何だか違うDB   作:パンチ拳血

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この頃遅かったので早めに作りました


止められない怒り

 

「オイ、不味い事になったぞ」

 

 全員が集まった所で、ラディッツが口を開く。早急の事態に焦っているのか、いつもより早口になっていた。

 

「手短に話す。ギニュー特戦隊とアボカド兄弟がこの星に到着した……! ナッパは知っているだろうが、奴らはフリーザのお気に入りのエリート達だ。他にはベジータと思わしき反応と、俺達ともフリーザ軍とも違う奴がドラゴンレーダーに反応している」

 

「オイオイ、フリーザの野郎も本気だなッ!」

 

 ラディッツの報告に、ナッパも冷汗を出しながら眉間にシワを寄せる。

 この焦りよう、サイヤ人の彼らでも恐れる程の脅威がこの星に降り立ったというのか。

 

「その特産品だか特産物だか知らねぇが、ヤベェ奴が来たって所は何となく分かった。けどベジータとは別の反応って奴が気になるな。フリーザ軍とも違うってのはどういう事だ?」

 

 ヤムチャが疑問をぶつける。フリーザ軍では無いと断言している所に違和感を感じたのだ。

 するとラディッツは、

 

「この気の大きさはフリーザの所でも幹部クラスの奴が持っているデカさだ。そんな戦闘力の持ち主なんか、側近の二人を除くとギニュー特戦隊や例外のエリートだけだが、フリーザの近くにはこれ程の戦闘力の奴はいなかった。それに……」

 

 臆病なラディッツだったからこその情報。最後に意味深な言葉を残してはいたが、しかしその情報に対して同僚のナッパも納得していた。

 

「あぁ、ラディッツの言うとおりだ。こんなのがいたら特戦隊の様に優遇されていただろうな。しかし、なんだ? この気はなんだか腹立たしいぞ? ムカムカしやがる……」

 

 ナッパの頭に青筋が浮かぶ。

 これを見て幹部戦の事が思い出されたのか、クリリンとヤムチャは一歩下がったのだった。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 取り敢えずクリリンとヤムチャはこのままドラゴンボールを持っていたら危険だと思い、ナメック星人にどうにかドラゴンボールを譲ってもらえた。後はこれを守るなり隠すなりすれば良いのだが、その時ふとクリリンが疑問に思った事を口にした。

 

「なぁデンデ。お前の村にはドラゴンボールが無くて、その腹いせに襲われそうになってたよな? ベジータやフリーザ軍が襲った村は……皆殺しにされていたし、何でドラゴンボールだけ無くなっていたんだ?」

 

 それを聞き、確かにそうだと思った他三人も顔をデンデに向ける。

 すると、デンデは少し縮こまりながら話し始めた。

 

「そ、それはですね……その方はサイヤ人なんですけど、そのベジータって人では無くて、普通にドラゴンボールを渡してくれれば何もしないと言う約束をちゃんと守ってどこかに行ってしまったんですよ」

 

 サイヤ人というキーワードに全員が反応する。そして、ラディッツは納得したかの様な顔で目を瞑り、ナッパは顔の至る所にシワを寄せながら小刻みに震え出した。

 

「あのアマ〜……ここに来てやがったのか……ッ! ブチ殺してヤるゥ〜……」

 

 拳を握り締め、今にもそれを叩きつけようとする怒りに震えるナッパ。

 ラディッツは慌てて止めに入る。あまりの怒りにナッパの気が漏れ出しているのだ。このままではネイルの所で起きた惨事の二の舞だ。

 ラディッツは幾度も言葉を投げ掛けるが、全く反応しない。このままではスカウターに反応してギニュー特戦隊やフリーザが此方に来てしまうだろう。

 仕方ないと言い、ナッパの頬へ自身の拳をめり込ませた。ナッパの身体は地から浮き、近くの岩壁に吹っ飛ばされた。ナッパはその途中で我に帰った様で、ギリギリの所で自分の身を翻し岩壁との衝突を避けて戻ってくる。

 

「す、すまねぇな。また頭に血が上っちまったぜ……」

 

 落ち着きを取り戻したナッパ。一度深呼吸をし、皆も一息。

 

「それで? そのサイヤ人の事、何か知っている様ですが?」

 

 クリリンが知っている素振りを見せた二人に聞く。ナッパに至っては……まぁ、何も言うまい。

 ラディッツがそれに返す。

 

「あぁ、恐らくだが、そいつは……なんて言えば良いか……女のサイヤ人だ。俺らとは違う隊にいて、その存在を俺達は知らなかった。表向きはフリーザに仕えている様だが、実際は俺達と同じだろう」

 

 フリーザに仕える、その言葉を聞いて動揺したが、フリーザにドラゴンボールを渡していないのなら少なくともフリーザの味方ではない事は確か、なハズだ。

 

 クリリンとヤムチャは女性という点を考えてそのサイヤ人を思い浮かべる。

 浮かび上がるのは必ずしも良いとは言えないイメージ。乱暴に自身の五体を振るい、気が強く、此処にいるラディッツやナッパよりも恐ろしい存在を思い浮かべてしまった。

 それは仕方のない事なのだ。彼らには、失礼だが女性にあまり良い出会い方をしたことはないのだから。ブルマは天才気質で頼りになる存在だが、その分気が強く我儘で男にも強く出れる所がある。ヤムチャはそれより前に出会った事があったが、この前の天下一武道会で知り合ったチチという女性。顔こそ美人だが悟空に「誰だオメェ?」と言われた時には酷く暴力的になり、しかも牛魔王の娘と言われた時にはその性格に納得していた程だ。他にもくしゃみ一つで変貌するランチさんなどなど……悪い印象は持っていないが、そういう面では苦手と言えるだろう。

 

 どうかしたか? とラディッツは二人に声を掛けるが、二人は無言でどう見ても良くない顔をしているのに縦に何度も首を振る様子を見て、余計な詮索はしないでおこう、と思うしか無いラディッツであった。

 

 

 

 

 

 情報共有も終え、次の動きを考えようとした所で急に強い戦闘力を感じ取り、その方向に身体を向ける。

 数は一つ。少なくとも側近の二人よりも強い戦闘力だ。まさか、ギニュー特戦隊だというのか? 先程のナッパの気でこの場所がバレてしまったのだろうか? そう思い、気を引き締める四人。

 次第に近付き、その強さもハッキリと伝わってくる。そして、突風と共に現れたそれは……

 

「ほら、噂をすれば何とやら……だ」

 

「やっぱりラディッツ君だったか」

 

 デンデの話していたそのサイヤ人、ターレスの姿だった。

 両手にはそれぞれドラゴンボールが。ドラゴンレーダーの反応も正しかった様だ。

 

「テメェ! このアマァッ!」

 

 急に飛び出したナッパを、ラディッツが止める。しかし、ボルテージが最高潮のナッパを止めるにはラディッツ一人では足りなかった様で、クリリンとヤムチャもそれに加勢した。それでもナッパの足を止めるには精一杯な所、相当に怒りが溜まっていたのだろう。

 それをターレスは何のアクションも起こさず空から見ているだけであり、それがますますナッパを苛立たせる。

 これでは先程の様にはいかないだろう。ラディッツはクリリンとヤムチャと共にナッパを止めながらターレスに叫ぶ様に話し掛ける。

 

「何の用だターレス! 今頃俺達を殺しに来たか!」

 

「いやぁ? 君達のチームに入れて貰おうかと思ってね」

 

「な、何ッ!?」

 

 まさかの展開に、ラディッツは驚く。その拍子に力が緩んでしまい、ナッパが飛び出していってしまった。

 

「死ィィねェェッ!!」

 

「おぉっ!?」

 

 目を血走らせ、声を裏返す程に怒り狂うナッパに、流石のターレスもこれには空中なのに後退し、その威圧感に防御の構えを取った。

 その判断は正解である。

 ナッパの剛腕から放たれる大振りは、避けやすい動作をしているのに避けれない圧迫感を持ち、相手を硬直させる程までに至った。

 それはターレスが防御をした腕に当たり、ナッパが飛び出した際に吹っ飛ばされて離れているハズのクリリンやヤムチャにまで届く様な、重く嫌な音を響かせてターレスを地面に叩き落とす。

 

「ぐはァッ」

 

 地面に真正面からブチ当たり、肺の酸素が吐き出される。

 流石に不味いと思ったのか、ターレスは直ぐに立ち上がり体勢を立て直そうとした。

 

「んあ?」

 

 しかし力が入らず、ガクリと崩れる。

 おかしい。そう思い自分の身体を見ると、

 

 

 片腕と片脚がイカれていた。

 

 

 あ、死んだ。

 目の前に迫り来るナッパを見てそう思い、構える事すら遅すぎた。

 ナッパの蹴りが顔面へと迫り、死を覚悟した。

 

 

 

 だがそれはターレスの身には届かず、直前でそれは止まった。ターレスは何もしていない。そして目の前には、

 

「いい加減にしろナッパ……ッ!」

 

 紅く光り輝くラディッツがその蹴りを遮っていた。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

「おいクリリン! 大丈夫か!?」

 

 ヤムチャが倒れたクリリンを抱き上げる。しかし、呻き声は上げるものの、自力で立つのは難しいようだった。

 何故こうなったのかは、先程飛んでいったナッパの所為である。

 ヤムチャはただその風圧に吹っ飛ばされただけだが、クリリンは重い一撃を腹に食らったようだ。ナッパが自身の腕を掴むクリリンを振り解き、そして振り回されたそれに不運にも当たってしまったのだ。

 

「デンデ、クリリンを頼む! 俺はラディッツと一緒にナッパを止めに行く!」

 

 倒れたクリリンをデンデに任せ、ヤムチャはナッパへと向かっていった。

 

 

 

 ラディッツが界王拳を使い、ナッパの蹴りの軌道を読み、そして掴む。それは、ターレスに届く前に止められたのでギリギリ間に合ったという所だろう。

 

「いい加減にしろナッパ……ッ!」

 

 そう叫びながらラディッツは回し蹴りをナッパの脇腹に叩き込む。界王拳を纏ったラディッツの蹴りは、圧倒的なタフさを誇るナッパでも流石に無視する事は叶わなかったようだ。

 ゲフッとナッパはその脇腹を押さえ、標的をラディッツに移す。

 

「なんでそんなのを庇いやがるッ!」

 

「まだ何も聞き出せてねぇだろうがよッ! 少しは落ち着けナッパ!」

 

 そう言いながら空中で徒手空拳をやり合うラディッツとナッパ。界王拳の強化のお陰もあり今はラディッツは押しているが、界王拳は例えるならば諸刃の剣。時間が経てば経つほどラディッツが不利になっていくだろう。

 そこに、ヤムチャが加勢に来た。

 

「はぁぁぁ……!」

 

 ヤムチャも、ちゃんと自分のレベルくらいは理解しているつもりだ。

 如何に最長老からパワーアップしてもらったとはいえ、単独でサイヤ人相手に足止め出来る強さに至ったとは思っていない。ここは……

 

「援護するぞラディッツ!」

 

 そう言って、ヤムチャは繰気弾をつくり出す。

 しかし、それはいつものそれでは無い。その気弾はヤムチャの体長程大きくなり、やがて人の形を創り出していく。

 それはヤムチャと瓜二つの形をした繰気弾となったのだ。発光していることと色以外は全く同じ姿をしており、道着や髪などの細部に至るまでほぼヤムチャである。

 

「「ハァッ!」」

 

 ヤムチャ型の繰気弾はナッパに向かっていき、本体のヤムチャは今度は球型の繰気弾を作り巧みに操る。

 それはラディッツに向けた攻撃を逸らし、受け流し、取り押さえる。真っ向からの攻撃とはいかなくても、此方を対象としていない攻撃ならば幾らでも対処の仕方はあるのだ。

 

 因みにこの繰気弾で創り出したヤムチャ、実は本体よりも強い。

 本来の肉体で動くのならば鍛え上げた肉体の限界までの動きが可能だが、繰気弾のヤムチャは人間ではなく気の塊なのでありのままの繰気弾と同じスピードで動く事が可能なのだ。

 目で追い付いても身体が追い付かない、なんて事が無くなり、繰気弾のスピードでの突きや蹴りを繰り出す事が出来る。更に視点も二つとなり、隙がかなり減るだろう。その分気の消費は多いが、直接の攻撃は食らわないので本体も余裕があれば共に動く事も可能である。

 

「どいつもこいつも邪魔しやがってェッ!!」

 

 頭に血が上り切ったナッパの動きはますます単純になり、本来の動きが出来なくなる。そうなれば後はラディッツの独壇場だった。

 

「目を覚ませ、この単細胞ッ!」

 

 腹にボディブローを一発、蹲った所をベアナックルが頭に直撃。ナッパは地面に叩きつけられ、正気を取り戻した。

 

「すまねぇラディッツ、おれは しょうきに もどった」

 

「まだ戻ってねぇなコノ!」

 

 地上に降りたラディッツはおかしなことを言うナッパの頭をもう一度殴る。

 

「おぉ!? ここはどこだッ!?」

 

「取り敢えず謝れお前」

 

 ナッパは周囲を見回すと、体力を消耗したラディッツとヤムチャ、蹲ったクリリンを見て(ようや)く自分がどうなったかを理解し、そして頭を両手で押さえる。

 

「本当にすまん。俺の悪い癖だなオイ……」

 

 ナッパは一人、項垂れる。

 最早皆は怒りの言葉も慰めの言葉も無い。

 一人にさせるべきだと判断し、放置しておこう。そう思ったラディッツだった。

 

 

 

「な、何で私を……?」

 

 ターレスがラディッツに話し掛ける。

 それに対しラディッツは、

 

「さっき言っただろう。お前から何も聞いて無いってな」

 

 しかし、と言葉が続きラディッツは界王拳を解き、頭を抱える。

 

「ターレス。お前、厄介な事をしでかしてくれたな」

 

 

 

 

 

「あれれ〜? 見つかってたみたいだなぁ」

 

 その言葉と共に姿を現したのは、何とギニュー特戦隊とアボカド兄弟の七人である。

 皆は驚きの声を洩らし、冷汗をかきながら構えを取る。こんな状況で現れたのは不幸以外の何物でも無い。

 

 クリリンは行動不可。

 ヤムチャは気を消耗している。

 ナッパは暴れた後である。

 

 しかし、何故こんな間の悪い状況下に現れたのか。いや、ナッパが暴れた所で居場所がバレていたのだろう。となると、

 

「貴様ら、今の状況を楽しんでやがったな……?」

 

 ラディッツは睨み付ける。

 それに対しギニュー特戦隊の一人、グルドが答える。

 

「当たり前だろ? 今では数少ない猿野郎が仲間割れしてる所なんてもう一生見れねぇぜ。それに、俺達が何もしなくても死んでくれるなら苦労しなくて済むしなぁ……」

 

 憎たらしい笑い顔で言ってくるグルド。一生見られない、という所に悪意を感じるのは勘違いでは無いのだろう。

 

 

 

「では改めて我らの正体をご覧頂こう! 我らギニュー特戦隊ッ!」

 

 

 

 隊長であるギニューがそう言うと、彼らは意味不明な動きをしてくる。キャラが掴めず、巫山戯ている様に見えるが……いや、真面目に巫山戯ているのだろう。

 最後の決めポーズをした後、一仕事終えた様な雰囲気を出して不気味に笑い掛けてくる。ドヤ顔とでも言うのだろうか、しかしこちらはまったく笑えない。アボとカドも混ざり、いよいよ絶望的だ。

 

 ロクに動ける人物が殆どいない今、戦いが始まってしまう。

 それはマトモな勝負にすらなるかどうか危うい戦いの始まりであった。

 

 

 

 

 




因みに天下一武道会での出来事その1

原作では悟空とチチが結婚しましたが、この作品では誤って気絶させ、その後チチは自分は悟空の嫁に相応しく無いと思って身を引いたって感じです。

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