ラディッツを悟空と一緒に連れていった理由としては、一つは悟空以外をまだ信じきってないこと。もう一つは大猿になる可能性がある為です。
ピッコロさんが悟飯を育ててないのでサイヤ人の秘密に気付いていません。なので月もそのまま残っているのです。加えて、ラディッツは下級戦士なので大猿になると理性が保てなくなり、サイヤ人襲来とか言ってられなくなります。なので界王星に行かせました。
それと、ラディッツも悟空と同じ重りをつけています。
ただ、見た目が分からないので戦闘服の下に着るシャツと、上から履くズボンの様なものしか想像できませんでした。
だって戦闘服が殆どを占めているんだもん。
悟空とラディッツが界王様のいる場所を目指して二カ月が経ち、やっとの事で最後の方まで辿り着くことが出来た。
しかし、界王様が見当たらない。どうしたものかと上を見上げると。
「おいカカロット、あれがそうじゃないか?」
「おぉ?」
小さな星が見えた。ずぅっとそれを見てると、なんだか星に引っ張られる様な……いや、引っ張られている。
流されるがままに、悟空とラディッツはその星に引き寄せられた。
悟空は地べたにめり込み、ラディッツは普通に着地する。この差は一体なんだろうか。
「な、何だか身体がすげぇ重いぞ……」
「恐らくは重力の大きい星なのだろう」
悟空はそのあまりの重さに膝を突くが、ラディッツは平然としていた。
と、その時何者が姿を現した。界王様か? それにしては随分と野生的で、というか猿の様な姿をしていた。
そいつは二人を見ると、不思議な踊りをしながら移動する。
「へぇあれが界王様かぁ。あぁ見えて凄ぇんだろうなぁ」
「本当にそうか?」
悟空は挨拶をし、あれが修行の一つだと自己解釈する。ラディッツは「違うと思うぞ」と言うのだが、悟空はその不思議な踊りを真似し、確かにキツいので界王様(?)の後ろに付いて行った。
ラディッツは、そんな姿の弟を冷やかな目で見ていた。
「な〜にをやってんだ、お前」
そして響くのは、本物の界王様の声だった。
「あ、あれ? じゃああいつは?」
「あぁ、あれはな~ペットのバブルス君だ」
陽気な声で説明してくれた界王様。
ラディッツもホッと安心した様な顔になっていた。
この後、界王様の自己紹介で一悶着あったが、修行を受ける為にはギャグの天才である界王様をギャグで笑わせなければ受ける事が出来ないらしい。
最初は悟空の番なのだが、
「布団が、吹っ飛んだ!」
勢いに任せて言い切る。これは酷い。この間の神様と同レベルだ。
だが意外にもツボにハマったらしく、口元を手で押さえる界王様が目に映った。
「猫がぁ、寝転んだっ!」
最早ゴリ押しである。
その後、ゴリ押しに次ぐゴリ押しで笑ってもらったので見事修行をしてもらえる事となった。
……因みにラディッツのギャグは「父さんは通さんッ!!」だった。
さて、界王様の下で修行が始まったのだが、界王様が地球から来たという事実を聞き、まずはこの重力に慣れる事から始めると言った。
その方法とは……。
「このバブルス君を捕まえる様になるまでは、ワシの修行は教えてやれんな〜」
とのこと。
ラディッツは元々惑星ベジータの重力で慣れているのだが、悟空は初めてだ。この重力を克服する為にも、この遊びみたいな修行が必要なのだろう。やはり、と言うべきか悟空はバブルス君に翻弄され続けた。
「クソォ~……よし、見てろよ〜」
悟空は重りを脱ぎ、身軽になったと思ったら瞬く間にバブルス君を捕まえてみせた。
界王様は唖然とし「な、中々のもんじゃ」と評価した。だが、重りを脱いだ所を見ていたので、今度は重りを着てバブルス君を捕まえてみせろと言い出す。なんでもそちらの方が効果的とか。
そして、数時間後。
「も、もう駄目だ……腹減った〜……」
悟空が空腹により倒れたのだった。
悟空が食事を取っている間(界王様からぶん取った)、ラディッツがバブルス君を捕まえる事になったが、重りを脱いだ悟空と一緒で見事捕まえてみせた。
界王様はまたもや唖然とし、悟空は流石だと褒め称える。
そんなこんなで修行は続くのだった。
〜〜〜〜〜
数ヶ月が経ち、地球。
不滅の闘志と不屈の精神が彼等を鍛え上げ、見事ミスターポポに勝利する事が出来た。
そして、神様の修行。それは過酷なものであり、辛くて弱音を吐き出そうかとも思ったが、皆己を省みず鍛え続けた。悟空が着たのと同じ重装備をつけ、今まで以上の動きをしてみせる。
自分の身は自分で守れる様になる為に。
かつてライバルと言わしめたあいつに差を広げられない様に。
自分が護りたいと思ったモノを護る為に。
彼等は今、互いに組手をしていた。その顔に余裕の笑顔は無い。少しでも先に進みたい、自分の壁を乗り越えたいという思いが彼等の甘さを消す。
真面目に修行内容をこなす、では駄目なのだ。それ以上を、もっとその上を。
「辞めッ!」
神様の合図で闘気に溢れた動きがピタリと止まり、神様の方を向く。
神様はそれを確認すると、頷きポポを呼び寄せ答えた。
「お主達はとうに私を超えてしまった。私やミスターポポが教えることは最早何も無い。運命の対決の時までは地上に降り、各々の技を磨くが良い」
その言葉に皆は決心した表情だ。
神様もそれに答える様に。
「未来を頼んだぞ」
皆は返事を返し、その場から地上に降り立った。だがヤジロベーは。
「この重たぁ〜シャツ、脱いでもえぇだべか?」
「……好きにするが良い」
こいつだけは中々締まらないものだった。
〜〜〜〜〜
悟空とラディッツも総仕上げの時。
二人のサイヤ人が来るまで後僅かとなったが、焦っても意味が無いということで、今は休憩の時間。
悟空は相変わらず大食らいで、その光景にラディッツは食事の手を止めていた。
「どうだ二人共、調子の方は?」
「おう! もうバッチリだっ!」
「戦ってみないと分からん」
それぞれ返事はバラバラだったが、少なくとも不満を持った感じでは無かった。
ふと、悟空が何か思い出したかの様に言い出した。
「そういえば、オラ兄ちゃんからサイヤ人としてのオラの話聞いてねぇぞ」
「あぁ、言い出しにくいことは言わないのだ、俺は」
「ならばワシが教えてやろうか?」
その一件に、界王様が植物にじょうろで水をやりながら割り込む。
「知ってんのか界王様?」
その無礼な言葉にグレゴリーは注意しようとするも、界王様自身がそれを止める。
「孫悟空よ。そちらのラディッツもそうだが、お前達もサイヤ人だったな」
その発言に、途中から参加したグレゴリーは面食らった。その時には悟空達が、自身をサイヤ人と告白した後なので聞きそびれたのだ。
界王様は自身の知っているサイヤ人の情報を、歴史を語り出した。
かつて、惑星ベジータにはツフル人とサイヤ人が存在した。ツフル人は多く、体は小さいが高度な科学力を持ち、サイヤ人は数は少なかったが大きな身体を持っていた。サイヤ人は強靭な肉体でツフル人を侵略し始め、その技術を取り入れながらツフル人の数をどんどん減らしていったという。やがて全てのツフル人が死に絶えた時、戦いの視野を外宇宙にまで広げた。そこからは以前ラディッツが言った内容と同じようだ。
しかし、それに反論したのはラディッツだった。
「俺達の祖先が侵略だと? 笑わせるな、俺達サイヤ人は奴隷として扱われていたから反抗したという歴史が真実だ」
サイヤ人として死んでも、誇りは捨てきれていなかったラディッツは余程自分の誇りを信じ続けたのだろう。
その様子に、何か暗い所も見えた気がした。
「とにかく、オラは地球を守んなきゃならねぇ。早く飯食って修行しなくちゃな」
悟空は持っている丼の中身をかきこむと、修行の為に立ち上がる。
と、その時界王様の顔が変わった。
真剣な顔付きになり、ラディッツに尋ねる。
「ラディッツよ。お前は確か約一年後にその二人のサイヤ人が来ると言ったな」
「あぁ、確かにそう言ったな」
「どういう訳か、予定よりも三カ月早く地球に来そうだぞ?」
「何だと!?」
界王様は触角のようなモノをピコピコと動かし答える。
三カ月といえば地球に来るのは明後日になる。このまま間に合わなければ、地球は終わりだ。
何故ラディッツの予想が外れたのか。
「……成る程、新型のポッドに乗ってやがるなクソッタレ」
なんと、新型のポッドでスピードが上がっているという。
界王様も序盤のスピードで測っていたため、それでは分からない訳だ。
とにかくこのままでは不味い。急いで地球に戻れるよう悟空が界王様に頼むが、
「か、界王様ならオラ達のこと下界まで、ビュンて飛ばせんじゃねぇの!?」
界王様は焦りながら首を横に振る。
その言葉に悟空はますます焦り、ラディッツを連れてさっさと地球に戻ろうとした時、界王様が悟空を呼び止める。
「良いな、元気玉は一発までなら許可する。でないと地球も破壊してしまいかねん」
「うん、分かった。色々とありがとう界王様!」
「カカロットよ、俺は少し遅れる。先に行ってろ」
ラディッツが言った言葉に悟空は疑問を持つのだったが、今はそんな時間も惜しい。分かったと一言だけ残し、猛スピードで蛇の道を戻り出すのだった。
そして、
「界王様よぉ、話がある」
ラディッツが界王様に声をかけた。
サイヤ人襲来まで、後二日。
はい、いかがだったでしょうか?
今回は気楽なサイヤ人組とハードな修行の地球組でした。
うむ、早く着きすぎたので時間を狭めることにしたのですが、いくらなんでも早すぎでしたかね。
まぁ気の持ち様は原作よりも強かったということで一つ。
では、ありがとうございましたよ