何だか違うDB   作:パンチ拳血

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すまない……
どんどん投稿速度が……


特戦隊+α 序

 

 冷汗を流しながら構えるラディッツ。

 それに対しギニュー特戦隊等の連中は余裕の表情で、ニヤニヤと不気味な笑みを浮かべるだけだ。

 

「手負いで悪いが、久しぶりの戦闘だ。思う存分可愛がってやろう」

 

「可愛がると言っても、頭を撫でたり、よしよしとかじゃ無いからな。痛め付けるって意味だ」

 

「わざわざ説明せんでも良いっ」

 

 ギニューが言った事への補足を付けるジース。それはギニュー特戦隊の副隊長としてか、相手を煽っているのかはさておき、その行動は全くと言っていい程そのキャラクターが掴めない。これも手の内を見せない一つの行動だとしたら流石は宇宙中から選び抜かれたエリートだという事だろう。

 現にクリリンも「キャラが掴めない」と言い、全くその通りだ。

 

「お、もしかしてあれが目的のドラゴンボールじゃねぇか?」

 

 ギニュー特戦隊の一人にして、一番大柄な青肌の男、バータが言う。

 ヤムチャが「しまった!?」と言い、直ぐに回収しに行こうとしたら、

 

 

 

 既にそのドラゴンボールは敵の手にあった。

 

 

 

「な……に……?」

 

 冷汗を流しながらヤムチャは相手を見る。

 確かに、先程まですぐそこにあったドラゴンボールが青肌の男の両脇にある。驚きの表情を浮かべるヤムチャを見て、バータは笑う。

 

「ケッケ〜、俺のスピードは宇宙一だッ! テメェに反応できる訳ねぇだろう?」

 

 宇宙一を自称する奴は、だが確かに疾い。

 ヤムチャは戦慄し、瞬きを一つした。

 

 

 

 それだけで、自分達の手元にあったハズのドラゴンボールが、ギニュー特戦隊の一人の手元にあったのだ。

 

 

 

「ば、馬鹿なッ!?」

 

 思わずヤムチャは声を張り上げる。

 スピードが疾いからと言って、これ程までのものか?

 気を感じる事すら出来無い程、圧倒的なのか。それ程まで、この状況は覆せない位絶望的なのか。

 

 すると、いつの間にか隣にいたラディッツがヤムチャの肩に手を置き、奴らに聞こえない位の声で(ささや)く。

 

「落ち着け。今のは恐らくあのグルドって奴の超能力だ」

 

 時間を止めたんだ、と続けるラディッツ。

 そんなのどうやって勝てばいいんだ、とヤムチャは大きな声を出し掛けたが、ラディッツの目線を見てそれを押し留めた。

 

「グルドを良く見ろ。ニヤけてはいるが疲れた表情をしているだろう? だから連続では出せないハズだ。そうに決まってる……!」

 

 ドラゴンボールを奪われても冷静な判断をしているラディッツだが、現状の絶望感に焦っているようにも感じた。

 打開策を考えているように見え、しかし歯を食い縛っている所を見るといい思い付きは無さそうだ。

 

 ドラゴンボールを奪ったバータとグルドがそれを隊長のギニューに渡すと、

 

「ふむ、取り敢えずこのドラゴンボールはフリーザ様の所へ持って行く」

 

「という事は隊長、こいつらは俺達で好きにしていいんですね!?」

 

「あぁ、好きにしろ」

 

 その隊長の一言に他の隊員は歓喜する。

 それぞれ個性のある喜び方をし、本当にこれから戦闘を行う者達の姿なのかと困惑してしまう程だ。

 そんな姿の隊員達を見て隊長のギニューは「しかし」と続ける。

 

「決して油断はするな。今のラディッツ君は弱っているとはいえ、先程の40,000を超えたナッパ君の戦闘力を一時的に上回ったのだからな」

 

 その言葉に、隊員達の顔には殺気が宿る。

 だが、その殺気は戦闘者としてのものでは無い。此方を蹂躙するかの如く、一方的に痛め付ける者の、まるで『捕食者』のようだ。それに近いものを皆は感じ取った。

 

 ギニューはドラゴンボールを気で浮かび上げ、そのまま飛んで行ってしまった。

 それをお見送りする隊員達と他二名。それが終わると……

 

「よっしゃああぁぁ! それじゃあ誰があいつらを痛め付けてやるかジャンケンだっ!」

 

 なんと、おもむろにジャンケンを始めたではないか。

 六人でのジャンケンは中々終わらない。その様子を見てヤムチャは、

 

「おい、今の内に逃げた方が良いんじゃないか? 遠くへ逃げて、気を消せばスカウターに反応する事も無いと思うんだが……」

 

 と提案するも、

 

「無理だ。さっきの青い奴……バータの疾さを見ただろう? 今の俺達ではどう足掻いても追い付かれてしまう」

 

 とラディッツが言う。

 確かに倒れているクリリンを担いでいては逃げ切れないだろう。それにターレスはさておき、デンデの微かな戦闘力はスカウターで察知されてしまうのだ。

 

「そうだ。だから……」

「あぁ、だから先ずはその……ギニュー特戦隊だっけ? そいつらに勘付かれるような無茶な動きは出来ないって事だな。クソッ!」

 

 ヤムチャは今動ける仲間が自分とラディッツだけだという事に歯噛みした。

 

 

 

 

 

 漸く、という程でも無いがギニュー特戦隊達のジャンケンが終わり、前に出て来たのは緑色の肌をした、四つの目を持つグルドだった。

 

「そこのロン毛、俺様が相手をしてやる。ベジータじゃ無いのが苛つくが、まぁお前でストレスの発散でもするとするかな」

 

 ニヤニヤと此方に迫るグルド。

 先程言っていた、時を止める超能力者。対策など考えてもおらず、唯々嫌な汗が吹き出るばかりである。しかし、そんな時にヤムチャはある事に気付く。

 

(なんだ? 此奴だけ馬鹿みたいに気が少ないぞ?)

 

 他のギニュー特戦隊の隊員からは恐ろしい程の戦闘力を感じるのにも拘らず、このグルドだけは圧倒的に少ない。これならば以前に戦った上級兵士と同じ位じゃ無かろうか?

 しかし敵を侮るなかれ。

 逆に考えれば、それ以上の戦闘経験と特殊な能力が備わっているからエリート集団の仲間入りを果たしたのだろうとヤムチャは再度気を引き締める。

 

(ならば……先手必勝だッ!)

 

 こういう場合、相手のペースに乗ってしまうのが一番危険だという事を知っている。ヤムチャは直ぐさま繰気弾を両手に作り上げ、それを撃ち出す。最長老により内なる力が湧き上がった今のヤムチャならば当たれば一撃で戦闘不能に出来るだろう。

 ……当たるならば。

 

「おぉっと……思ったより速いなお前」

 

 さっきまでいた場所とは正反対の所へ移動していたグルド。

 それと同時に、思いがけない腹痛がヤムチャを襲う。何かに無防備な所を殴られたような、そんな痛みだ。

 これはもしかしなくてもラディッツの言っていた時止めからの攻撃だろう。

 

「ならば……ッ!!」

 

 ヤムチャは二つの繰気弾を混ぜ合わせ、人型のそれへと変化させる。

 ヤムチャ自身は全体に気を配り、人型である繰気弾は真っ直ぐにグルドへ向かって行く。

 

 グルドはニヤリと口を歪ませ、次の瞬間に消える。

 そして、又もやグルドは後ろに回り込んでおり、今度は複数の気弾がヤムチャを襲っていた。

 だがヤムチャは自身の作った繰気弾に背を任せ、囲うように迫る気弾を全て弾いていく。

 

「ほう、よく防ぐもんだな」

 

 連続での時止めの使用に疲れているのか、少し息切れをしているのが見える。

 そんな様子を見て他の隊員達はというと、

 

「おいグルド~、相手は一匹なのに随分手こずっているじゃないか? 恥なんてかいたら二度と一緒にオヤツ囲んでやんないからな~」

 

 そう言って隊員達は笑う。

 

「ちょ、ちょっと様子見で遊んでるだけだい! 直ぐに此奴を殺しちゃうとつまんないだろ!?」

 

 グルドの目線が隊員達へと向き、ヤムチャにとっては思いがけない隙が生まれる。もしかしなくてもこれはチャンスだ。

 それを見たヤムチャは間髪入れず繰気弾を突撃させた。

 隙を突かれ慌てるように時を止めるグルド。咄嗟の事に息が続かず、少し離れた所でそれを解除してしまう。

 

「そこだッ!!」

 

 全体に気を配り直ぐにでも動ける体勢でいたヤムチャは地を駆ける。

 本来ヤムチャが得意である素早さ、その動きは狼と例えられる程疾く、最短距離でグルドに近付き蹴りを見舞った。

 蹴りを入れられ転がって行くグルド。だがしかし、グルドは何とか立ち上がってきたのだ。

 

「チッ、蹴りが浅かったか!?」

 

 チャンスを逃すまいと確実に当てられる様に放った蹴りは、正確さを求めるあまりパワーを損なってしまったようだ。

 追撃をする為、再度地面を蹴るヤムチャ。

 しかし、

 

 

 

「キエ〜〜〜ッ!!?」

 

 

 

 グルドがいきなり叫び、それと同時に動けなくなってしまったのだ。

 これは金縛りなのだと瞬時に理解するヤムチャ。餃子と共に修行をした時この様な術に掛かった事があったが、彼方は腹痛の様なもの。動きを止めるという意味合いでは同じ様に感じるが、完全に動きを止められている今の方が圧倒的にヤバい。

 

「へ、へへへ……ピクリとも動けまい……」

 

 ゼェゼェと息切れを起こしているグルド。確かに言われた通り何かに縛られ、どんなに力を入れても全く動けずグルドの直ぐ近くにある繰気弾すら動かせそうに無い。

 

「こんなヘンテコなもんでこの俺を殺せると思ってんのか?」

 

 グルドは思いっきり拳を振りかぶり、その勢いを人型の繰気弾にぶつけようとする。しかし、ぶつかると同時にその繰気弾は霧散し、ドテッとグルドは転んでしまった。

 それにより他の隊員達から笑われてしまう。

 

「き、貴様! よくもこの俺に恥をかかせてくれたなッ!?」

 

 ヤムチャからの意思疎通が途切れ、気も送れなかった以上消えてしまったのは仕方のない事なのだが、これが悪い方向に働いてしまった様だ。

 八つ当たり気味にグルドは全く動けないヤムチャを殴りまくる。

 

「おいおい、随分とグルドは手こずったな」

 

「仕方ないだろ。一応あの男の戦闘力はグルドを上回ってたんだから」

 

「それにしたって金縛りまで使っちまうたぁ、よっぽど俺達の言葉に焦りやがったな」

 

 まるでTVを見ながら雑談するような様。

 何たる残酷さか。この戦いも彼らはゲームか何かのようにしか感じていないのだろう。

 

 

 

「ふぅ。俺の気も済んだ事だし、トドメを刺してやろう」

 

 近くの木を超能力で抜き、槍のように鋭くさせる。

 力も入らず、気を練ることも出来ない今の状況ではあんなのに貫かれたらお終いだ。ヤムチャは決死の思いで抵抗を試みるがやはり動けない。

 今にも鋭くした木を突き刺されそうな時、

 

 

 

 木諸共、グルドの首が刎ねられた。

 

 

 

「!?」

 

 何事かとヤムチャは戸惑うが、兎に角その場から離れた。

 そしてそんなヤムチャに声を掛ける者が一人。

 

 

 

「大丈夫ですかっ!? ヤムチャさんっ!」

 

「クリリン!!」

 

 腹部を押さえながらも、その脚でしっかりと立っていたクリリンだった。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

「おいおい、グルドの奴やられちまったぞ……」

 

 首を刎ねられ、どう見てももう戦う事が出来ないグルドを見て、他の隊員達は戸惑いの色を隠せなかった。

 一番戦闘力が低かったグルドとはいえ、その恐るべき超能力はあのフリーザでさえ思う所がある程の物。だからこそ他の猛者達を出し抜いてギニュー特戦隊の隊員になれたのだ。

 

「どうする……?」

 

「どうするったって……」

 

 余裕のある表情が一変し、こんな言葉を口にした。

 

 

 

 

 

「これでは……スペシャルファイティングポーズの美しさが損なわれるじゃないかッ!?」

 

 

 

 

 

 何と仲間の心配ではなく、たかがポーズの心配だった。

 グルドは首を刎ねられながらもまだ微かに生きている。しかし、その命も残り僅かだろう。だがそれを助けようとする仲間意識が微塵も感じられない。

 クリリンとヤムチャはそれに驚愕し、その場に立ち尽くしたままだった。

 

 と、そこへ飛来してくるもう一つの影。これ以上の敵の増援は勘弁して欲しいのだが、それはこの場の全員が知っている人物であった。

 

 

 

「面白い事をやっているようだな」

 

 

 

 そこに現れたのはまさかのベジータ。

 固まったクリリンやヤムチャには眼もくれず、刎ねられ地面に転がった首だけのグルドに近付く。

 

「貴様、何故今頃ここに……ッ!?」

 

 グルドが紫の血反吐を吐きながら叫ぶようにベジータに言う。

 その顔にはベジータがここに来た事による困惑よりも、沸々と湧き上がる怒りが出ているように感じる。

 ベジータは笑いながら返答した。

 

「なぁに、最期の引導くらい長年共に活動して来た俺から渡してやろうと思ってな」

 

「何が共に活動だッ! 貴様は……貴様はーッ!!」

 

 そこまで言って、ベジータが掌をグルドに向ける。

 

「おっと、負け犬はさっさとあの世に逝け」

 

 やめろ! と言いかけグルドの頭は粉微塵に吹き飛んだ。

 それを見たギニュー特戦隊の隊員達はポーズに対する困惑こそあれども、グルドが死んだ事には全くの無関心であった。いや、ポーズを決めるべき一員が欠けてしまった事に対しては嘆いていたが、所詮その程度でしかない。

 

 

 

 

 

 硬直状態が漸く解けたクリリンとヤムチャがベジータに話しかける。

 

「な、何でお前が…?」

 

「フン、勘違いするな。別に俺は貴様らを助けに来た訳じゃあ無い。何やらギニュー特戦隊とやり合っている貴様らを見て絶好の機会だと思っただけだ。

 ギニュー特戦隊を潰すのにな……」

 

 クリリンとヤムチャは長年修行して来たから理解出来た、今のベジータは以前より更に強くなっているのだと。

 その身体の中に流れる隠れたエネルギーは相当の時間を費やし編み出せるモノであるのだが、あの戦いから今に至るまでの短時間にここまで強化されていたのだ。

 サイヤ人は本当に可笑しいほど強くなる。友である悟空も底無しであったが、エリートであるサイヤ人の王子、ベジータはこうも強くなるのか。

 

 ベジータはナッパとラディッツに目を向け、

 

「サイヤ人だというのに何てザマだ。お笑いだぜ……」

 

 そう言うものの、ベジータの顔は笑い顔などには程遠く、真剣そのものだ。その目線は凍てつく様に冷たく、興味が失せた、失望した、などの意味が含まれている様に感じ得た。

 ラディッツはベジータを睨み付けるも何も言わず、ナッパは頭に青筋を入れながらも黙ったままだ。

 その事に気付いて無いのか、或いは敢えて無視しているのかは分からないがベジータは更に言葉を続けた。

 

「俺には関係無いが、これからが本当の地獄だぞ?」

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

「こうなれば新しいポーズを隊長に考えてもらうしかないなぁ」

 

 ジースがそう言うと他の隊員が首を此方に向け、順に身体も向けて来る。向ける先は勿論、ラディッツ達の方である。

 ヤムチャとクリリンが構え、ラディッツが界王拳を身に纏う。ナッパは立ち上がろうとするが、まだ無理な様だ。

 

「ベジータちゃんも加わった事だし、更に楽しくなりそうね〜」

 

「ここを片付けた後又探すのも面倒だったしちょうど良いや。奴にもたっぷりと味わって貰う事にしようか」

 

「へへへ、そりゃあ良い」

 

 より一層盛り上がる隊員達。

 しかしそこで問題が起きた。

 

 

 

「ところで、誰がベジータを相手にするんだ?」

 

 

 

 身体が大きい、パイナップル頭の男リクームが一つの疑問を口に出す。

 確かに。と皆が顔を合わせ、先ずはアボカド兄弟が名乗りを上げた。

 

「「さっきのジャンケンで勝った俺らじゃないのか?」」

 

「それはラディッツとロン毛の奴だろぉ?」

 

「じゃあさ、ベジータは譲るから残りは俺に……」

 

「あ、ズリーぞ!」

 

 と、まぁ話し合い(?)は進んでいくのだが、段々とそれは言い争いになり収拾がつかなくなっていく。

 チョコレートパフェなる単語が出てきたり、言い争いが普通に拳での語り合いになったりと、かなり混沌としている。

 そして……

 

 

 

 

 

「あー止めだ! 止め止め! もう早い者勝ちで良いだろッ!」

 

 

 

 

 

 こんな事になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ロン毛(ラディッツ以上では無い)

ベジータの登場です。
そして順番に来るのではなく一度に来るギニュー特戦隊の皆さんです。+αはアボカド兄弟で更に倍増。
そして可哀想なグルド。原作でもパワーアップしたご飯とクリリンにやられそうになる程の戦闘力である。10,000程まで上がったクリリンから大した事ないと言われるのならば、それ未満という事ですよね……

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