、
それくらい甘く、キケンな香り、
あたしはそこが気に入った。
ーーこの人だけは絶対に離してはいけない
でも、どうやってあたしに縛り付けよう?
志希ちゃん特製のオクスリを使ってアタシに夢中にさせちゃおうか?
そう思っていた時、彼はあたしにこう言った。
「アイドルになってみませんか?」
って、
アイドルって言われても志希ちゃんにはよくわからなかったけど、彼の説明を聞くとこれほどの魅力的な好条件は無かった。
彼の側に合理的にいられる、こちらに気を許してくれる、そしてなによりあたしが知らない世界を教えてくれるかもしれないから。
明日また彼と会える、早く明日にならないかにゃー
yuzu!?