何だか違うDB   作:パンチ拳血

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何だか書きたくなった

この頃荒んでいる様な気がして……優しくなりたい


閑話:あの世の悟空

 

 

 これは、悟空がベジータに殺された後の出来事である。

 

 

 

「界王様〜、オラ負けちまったぁ」

 

 

 

 悟空は死んだ後、真っ直ぐに界王星まで飛んで行った。

 しかし、死んだと言うのに何とも呑気なものである。

 

「うむ。まさかサイヤ人の連中があそこまでとは思わなかった」

 

 界王様も、うむうむと頷き仕方の無いといった様子だった。

 自分以上と言ったが、ここまで強いのは予想外だったのだろう。時間を二人分にせず、一人に注いでいたならば結果は変わっていたかもしれない。

 

 しかし、こうなっては地球の方が危ないのう。と言った界王様に悟空は、

 

「大丈夫だ。兄ちゃんが戦ってんならぜってぇ負けねぇ」

 

 頭の後ろに腕を組み、笑顔を絶やさぬままそう言う。

 確かに地力はラディッツの方が上であったが、界王拳での精度では悟空の方が上だった。

 試しに悟空とラディッツを戦わせてみたら、界王拳の扱いが上手くいかずラディッツはその力に振り回され、悟空に敗北した。両者ともまだ本気では無かったと言えども、これでは悟空の方が強いと言わざるを得ない。

 

「界王拳の二倍もまだ満足に扱えぬラディッツが負けない、と?」

 

「あぁ」

 

 その自信は全く揺るがない。

 悟空は、自分の兄の勝利を確信していたのだ。

 

「ふむ、まぁお前のその自信がどこから来るのかはわからんが、悟空。お前が負けたのは事実だ。

しかしじゃな、お前さんには見所がある。これからも強くなりたいと申すのであれば、あの世での修行場に連れていかない事もない」

 

「ホントかぁ!?」

 

 グレゴリーが口を挟もうとするが、それを界王様はまぁまぁと抑え、再度悟空に「どうだ?」と聞く。

 

「そんなのこっちから頼み込むくらいだぁ! 宜しく頼むぞぉ!」

 

 悟空ははしゃぎ回り、その喜びを身体全体で表現していた。

 

 界王様は早速悟空をその場へ連れて行こうと腕を引っ張ろうとすると、

 

 

 

 

「あ」

 

 

 

 

 いきなり止まった悟空に逆に引っ張られ、その場に転んでしまう。

 

「どうしたんじゃ?」

 

 界王様はサッと立ち上がり汗をどこからか出したハンカチで拭う。

 悟空は顔だけを界王様に向けると、

 

 

 

「界王様、天国ってどうやって行けんだ?」

 

 

 

 そんな事を言った。

 

「な、なに〜!?」

 

 界王様は驚く。

 驚いた拍子にまた転んでしまった。

 まさか、いきなり気が変わってあの世でゆっくりとしたいと思ったのか。

 界王様にそれを聞くと、

 

「いや、ちょっと用があんだ」

 

 そう言った悟空の顔はいつもの笑顔のハズなのに、他の感情が含まれている様に感じられた。

 この状態の悟空を無理に連れて行っても修行に打ち込めないだろう。そう感じた界王様は、

 

「うむ。ワシが連れていってやろう」

 

 と、そう言う。

 

「どうやら訳があるようじゃな。何とは聞かんが」

 

「あぁ、聞かねぇでいてくれてありがとう」

 

 そして、二人は閻魔大王の所まで移動するのであった。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 閻魔大王が界王様に会い頭を下げたり、てんやわんやで時間が掛かったが一人の鬼に連れられ天国へとやって来た悟空。

 その鬼に悟空は、

 

「直ぐ済むから待っててくれ」

 

 と言って飛んで行った。

 それを聞いた鬼は、

 

「まだ仕事終わってないのに……」

 

 一人ぽつんと、待っているのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 気を探り、天国中を飛び回る悟空。

 しかし、聞けば天国の広さは宇宙と同じ位広いのだという。

 そう聞いた悟空はより懸命に捜すが、中々見つからなかった。

 

「どこにいんだ? ……じいちゃん」

 

 飛ぶ。

 

 飛ぶ。

 

 飛び回る。

 

 悟空は、果てもなく続く幻想的な草原を飛んで行った。

 

 

 

 

 

 そして、疲れ果て、その場に寝転ぶ。

 

「広れぇ〜……」

 

 ノンストップで飛び回ったので知らず知らずの内に汗がびっしょりだ。

 

 柔らかな風が吹き、涼ませてくれる。

 さやさやと草の音が聞こえてくる。

 あぁ、気持ち良い。気を緩ませてしまったら寝てしまいそうだ。

 そう思ったら、途端に眠くなってきた。瞼が重くて、目を閉じたくてたまらない。

 

 やがて、睡眠欲に負けてしまいそうになった時、

 

 

 

「おぉ〜、悟空じゃないか」

 

 

 

 懐かしい声が、近くで聞こえた。

 

 まさか、

 

 まさか!

 

 

 

「じいちゃんっ!?」

 

 

 意識がはっきりと覚醒し、その場で飛び起きた悟空が目にしたモノとは……

 

 紛れもなく自身の育ての親、孫悟飯だった。

 

「そうじゃ。ワシじゃよぉ」

 

「じいちゃん……じいちゃん……!」

 

 気付いた時にはじいちゃんの胸に飛び込んでいた。

 わんわんと悟空は泣き、親である孫悟飯はそれを優しく抱きとめる。

 身体はもうスッカリ成長し大きくなった。でも、まるで子供に戻った様に泣きつく姿が、そこにあった。

 

 久しく流れていなかった涙。後から後から止めどなく流れていき、それがなんだか安心する。

 今までは文字通りの死闘が繰り広げられていた。かく言う自分もそうだった。

 

 今位はゆっくりしても良いだろう。

 だから。

 だからさ。

 ほんの少しだけこのままに……

 

 

 

 

 

 悟空は強かった。しかし、その裏には途方も無い努力が必要であった。

 恩師である亀仙人の教え。

 

『よく動き、よく学び、よく遊び、よく食べて、よく休む』

 

 悟空はこれを守り、しかし修行に関しては全く妥協せず自身の身体を痛めつけた。ただ強くなりたい一心で。

 悟空は勿論それを自身で臨み、楽しんでやっていた。更に起こる激戦や死闘などにも、悟空は笑っていた。これもサイヤ人の沸き立つ血のせいか。

 

 自分に親しい間柄の人物。

 友人はいた。恩師もいた。近頃では兄も。数々の出会いが悟空を成長させ、今の悟空がいる。

 しかし、誰にも甘えてはいなかった。

 戦い、傷付き、尻尾という弱点も見せながら生きてきた。

 世界を教えてくれた友がいた。苦楽を共にした友がいた。戦って理解し合った友がいた。

 だが、その中には無い弱い自分。

 弱音を吐かず、弱い自分を見せず、明るい自分を出し続けていたのだ。

 今までずっとそうだった__

 

 

 

 

 

 

 一頻り泣いた後、悟空は涙を拭い笑顔を見せた。

 しかし、それが段々と暗くなっていき、俯いてしまう。

 

「じいちゃん。オラ謝らなきゃいけねぇ事があんだ。オラ、オラ……」

 

 そこまで言って悟飯が止める。

 その顔は笑顔のまま。そして優しく語りかけてきた。

 

「悟空よ、それはワシが悪いのじゃ。

 お前さんの正体を教えんかったばかりに、辛い思いをさせたのう……」

 

 満月の夜は必ず外に出てはいけない事。

 

 悟空が起きた後、めちゃめちゃになった悟空と悟飯の家。

 

 

 

 そして、踏み潰された孫悟飯。

 

 

 

 それが、ベジータとの戦いではっきりした。理解した。

 夜に出る化け物……大猿は自分なのだろうと。

 自身の親を殺してしまったのは、紛れもなく自分なのだと。

 失わせてしまったのは自分のせいなのだと。

 

「ごめん……ごめんよぉ」

 

 止まった涙が溢れ出し、大声で泣き出した悟空。

 何度も何度も謝りながら。

 きっと、悟飯は許してくれているのだろう。それが堪らなく悔しくって、悲しくって、そして嬉しかった。

 

 

 

 

 泣いた後、悟空は生きていた時の事を話し出す。

 占いババでの出来事の後、強敵と戦った事。

 ちゃんと尻尾も鍛え、弱点を克服した事。今ではその尻尾は無いが。

 そして、自分は宇宙人だった事。

 

 悟飯は面白そうに聞き入っていた。

 話の途中で質問もし、時には驚き、時には腹を抱えて大笑いした。

 そして、

 

 

 

「悟空にも兄弟がいたんじゃな」

 

 

 

 元気よく返事をする悟空。

 もう、寂しくはない。この再会で、一生分(死んでいるが)の涙を流し切ったつもりだ。

 

 別れの会話を済ませ、空に浮かぶ悟空。

 

「じゃあな、じいちゃん!」

 

 悟空は飛んで行った。育ての親の笑顔を受けて。

 そこには迷いのあった不安な顔はどこにも無く、とても明るい笑顔だった。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

「__ピッコロ!? オメェも来てたんかぁ!?」

 

「あぁ、納得はいかんがな」

 

 天国から界王星まで戻ると、そこにはピッコロがいた。話を聞いてみると、どうやらベジータとは違うもう一人のサイヤ人に殺されてしまったらしい。

 

「ちゅーことはピッコロもあれ、やったんか?」

 

「……」

 

 その返答は帰ってこない。プイッと首ごと目線を逸らし、腕を組みながらそこに佇んでいるだけだ。

 と、そこへ界王様が家から出てくる。

 

「いや〜悟空。お前さんの星には駄洒落のプロが多いのぉ。ぐふふ……」

 

 思い出したかのように口元を抑え笑いを堪える界王様。

 悟空はピッコロが駄洒落など言う様子が思い浮かばなくて「意外だなぁ」と言っていた。

 

 と、目線が悟空へと移り雰囲気が一変。顔付きを変え真剣な様子で聞く。

 

「もう、平気じゃな?」

 

「あぁ、もう大丈夫だ!」

 

 界王様に言われ、返事をする悟空。界王様も納得や安心といった表情を見せて顔を緩ませる。

 これからキツい修行が待っている。悟空はまだまだ強くなるつもりだ。

 きっと、地球の皆も強くなっているだろう。

 これから更に激しい戦いが起こるのだろう。

 もう負けない。仲間を守る為に、悲しい思いをさせなくて済むように。

 

 そう心に誓った悟空であった。

 

 

 




こうして、悟空とピッコロはあの世一武道会のメンバーと修行しています。
さて、どのくらい強くなってるのかは……秘密としておきましょう。

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